この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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恋と敵と紅と
この素晴らしいエリス様と祝福を!恋と敵と紅と


 

 エピローグ「年に一度の先輩vs後輩」

 

「和真ー!迎えに来ましたよー!」

 

 冷たい留置所で寝そべっていると、めぐみんの声が聞こえてきた。

 

「全く…私が言うのもなんですが、和真は一体何をしてるのですか。」

 

「ホントにどの口がな。………まぁ色々あったんだよ。」

 

「そうですか。ほらさっさと立って下さい、行きますよ。」

 

 あの後ミスコン会場で盛大に喧嘩した俺は、警察に捕縛され留置所に放り込まれていた。

 

 しばらくの間頭を冷やせと、祭りの最終日だと言うのに一人寂しくゴロゴロしていた所、めぐみんが迎えにきた訳なのだが……。

 

「………なぁめぐみん、こっちの方向は街の外だぞ?」

 

「えぇ知ってますよ?折角祭りを楽しんでいたと言うのに、カズマのせいでゆんゆんを置いて留置所に駆り出された訳ですからね。次いでにこのまま爆裂散歩に着いて来て貰おうかと。」

 

 こちらを恨めしそうにジト目で見てくるめぐみん。

 

 しょうがない、ここは素直にめぐみんに従っておこう……俺が悪いからな。

 

 そうして最近あまり行けてなかった爆裂散歩へと連れ出され、久々と言えど慣れた道をぐんぐん進んで行く。

 

 やがて目標の岩を見つけたのか、めぐみんが杖を構え詠唱を始める。

 

 その構えを見て、俺も衝撃に耐える準備だ。

 

「___『エクスプロージョン』ッッ!!」

 

 腹の底に響く轟音と共に、全てを蹂躙する爆風が荒れ狂った。

 

 アクセルから少し離れた平原に、それは見事なクレーターが完成する……これでまた土木作業のおっちゃん達の仕事が出来るだろう。

 

 ふらりと倒れためぐみんが尋ねてくる。

 

「今のは何点ですか?」

 

「………そうだな、破壊力だけ見れば九十点。……が、何時もの熱風感じられなかった。これは暑い夏の日というのを考慮した結果と見て良いんだな?」

 

 そう問いかけると、めぐみんはフッと口元に笑みを浮かべた。

 

 

「いかにも、今日は爆裂魔法により涼やかな風を演出してみました。熱くよどんだ空気を吹き飛ばす一陣の風……アクセルの夏の風物詩として名物にしても良いと思われます。」

 

 何を言ってるのか全く分からないが、何となく雰囲気だけは理解した。

 

「そうか___うん、今日の爆裂は九十七点!!」

 

「ありがとう御座います!精進します!!」

 

 ひときしりアホなやりとりをし終わり、俺は倒れているめぐみんを抱き起こす。

 

 相変わらずちっとも成長しない軽い身体をおんぶ。

 

「いつもすみませんねぇ。」

 

「そう思うなら、もっとレベル上げて倒れないぐらいに最大魔力をあげてくれ。」

 

「何言ってるんですか、私はスキルポイントを全て爆裂魔法の威力アップに注ぎ込んでると言ったではないですか。」

 

 そう言えばそうだった。

 

 つまりコイツはレベルが上がる度に最大魔力とともに、爆裂魔法の魔力消費量も比例して上がっていくのだ。

 

「まぁ良いではないですか。こうして仲間とのスキンシッフも必要ですよ?」

 

「安心しろ俺は仲間とのスキンシップは大事にしてるから。」

 

「セクハラはスキンシップとは言いませんよ?それに、最近はめっきり私に構ってくれる事も減りましたしね。」

 

 ………耳が痛い。

 

 実際めぐみんの言う通り、最近はアイリスに拉致られたり、ダクネスの結婚騒動だったり、クリスと義賊したりであまりめぐみんと関わっていなかった。

 

 まぁ女神様大感謝祭の時に二人で仮装して祭りを回ったが、すぐこの馬鹿が留置所にぶち込まれてたからな。

 

「に、しても。私がこんなにも仲間を大事にするだなんて……多分、紅魔の里に居た頃の自分に言っても信じてくれなかったでしょうね。」

 

 昔のめぐみん、ねぇ。

 

「……なぁ、昔のお前ってどんなのだったんだ?一体なんの影響で爆裂魔法なんて覚えたんだよ。」

 

「昔の私ですか、そうですねぇ…。」

 

 めぐみんは昔を思い出しているのか、しばらく無言になると。

 

「昔の私は誰とも群れず、天才である自分ならずっと一人で大丈夫だと思い込んでましたね。」

 

「お前は昔から厨二病だったんだな。」

 

 俺の感想に首に手を回していた手に力を込める。

 

 うげぇ、こいつ俺より力強いんだから手加減してほしいものだ。

 

 背負われためぐみんは呆れた様に溜め息をつき。

 

「まったく、余計な事は言わないで下さい。私が爆裂魔法を覚えた経緯を聞きたいのではないのですか?」

 

「すんません、て言うか。本来教えてくれる人が居ないと習得出来ない物なんだろ?俺が知ってる爆裂魔法が使える奴なんてウィズくらいだしなぁ。」

 

 めぐみんは昔を懐かしむ様に考え込むと。

 

「___ある人に、爆裂魔法を覚えた事を報告出来たら教えてあげます。」

 

 そう言って、楽しげに小さく笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一章 この何も無い日々に感謝を!」

 

 

 

「ただいまー!ねぇカズマ見てみて、さっきイグニスさんと会ってこんなの貰っちゃった!!」

 

 俺の向かいでは高級そうな酒瓶を見せびらかすクリスと、パーティーでもするのかカモネギを担いでるダクネス。

 

「お父様が領主の仕事の代わりをしてくれたからと、祭りを盛り上げたアドバイザーのカズマに渡してくれと。今日は皆で打ち上げでもしようじゃないか。」

 

「お、それは良いな!めぐみーん鍋出してくれ!!」

 

 俺は台所から他にも野菜などを取り出そうと席を立つと、酒瓶を机に置いたクリスが俺の前に立つ。

 

 笑ってない目で俺を見つめながら………。

 

「……ど、どうしたんだクリス?」

 

「いやぁ?なんでも、ただお疲れ様を言いたくてね。アドバイザーさん?」

 

 肩に手を置いて笑いかけてくるクリス。

 

 マズイ、水着云々が俺の仕業だとバレたみたいだ。

 

 このままでは女神様から天罰がくだってしまう、誰か!助けてぇぇぇ!!

 

「ちょ、カ、カズマー!思ったよりも鍋が重たいのですが!!」

 

「ッ!分かった!今いく!!」

 

 絶好のチャンスとばかりに俺はめぐみんの声がした方に走り去る。

 

 チラリと後ろを振り向くと、呆れた様子でやれやれとしているクリス。

 

 ……今日はクリスにジャンジャン酒を飲ませて、今日の記憶を忘れてもらうしかないようだ。

 

 そんな女神様大感謝も終わり、俺達はいつもの日常が待っていた。

 

 一時は女神アクアとエリスの二人が降臨した街だと話題になり、聖地巡礼ブームが起こったのだが今ではそう言った人達がちらほら見られる程度に落ち着いている。

 

 それに、エリスに関しては俺の我儘でなんどかこの街に降臨して人に見られてるしな………本人はすぐ傍に居るし。

 

 俺はめぐみんと鍋を運んでいると、めぐみんの胸元になにやら見かけない物が掛けられているのに気付く。

 

 なんだろアレ、なんか筒みたいなのになのが紐に通してあるな……。

 

「なんですかカズマ、さっきから私の胸をガン見して。こんな昼間っからいやらしい。」

 

「誰がお前の胸板に興味あるかよ。それよりその掛けてあるやつって…いってぇ!?ばかちゃんと持てよッ!!」

 

 怒った様子で鍋の持ち手を離しためぐみんのせいで、俺の脛が重い鍋により深刻なダメージを受ける。

 

 そのまま素知らぬフリしてリビングへと歩いていっためぐみんのせいで、俺は脛をヒリヒリもさせながら重い鍋を一人で持つハメになった。

 

 なんとか一人で鍋を運び終わると、それぞれ席について後は鍋に具材を入れるだけとなっていた。

 

「遅いですよカズマ、早く置いてください。」

 

 あ、あの野郎…!

 

 俺はめぐみんを睨みつつもなんとか机の上へと置き終わると、脛にヒールを掛け席につく。

 

 各々コップに酒を注ぎおわると、何食わぬ顔で酒を飲もうとしていためぐみんはダクネスに酒を没収されていた。

 

 これは俺の脛の罰だと思いながら、高級なだけあって美味い酒を朝まで飲み明かす事となった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一回!ドキドキ、格の違い王ーッ!!」

 

「「おぉッー!!」」

 

 そんな物騒な名前の選手権の宣誓をするクリスと、やる気バッチシなめぐみんとダクネス。

 

 俺達は今、依頼を受けた訳でもないのに森の中へと集まっている訳なのだが……これには深い訳がある。

 

 

 

 ___数十分前___

 

 

 

 何時もと変わらない風景、特に仕事もせず友達と酒を飲みただ駄弁っていた時。

 

『なぁ、そう言えばさ。お前らって誰が一番ptの中だと強いんだ?』

 

 そう疑問を零すのは金髪の男、ダスト。

 

 未だにリーンの件で傷付いただのなんだの言って酒を集ってくる駄目な奴なのだが、その余計な一言で更に俺の中のダストに対する駄目な人間レベルが上がってしまった。

 

 その言葉を聞いためぐみんはフンッと鼻で笑い飛ばすと、徐ろに立ち上がり高らかに宣言する。

 

『フッフッフ、愚問ですねダスト。何を当たり前の事を聞いてくるのですか………私ですよ、最強の爆裂魔法を使うこの私こそが!!このptで一番強いに決まっているではないですか!!』

 

 決めポーズを取り俺達を見下ろすめぐみん、コラ危ないから席の上に立つんじゃない。

 

 そんなめぐみんを見ていたダクネスがやれやれと首を振ると、めぐみんを諭すように肩に手を置く。

 

『落ち着けめぐみん席から降りろ。全く、このptで一番強いのは私に決まっているだろう。何せ、どんな攻撃を受け止めれる私の防御力を前に他の攻撃など通じる訳がないのだから!』

 

 普段は常識人だと思っていたのを撤回しなければならないらしい、あのダクネスすらもそんな馬鹿な事を言い始める。

 

 めぐみんとダクネスがお互いに睨み合っていると、そんな二人の間に入って仲裁を取ろうとクリスも立ち上がり。

 

『まぁまぁ二人とも落ち着いて。結局二人とも動けなかったら意味ないでしょ?なら、そんな二人の動きを止めれるこの私が一番強いんじゃないかな!!』

 

 無い胸を張りクリスまでもが対立してしまう。

 

 三人ともバチバチと睨みを利かせると、埒が明かないとばかりに俺の方に振り返る。

 

 これは………俺に判定を委ねるつもりだろうか。

 

 俺は面倒臭い事にしてくれたなとばかりにダストを睨むと、立ち上がり宣言する。

 

『いや、俺だろ。』

 

 

 

 あの時の俺をぶん殴ってやりたい気分だ。

 

 結局誰も譲らない事態になり、なら誰が一番ゴブリンを多く倒せるかという内容で勝負を決めるらしい。

 

 今日はシュワシュワを飲んでサキュバス店にでも行って、夜は気持ち良く寝る予定だったのになぁ…。

 

 だがやはり男はプライドありきの生き物だと俺は思っている。

 

 ただでさえ最弱職だと言うのに、このptでも最弱だなんて俺が居る意味が無いではないか。

 

 ………まぁ、この三人なら俺を必要としないなんて言わないだろう、過去にもそんな事を言ってくれたしな。

 

 だがこのptで一番強くありたいのも事実!相手がアークウィザードだろうとクルセイダーだろうと女神だろうと関係ねぇ、俺が一番だ!!

 

「それじゃあ、制限時間は夕焼けが見えるまで!相手の妨害は殺害以外ならアリ!!ではでは、よーいスタート!!」

 

 そう言ってクリスが宣言すると同時に皆違う方向に走り出す、どんだけガチなんだよアイツら……そんな事言って、俺も本気で勝ちにいってるんですけどね。

 

 潜伏スキルを徐ろに発動し、自分でも悪い顔してるだろうなぁとニヤケが収まらないままダクネスが走っていった方向を追い掛ける。

 

 アイツの事だ、どうせゴブリンに攻撃が当たらず一方的に殴られているだけだろう……そこを俺の弓でズドンだ。

 

 所謂漁夫の利ってやつだが、別にズルしている訳でもないし咎められる理由もない。

 

 暫く走っていると案の定まぁまぁの数のゴブリン相手に、掛け声は一丁前の大剣を空振りボコられているダクネスを見つける。

 

「はぁ…はぁ………今更ながら、このルールは私はとても不利ではないか…っ!?」

 

 そんな今更気付いたのか、めげずに剣を振るうダクネス。

 

 俺はダクネスの背後から飛びかかろうとしているゴブリンに狙いを定め、何時もより声を少量にして弓を引く。

 

「ンッ狙撃…!」

 

 見事的中したのを確認すると、直ぐ様別のゴブリンへと標的を変える。

 

 思ったよりも数が多いのかゴブリンに集中しているダクネスは俺が倒しているのに気付かす、迫りくるゴブリンへと剣を振っていた。

 

 こうしてダクネス周りに居るゴブリンを粗方倒し終わると、流石に気付かれない方が難しい程の矢とゴブリンの死体が転がっていた。

 

 なるべくダクネスの視界外で倒しているつもりではあるが、そろそろあれだけいたゴブリンの数が減っている事に気づくだろう。

 

 そう思っていた矢先、一体のゴブリンの死体に気付いたのか辺りを見渡し始めるダクネス。

 

「……クッ!何処だカズマ出て来い!!私の邪魔をすると言うのならまずは私が相手だッ!!」

 

 そんな叫び声が遠くなって行くのを感じながら、俺はクリスの方へと走り出す。

 

 うーん七匹って所か、良くもまぁこれだけ倒したのに気付かない物だ全く。

 

 さて今回一番厄介だと思っているクリスだが、アイツはどれだけ倒しているだろうか。

 

 ダクネスは言わずもがな、めぐみんはどれだけ頑張っても一発しか魔法が撃てない関係上、たかが十匹そこらに撃つのはあまりにも勿体ない。

 

 かと言って一匹一匹丁寧に杖で叩いても時間がかかるだけ、つまりどうあがいてもあの二人に勝ち目など最初からない訳だ。

 

 しかしクリスはどうか。

 

 盗賊職としての関係上大型モンスターには弱い反面、小型モンスターに関してはめっぽう強い。

 

 動きを封じるバインドに俺が使っている潜伏スキル、おまけに女神様印のダガーときた。

 

 この勝負において強く出れる要素全てを持ち合わせたクリスは強敵に違いない、劣化版の俺が言うのだから間違いないだろう。

 

 さてそんな事を言っていると見えて来たのはゴブリンの死体、それもクリスが走っていった方向に続く様に。

 

 ………不味いな、かなりの数をもう倒し終わっている様子。

 

 段々と新鮮になっていく死体の道………と、俺はとある物を見つけ急ブレーキを掛ける。

 

「ッ!っぶねぇ!?トリップワイヤーじゃねぇか…!!」

 

 そう、下の方に一本だけ張っていたトリップワイヤーを見つけたのだ。

 

 恐らくクリスの物だろう、そう思ったのも束の間後ろから何か飛んでくるのを感じる。

 

「っ!?な、なんだ…?」

 

 慌ててしゃがんだのは正解だった様でそれはバインドに使われるロープだった。

 

 俺はそのロープが飛んできた方向を見ると、ザッザッと足音が近付いてくる。

 

「あちゃー、やっぱりカズマは運が良いねー!」

 

 笑いながら頬を掻き歩み寄ってくるクリス。

 

「幸運の女神様から褒めて頂くのは光栄だな。」

 

「やめてよ、今は女神じゃなくてクリスなんだから。」

 

「そりゃそりゃすいませんでし……と見せかけて『スティール』ッ!!」

 

「ひゃっ!?ちょ、ちょっと!今はお互い挑発し合う場面じゃん!!」

 

 何処のお約束だろうか、俺は手に入れた物を手を開き確認する。

 

「そんなん知るかよ!って、なんだただのパッドか…。」

 

「あ、こら捨てないでよ!?女神を侮辱したカズマには天罰が下るよ!!」

 

「おいおいさっきはクリスって言った癖に今度は女神かよ。」

 

 そんな会話を交わし互いに構えをとる。

 

「まさかこんな形でカズマと敵対するとはね……私、手は抜かないよ?」

 

「?じゃあ足で抜いてくれるんで___」

 

「何の話かなッ!?」

 

「うわ!ちょっ!?」

 

 あっぶねぇ!あの野郎殺害は無しって言ってた癖に思いっ切りダガーで切りかかってきやがった!!

 

 全くクリスの下に関する対応には少々困るな、年頃の娘だってのに何時までも恥ずかしがってちゃおこちゃま扱いされるってのに。

 

 俺は右手をクリスの目の前に構えスティールを発動させようと___

 

「!させない…!!」

 

 そう言って左手で俺の右手を塞いでくる、そう所謂恋人繋ぎってやつだ。

 

 恋人がいない=年齢の俺にはあまりにも刺激が強すぎる…!なんとか動揺を悟られない様にしなければ…。

 

「お、おいおいクリス…随分と大胆なんだな?」

 

「口では強気みたいだけど内心恥ずかしがってるみたいだね?」

 

 速攻で見破られた俺を嘲笑うかの様にニヤニヤ悪い顔で俺を見るクリス。

 

「なーに照れてんのさカズマ。私達は一緒のお風呂に入った仲で……しょッ!」

 

 なんていつの日かの出来事を思い出させてくるクリスに足を払われ、そのまま投げられる体勢へと移り変わる。

 

 グルグルと目まぐるしい視界の中、俺は青空を見あげながら地面へと叩きつけられていた。

 

「よいしょっと!ふー、カズマってば男の子なのに案外軽いんだね?」

 

「………」

 

「あれ?カズマー?」

 

 薄目でクリスが俺の顔の前で手をブンブンと振っているのを確認。

 

 俺は組み伏せられて使えない右手ではなく、左手に魔力を込める。

 

「あれー?おっかしぃな。………もしかして、打ち所が悪かったり…?」

 

 ゆっくりと俺の右腕から離れるクリス……今だ!

 

「油断大敵!『フラッシュ』ッ!!」

 

「なッ!ひ、卑怯者ー!!」

 

 咄嗟に顔の前を腕で覆ったクリスだったが、やはり少し遅かった様で目がやられている様子。

 

 後退りするクリスに近付き絶対に外してたまるかとロープを構える。

 

「『バインド』ッ!」

 

「キャッ!!」

 

 両足にロープが巻き付くと急に歩けなくなったクリスがよろけてコケると、覆っていた腕を前に出して地面につこうとする。

 

 俺はもう一度ロープを構え今度は両腕事上半身を固定する。

 

「うぐ…!く、くるしぃ!!」

 

「胸に仕込んでるもう一つのブツも取っちまえば多少は楽になるんじゃねーか?」

 

「キ、キミって奴は!キミって奴はッ!!」

 

 悔しさ半分恨み半分の顔で俺を見上げるクリス、フッ……俺の勝ちだ。

 

 俺はバニル顔負けの勝ち誇った笑い声を上げながらその場を離れゴブリンを探しに行く事にした。

 

 正直クリスをあのまま放っておく事は多少抵抗があるが、まぁなんとかなるだろう。

 

 腐っても女神なんだ、その気になればロープの一つや二つその場で外すことなど容易い事………と思う。

 

 しかしここら辺りはクリスが狩り尽くしてしまったのだろうか、ゴブリンが全くと言って良い程見当たらない。

 

 マズイな…幾らクリスを拘束出来たからと言ってゴブリンの討伐数で負けてちゃ意味がない、どうしたものか。

 

「………ん?あれは……。」

 

 木に隠れ周りをチラチラ見渡しているめぐみんを発見。

 

 かなり息を切らしている様子だ、ゴブリンから隠れているのだろうか。

 

 俺はヴァーサタイルエンターテイナーを発動し、忍び足でめぐみんの背後に近付いていく。

 

「___ぁ…はぁ…。クッ、まさかこの私がゴブリン相手に手こずるなんて…ッ!」

 

「ギーッ!!」

 

「なッ!?いつの間に……!って、何をしてるんですかカズマ…。」

 

「いやなに、脅かしてみたらどんな反応をするのかと。」

 

「そうですか。全く無駄に上手い物真似はやめてください、ビックリするではありませんか。」

 

 そう言って胸を撫で下ろすめぐみん、まぁビックリしたのなら目的は達成だ………って、そういえば。

 

「なぁめぐみん、その胸に掛けてるヤツってなんなんだ?」

 

「あぁ、これですか?」

 

 持ち上げ見せてくるそれは………何やら御守り?みたいな物だった。

 

「これはですね、紅魔の里に伝わる伝統ある魔術的な御守りです。守りたい人や自分の髪の毛を一本入れて作るとても神聖な物なんですよ?」

 

 髪の毛ねぇー……なんだか少し悍ましい様な。

 

「………呪いとかないよな?」

 

「失礼な!寧ろこの御守りのお陰で魔王からの攻撃を防げたなんて逸話があるくらいですよ?」

 

「そ、そうか。ならめぐみんは誰の髪の毛を入れているんだ?」

 

「?そんなの私と貴方達に決まってるではないですか。」

 

「え、いつの間に…。」

 

「寝ている時にプチッと頂きました。」

 

 そんなカミングアウトをされ、寝顔を見られていると少し恥ずかしい思いが込み上げてくるのと同時に、もう一つ聞こうと思っていた事を思い出す。

 

「あ、そういえば何をあんなにゴブリンから隠れていたんだ?めぐみんの力なら正直杖で一叩きだろ。」

 

「か弱い乙女になんて事を言うんですか……。ただ単純に、思ったよりも数が多かったのですよ。」

 

 か弱い乙女…?いやそれはどうでも良い、何やらめぐみんの方にゴブリンが密集しているみたいだ。

 

「ならさっさと爆裂魔法を撃って帰るか、そろそろ飽きてきた。」

 

 クリスを拘束した辺りからもう満足感で勝負の事などあんまり気にしていなかった、それに腹も空いてきたし。

 

「それもそうですね。ギルドの依頼も受けていないのにこんな事しても意味がありませんし。」

 

 俺とめぐみんは強さよりも初歩的な事に気付き、二人を見つけさっさと撤収する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局あの後拘束され身動きが取れず、いつゴブリンに襲われるか分からないまま放置され泣いていたクリスと攻撃が当たらずゴブリンにボコボコにされ顔を赤らめていたダクネスの二人を回収し、ゴブリンの巣目掛けて爆裂魔法を放ち帰ったのだが。

 

 昨日のクリスとの戦いが久々の運動だったせいで筋肉痛で絶賛テーブルに突っ伏している、後投げられた時の背中の痛み。

 

 そんな俺の様子をケラケラと笑う元凶のダストと酒を飲んでいると、読めたのかとビックリした新聞を見ていたダストがギョッとする。

 

「………どうしたんだよダスト。」

 

「ん?いやなに、これ見てくれよ。」

 

 そう言ってダストが渡していた新聞にはデカデカと真ん中に記事が載っけられていた。

 

 そこに書いてあったのは___

 

「なになに、『邪神・ウォルバク襲来ッ!!王都付近の砦が崩壊寸前ッ!?』………って王都ッ!?」

 

 急に立ち上がって大きな声を上げる俺に何だなんだと辺りがザワザワするが、そんなの関係ない。

 

 マズイ…!このままだと俺の可愛い妹に危害が及ぶではないか!!

 

「ちょ、ちょっとどうしたのカズマ?」

 

 ついさっきまで俺に放置された事を恨み、口を聞いてくれなかったクリスが心配そうに後ろから声を掛けてくる。

 

「どうしたもこうしたもあるか!おいクリス、めぐみんとダクネスを呼びに行くぞ!!直ぐ様準備してここに向かうぞ!!」

 

 そう言って新聞に載っている崩壊寸前の王都付近の砦を指で指すと、少し難しそうな顔をするクリス。

 

「………カズマ。心配する気持ちも分かるけどそんなに直ぐ行く事は多分無理じゃないかな。ここから馬車で王都に向かうとなると………最低でも1週間は待たないと。ただでさえ危険な所に行くんだから馬車そのものも少ないと思うし……。」

 

「い、1週間…?そんなに待ってられるか…!!」

 

「落ち着いてよ!!………てか、アイリスちゃんの事は心配するのに。私の事は心配しないんだ?」

 

 なんて昨日の恨み言をジト目で言ってくるクリスを無視し、俺は頭を抱える。

 

 あークソ!どうしたら良いんだ…!!

 

「あ、あの!」

 

 そうやって悩んでいると、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

 俺は顔を上げ声がした方を見上げると、そこにはゆんゆんが手を上げて立っていた。

 

 テーブルには一人でしていたのだろうか、トランプタワーの残骸が崩れ落ちていた。

 

「わ、私。テレポート先に王都を設定しているので、良ければ連れて行きましょうか…?」

 

 そんな女神からの救済の声が俺の耳に届く。

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