この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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この素晴らしいエリス様と祝福を!恋と敵と紅と 3

 

 

 

「第三章 この爆裂師匠に不意打ちを!」

 

 

 

「___でけぇな…。」

 

 俺の前には王城と変わらない大きさの砦が異様な雰囲気を醸し出していた。

 

 あの後何事もなく朝を迎えられた俺は、昨日合った事を仲間に話すと『何故そんな馬鹿な事をした!』とのお叱りを受けてしまった……が、何も無かったのだから結果オーライだろう。

 

 そんな事も合って朝早くから砦へと目指していた俺達は、昼頃には砦へと辿り着いていた。

 

「この砦がたった一人の人間……人間?に落とされそうだってのか。」

 

「………」

 

 隣ではクリスが手を口に当て考えこんでいる、それも当たり前だろう。

 

 あくまでウォルバクには不当な扱いを補填する為に力を与えられたままこの世界に落としたのであって、この世界で暴れる為の力ではない。

 

 皆黙りこくり、俺はちょむすけ改めウォルバクその二を撫でていると砦の見張りが俺達を見付け数人の騎士が現れた。

 

「そこの冒険者、ここは魔王軍を食い止めるための砦だ。一体この地に何用で来た?」

 

「ん?あぁ、俺達はこの国の危機を知り援軍にやってきたんですよ。上級職が多いんで役に立つと思いますよ?」

 

 上級職と聞き警戒していた騎士が少し柔らかい対応へと変わる、現金なやつだよ全く。

 

「なるほど……一応、身元を証明出来る物を拝見させて頂いても?」

 

 冒険者カードの事だろうか、まずはとめぐみんの方へと手を差し伸べる騎士にめぐみんが冒険者カードを差し出すと動きが固まる。

 

「………なんですか?」

 

「い、いえなんでもありません…!」

 

 ジト目で見られ少し動揺した様子の騎士………あ、名前か。

 

 次にゆんゆんから冒険者カードを受け取ると、これまた少し動きを止めるも経験済みの為かすぐに立て直す。

 

「おい、さっきから何か言いたげではありません。良いでしょう私の前で、ハッキリと!大きな声で言って下さい!!さぁ!!!」

 

「す、すいません!本当に、本当に!!なんでもないです!!」

 

 ゆんゆんに慌ててカードを返した騎士は、クリスのカードを確認すると何処か怪しい目でクリスの顔を睨む。

 

 慣れたもんだと涼しい顔で受け止めるクリスに、気の所為かと肩を下ろしクリスにもカードを返す。

 

「はい、ありがとう御座います。では次は………て、えッ!?」

 

 俺のカードを受け取った騎士が今度は驚きの表情で動きを止める、さっきからコロコロと表情が変わる面白い人だ。

 

「佐藤和真…!まさか、本当に冒険者だったんですね……!!これからもご活躍、お祈りしています。」

 

「あ、どうも。」

 

 まぁ、確かに幹部討伐数を聞いてそのptのリーダーの職業が最弱職………正直自分の目で見ないと信用出来ないよな。

 

 しかし随分が名が知れ渡っているみたいだな、この調子で女の子のファンが出来る事を祈っておこう。

 

 俺にカードを返し、ダクネスのカードも確認し終えると砦内部に入る許可が与えられた。

 

 ………ダクネスだけ何もイベントが起きていないのを気にしてか、チラチラと騎士と俺を交互に見てくる、いや俺の方を見られましても。

 

 各部屋への鍵を渡されると俺一人だけ男だと言う事で一人で部屋へと迎う羽目になったのだが、何やら二人一部屋らしいのだ。

 

 短い期間ではあるが野郎二人で泊まると言うのはあまり喜ばしくない、せめて面識のある奴か可愛げのあるやつが良いなぁ。

 

 そんな事を考えながら部屋の前へと付くと、扉を開け___

 

「おや?カズマじゃないか!」

 

 ソッと扉を閉める事にし___て、コイツ力強すぎるだろ…!!

 

 閉じようとした扉を無理やりこじ開けてくる金髪のイケメン、まさか本当に知人だったなんて………なんでよりにもよってコイツなんだ。

 

 深い溜め息を吐きながら近くにあった椅子に座ると、そいつが喋り始めた。

 

「全く、久しぶりの再会だと言うのに随分と冷たいじゃないか?」

 

 そう言って爽やかイケメンスマイルを見せてくるのは、同郷であり友人の御剣………ミツルギ…?ミツルギだかミツロギだか忘れたがミツラギキョウヤが立っていた。

 

「まさかホントに知人が居るとは思わなくてビックリしたんだよ……それで、最近何してんだ?」

 

「最近かい?最近はあの二人と王都に出て冒険していたんだが、丁度ここが攻められていると聞いてね………居ても立っても居られずに来たって訳さ。」

 

「ほーん。まぁ元気そうで何よりだよ………て言うか、お前に限らずココってチート持ちの日本人が何人も居るんだろ?それだったのに何を一人相手に手こずってるんだよ。」

 

 少し気になっていた事をミツリギに聞くと、苦笑いしつつ椅子から立ち上がった。

 

「そうか、カズマはまだ見ていないのか……着いてきてよ。」

 

 扉を開けて外へと出るミツレギについて行く。

 

 ミツルギに案内されて砦の外部に出た俺は、そこでとある光景を目にしてしまった。

 

 砦の命とも言える外壁の一部、頑丈なはずの外壁はある一面だけが何度も強烈な攻撃に晒されたのか崩壊寸前に陥っていた。

 

 クーデターの様に地面は凹み、焼き焦げた後みたく草木は焦げ落ちていた。

 

 その破壊後には見覚えがあった……寧ろ、本人の次に見てきたと言える程に既視感のある物。

 

「……おい、もしかして。」

 

「あぁ、お察しの通りだよ。」

 

 ___爆裂魔法、三人目だな…使える奴を見たのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てことで作戦会議だ。」

 

 例の爆裂魔法の跡を見て後、廊下を歩いていたクリス達と共に部屋を一つ借り集まって作戦会議を立てていた。

 

 見たままの事を皆に伝えると各々考える素振りを始め暫しの沈黙……そりゃそうだ、今の今までの敵は未知数だったが故の試しつつの気持ちで挑戦出来ていた。

 

 だが今回の敵の強さは何しろ敵と同等レベルに知ってしまっている、その危険性も含めて。

 

 めぐみんの様に撃って倒れて何処かに隠れている等ならまだ対処のしようがあっただろう、しかし相手は腐っても元女神件元魔王軍幹部、爆裂魔法を撃った後はテレポートで逃げるとのミツルギの証言。

 

 このままだと撃ち続けられてジリ貧、砦が突破されるのも目と鼻の先と言った所だ。

 

 数分の沈黙が流れ皆が深く悩んでいる時、めぐみんが勢い良く手を挙げ俺を見つめる。

 

「………なんだめぐみん。」

 

「あぁ言えカズマにではなくてですね、ミツルギに質問なのですが。」

 

「ん?僕かい?」

 

「邪神ウォルバクとは探知魔法などは使ってくるのでしょうか?」

 

 その言葉にミツルギは思い出すかの様に唸り始め、方やクリスはガタッと音を出して鋭い眼つきでめぐみんを睨んでいた。

 

 概ね言いたい事は分かっている、出発する前に言っていためぐみんのお願いの事だろう。

 

 ウォルバクの不憫な話を聞き何処か思う所があったのか、クリスが話し終わった後口を開いためぐみんのお願い___

 

『ウォルバクを、どうにかして女神アクアと会わせる事は出来ないでしょうか!』

 

 確かに仲違いのままってのはあまり良い事ではない、そんな気持ちを汲んで危険性が無ければ良いとの判断をしたのだが……。

 

 相手は爆裂魔法の使い手、しかも魔力量は人知離れした化け物……当初の予定の俺がウォルバクに近付いてめぐみんに爆裂魔法に俺とウォルバク事焼き払い___クリスの力でウォルバクもアクアの所へ飛ばせないかと言った内容。

 

 ただでさえ危険だと言うのに相手の強さは此方が思っていた以上、クリスも女神として無駄な死を見過ごす訳にはいかない。

 

 睨み合いが続く最中、難しい顔をしたミツルギが口を開く。

 

「正直、分からないってのが答えかな。こっちから近付こうにもテレポートでさっさと逃げられてしまうし、何より隠密スキルを持っている人がこの砦に居なかったからね……試した事がないのさ。」

 

 その言葉にもっと難しい顔をしためぐみん……ま、結局なんだ。

 

「前例が無いなら試してみろ!俺が第一人者になろうか。」

 

 相手がどれだけ強かろうと俺達がする事は変わらない。

 

 そんな俺の言葉に今度は俺を睨んでくるクリス。

 

「本気で言ってるの?」

 

「大マジ、俺が第一人者であり最初で最後の実行人だよ。」

 

「………はぁ、本当は女神としてあんまり認められないんだけどなぁ……なんだかカズマと一緒に居て変に柔軟な考えになっていってる気がするよ。」

 

「俺色に染められてるって事か。」

 

「ッ!変な言い方やめてくれるかな!?」

 

 これまた睨み始めたクリスに釣られ先程までの殺伐とした雰囲気は何処へやら、何時もの雰囲気が流れ始めた………一人を除いて。

 

 先程まで俺達のやり取りをオロオロして見ていたゆんゆんか、クリスを見ながら首を傾げ疑問を投げかけてくる。

 

「あ、あの!め、女神として……って一体…?」

 

「あっ。」

 

 やってしまったと額に手を当て狼狽えるクリスが一言ポツリと。

 

「……これもカズマのせいかな。」

 

 なんでだよ。

 

 少し深い溜め息をつき、ゆんゆんの事を本人を除いて次に良く知っているであろうめぐみんにチラリと目をやるとコクリと頷く。

 

「ゆんゆんは私以外に話す相手がいないので、言ってしまっても良いかと。」

 

 そんなめぐみんの言葉に無言で掴みかかるゆんゆん、まぁまぁとダクネスが仲介に入り二人が引き離される。

 

 二人共落ち着いた所でコホンと一つ間を置き、クリスが自分の正体と他言無用と伝えゆんゆんに話し始める。

 

 そんな状況を眺めていると、少し悲しい顔で俺に耳打ちしてくるミツルギ。

 

「なぁ、カズマ。」

 

「なんださんを付けろ。」

 

「どうしてだい!?………ってそうじゃなくて、本当に大丈夫なのかい?」

 

 それは先程の作戦の事だろう。

 

 どんな内容か知らないコイツが俺に心配してくる程、クリスの気迫が凄かったのだろうか。

 

 

「ま、なんとかなるだろ。」

 

「なんとかなるって……これでも友人として心配してるんだよ?」

 

 随分と心配性な友人だこと。

 

 俺は向き直るとドヤ顔でミツルギに答える。

 

「お前の心配は毛ほども興味はないが、俺はクリスから心配されているこの状況でなんだって出来るさ。」

 

 そんな俺の言葉に若干呆れつつも、嫉妬の目を込めて俺に苦笑を浮かべるミツルギ。

 

 クリス達方はどうかとチラリと目を向けると少し神々しい光が光った、多分信じないゆんゆんに直接見せることにしたんだろう。

 

 驚いた表情で椅子事ひっくり返るゆんゆんに心配するクリス改めエリス、触れた事に実感を持ち大絶叫。

 

 そんなドタバタ面白状況にケラケラ笑っていると、ミツルギがこれまた真剣な表情で俺を見てくる。

 

「カズマ、君はクリス……いや、エリス様の事が好きなのかい?」

 

 ………急になんて事を聞いてくるんだこの男は。

 

「そう言うお前はどうなんだよ。」

 

「勿論好きさ。あぁ、likeじゃなくLoveだよ?」

 

 なんてキッパリ言い切ってきやがった。

 

 俺は少し小っ恥ずかしい気持ちでミツルギの言葉に考える。

 

 クリスの事が好き………か、あんまり考えた事なかったな。

 

 何しろ自慢じゃないがダクネスやめぐみんに迫られた、しなんならダクネスに関してはキスしたしで色こいに関してあまり考える必要が無かったが正解か。

 

 だが俺は一番最初にめぐみんに迫られた際の事を思い出す。

 

 俺はあの時嬉しい気持ち半分、このまま流されては駄目だというので半分だった。

 

 あの時脳裏に流れた人物、あの童貞でヘタレの俺が可愛い女の子に迫られても拒んだたった一つの理由。

 

 俺は、もしかしたらクリスの事が___

 

「魔王軍幹部襲来ッ!!魔王軍幹部襲来ッ!!冒険者や近衛兵は直ちに撃退準備をッ!!繰り返します、魔王軍幹部襲来ッ!!」

 

 そんな俺の脳内の静寂を突き破るかの様なメガホン越しの声、フと我に返り辺りを見渡す。

 

 緊迫した面持ちのまま、音で目覚めた気絶していたゆんゆんを起こし全員で会議室を出る。

 

 砦の各部屋から焦った表情で装備を持ち外に出る冒険者達………やはり、この砦もそう長くは持たない様だ。

 

 出来るだけ速くと思いを乗せて外へと全速力で向かう。

 

「___はぁ…!はぁ…!何処だ!!」

 

 息切れしつつも何とかウォルバクを見つけ……たと思ったその瞬間。

 

「ッ!伏せてカズマ!!」

 

 後ろから俺の頭を掴み地面へと押し付けるクリス、地面にぶつかった衝撃と共に幾度となく聞いてきた爆音と地面が揺れる程の衝撃。

 

 俺は何とか顔を上げ未だ予熱残る熱さを肌に受けながらもウォルバクが居た所を見る………が、そこには物陰一つなくポツンとしていた。

 

 今ので更に心に来たのだろう、かなり絶望した表情で俺の隣で膝立ちをしているミツルギ。

 

「おいおい好きな女の前でなんて顔してんだ。」

 

「ハハッ……カズマはやっぱり強いね、僕は正直もう半分諦めかけてるよ…。」

 

 そんな弱音に何時もなら強く言い返すだろうが、状況が状況だ。

 

 心配しつつも目の当たりにしたウォルバクの爆裂魔法に未だ緊張の糸が途切れないクリスの手をソッと頭から外すと、俺は立ち上がり辺りを見渡す。

 

 ただでさえ劣化していた砦の外壁はもう保たないとばかりに凹んでいた。

 

 未だ焦げ臭い野原には、草木一つ残らず燃やし尽くされている状況を見てあのデストロイヤーをふと思い出す。

 

 そうして絶望の淵に立っていると、ウォルバクが居た先程の場所から少し野太い声が聞こえてきた。

 

 ピクリと反応し剣を持ち立ち上がると、俺とクリスを見下ろしながら深い息を吐く。

 

「立ち上がってカズマ、女神様。魔王軍の精鋭達です。」

 

 成る程、大将自ら絶望を与えるだけでは飽き足らず部下達も俺達の砦と心を削ってくると言うのか。

 

 ………だが、あまり舐めてもらっちゃ困るって物だ。

 

 目には目を、歯には歯を、爆裂魔法には___

 

「めぐみーんッ!!準備は出来てるかッ!?」

 

「はいッ!!いつでもいけます!」

 

 そんな頼もしい言葉が後ろから聞こえてくる。

 

 何時までもやれてばっかいられない、まずは作戦の前にやらなくてはいけない事がある様だ。

 

 俺はバッと手を振り下ろしながら魔王軍達に向かって手を突き出し。

 

「てーッ!!」

 

 一度言ってみたかったセリフを言いながらめぐみんに指示を出す。

 

「いきます……!『エクスプロォォォジョン』ッ!!」

 

 まさか此方も使えるとは微塵も思っていなかったのだろう、ギョッとした魔王軍達がアワアワとしながら後ろにダッシュするももう遅い。

 

 アレだけの魔物を倒してきためぐみんの爆裂魔法は、ウォルバクですら驚愕するであろう範囲と威力で魔王軍達を葬っていた。

 

 ヘタリとその場に倒れ込むめぐみんをダクネスが支えると、辺り一面には焼け野原の焦げたクーデターが二つ出来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てことで、俺そこら辺の草むらで野宿する事にするわ。」

 

「どういう事で…?」

 

 崩壊寸前だから無視するなんて事はしない、微力でも良いからと暇な者達で砦の修理を行っていた。

 

 そんな時に隣で一緒に修理していたクリスに俺の考えを伝えると、意味が分からないと言った表情で手を止めて俺に向き直っていた。

 

 呆れ顔のクリスに俺は至極真っ当に真剣な表情で、しかし修理は疎かにしない様にクリスに話しかける。

 

「ほら、めぐみんのお願い。俺がウォルバクに何とか近付いて逃げられない様に拘束。そこをめぐみんの爆裂魔法で俺とウォルバクを一緒に殺して、クリスが俺とウォルバクの魂を操作してアクアの元に送る、ってやつだっただろう?」

 

「そ、それはそうだけど……まさか、まだ諦めてないつもり!?」

 

「そりゃそうだろう、なんだぁ?まさかもう怖気ついたってのか?」

 

 そう言ってニヤけながらクリスを見ると、驚き半分呆れ半分の顔で俺を見つめていた。

 

 少し考える素振りをしながらも、もう何か言うのは諦めたのか溜め息をつきながらジト目で俺を見る。

 

「めぐみんは随分と羨ましいね、こんなにもカズマに愛されてるんだから。」

 

「なんだよ嫉妬か?」

 

「べっつにー?」

 

 そう言って顔を背け口笛を吹くと、ハッと思いついた顔をしてこちらに振り返ってくる。

 

「カズマってば、私を所有物にしてこの世界に来たのに……気付けばめぐみんと良い感じになったり、ダクネスをこれまた所有物にしたり……あーやだやだ。」

 

「うぐっ…、しょ、所有物って……悪かったよ…。」

 

 クスクスと小悪魔味を感じるクリス、いや女神に小悪魔ってのはだいぶ失礼か…?そんなどうでも良い事を考えていると、それでもと前置きをしてクリスがハニカミながら俺に笑い掛ける。

 

「私はそんなカズマの事好きだよ?」

 

「……え?」

 

 思わず狼狽えてしまう。

 

 エリスとしての笑顔、とはまた違うクリスの笑顔に魅了されつい先程のミツルギとの会話がフラッシュバックする。

 

「そ、それってどういう___」

 

 その発言の真意を聞こうとクリスに問いかけ様とすると、クリスが人差し指で俺の口の前にあてがい、片目を瞑り答える。

 

「秘密。今はまだその時じゃない、でしょ?」

 

 そう言ってチラリと辺りに目をやる、つられて俺も周りを見渡すと酷い有様の城壁と大地。

 

 ………いや、それは全くもってその通りだと思う……が。

 

「じゃあ今するなよおぉぉぉぉぉッ!!」

 

「わわっ!?ちょ、ご、ごめんって!ねぇ!!」

 

 雄叫びを上げその場で蹲ると、クリスが慌てながら辺りを見渡しあたふたしている。

 

 何だなんだと周りの冒険者達が集まってくるが知った事か、俺はやられたらやり返す男だ。

 

 勝ったとばかりに優越感に浸っていると、聞いた事のある声が聞こえてくる。

 

「お前達は何をやっているのだ全く………ほら、カズマも臭い演技は辞めて作業に戻れ。」

 

「はい。」

 

「えぇッ!?さ、さっきまでの雄叫びって…!」

 

「何言ってんだクリス。今そんな冗談言ってる場合じゃないだろ。」

 

「……な、納得いかない…!!」

 

 そんな俺達を見ながら溜め息をついたダクネスが、俺に向き直り真剣な表情になる。

 

「それで、作戦はどうするんだ?」

 

「あぁ、俺が野宿してウォルバクが出てくるまで待つ事にするよ。流石のウォルバクもまさか外でずっと待機してるとは思わないだろ。」

 

「フッ…そうか。随分と簡潔で納得出来る作戦だが、どうする?夜間にモンスターに襲われたら元も子もないだろう。」

 

「あー……まぁ、ミツルギー!一緒に野宿でもしないかー?」

 

 少し離れた場所に居たミツルギに大声で話し掛けると、ギョッとするもすぐに作戦の内容の一つだと察したのか考え込む。

 

「……すまない!僕は僕で中の警備も担っているんだ!!だから他の誰かに頼んでくれないかー!!」

 

 何と振られてしまった……さてどうしたものか。

 

 少し気不味そうな様子なダクネスが俺をチラチラと見てくる、何だよ言いたい事があるなら聞いてやるから言って来いよ。

 

 そんな今朝方のめぐみんの様にダクネスに詰め寄ってやろうかと考えていると、クリスがハイッと手を挙げ自分に指をさす。

 

「なら私が一緒にいこっか?」

 

「え!?そ、それは……。」

 

 何処か口籠るダクネスに、クリスはニヤニヤとしながらダクネスに詰める。

 

「何々?何か不味い事でもあるの?」

 

「うっ、いやそう言う訳ではないのだが………ほら!男女二人っきりでと言うのは、な?」

 

「んー大丈夫でしょ。カズマってばヘタレだし。」

 

 おいこら誰がヘタレだ。

 

 カズマさんだってやる時はやる男だ!!そう気持ちを込め手をワイワイさせながらクリスに近付こうとする。

 

 すると此方に急に振り返り、にこやかに告げる。

 

「てことで宜しくねカズマ!」

 

 ………やっぱり俺はヘタレかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日も落ち、先んじて簡易的な寝床を敷いていると。

 

「___わっ!」

 

「うわっ!……って、クリスか。」

 

「ちょっとビビり過ぎじゃなーい?」

 

 クスクスと俺の後ろでクリスが笑っている。

 

 なんだか最近クリスが小悪魔に見えて仕方がない、まぁ本人に言ったらきっと怒られるから言わないでおくけど。

 

 何時ウォルバクが来ても良い様にバックからダイナマイトを一つ取り出し、クリスと交代で周りを監視する事に。

 

 ごくたまーにゴブリンの一匹二匹が出てくる位で基本平和、俺達は暇を持て余し談笑に花を咲かせていた。

 

 とそこで一つクリスに聞きたい事を思い出す。

 

「あ、なぁそう言えばさ。ウォルバクって元々は女神で、天界のお偉いさんが人にしてここに落としたんだろ?ならこうやって暴れてるのをどうにか止めたり出来ないのか?」

 

 そう、女神がここにチート持ちを送るのはこの世界の魔王軍を倒す為なのだ。

 

 ならウォルバクがこの世界を破壊する側に変わっているのは本末転倒ではないのか、と疑問に思っていた。

 

「あー…えっとね、まず天界から直接こっちの世界に干渉する事は基本的に出来ないんだよね。」

 

 アハハ…と苦笑いしながら頬をかき遠い目をしながら答える。

 

「天界から人を送り込んだらもうその時点で天界が出来る事は終わり。だからやろうと思えばチートを持って魔王軍側に付く事も出来るだよ?」

 

「そ、そうなのか……ん?ならクリス、てかエリスが俺に良くしてくれる『リザレクション』はどうなるんだ?」

 

 あれはどういう扱いなんだろ。

 

「あれは天界からの干渉扱いじゃなくてね、こっちの世界からの要請だからどうとでも出来るんだよ。………ま、普通は一度までなんだけどね。」

 

 気不味そうに俺をチラリと見てくるクリス……何時もお世話になってます。

 

 アクアも同じ様な事を言ってたし、自分が特異点と言うのを理解しなければ。

 

 こうして夜が明けて行く。

 

 途中からお互いに交代交代で休み休み周りを監視する事にし、静かな時が流れる。

 

 クリスが横に転んだのを確認し、俺はこの世界に来てからの事を思い出す。

 

 良くある異世界物の様に俺のチートが目覚めて無双、とはいかないし寧ろ強い味方に擦り寄って頼ってばかりではあるが………まぁ悪くはない。

 

 前居た世界では考えられない程に可愛い女の子に囲われて……ま、少し可笑しい所がある奴らだけど楽しませてもらっている。

 

 チラリと寝転んだクリスに目をやると他二人とは違った常識人、件女神がスヤスヤと眠っていた。

 

 無意識の内にクリスに近付くとサラサラとした髪を撫でる。

 

 心無しか少し笑顔になったクリスを見て、胸の内が高揚している事に気付いてしまう。

 

 別に何かトラウマがある訳でも無く、寧ろ欲していた彼女と言う存在。

 

 前の世界では初恋は実らなかったにしろこの世界では………自意識過剰で無ければまぁまぁモテている。

 

 前の俺が今の俺を見たらどう言うだろうか、ヘタレだと罵るだろうか、勿体ないと嘆くだろうか。

 

 めぐみんにもダクネスにも迫られて下は反応するが何処か違うと贅沢な悩みを持っていた俺は、今までの事を振り返り今日の彼女の態度から今の寝顔を見て気付く。

 

 ………いや、本当はミツルギに問われた時、もっと前から気付いていたのかも知れない。

 

 ただの人間には無い部分に惹かれ、迷惑だと分かっていても無理矢理この世界に連れてきて良かったのかもしれない。

 

 ___俺はクリスの事が好きだ。

 

 髪を撫でていた手を止め、俺はそそくさとクリスの側から離れると顔を覆いしゃがみ込む。

 

 ああああああ恥ずかしい!!

 

 て言うか何だよクリスあの野郎!!俺だって男だぞ!?他の人がいない場所で俺と二人っきりで野宿とか………もっと危機感持ってくれよ!!

 

 ………まぁそれは彼奴等にも言える事か。

 

 数分ジタバタとのたうち回り終わると肩幅一つ分間を開けクリスの隣に座る。

 

 フッ、これで俺もミツルギの事を言えなくなってしまったな。

 

 心の内でミツルギがただの友達から同じ女を好きなったライバル件親友へと昇格し、俺は何処か鉛が取れた様なスッキリした気持ちになっていた。

 

 それはめぐみんやダクネスに対する申し訳無さと、何故申し訳無いと思っていたのかの理由が明確になったからだ。

 

 深い溜め息を付き、クリスに対する気持ちがハッキリした事に安堵する半分、何故今この状況で考えてしまったのだろう半分と何とも言えない気持ちで朝日を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨晩のドキドキは何処へやら、俺は慣れない朝日を浴びながら行く末を見守っていた。

 

 そこには足音一つせずにウォルバクが砦へと向かっていく様子が目に映っていた。

 

 その表情は恨み、と言うより何処か申し訳ないと言った面持ち………いや申し訳ない表情で爆裂魔法撃つとかとんでもないな。

 

 ウォルバクの胸の内など知ったこっちゃないが、俺は自分の出番が来るまでその時を待つのみ。

 

 いち早くウォルバクに気付いたクリスが俺を起こし、めぐみんを呼びに向かって行ったのは数分前……俺は真剣な表情でダイナマイト片手に見守る。

 

 茂みをそそくさ移動していると、何時も撃っているであろう定位置に止まり表情が変わる。

 

 顔を伏せブツブツと何かを唱える……言わずもがな爆裂魔法だろう。

 

 衝撃に備えて腰を落とす、俺の出番はウォルバクが爆裂魔法を撃ったその直後だ。

 

 伏せていた顔を上げると聞き慣れた爆音と衝撃が遅れて身体に伝わる。

 

 唾を飲み込みウォルバクがもう一度手を翳したその時………今!!

 

 俺は『潜伏』を解除し『逃走』を発動させウォルバクに近付く。

 

 ダイナマイトを手に持ち左手を構える!

 

「『ティンッ___!?』」

 

 テレポートで逃げようとした隙にダイナマイトを爆発させ、手負いの所を……そう思っていた俺は目の前の光景に呆気に取られていた。

 

 テレポートをしようとしている、と思っていた手が此方に向いている。

 

 ウォルバクの表情は先程見た申し訳無さそうな表情、成る程バレてたのか。

 

 ………あれッ!?これ不味くね!!

 

 向こうはもう発動まで準備万端だと言いたい程に手から魔力が溢れていた、それに比べ俺はまだ発動すらしていない。

 

 走馬灯の様にスローモーションの様に感じられたその光景に、俺は諦めたかの様に目を瞑ろうと___

 

「___こ、こっちを見なさい!ウォルバクッ!!」

 

 この場で聞こえる筈の無いその声。

 

 ウォルバクが目を見開いて俺から目を逸らし声の元を探ろうと聞こえた方へと振り返る。

 

 俺から気を逸らすのも無理はない、何故なら聞こえてきた声はウォルバクにとって忌々しい人物なのだから。

 

「『ティンダーッ!!』」

 

 俺は出来た一瞬の隙をついてダイナマイトに火を付けウォルバクに投げつける。

 

 しまったと言いたげな様子で顔を腕で覆うウォルバクに、爆裂魔法とは比べ物にならないが爆発音が近くで鳴る。

 

 しかし俺の仕事は終わっていない、まだやる事が一つあるのだ。

 

 今度こそウォルバクに近付くと所々服が破けている……て違う!そうじゃなく満身創痍でこちらを睨んでいた。

 

 俺は『ドレインタッチ』を発動させながらウォルバクの顔目掛け___!

 

「ッ!!ガハッ!?」

 

 ウォルバクの口に手を突っ込む。

 

 ………いや趣味などではない、これは魔法を発動させずに少しでも良いから弱らせる為にと歴とした作戦である。

 

 苦悶の表情で俺を睨みながら俺とウォルバクは掴み合うが、掛けておいた身体強化魔法のお陰で互角の戦い合いが行われ……いってぇッ!?こいつ噛みやがったッ!!

 

「テメッ!!それでも俺は離さねーからな……!」

 

 涙目になりながら口を動かさない様に手を突っ込み、ウォルバクは俺の手をガジガジと噛む……字面だけ見ればとても魔王幹部との戦いには見えないだろう。

 

 こうして格闘する事数十秒、俺とウォルバクの足元に見慣れたデカい魔法陣が現れる。

 

「ま、まひゃはッ!?」

 

「何言ってるか分からねーけど、そのまさかだよッ!!」

 

 額に汗を浮かべながらより一層強くなった力で俺を引き離そうと首と身体を揺らす、がそこは俺の意地で何とかカバー。

 

 どんどんと焦る表情だったウォルバクが何かを閃き俺に掴んでない方の手を向ける……が、時すでに遅し。

 

「『エナジー・イグニッ___!』」

 

「『___クス、プロォォォォジョンッ!!』」

 

 聞き慣れた声と共に、目の前が白い光に包まれた。

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