この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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この素晴らしいエリス様と祝福を!恋と敵と紅と 2

 

 

 

「第二章 この鉄壁慣れに山脈を!」

 

 

 

 あの後めぐみんとダクネスをギルドに呼び出し、作戦会議を行っていたのだが………。

 

「………なぁ、めぐみんとゆんゆんはさっきから何を隠してるんだ?」

 

 そんな俺の言葉にビクッと反応しソッポを向くめぐみん、とは反対にその場でオロオロするゆんゆん。

 

 先程から邪神ウォルバクの名を出すたびに微かに動揺が見られる二人、ゆんゆんは分からないがめぐみんは想定外の事情には動揺が隠せない。

 

 やがてクリスやダクネスもめぐみんが喋るまで何も話さないとばかりに、俺達三人はソッポを向いていためぐみんを見つめる。

 

 やがて観念したのか、おずおずと振り返りながら机の下からちょむすけを取り出す。

 

「カズマ、クリス、ダクネス………いや、特にクリスには落ち着いて聞いて欲しいのですが。」

 

 他言無用だと言わんばかりに手招きし少量の声量で話し始めるめぐみん。

 

 まぁここはギルドだからあまり意味はないと思うが。

 

 ゴクリと唾を飲み込み一拍置いた後、めぐみんはゆっくりと口を開く。

 

「___実は、このちょむすけこそがその邪神ウォルバクだと思うのです。」

 

 そんな事を大真面目に話し始めた。

 

「………い、いやいやいやめぐみん。急に何を言い出したの?」

 

「そ、そうだぞめぐみん。それにもしそれが本当なのだとしたら、この前その邪神とやらがひよこに追いかけられ逃げ回っているのを見たばかりだ。」

 

 そんなクリスの困惑とダクネスの情けない話により否定されるちょむすけ邪神ウォルバク説、しかしそんな空気の中さっきから一言も喋らなかったゆんゆん間に入る。

 

「あ、あの…!確かにめぐみんはおかしな事ばかりに言いますが。その事は強ち間違っていない……かも知れない…!です。」

 

 ゆんゆんはこういう所で嘘はつかない筈だ、紅魔族屈指の常識人であるゆんゆんですらその説を肯定するのだから何か理由があるのだろう。

 

 おかしな事とは何だと暴れるめぐみんを取り押させ、言葉の続きを待つことにした。

 

「その、邪神ウォルバクなんですけど……実を言うと元は私達の里に封印されていたんです。」

 

 ………ん?

 

「封印されていたんですが、ある日何かの弾みでその封印が解けてしまいました。それでめぐみんがその邪神を勝手に使い魔にしたのですが……。」

 

「つまり、コイツは本当に邪神ウォルバクって事か?」

 

 そう言って俺はめぐみんからちょむすけを取り上げ抱え上げる、当の本人は可愛らしく鳴いて俺に胸に頭を擦り付けてくるが。

 

「うーん…なんて言えば良いでしょうか、そうとも言えるし違うとも言えるし……。」

 

 歯切れの悪いゆんゆんが頭を悩ませていると、溜め息をついためぐみんが暴れるのを止め席へと落ち着く。

 

「分かりました。それでは紅魔の里に伝わる邪神ウォルバクの歴史を一から話しましょう、そうした方が理解出来ると思いますので。」

 

 コホンと一つ咳をつき、ちょむすけを撫でながら話し始める。

 

「まず、ウォルバクとは怠惰と暴虐を司る邪神なのだそうです。」

 

「そりゃまた物騒だな、なんでそんなもんが紅魔の里に?」

 

「そんなのは決まっているでしょう。邪神が封印されている地は格好良い物ですからね、何処かの誰かが封印した邪神を拉致し里の隅っこに再封印したのですよ。」

 

 やはり碌でも無い連中だ、流石魔王軍すらも恐れて近寄らないと言われる里なだけはあるな。

 

「ま、まぁやってしまった物はしょうがない。しかしその邪神ウォルバクの封印を解いた者は誰なんだ?」

 

「一度目はうっかり私が、二度目は私の妹こめっこが解きました。」

 

 そんな言葉にゆんゆんが凄い勢いでめぐみんに掴みかかる。

 

「ちょっとどういう事よ!!私初めて聞いたわよッ!?」

 

「や、やめ!ちょ、やめてください!仕方ないでしょう私やこめっこは娯楽が無かったのですから、多少は封印の一つや二つ解いてしまいますよ!!」

 

「なんで友達の私に頼らなかったのよおおおおお!!」

 

 何処にキレているのだとツッコミたくなる気持ちは抑えて、俺はギルドから嘘を付くとチンチンなる魔道具を借りに行っていたダクネスから魔道具を受け取る。

 

 もし万が一億が一嘘でもついてようもんなら、めぐみんはまた冷たい床の上で今日も寝る事になるからな、一応の準備だ。

 

「良し、クリスは巨乳である!」

 

 ___チリーン。

 

 正常だな。

 

 今度はクリスが俺に掴みかかって来たが今はそんな事はどうでも良い。

 

「じゃあめぐみん、今度はこの魔道具の前でさっき説明した事を復唱してくれ。」

 

「え、えーおほん。ちょむすけは邪神ウォルバクであり、邪神ウォルバクは拉致した後私と妹のこめっこが封印を解き放ちました。」

 

 そう言って、魔道具が鳴らないのを確認すると満足に頷いた。

 

「じゃあ続きな、その封印を解かれた邪神ってのは本来このちょむすけな訳だが……じゃあこのウォルバクを名乗っている奴はなんなんだ?」

 

「そんなの知る筈がないでしょう。」

 

 と一瞥。

 

 ………真相は自分の目でご確認をって事か。

 

 結局あまり手掛かりが掴めない中、俺は少し気になった事をクリスに確認してみる事に。

 

「なぁクリス、クリスは俺の事好きか?」

 

「嫌い。」

 

 ___何も鳴らない。

 

 もう貧乳ネタでイジるのはやめよう、そう心に誓った一日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠征の為の準備も込みで明日出発という事にした俺達は、各々準備を進めていた。

 

 屋敷の広間のソファーで鍛冶スキルをしてある物を作っていると、ダクネスと未だ不機嫌のクリスが隣で興味津々とばかりに作業を見ていた。

 

 すると俺が持ったポーションに興味を持ったのかダクネスが指を指しながら尋ねてくる。

 

「それは何なのだカズマ?」

 

「ん?これか?これは衝撃を与えると爆発するポーション。」

 

 そんな俺の言葉に慌てて立ち上がり一歩離れるダクネス。

 

「な、何故そんな物騒な物を…?」

 

「いやさ、ダクネスに言ったかどうか忘れたけど俺今ダイナマイトを作ってるんだよ。それにコイツが使えそうだからさ。」

 

「ダ、ダイナマイト?」

 

 首を傾げる聞いた事のないと言わんばかりに訝しんでくる。

 

 するとクリスが一つポーションを拾い上げ、とても女神とは思えない表情でダクネスの方へと向き直る。

 

「見せてあげるよ、いくよ?『ティン___』……って、なにカズマ。急に情熱的に手首を掴んできて、私はカズマの好きな巨乳は持ってないよ?」

 

「分かった!悪かった、もう二度とイジらないから…!!心臓に悪い事はやめてくれ…!!」

 

 クッ…!この女神思ったよりも打たれ弱いみたいだ。

 

 しかし心臓の鼓動が止まらない、使えないとは分かっていても使用用途を知っている俺からするとたまったもんじゃない。

 

 クリスは少し俯くと、肩を震わせながら目に涙を浮かべ笑う。

 

「アハハハ!!カズマ、気付いてないの?それ爆発するポーションじゃなくて、ただのジャイアントトードの血が入った瓶だよ?」

 

 そう言って俺に投げ渡してくるクリス。

 

 俺は慌てて受け取ると、近くにある爆発するポーションと見比べる………なんか、ちょっとだけジャイアントトードの血の方がドス黒いな……。

 

 あの性悪悪魔、嫌がらせの次は詐欺まで始めやがったのか。

 

 爆発するポーションから少し離れた所に置き、今度店に行って文句を言いにいってやろうと考えてる………と、未だクスクスと笑ってるクリスにまた聞きたかった事を聞くことに。

 

 て言うかクリスって結構ゲラなんだな、クリスとしては納得だがエリスとして考えれば少し不思議だ。

 

「___なぁ、クリス…つか、エリスとしてはウォルバクって何か思うとこあるのか?邪神って言う位だし。」

 

 すると、先程まで笑っていたクリスがピタリと止まり真剣な表情に移り変わる。

 

「そうだね……ちょっと長い話になるけど、良いかな?」

 

 そう言って俺とダクネスを見てくる。

 

 何時もとは違った、クリスではいるがエリスとしての真剣な表情とも違った少し不思議な表情に俺とダクネスは狼狽えつつ頷く。

 

「まず、あのウォルバクが邪神と呼ばれる様になったのは先輩………いや、アクシズ教徒が関係しているの。」

 

 あのアクシズ教徒が……信じられないな。

 

 ダクネスも同じ気持ちなのか、少し困った顔をして続きを待つ。

 

「魔王軍だろうと来る者拒まず。自由を象徴する……って言うのが今のアクシズ教徒なの。でもあくまでそれは今は、って話なだけで昔はかなり違った考えの宗教だったの。」

 

 少し悲しい事を思い出すかの様な表情に変わり、ポツリポツリと語りだす。

 

「来る者拒まず、これは変わってないんだけど………魔王軍は何が何でも徹底排除、まぁそれ自体は敵対してるんだし特段可笑しい事でもないよね。でも今と決定的に違うのは、街行く人々に強制的に宗教に入る様に押し付けていたの。」

 

 そんな衝撃的な事を告げられた。

 

 俺の知っているアクシズ教徒とは全く真逆の、言っちゃ悪いが邪教の様な印象を受ける。

 

「当時のアクア先輩は今よりも自由人で、やっぱりその考えも当時のアクア先輩からの考えを受けての物だったからアクア先輩自体もあまり問題視してなかったの。仕事は出来るから上も強く言えない状態………そんな時にアクア先輩に物申したのが、ウォルバクだったの。」

 

 ………ん?てことは…。

 

「つまり、ウォルバクは元々クリスと同じ女神として仕事していたのか?」

 

 ダクネスの言葉にコクリと頷くクリスに俺は衝撃を受ける。

 

 何てこった、つまり今ウォルバクが世界の敵として立ち塞がっている元々の原因ってのは……。

 

「そこでウォルバク、元々は先輩だからウォルバク先輩かな?アクア先輩とウォルバク先輩はかなり言い争いになっちゃったんだけど………お互い譲らずにケンカは長続き、そんな状態に痺れを切らしたのかアクア先輩が女神としてやっちゃいけない一線を越えちゃったんだよね…。」

 

 ゴクリと唾を飲み込み、部屋に緊張が走る。

 

「自身の教徒に他教徒、つまりウォルバク先輩の信者を襲う様に命令しちゃったの。」

 

「は?じゃあアイツとんでもない奴じゃねーか!」

 

「違うの!いや、まぁ違いはしないんだけど……私達女神の信者ってやっぱり私達の普段の性格から影響されちゃうから、その時やっぱりウォルバク先輩に色々言われて恨みがあったのが無意識に流れちゃったんだと思う。勿論あっちゃいけない事だし悪くないとは言わないけど、その後かなり反省して今のアクシズ教が完成したんだよ。」

 

 なんだかとんでもない事が露わになってきたな、そう考えているとダクネスが慎重な面持ちで口を開く。

 

「その後、ウォルバクはどうなったのだ?」

 

「………急激に信者が減っていって、最終的には信者その者が居なくなっちゃったの。それだけ当時のアクア先輩の恨みの力は凄まじかった訳だけど、逆恨みは良い所だと思うよ。そうして信者が居なくなったウォルバク先輩なんだけど、普通は女神ってのは信者が居る事によって産まれ生存出来るんだけど………流石にウォルバク先輩が可哀想だと上が神の子として、力もあるけど女神としての力に少し足りない状態でこの世界に逃がす事によって姿形を保つ事に成功したの。」

 

 そうして話し終えたとばかりに暫しの沈黙がこの部屋に流れる。

 

 そんな事があったのか……正直、今のアクシズ教徒やアクアを見てそんな一面があったのかと驚く反面、しっかりと反省している所が教徒の立ち振舞を見て分かる。

 

 偶に煽ってきたりしていたが、こうして話を知ってから見るとその名残が残っていた………と言うより元がそういう性格だったのだろう。

 

「___それで、その後女神アクアはどうなったのですか?」

 

 いつの間に居たのか、クリスの後ろから難しそうな表情のめぐみんが立っていた。

 

「え?えーとね、元々担当していた日本から離れて暫くの間独房に監禁。変わりに私が日本を担当してたんだけど……。」

 

 そう言ってチラリと俺を見てくるクリス、何やら気不味そうな表情だが俺はそれを聞いてもクリスを連れてきた事は間違ってないと思います!!

 

 そんな俺の表現に苦笑しながら呆れた様子だったが、何処か安心した様子でもあった。

 

 何だろう気にしていると思っているのだろうか?寧ろその話を聞いて逆に連れてきてしまって良かったのだろうかと思ったが、連れて行く時天使が言っていた言葉を思い出して俺は気にしない方向に。

 

 それにそんな話を聞いて俺はふと思う、もしアクアが日本の担当をしていたとして…俺は多分アクアに何か言われて嫌がらせでアクアをこの世界に連れて来たと思うな、つまり俺がこの世界に女神を連れて来るという自体はアクアだろうとエリスだろうと確定事項だったのだ、やっぱり気にする必要など微塵もないな。

 

「その後先輩を追放するべきだって意見も出たんだけど、仕事だけは出来るって自分で言ってた位だし、贖罪をさせて欲しいってこっちの世界の担当になったのが経緯って訳。まぁ本当はウォルバク先輩を上から支援するつもりだったんだろうけど……あろう事か敵側に回っちゃったんだけどね。」

 

 頬をポリポリとかきおちゃらけてみるクリスだったが、俺達は笑える状況ではなかった。

 

 そんな相手を俺達は明日から倒しに行くのかと、それを知ってもし倒せる状況でも倒せるのかと、そんな困惑が頭に渦巻いていた。

 

 皆が沈黙する中めぐみんが覚悟を決めた表情で俺達を見渡す。

 

「あの!提案があるのですが___」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、それでは皆さん準備はい、良いですか!?」

 

 少し上擦った声で手を構えるゆんゆんに、めぐみんが呆れながら溜め息をつく。

 

「はぁ…ゆんゆん、良い加減人見知りを直しませんか?このままでは恋人はおろか友人の一人も出来ませんよ全く…。」

 

「そ、そんな事言ってもー…!!」

 

「ほらほら!!二人共イチャイチャしないで、ゆんゆんちゃんやっちゃって!」

 

「は、はい!!『テレポート』ッ!!」

 

 こうして何度目が見た事のある眩い光に目を包まれ、腕で遮りどんどんと光が開けて行く………あぁ見た事のある光景だ。

 

 王都の正門前に付くと、テレポートで現れる人間は珍しくないのか正門前を守る兵士達はチラリと俺達を見ると直ぐ様前を見る。

 

 御立派にアイリスを守っていらっしゃる様子だ、その調子で俺の妹に傷一つ付けないで守っていただきたい。

 

 俺は一人の兵士に近付き口を開く。

 

「お仕事御苦労様です。実は最前線の砦の援軍に来たんですが、砦までの地図とかありますかね?」

 

「ん?あぁ勿論あるが………見た所あまり対した装備はしてないみたいだが、本当に援軍に行くのか?」

 

 少し怪しそうな顔でジロリと俺を一瞥するその男、ケッ!言っとけ言っとけ分かる奴に分かれば良いんだよ。

 

 そんな時男の後ろからまた一人兵士が此方に走ってきて何やら耳打ちをしている。

 

 勿論スキルで聞かせてもらうが。

 

『馬鹿野郎後ろを見てみろ!アレはダスティネス様のお仲間だぞ!?』

 

『えッ!?や、やべぇ俺とんでもなく失礼な事言ったぞ!?』

 

『しょうがないから今からでも良い顔しとけ!!ほら地図渡せ、ついでにこのモンスター分析図も渡しとけ…!!』

 

「あーおほん、先程は失礼な言いぐさ大変失礼しました。此方地図とモンスター分析図を持っていって下さい!」

 

「おぉありがとう、いやー大変素晴らしい対応に俺は感激したわ!!この事はララティーナに伝えさせてもらいます!!」

 

 俺の言葉に絶望した兵士、フンッざまぁみろ。

 

 まぁ安心してくれてダクネスには伝えねーよ、俺なりの仕返しだと思って反省してくれ。

 

 地図を手にした俺は待っている皆の元へ戻る。

 

 王都から砦までは順調に行けば歩いて二日程の距離らしいが、中継地点になる場所に宿泊施設があるらしい。

 

 最前線なんて危険な場所に向かう場所などなく、俺達は徒歩で砦へと進んでいた。

 

「ねぇゆんゆんちゃんって上級魔法使えるんだよね?いやー頼りになるなー!!」

 

「そ、そんな私なんてまだまだで………寧ろ皆さんの活躍を聞いて、私も最も頑張らないとなぁ…って。」

 

「フッ…謙遜はよしてくれ、ゆんゆん程の力を持った魔法使いなんてそうそう見かけない物だぞ?」

 

 ダクネスとクリスに挟まれ持ちはやされているゆんゆんを、何処か面白くなさそうな表情で見ているめぐみんに近付く。

 

「おいおい嫉妬してんのか?安心しろって、俺の見立てではゆんゆんは相当お前の事が好きだぞ。」

 

「何がですかッ!!別に、里に居た頃となんら変わりないライバルを見下ろしているだけですよ。」

 

 そう言ってソッポを向くめぐみん、に対して少し照れつつもニヘラと緩んだ笑顔で二人と話すゆんゆん。

 

 ………しかし二人が同年代とはとても信じ難いな、特に胸元あたり……ほらクリスも恨めしそうな目でゆんゆんの胸元を見ている。

 

 当の本人は気付いていないのか笑顔で対応しているが、ダクネスはチラリとクリスを見て苦笑している様だ。

 

 と、そんな時だった。

 

「待ちな、そこの冒険者!こここら先を通るには金と荷物を置いてきな!!」

 

 そんな月並みなセリフを吐きながら俺達の前に立ち塞がったのは武装した男達の集団。

 

 そんなコッテコテの山賊が居たとは、何処か驚きと初めて見れた嬉しさ半分の気持ちで俺は山賊を見ていると、ダクネスがバッと前に出る。

 

 こ、こいつ…!!

 

「お前達の様な風呂に入らず欲望にギラギラと目を輝かせている男臭い奴らに、私の仲間に手を出させる訳にはいかない!さぁ私を変わりに連れて行け!さぁ!!さぁッ!!!」

 

 知ってた。

 

 ズイズイと山賊達に近付いていくダクネスに押され、逆に山賊がジリジリと後ろに引いていくという何とも奇妙な光景へと変貌していた。

 

 俺がダクネスの背中を呆れて見ていると、クリスも呆れながら俺の肩にポンッと手を置いてくる。

 

「カズマ、今の内に近付いてやっちゃお?」

 

 その言葉に俺は意図を理解し潜伏を発動してチュンチュン丸を構える。

 

「___チッ!なんだこの女…!!おいお前らやっちま……え…?」

 

 そうして後ろを見てくる盗賊の頭だったが、残念ながら後ろのお仲間は俺とクリスで制圧済み。

 

 俺が口を塞ぎながらドレインタッチをしてクリスがバインドで身柄を拘束する、義賊によって取得してしまった技術をフルに活かした戦法だ。

 

 最後の一人も拘束し終わりドサッと音を立てその場に倒れる。

 

 そんな光景をワナワナと見る頭の頭に杖を突き立てるゆんゆん、ゆっくりと震えながら振り返った頭にゆんゆんが告げる。

 

「ど、どうしますか…?」

 

 日本産まれの俺も顔負けの綺麗な土下座を見せてくれる盗賊に、ダクネスは何処か寂しそうな表情で盗賊を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辺りはすっかり暗くなり、日も落ちていたが中継地点のものと思われる灯りを見つけた。

 

 宿泊施設があるとは聞いていたが、頑丈な壁で囲った屋敷並みの大きさの建物がそこにはあった。

 

 俺は一息付き男性と書かれたタイルがある部屋へと進んで行く。

 

 ここは男性と女性……後混浴と書かれた三つに別れているのだが、アルカンレティアには敵わないがここもかなり有名な温泉でもある。

 

 勿論アイツラは全員女湯へと入っていったのだ、俺も男湯へと入るのが定石だろう。

 

 それに最近はアイツラと何処か良い雰囲気なんだ………ここで一時の夢を見に行くか、アイツラの好感度を優先するか……。

 

 そんな物一時の夢に決まっている!!アイツラが女湯に入って行ったのを確認し俺は男湯からダッシュで混浴と書かれた方へと走る。

 

 ワクワクしながら服を脱いでいると、全身が映った鏡なあって………ふむ、我ながら良い身体してるんじゃないのか?こっちに来てから嫌でも運動をしているからな、中に居るであろう美女も俺に見惚れてしまうかもしれない。

 

 滾る想いを胸に秘め、引き戸に手を掛けガラリと開けると___

 

「……あら?随分と懐かしい顔ね。お姉さんの事覚えてる?」

 

 そこには赤髪のお姉さんが入っていた。

 

「お久しぶりですね、あれでしょ?俺が胸をガン見してたら涙目になってたお姉さんですよね?」

 

「う、い、嫌な覚え方ね……。それにしても、貴方とは殆ど初対面なのに堂々とセクハラしてくるのは……。」

 

「安心して下さい、セクハラ止まりですから。」

 

「どういう事なの…。」

 

 そう溜め息をつくお姉さん、基邪神ウォルバク。

 

 髪を耳に後ろにやり空を見上げるウォルバクに俺は大きな胸を見ながら真剣な表情で考える。

 

 さてどうしたものか、正直確実にウォルバクかと言われればうーんと首を横に捻じ曲げざるを得ないが、あの時の発言と良い今この状況でここにいる事、色々と怪しい部分があってしまう。

 

 ただの強い冒険者だと言いたいのだが、過去に紅魔族との繋がりのある言葉を残していた……めぐみんの過去や、この人がウォルバクである可能性、今ここにいる理由など諸々を加味してしまうと、この人はめぐみんの___

 

「ところで、貴方はどうしてこんな所に?こう言っちゃ失礼だけど、あまり強そうに見えないわよ貴方?」

 

 と、純粋に心配している様子で俺を見てくるウォルバクらしきお姉さん。

 

「大丈夫ですよ。俺一人ならまだしも、今回も頼りになる仲間と一緒に来ていますから。そう言うお姉さんはどうして?」

 

「私?そうねぇ、私は日々頑張っている自分へのご褒美に、大好きな温泉をってところかしらね。後は自分の大切なパートナー探し?って感じかしら。」

 

 ………今の発言で確定した、コイツはウォルバクに違いない。

 

 その言っているパートナーとはきっとちょむすけの事だろう、めぐみんが連れてきていたが連れてきて正解だっただろう。

 

 しかし俺はそれとは違い、温泉が好きだと言う発言に少し違和感を覚える。

 

 そう、昨日のクリスの話だ。

 

「アルカンレティアでも思いましたが、俺はお姉さんが温泉好きってのはどうも違和感があるんですよね。」

 

「………あら?どうして?」

 

「いや、勝手な妄想ですよ。」

 

 俺の言葉にさっきまでの笑顔は何処へやら、一瞬くぐもった表情をするがまたすぐ笑顔に戻る。

 

「残念だけど外れね、私は温泉は大好きよ。だから温泉の聖地であるアルカンレティアに行くのは何も可笑しくないんじゃない?」

 

「……それもそうですね。」

 

「それより、私のパートナーに覚えはない?黒猫で怠惰で、人に妙に懐く猫。」

 

「あぁパートナーって猫なんですね。そうですねぇ……あぁ!俺の紅魔族の友人に、人に懐くと言うよりか俺が一番その猫に懐かれてると言いますか、怠惰と言われれば良くわからないですが良く寝ていますよ。」

 

 耳をピクッと反応させこちらに顔を向けるお姉さん、今頃気付いたのか俺が胸をガン見している事に気付き少し顔を赤くさせる。

 

「そ、そうなの……。後はその、とても凶暴だったりする?」

 

「野良のひよこに追いかけられ逃げ回るぐらいには臆病ですね。」

 

「ありがとう、私が探していた相手とは違うわ。」

 

 そう言ってウォルバクは巻いたタオルからお湯を滴らせながら立ち上がった。

 

「それじゃあ、私はもう行くわね。分かってはいると思うけどここは魔王軍との激戦地よ、貴方とは何処か不思議な縁がある気がするの……出来れば王都に引き返した方が良いわよ?」

 

 ウォルバクは黄色い瞳を猫の様に細め、優しげな笑みを浮かべてくる。

 

「それはありがたいご忠告ですね、ですがご安心を………先程も言った通り俺には心強い仲間がいるので。」

 

「そう……それじゃあ、さよなら。」

 

「次は戦場だな、ウォルバク。」

 

 ピクッと反応し、ヒラヒラとしていた手を止め振り返ってくるウォルバク……やべ、カッコつけたけどもしかしてここで殺られる…?

 

「貴方、名前は?」

 

「………カズマ、佐藤和真。」

 

「フフッ…そう、カズマ。覚えたわ。」

 

 一瞬ミツルギの名前を言ってやろうかと保身に走ろうとしたが、なんだか申し訳ないので俺の名を普通に名乗る事に。

 

「それじゃあ今度こそ、またね……佐藤和真。」

 

 そう言って楽しげに笑いながら出て行った。

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