この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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この素晴らしいエリス様と祝福を!年に一度の先輩vs後輩 5

 

 

 

「第五章 この女神二人にリベンジを!」

 

 

 

 ___この世界の花火大会は、随分と物騒らしい。

 

 街中で爆裂魔法のをぶっ放そうとして警察に取り押さえられていためぐみんを思い出しつつ、虫の襲撃を防衛し一人屋敷に帰ってくる。

 

 あいも変わらずノンビリしていたクリスに帰宅の有無を伝えると、俺とクリスはそれぞれ自分の部屋へと行き準備を始める。

 

 この日の為に買っておいた魔道具をリュックに詰め、黒装束をクローゼットから探す。

 

 ……そう、今からあの忌々しい鎧にリベンジするのだ。

 

 そろそろ日付が変わる時間帯。

 

 めぐみんは留置所に、ダクネスは今頃領主の仕事に疲れて実家で眠ってる事だろう。

 

 こことないチャンスを掴むべく、クローゼットを漁っていた所ある疑問が浮かんできた。

 

 ………黒装束がない。

 

 さっきからガサゴソ色々な所を漁っていたのだが、如何せん全く見つからない。

 

 嫌な汗が額から流れているのを感じ取り、何処に置いたか脳を急回転させ何とか思い出す。

 

 ………駄目だ、全く思い出せん。

 

 クリスにその旨を伝えるべく部屋へと訪れる。

 

「おいクリス大変だ。俺のあの服何処にも無いんだが…どうしよ?」

 

「え!和真もなの!?」

 

 どうやらその反応を見る限りクリスも無いみたいだ。

 

「どうするクリス?仮面はあるけど、服なんてあの冒険服以外持ってねーぞ。」

 

「うーん、私も持ってないし。困ったなぁ…。」

 

 と、クリスがチラリと部屋の角を見つめる。

 

 俺も釣られそちらへと目線を移すと、そこには俺の部屋に置いとくのは少し小っ恥ずかしいという理由で押し付けた、仮装様のアクアの服があった。

 

「………え?いやいや流石に冗談キツイぜクリス!」

 

「でもでも!私達他に服持ってないよ!?」

 

「あれじゃ返って目立つだろうが!!」

 

「どっちにしろキミがすぐ暴れるから意味ないでしょ毎回!!ほらじゃあせめてそっちが私の服を着て、私がアクア先輩の服を着れば良いじゃん!!」

 

 数分の言い争いの後、結局俺が折れる形となって代用の服を着る羽目になった。

 

 クソが…!俺の運の良さは何処にいったってんだ、クリスに至っては幸運の女神だぞ…?なんでこんなに運が悪いんだ!

 

 少し照れた様子のクリス元いエリスから、扉から手だけを出し服を受け取る。

 

 ………これ、さっきまでエリスが着てたんだよなぁ…。

 

 新たな扉が開く前にさっさと着て終わらそう、そう思いエリスの服を着ていく。

 

 なんか、思ったよりフィットしてなんだか涙が出てくるな……これは俺が筋肉がないからなのか、はたまたもっと別の理由があるのか……真相はクリスのお胸次第。

 

「ねぇ、キミってば失礼な事考えないと生きていけないの?」

 

「いや何も考えてねーよ!……って、おぉ。結構似合ってるじゃないか。」

 

「そう?それはありがと。」

 

 こうなんか、綺麗なアクアと言うかなんというか。

 

 身長や髪型も相まって、本当に男の娘みたいだな……絶対口に出さないけど。

 

「良し、それじゃ向かおっか?どう?着心地は。」

 

「ん?あー別に。ちょっと胸の辺りが苦しいというかなんという……って冗談冗談!!」

 

 タガーに手を掛け、見たことのない憎悪が籠もった顔で俺を見る物だから背筋が凍ってしまった。

 

 クリスの胸イジリは控えた方が良さそうだな……貧乳の化身の二つ名は返却して貰おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「___てな感じで、最近クリスも気付いていると思うんだけど俺って今ハーレム状態じゃん?ツンデレ物知らずでドMお嬢様と、一度は振られても諦めきれない頭のおかしい頼りになる紅魔族、表の姿はただの盗賊…しかし裏の顔は世界を統べる女神様。なぁ、俺はどうしたら良いと思う?」

 

「死んじゃえば良いんじゃないかなぁ…。」

 

「おいおい話聞いてたか?俺が死んだら俺の事大好きなお前も悲しむ羽目になるんだぞ?」

 

「なんで私も和真の事が好きなの前提なのさ!!」

 

「え、違うの!?」

 

「違うよ!!」

 

 プンプンと怒ってしまったクリス。

 

 しかし俺は今それ所じゃない…まさか、クリスが俺の事が好きじゃないだなんて!

 

 女神様から直々好きじゃない宣言に、俺はガラスのハートが崩れ落ちるのを感じる。

 

「そんな絶望な表情をしている所悪いけど、着いたよ。」

 

 アンダイン邸に着いたらしい、辺りを見渡してみる。

 

 どうやら、以前俺達が侵入した裏口は完全に封鎖され、もう一つの入り口である正門には二人の見張りが立っていた。

 

 クリスがちょくちょく確認しに行っていたのだが、こないだの侵入以降朝まで常に守衛がいるとの事だ。

 

「さて、どうしようか助手君?この屋敷は変に広くない分見張りを立てられると侵入は難しいし。」

 

「そうだな……ここは見張りを無効化しよう。なんか、今日は王都の日とは言わずとも気分が好調してるんだよな。それこそ、二人くらいなら瞬殺出来そうなぐらいに。」

 

 やっぱりバニルから貰ったこの仮面が関係してるのだろうか?なんか満月の夜は力が漲るだとかなんとか言ってた気がする。

 

「和真は魔族か何かなの?やめてよ私身内を浄化したくないからね?」

 

「まぁ魔族ではないけど、部分的に魔族かも知れないな。取り外し可能だけど。」

 

「どういう事だよもう…。」

 

 俺とクリスは潜伏スキルを使いながら、忍者の様に壁に張り付きじわじわと距離を詰めていく。

 

 守衛の二人は緊張感もなく雑談している、これなら不意を突けばいけそうだな。

 

「___しっかし、今回の祭りは最高だな!名も知らない美味い物は前よりも増えてるし、売り子が全員水着だぜ。巷の噂じゃ、本物の女神アクアも見えたって言ってた人も居たしな。」

 

「あぁ俺も聞いたなそれ。なぁ知ってるか?今回の祭りの仕掛け人、あの噂の冒険者のさ___」

 

 俺は陰から飛び出した。

 

 二人は俺に気が付くと慌てながら腰に下げた剣に手をやって……

 

「『ダブルドレインタッチ』!」

 

 両手で二人の口元を押さえ、ドレインタッチで魔力を吸収。

 

 クリスの前で隠し事を滑らしそうになっていた兵士をあっという間に黙らせる。

 

「ちょ、ちょっと助手君。結構危なかったよ今!」

 

「今の俺ならいけると判断したんだよ。大丈夫、俺に任せろ。」

 

「えぇ…?て言うか、なんで助手君がお頭にタメ口なのさ!演じるならしっかり演じてよね!」

 

 それはそれは耳に痛い。

 

 実際危ない所だった。

 

 叫ばれる云々もあったが、あと少しでも喋らせていたら本気で天罰を受けていただろう。

 

 クリスは魔力切れで昏倒した二人の守衛を茂みの中に引き摺りながら。

 

「まぁ結果的には良かっから良いけどさ、無茶はしないでね?今日ほどのチャンスはもうないんだから。」

 

「すいませんお頭。それに、この姿で無茶してたらお頭の評判が下がりますしね。」

 

「そうじゃん!」

 

 衝撃の事実に気付いたクリスと共に、アンダイン邸に侵入すると今回も順調に進んでいた。

 

 二度目の侵入なので屋敷内部を既に知っているというのもあるが。

 

 だが、何事も起きずにこうも上手くいうというのは、やはり幸運の女神が一緒にいる事も大きいのだろう。

 

 出かける時は不運だったが…。

 

 やがて前回やって来た宝物庫に着いた俺達は、隠し扉の前へと立つ。

 

 俺はポケットから今回のキーアイテムを取り出すと、隠し扉を押し開けた。

 

 アイギスに叫ばれる前に、入ると同時に魔道具店で買っておいた結晶体を床に叩き付ける。

 

 バニルに押しつけられた、ウィズの店では珍しいちゃんと役に立つ普通の魔導具。

 

 短時間だが、微弱な結界を張りアイギスの念話を遮る魔法結晶だ。

 

 後に続くクリスがリュックを開き、これも同じく魔導具店で買ってきた弱い魔法を遮断する効果のある風呂敷を取り出した。

 

 コイツでアイギスを包んでやれば、念話そのものが使えなくなる。

 

『いきなり現れて誰かと思えば、この間のコソ泥じゃねーか!今回は随分と可愛らしい姿で性懲りもなく来やがって、者もど出会えー出会えーッ!!』

 

 俺達の姿を見るや否や、アイギスが叫びをあげる。

 

 俺はその叫びを無視し、アイギスに絡みついている鎖を外しつつ話しかける。

 

「なんの対策もなしにノコノコやってくる訳ないだろ?お前の思念は屋敷の連中には伝わらないぜ。」

 

 アイギスに掛かった鎖を解きながら、俺は以前の逆襲とばかりに嫌らしく嗤いかける。

 

『え!?ちょっ、よし、分かった!取引だ、取引しよう!!俺に相応しい持ち主を見つけてくれ、頼むよほんと!多少は妥協するから!!』

 

 以前の舐めた態度は何処へやら、アイギスは必死に懇願してくる。

 

 俺はそんなアイギスの鎖をまた一つ取り外し。

 

「それは俺達が最初に来た時に言うべきだったな?」

 

 そう冷たく言い放つ。

 

『ああああああああ!いやああ、いやだあああ!女!着られるなら黒髪美少女でも金髪ロリでも赤髪セクシーでもこの際どれでも良いから女が良い!!!』

 

 悲痛に泣き叫ぶアイギスの言葉に、俺はほんのちょっとだけ同情する。

 

「もう諦めろ、この風呂敷はお前の声を封じる風呂敷だ。こいつでお前を包んで持ち帰るからな、全く。無機物の癖にお前は注文がおおいん………」

 

 アイギスを縛っていた最後の鎖を取り外し、そこまで言った時だった。

 

『オラアッ!!』

 

 顎に衝撃を受け目が眩む。

 

「じょ、助手君!?ってちょっと!?キミなんで動けるのさ!」

 

 クリスの言葉を聞きながらくらくらする頭を押さえ、なんとか状況を理解しよくとしアイギスを見る。

 

『決めた。お父さんお母さんメイドさん、俺旅に出ます。俺を着られるまだ見ぬ美少女を探す旅へと!』

 

 そこには鎖を解かれて自由になったアイギスがシュッシュと軽快にシャドウをしている姿だった。

 

 いよいよトチ狂った事を言いだしたアイギスに向けて、クリスは必死に頼み込む。

 

「ちょっと待ってよアイギス、この世界にはキミの力が必要なんだよ!新しいご主人が見つかるまでで良かったら、なんなら私がキミを着るから……」

 

『ファーック!男か女か分からない変なコスプレした盗賊に着られて何が嬉しいってんだ!そんなに言うんなら俺との相性チェックといこうか!?……ふむふむ、顔の造形Aランク、職業適性Cランク、胸は論外ですね。この度はご縁がなかったと言う事で……』

 

「むっかー!!!!こっちが甘い顔して頼んでれば!『バインド』ッ!!」

 

 とうとうキレたクリスが叫び、腰のワイヤーを投げつける。

 

 金属製のワイヤーはそのままアイギスを___!

 

『お、このワイヤーでどうしろと?なんすかこれで縛り上げて欲しいんすか?可愛い顔しちゃってからにとんだご趣味をお持ちで!』

 

 クリスが放ったワイヤーはぽとりと床に落ちた。

 

 アイギスは両手を上げてやれやれと肩をすくめ挑発する。

 

「お頭!アイツの腕とか引っこ抜いてバラバラにしてリュックに詰めてしまいやしょう!」

 

「わ、分かった!私は右からいくから、助手君はそっちに回って!」

 

『おい物騒な事言ってんじゃねーぞ。継ぎ目一つないマイボディは分解不可能だ!』

 

 なんとか両腕に取り付いた俺達をズルズルと引き摺ったまま、アイギスは部屋から出て行こうと……!

 

「お頭、マズい!部屋から出られたら消音出来ない!」

 

「ああっ、ちょ、いい加減にしなさいアイギス!私はエリス、この世界ではないにしろ女神として貴方を管理する義務があります、さぁ大人しく一緒に来なさい!!」

 

『おぉそれはわざわざご丁寧に。……可愛い顔して勿体ねぇなぁ、やっぱ人間中身も大事だな。後その姿は確かアクアじゃないか?キャラ設定は大事にしなよ。』

 

「なにおおおおお!!」

 

 本物の女神と信じてもらえない所か、駄目だしまでされたクリスが激昂するが。

 

『さてお二人さん、どうやらここでお別れの様だ。そんなに俺が欲しいならお前は女に、お前は胸を大きくする事だな!貧乳はステータスとか言うやつもいるが、俺から言わせりゃそれ負け犬の遠吠えってやつだぜ!』

 

「キーッ!!」

 

 煽られたクリスが顔を真っ赤にしながらアイギスの腕にしがみつくも、アイギスは俺達を引き摺ったまま隠し扉から出てしまった。

 

 俺達を振りほどいたアイギスは宝物庫を駆け抜けて、三階の高さにも拘らず窓に飛び蹴りを放つと。

 

『アイギスキーック!!ヒャッハーッ!俺は自由!あたい今日から鳥になる!!』

 

 それと同時に屋敷中に明かりが灯りあちこちから罵声が飛ぶ。

 

 この騒ぎを聞きつけて屋敷の住人が起き出した様だ。

 

「何事だ!?また賊が現れたのか!?」

 

「今のは聖鎧アイギスの声です!宝物庫の確認を!」

 

 やばい、こっちに向かってくるらしい。

 

 前回侵入した時俺達は、宝物庫の前の窓からカーテンを引き裂きロープ代わりにして脱出したのだ。

 

 しかしそれを防ぐためなのか、まだ代わりを入れてないのか窓にはそれらの物はない。

 

「お頭、覚悟を決めて下さい。久しぶりに本気を出します。」

 

 俺が息を整えていると。

 

「まだ慌てる時じゃないよ。大丈夫、何とかなるから。私は幸運を司る女神様だよ?」

 

 と、クリスが悪戯を仕掛ける様な顔で笑った。

 

 その時、窓の外がカッと輝きそれと同時にアンダイン家の窓という窓が砕け散る。

 

 聞き慣れた轟音が、夏の夜空に響き渡った。

 

 あの馬鹿ナイスタイミングだけどなにしてんだ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「和真出てこい!今なら説教で許してやる!」

 

 ドアの前では激昂したダクネスがドカドカとドアを蹴りつけている。

 

「汚いですよお嬢様!もっとお淑やかにしたらどうなんですか!?」

 

「こんな時だけ貴族の令嬢扱いするな!ちゃんと出てきて説明しろ!さもないと、クリスだけがお前の分も含めて酷い目に遭うぞ!!」

 

「和真助けてぇ!!」

 

 ドアの向こうからクリスの声。

 

 しかしそんな事で動じる和真さんじゃない、俺は一言。

 

「お好きにどうぞ」

 

「裏切り者ー!ねぇダクネスこの縄解いて!私も協力するから!!」

 

「お、お前らは本当に……!」

 

 

 

 ___1時間後

 

 

 

 部屋のドアを蹴破られダクネスに取り押されられた俺は、クリスと共に正座していた。

 

「で、またどうしてこんな事をやらかした。」

 

 ある程度の事情を聞いたダクネスは、頭痛を堪える様にこめかみを押さえて息を吐く。

 

 俺は隣のクリスに指を指し。

 

「俺は、『相手が貴族ならダクネスに頼むのは?』って言ったんだよ。でも、そしたらクリスが……」

 

「あぁっ!?それは確かにそう言ったけど、でもあの貴族は神器を非合法的な手段で手に入れたみたいだし、評判も良くないしで、きっととぼけられると思ったんだよ!それにダクネスは領主の仕事で忙しそうだったし。」

 

 ダクネスは深々と溜め息を吐きながら。

 

「幾ら忙しくてもお前達が犯罪に手を染めるくらいなら時間を割くさ。それに、貴族には貴族なりのやり方がある。それなのに……!」

 

「痛い痛いダクネスやめてぇ!!」

 

 クリスのこめかみを拳で挟みぐりぐりと締め上げるダクネス。

 

「全く、お前達といいめぐみんといい、どうして問題ばかり起こすのだ!なぁ和真!私の仕事を減らしてくれるんじゃなかったのか!?なぁ!!」

 

 今度は俺をぐりぐりと締め上げる。

 

「す、すまんかったダクネス!俺が悪かったからやめてくれぇ!!」

 

「ほんとに…ほんとに!!めぐみんは留置所に拘束されたのが納得いかないからと、解放され外に出た瞬間爆裂魔法をぶっ放してまた留置所に拘束されてるし!!なんなのだお前達は!!」

 

 アイツそんな事してたのか…助かったけど、本当になにしてんだよ。

 

「………はぁ、これくらいにして置こう。今日は最後の開催日なんだ、今日はあまり問題を起こさない様頼むぞ…。」

 

 呆れながらダクネスに告げられ、三日目は終了していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___女神様大感謝祭最終日。

 

 炎天下にも拘らず、そこには多くの人で溢れていた。

 

『本日お集まりの皆様方。わたくし、この度の司会に選ばれて誠に嬉しく、そして光栄に思います……!』

 

 アクセルの街の大広場。

 

 街の中心に位置するそこに設けられたステージ上で、タキシードを着た男がマイクの様な魔導具に向け。

 

『女神様大感謝祭今回の祭りのメインイベント!!第一回ミス女神コンテストをここに開催いたします!』

 

 司会が叫びと共に、ステージ前に集まった見物客から盛大な歓声が湧いた。

 

 俺はアドバイザーとしての仕事の一環として、新しい目玉イベントの発案を任されたのだが……それが、このミスコンだったって訳だ。

 

「……ねぇ和真。もう恥ずかしい通り越して頭が痛いよ。」

 

「楽しめば良いと思うぜ。それにクリスがエリスに変わって出たら優勝出来るんじゃないか?」

 

「ぜっっったい出ないからね!」

 

 それは残念な事だ。

 

『それではまず最初の方となりますが……。お名前と年齢、そしてご職業の方をお願いします!』

 

 盛大なイベントが始まったのだが、クリスが冷たい飲み物を買いに行ったのを確認し俺はステージ上に現れる美女達をガン見していた。

 

「ううむ…。個人的な好みで言わせてもらえば、ちょっとスレンダー過ぎるなぁ…顔は好きなんだけどな、顔は。」

 

 俺はスレンダー美女を見ながら一人感想を溢していた。

 

『そうか?ありゃあキツめの性格きてるぜ?だがスタイルは良いな、着痩せするタイプと見たね。』

 

「確かにキツそうだけど、スレンダー系ならキツめの性格が良いんだよ。」

 

『まぁ、それを言われたらそうだがよ。』

 

 ………。

 

「おいお前、なんでここに居るんだよ。」

 

『フッ…美女を探しに旅に出た所、何やらうってつけのイベントを聞いてな。まさかお前も居るとは思わなかったが。』

 

「俺もこんな早くに再会するとは思ってなかったよ…なぁ、このまま捕まえて良いか?」

 

『あっ、ちょっと静かに。あの子のプロフィールが聞けないもんで。ほら司会者が何食ったらそんなに大きくなるのか聞いてるから。』

 

「………しょうがない、あの子のプロフィール終わったら捕まえるからな?」

 

『分かってるよ、あの子が舞台裏に引っ込んだらな。』

 

 一時休戦した俺達。

 

 周りの客はそんな俺達に目もくれずステージ上を注視していた。

 

 そんな中、やがてその子のプロフィール紹介が終わると出場者はステージから下がっていった。

 

「よし、バカ目ノコノコ現れやがって!クリスが来るまでここで時間稼ぎさせてもらうぞ!!」

 

『ハッ!やれるもんならやってみやがれ!伊達に聖鎧アイギスさんと呼ばれた俺じゃねーぜ!!』

 

 戦いを始めた俺達は、互いに手を組み押し合いしていると、

 

『はい、有難う御座いました、ソニアちゃんでした!いやー素晴らしいバストの持ち主でしたね!しかし、この次もご期待下さい!さぁ張り切ってどうぞー!!』

 

 司会の言葉に観客席がドッと沸く。

 

 俺とアイギスは互いに押しあったまま自然とステージの上に目がいった。

 

 次に現れたその子はこれはもうすんごい、ウィズやダクネスに匹敵するくらい…!

 

『………なぁ、あの子を見てからにしないか?』

 

「………しょうがないな、次はないからな?」

 

『ておいっ!見ろよあれ、反則だろあんなの!!』

 

「うぉ!やばいだろあれ!!クソ…!水着審査を必須にすれば良かった……!」

 

『この大馬鹿が!なんで必須にしなかったんだよ!!』

 

 俺とアイギスは背伸びしながら、観客席最後尾から観察を続けた___

 

 何処か、見たことある青髪と銀髪二人に気付かず……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『___おいおいおーい!大丈夫なのかそんな無防備な格好!!』

 

「あれは売り子のお姉ちゃんだな。俺の発案で、熱中症対策で売り子は水着にすべしって言ったんだよ。」

 

『お前賢いな…確かに熱中症対策ならしょうがないよな、だって危ないしな。おっと次の奴はイマイチだな、厚化粧が過ぎる。』

 

「メイクはナチュラルが基本だよな、あんなのは邪道だ。」

 

 俺は文句を言いながら持ってきた魔導具でシャッターを切る。

 

『続いてはこの御方!皆さんご存知不憫が似合う薄幸店主!ウィズ魔導具店の店主さんです!』

 

「やったぁぁぁぁ!ウィズだ、ウィズが来た!」

 

『おいレベル高えな抱きしめてぇ!抱き心地良さそうなあの姉ちゃんを抱きしめてぇよ!もしくは中に入ってもらいたい!』

 

 俺とアイギスは予想もしなかったウィズの登場にテンションが上がりに上がりまくる。

 

 お陰で観客達のボルテージも急上昇だ、これは次の参加者が気後れしそうなものだが……。

 

『さぁ続きましては本日の優勝候補の一人です。この街に住む皆さんなら既に知らない方はいないでしょう!ある時は冒険者、またある時は我慢大会連続優勝者。大貴族ダスティネス家のご令嬢、ダスティネス・フォード・ララティーナ様です!』

 

 おっ、アイツも参加してたんだな!

 

 領主の仕事で忙しいから無理だと言っていたが、何だかんだ息抜きで来たのだろうか。

 

 本当はめぐみんにも頼んだのだが、流石に小っ恥ずかしいのと独りぼっちの友人と周るみたいだ。

 

 『ファーッ!良いじゃん良いじゃん凄く良いじゃん!綺麗な顔したエロバティ、しかも貴族令嬢ってか!?』

 

 ダクネスが現れると共に、アイギスのテンションが跳ね上がる。

 

 今日のダクネスは避暑地に出かける貴族の令嬢らしいちゃんとした格好だった。

 

 多くの観客に注目され、赤くなった顔を恥ずかしそうに帽子で隠し隠し、そっと俯いていた。

 

「だろー?あれ、俺の仲間なんだぜ。しかもお前と相性の良い前衛職だぜ?」

 

『マジで!?いいなぁアレいいなぁ!なぁ、俺のご主人様はあの子が良い!あのエロバティには絶対傷なんて付けさせないからさ!』

 

「でもあいつ、クルセイダーだぞ?お前、攻撃されれば鎧だって痛いとか言ってなかったっけ。それに腹筋割れてるし。」

 

『割れてるのか。いや、しかしそれも…でもクルセイダー……。くそ、よりによってクルセイダーかよ……。でもなぁ…あれ以上のがそうそう出てくるかな……。』

 

 葛藤するアイギスの言葉に、やっぱり最初っからダクネスに頼むべきだっと今更後悔する。

 

「『……ダ、ダスティネス・フォード・ララティーナ……。歳は18歳、仕事は領主代行を……。』」

 

 緊張してるのかダクネスの声はマイク越しでもボソボソとしか聞こえない。

 

 遠目に見ても堅い表情が見て取れる。

 

 とその時、観客席にいた冒険者の一人が叫んだ。

 

「ララティーナー!もっと大きな声じゃないと聞こえなーい!」

 

 それに釣られ、

 

「お嬢様、今日はまた綺麗な格好ですね!」

 

「何時もの鎧はどうしたんだよ、でもその格好も可愛いぞララティーナ!」

 

 そんな野次があちこちから続く。

 

 今やダクネスはこの街の冒険者として既に結構な顔だ。

 

 顔を真っ赤に染め上げ泣きそうな表情のダクネスに、俺はなんだかイケナイ気持ちに煽られる。

 

「良いぞララティーナー!そこだ、自慢の、腹筋を見せつけろ!!」

 

『……あの子、お前の、仲間じゃなかったの?』

 

「ばっか仲間として応援してるんだろ?それにほら、あの顔真っ赤にして涙目で睨見つけるダクネスを。」

 

『なるほど、お前良い事するなぁ。よし、俺も協力するぞ!良いぞ姉ちゃん、もっとサービスしろー!』

 

 アイギスの煽りを皮切りに、それを受けた冒険者達も野次を飛ばす。

 

「そうだそうだサービスきろー!」

 

「水着はどうした水着はー!!」

 

「もういっその事脱げー!」

 

 その言葉を聞いたダクネスが、ギョッとした表情で真っ直ぐに俺を見る。

 

 まずい、本格的に見つかった。

 

「そうだ、脱げー!」

 

「ダクネス、脱げー!」

 

「脱ーげ!脱ーげ!」

 

『脱ーげ!脱ーげ!!』

 

 その時、会場の心は一つになり、皆が綺麗に声を揃えて脱げコールを……!

 

「あ、」

 

 脱げコールに等々キレたのだろう、ダクネスが客席に飛び込み冒険者達へ襲い掛かったのだ。

 

 多数対一人の筈なのに、何故か聞こえるのは男性冒険者の悲鳴。

 

 ……あいつ、剣持つより拳の方が強いんじゃねーかな。

 

『あの姉ちゃん強いじゃねーか!こりゃあやっぱり俺のご主人様はあの子で決まりだな!!』

 

 暴れ回るダクネスをなんとか抑えた係員達によって、別室へと連れられ宥められている。

 

 未だ若干のざわめきがあるものの、ようやく進行が可能な程度には静かになった会場で、ステージ上の司会者が改めてマイクを手に取った。

 

『あー、あー、えーさて、会場の混乱も収まった事ですし、参加者も残っておりません。ではこれより、ミス女神コンテストの優勝者を___』

 

 と、司会者がそこまで言った時。

 

 ……ざわめいていた会場が、一瞬で静まり返った。

 

 大声で話をしていた冒険者。

 

 帰り支度をしていた商売人。

 

 その場に居た全ての人々が、ただステージの一点のみを見つめている。

 

 ステージの中央には、何時の間に立っていたのか優しげな笑みを浮かべる少女と、観客席を見渡して驚いた表情を取った少女が居た。

 

『……えっ。………へっ?あ、あの……。』

 

 あらゆる者が呆然と二人を見つめる中、司会者だけが絞り出す様な掠れた声で。

 

『……あの。飛び入り参加者……と、言う事でよろしいので……しょう…か?』

 

 ステージに佇んだまま、流石に微笑む少女と見渡すのに飽きたのか司会者からマイクを受け取る少女。

 

 ___そう。

 

『ええ、二人って事だけど良いかしら?』

 

『あ、はい勿論……。』

 

『すいません飛び入りという形になってしまい、申し訳ありません。』

 

『いいいいいいいいえええ!とんでも、とんでもございません!こ、こここの度はミス女神様コンテストに御参加頂き、ありがとうございますっ!!』

 

 顔も服装も何もかもが、この世界の人間なら誰もが知る、なんならこのお祭り期間中はいやと言う程に見たと言うのに。

 

 何故か本物だと感じる完璧なまでの、エリスとアクアが参加してきた。

 

 成る程……あのアクアの事だ、面白そうだとクリスを引っ張って連れて行ったのだろう。

 

 俺は隣のアイギスに目を向けるとら微動だにすらせずに声を発する事もしない。

 

『そそ、それでは……。これは、参加者全員に尋ねてきる事なのでどうかお許し頂きたいのですが……。その、お名前は?』

 

 おそるおそる、どことなく期待を込めて。

 

『私の名前はアクア、ほら、皆聞いたことあるでしょ?』

 

 そう答え、もう一人へとマイクを渡す。

 

『名は、エリスと申します。』

 

 その瞬間、会場に歓声が轟いた。

 

 熱狂的な叫びを上げて、ひたすらアクアとエリスの名を交互に連呼する者。

 

 恍惚とした表情で、呆然と二人の女神を見上げる者。

 

 手を合わせて深く祈りを捧げる者。

 

『どうしよう……』

 

 小さくポツリと、隣のアイギスが呟いた。

 

『俺は……俺ちゃんはどっちを選べば良いんだ…?分からない、俺分からないよー!!』

 

「お、おい落ち着け!お前キャラ崩壊してるぞ!!」

 

 パニックに落ち言ったアイギスを宥めていると、ステージではなおも司会者の問いが続いていた。

 

『あ、あああありがとうございます!あ、あの、実はあと二つ程質問が有るのですが……?』

 

 顔を上気させながらも、おずおずと申し訳なさそうに尋ねる司会者。

 

 エリスはくすりと小さく笑うと、

 

『その二つは秘密です。』

 

 そう言って、悪戯を仕掛けるみたいな表情で片目を瞑り、人差し指をピッと立てる。

 

 再び轟く歓声に、会場の空気自体が震えさせられる。

 

 次にアクアがマイクを受け取ると…

 

『あー、私は全然答えても良かったけど。後輩の思いを汲み取って私も秘密にしておくわね!その代わりと言ってはなんだけど、私の芸を見せてあげるわ!!』

 

 そう言ってマイクを司会者に返すと、何処からか出した扇子を開き水を操る。

 

 そうして出来上がった作品は、アクアとエリスが見つめ合って手を取り合っている絵。

 

 流石水の女神と言った所だろう、これまた歓声が溢れんばかりに沸き上がる。

 

『ダッ、駄目だぁ二人共そんなサービスされなら……!このアイギス、そんなのは許しませんぞ!』

 

「駄目なのはお前の方だよ、さっきから誰なんだよお前は!」

 

 ステージの上から俺達が居る場所を真っ直ぐ見つめ、くすくすと小さく笑うエリスを見ながら。

 

「___エリス様、どうか俺と握手して下さい!」

 

「あ、お前ずるいぞ!なら俺はアクア様だ!もっと芸を見せて下さい!!」

 

 そんな叫び声を聞きながら、俺はエリスに苦笑を返したのだが、…。

 

「俺も!エリス様、俺も握手を!」

 

「アクア様!もっと他の芸を!」

 

 ……あれ、なんか不味くないかこれ。

 

 それらの群衆を司会者が必死で止めるもら誰一人として聞き入れようとしなかった。

 

 ステージの上ではエリスは戸惑いながらも、律儀に握り返している。

 

 一方アクアは芸を求められたらやりたくないのか、代わりにアクアも握手で返していた。

 

「おいアイギス、協力しろ!あのままだとエリスが揉みくちゃにされる!エリス様をその身体で守れ!」

 

『おおおお、何その鎧冥利に尽きる展開!守る超守るよ!もう一人のアクアちゃんはどうするんだ!!』

 

「アイツはなんとかなるだろ、まずはエリスだ!おい急ぐぞ!ステージに駆け上がったらお前はエリス様を自分の中に匿え!そんで群衆の中を突破する!」

 

『えっ!?良いのかよエリスちゃんと一つになって!エ、エリスちゃんが俺の中に……ハァハァ……』

 

「お前が一番危なそうだな…まぁこの際それはどうでも良い!聖鎧アイギスの力、とくと見せてみろ!!」

 

 俺の言葉に応える様に、アイギスは混乱する群衆の中に突っ込んでいく。

 

『おうよ!真なるご主人を見つけた俺は、この会場に居る誰よりもホットだ!ほらどいたどいた!!』

 

「あづぁぁぁぁ!?なんだコイツ!」

 

「おい押すなお前の鎧の鉄板が熱されてちょっ、やめ、……あじゃぁぁぁ!!」

 

 あぁそうか、コイツ炎天下に照らされてたから熱いのか。

 

 熱されたアイギスから逃げ惑う群衆の間を抜けて、俺は全力でステージに駆け上がる。

 

「カ、和真!!……さん、どうしましょうこの騒ぎ…!」

 

 オロオロと聞いてくるエリス。

 

「アイギスがもうすぐこっちに来る!中に入って人気のない所まで逃げて下さい!……おいお前何時までエリスの手握ってんだ!そんなに握手したいなら俺が代わりにしてやるよ!」

 

「あぁっ!やめろ、やめてくれぇぇぇ!!」

 

 そんな事をしているとアイギスがステージへと登ってきた。

 

『お待たせしましたご主人様!どうか早く俺の中に!俺を装着する為のキーワードは『わたしアイギス君のお嫁さんになる!』です。さん、はい!』

 

「わ、わたしアイギス君の……!」

 

「騙されるなエリス!お前もお前で遊んでる場合じゃねーんだよ!」

 

『そんなにカリカリすんなってんだ、ったく。ではいきますよご主人様!合・体!』

 

 言葉と同時にカッと光輝いた。

 

 あまりの眩しさに俺含め会場中の観客が慌てて目を覆い、再び目を向けるよ……!

 

「ああああ暑い、暑いです和真…さん!このままじゃ私蒸し焼きになります!」

 

「我慢してくれ!良しアイギス、ゴー!」

 

『ラジャー!!』

 

 そう元気良く返事し逃げ始めるアイギス。

 

「エリス様が消えた!?」

 

「まさか天界に帰っちゃったの!?」

 

「いや、ステージに上がったあの二人が何かしたんだ!」

 

 俺とアイギスを指差しながらステージ上に這い上がってくる観客。

 

「お前らこれで頭を冷やせ!『クリエイト・ウォーター』!」

 

「ぐぁっ!?この野郎!」

 

「おいコイツやっちまえ!さっきエリス様にタメ口聞いてたぞ!!」

 

 さてどうしたものか…流石にアイギスに注意を引かせずに俺一人で相手は厳しいな……!

 

「なになに!何面白そうな事してんのよアンタ!!」

 

「あ、アクア!お前多分プリーストだろ!?お前の後輩のエリスを逃がしてやるから俺に強化魔法掛けてくれ!」

 

「えー?面倒くさいはねぇ…ま、私の我儘をエリスには聞いてもらったしねぇ。やるなら勝ちなさいよ!!」

 

「しゃあ!!掛かってこいやお前らぁぁぁぁぁ!!!」

 

 俺は拳を振り構える。

 

 祭りは喧嘩の華だろ!!

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