「第四章 この女神の関係に修復を!」
___熱いとか言うレベルじゃなかったな、爆裂魔法。
尋常じゃない程の痛みと熱さ、身体の芯から溶かす様な熱を帯び皮膚が爛れる感覚に陥っていたのを今でも覚えている。
一瞬の間だったとは言え、今まで受けてきた攻撃の中で最も絶望した攻撃だったのは間違いない。
俺は朦朧としていた意識がハッキリするのを確認し、地面から起き上がり前を見上げる。
そこには見慣れた真っ白な部屋の光景………に似合わない青色の女、女神アクアと先程道連れにした赤い女、元女神件元魔王幹部であったウォルバクが掴み合いをしていた。
どうやらエリスが何とかしてくれたみたいだ。
とても女神どうしの喧嘩とは思えない殴る蹴る、ただどちらも効果音で言えばポカポカと言った表現が似つかわしい可愛らしい喧嘩。
言わば………ノルウェージャンフォレストキャットとシベリアンハスキーの戯れ合い、みたいな。
「あ!?ちょっとちょっとッ!!」
そんな二匹の行く末を生暖かい目で見守っていると、シベリアンハスキーが俺に気付きずんずんと此方に向かってくる。
すぐ近くにまで来ると胸ぐらを掴みノルウェージャンフォレストキャットを指差す。
「あんたとんでもない事してくれたわねッ!?」
「そんなとんでもないだなんて、めぐみんとエリスに言ってやってくれよ。」
「褒めてるんじゃないわよ…ッ!!」
ギリギリと締め上げてくるアクア、どうやら相当お怒りの様子だ。
「まぁまぁ落ち着けよアクア。言いたい事は後で言ってくれたらいいから、な?今はそれよりもするべき事があるんじゃないか?」
「………」
そう言うと無言で俺から手を離し今度は逆に俺の背中に隠れだす始末。
溜め息を吐きながら頭を掻きこちらを見てくるウォルバク、顔だけ出しウォルバクを威嚇する俺の背中に隠れたアクア……俺にどうしろと。
「……あのなぁお前ら、今回のこの立ち合いは双方の弟子と後輩のお陰で成り立ってるんだからな?」
「……どういう事なの。」
「良いか?まずアクア。お前のした事はエリス伝えで俺達も知っているんだよ。」
そう言うと気不味そうに顔を引っ込まれるアクア、まぁ良いや。
「それでその話しを聞いためぐみん……あぁ、あの爆裂魔法を使った子がな、このままだとお前が不憫で可哀想だと言い始めたんだよ。」
無言で話の続きを促してくるウォルバク。
「んで、二人を直接会わしたらさっきみたいにどうせ碌な事にならないだろうからと。俺が文字通り身体を張って仲介人としてここに来た…って訳。」
「………本当に正気か疑いたくなる様な作戦ね。」
「正気じゃない奴が立てた作戦だからな、心当たりあるんだろ?」
そう言うと少し懐かしむ表情で、それでいて困った様子で苦笑いをする。
良かった、どうやら覚えている様だ。
そんな俺達の様子をチラチラと見ていたアクアの首根っこを掴み俺の前に引き摺り出し、俺は今度こそ行く末を見守る事にした。
「と、言う訳だ。お前も腹くくったらどうだ?」
「うぅ…、で、でもぉ……。」
この期に及んでまだモジモジするアクア、この野郎折角後輩が尻拭いしてやろってのにまだ動こうともしねーのか……!本当に反省してるんだろな…?
そんなアクアの様子を見て呆れた様に溜め息をつくウォルバク。
数秒の後息を飲み俺とウォルバクを交互にチラチラ見ると、綺麗な青髪を斜めへと傾かせる。
「……あ、あの時は…!本当にご、ごめんな、さい。」
何処か泣きそうな、それでいて申し訳ない気持ちと言った本気で後悔している様子が感じられる謝罪。
まぁここまでお膳立てしてやって謝罪しない等言語道断なのだが、ウォルバクからしたらアクアが謝る事が余程珍しいのか目を見開き硬直していた。
これまた数秒の沈黙が流れると、ウォルバクからの言葉を待っているのかアクアが掴んだいるスカートの部分がクシャリとなっている。
腕を組むのをやめウォルバクが近づいてくる。
カツカツと素足から何故かヒールの様な音を鳴らしながらアクアに歩いて行く。
その音に何かされると察知したのか、更にスカートを掴む手に力が入っているのが肩を震わせているアクアの様子で分かる。
俺はもしまた掴み合いにでも発展されない様に組んでいた手を止め、何時でも止めに入れる状態に。
頭を下げているアクアの目の前へと立ちアクアを見下ろす構図へ。
ウォルバクは両手をアクアの顔へと包み込む様に持っていき___
「___ぶぇっ?」
勢い良く頬を挟み顔を持ち上げさせた。
意味が分からないと言った様子でアクアが驚くと、ウォルバクはフッと鼻で笑い飛ばし真剣な表情で口を開く。
「悪いけど、私は貴方を許す事が出来ないわ。」
そう言って怒った様な顔でアクアを見つめる。
その言葉に出かけていた涙のリミッターが壊れたのか、スカートを掴んでいた手を自分の顔へと持っていき目をゴシゴシと拭き始める。
アクアの顔から手を離し一歩後ろに下がるウォルバク。
………え?仲直り失敗?
俺は涙をえぐえぐと流すアクアと、無表情なウォルバクを交互に見ながら頭をフル回転させる。
ど、どどどどうしようエリス!!めぐみん!!ダクネス!!お前らが信じて送り出してくれたカズマさんは仕事を果たせなかったみたいだよッ!?
「……でも。」
俺がゆんゆんの様にあたふたして彼奴等にどう言い訳しようか考えていると、ウォルバクが口元を少し上げ語りかける。
「私が魔王軍に入ったのは完全に私の意思。女神であるという立場であったにも関わらず、自分の好き勝手に私達が守っていた世界を破壊していたのは確かだわね。」
またアクアに近付いたと思うと、今度は優しい手でアクアの左頬を撫で右手で涙を拭い始め___
「___『ゴッドッ!!ブロォォォォォッ!!!』」
「えぇぇぇぇぇぇぇッ!?」
先程の優しい手つきは何処へやら、硬い拳を握りしめ涙を拭っていた右手でアクアの鼻先目掛けておもっきりぶん殴りやがった…!!
思ってもいなかった展開で驚きの声を上げてしまったが、ふとアクアの状態を確認しに駆け寄る。
涙でクシャクシャだった顔は、今や鼻から流れた血も込みでよりグシャグシャになってしまったいた。
「お、おい大丈夫かアクアッ!?ウォルバクてめぇさっきの良い雰囲気は何処へ…!!」
抗議しようと立ち上がろうとするとアクアに掴まれる。
俺の手をがっしりと握りながらヨロヨロと立ち上がり俺の前に腕を出す……手を出すな、ってことか。
「……女神の怒りと悲しみのエネルギーで相手は死ぬ、だったかしら?これが私の気持ちよ、女神アクア。」
そう言って先程のゴッドブロー?とやらの技の説明を終えると、腕を前に組み目を閉じる………死んでないけど。
「………神を裏切った貴方の行動に涙を流した私は、そんな貴方でも今こうして天界に来る事を許可している慈悲深い愛……そんな貴方に私は___!」
先程も見た展開でアクアが拳をガッチリ固める。
「___『ゴッドッ!!レクイエムゥゥゥゥッ!!!』」
これまた鼻先目掛けてウォルバクを思いっきり殴り飛ばす。
「ハァッハァッ、愛と悲しみの鎮魂歌……相手は死ぬ。」
そう言って肩で息ををしつつゴッドレクイエム?とやらの説明を終えウォルバクに近寄って行く………死んでないけど。
ピクピクとしていたウォルバクだったが、アクアが手を差し出すとガッチリと掴み起き上がる。
二人で見つめ合うと、お互い殴っていない左手を差し出し熱い握手を交わした……。
「それでねそれでね!!そこで紫々◯獅穂が黒峰◯陽に対しての気持ちに気付いてくのよッ!!」
「そ、その後、その後はどうなったのかしらッ!?」
女神同士の熱い友情物語は程なく終幕を迎え、正直俺がここに来た意味は無かったのではないかと感じ始めた頃。
当の本人達は片方は気になっていた漫画の続きを教えてもらい、片方は嬉しそうにしながら説明していた。
先程殴り合いしたばっかだとは思えない二人は、恋愛漫画にキャーと黄色い悲鳴を上げ盛り上がっていた。
て言うか女神にそんな感情があったなんてな……本人に聞かれたら殴られそうだから心に留めておくが。
エリスからの蘇生の時間まで後10分もあるかないか、だと思う。
予め蘇生する時間を決めておいたは良い物の、思ったよりも早く自体が片付いてせい、おかげ?で暇を持て余していた。
二人でワイワイと盛り上がっている様子を眺めていると、ピタリと動きを止めてしまう……どうしたのだろうか。
すると此方へ顔を向ける二人と目が合う……これはアレだ、親が自分の子供の恋愛話を聞こうとしている目だ。
俺は中学生の時に経験したあの母親の目を思い出すと、立ち上がり全力でその場を離れようと………が、時既に遅し。
「………ウォルバクさん、俺の足を掴んでどうしたんですか?」
「いやなに。ちょーとだけあなたのお仲間との恋愛事情をお姉さんに話してみないかしら?」
「………アクアさんも、どうして俺の手を優しい風にキツく包みこんでるんですか?」
「あーらさん付けだなんて私とあんたとの仲じゃない。ほら、そんな仲の良い私に相談しても良いのよ?」
そんな美女二人に囲まれて迫られている状況、と言えば聞こえは良いが人の恋愛事情を出汁にして自分達が楽しみたいだけに違いない状況。
俺は苦笑いしながら溜め息をつくと、目を閉じエリスからの蘇生を待つ事に………
「あッ!ちょっと何黙ろうとしてるのよ!!ほら話しなさいな!悪い様にはしないから!!」
「お願い坊や!!もう何百年と生きていると楽しみが人の恋愛話しか無くなってくるのよ!!」
そんな悲しいオバ………お姉さんの悲痛な叫びが耳元で聞こえてくる。
そんな俺の様子に諦めたのかギャアギャア騒ぐのを止め、俺から手を離す。
そっと瞼を開け周りを確認しようとすると……悪い顔で俺を見下ろしていたウォルバクと目が合う。
瞬時に不味いと悟った俺は起き上がろうとすると人差し指と親指で無理矢理目を開けられながら顔を押し付けられる。
「引っ掛かったわねカズマッ!!さぁ私と目を合わせるだけで良いわ!!私は昔私の顔色を伺う奴らばかりだった時にソイツの目を見れば何を考えているのか大体分かる特技があるのよッ!!」
「クッ!な、なんて悲しい取得秘話だ……!!」
「大丈夫、痛くしない様に抑えているから!すぐ終わるわ!!ねッ!?」
「もう既に目がいてぇーよ!!」
そんな二人に押さえつけられて何時もなら堪能している女性の身体と言う物も、今はこの二人の出汁にされる事の方が嫌だと気持ちが勝って楽しむ余裕もない。
何とか脱走しようと辺りをキョロキョロしながら手足を動かしていると、アクアが俺の目をガン見しながら口を開く。
「ギルド職員のあの子………違う。何時もダストと一緒に居る子………違う。」
そう言って手当たり次第に俺と関わりがある女性の名を挙げていく。
「あの忌々しいアンデッド………違う。めぐみんの友人………違う。王族の子………違う。」
段々と関わりが深い人間が挙げられていく状況、ニヤつくのを抑えられないと半笑いのウォルバクが頭上に見える……コイツ性格悪いなっ!?
アクアもそろそろだと言わんばかりに唾を飲み込み汗を一筋流しながら、より一層俺の目に集中する。
「ダクネスちゃん………違う。めぐみんちゃん………ち、違う。」
いよいよだとばかりに一呼吸置き、その名前を口にする。
「………私の後輩。女神、エリス。」
その名前を聞き俺は少し目が泳ぐ……いや、泳いでしまう。
勿論わかっていた、自分の気持ちもそろそろエリスの名前が来るだろうという事も。
俺が後悔したのは聞かれた事でも分かっていても目が泳いでしまった事ではない、何も喋らないアクアの反応、そしてそんなアクアの様子で色々察したであろうウォルバクまでもが固まってしまった事。
「な、何だよお前ら二人してその反応!!薄々分かってただろッ!?」
俺は良い加減目が乾き痛かった目を休ませる為に力が入っていないウォルバクの手を退け立ち上がり目をパチパチさせる。
少し痛みを感じてしまい涙が滲む……クソ!爆裂魔法で痛い思いしてまで来た結果が人の恋愛話を笑う訳でも無く沈黙、死に損ではないか!!
未だ顔を見合わせ硬直した二人に振り返ると、良い加減人の好きな人物を聞いてその反応は如何なものかと言いたくなる。
「………おい!お前ら良い加減に…!!」
そう声を大にして言おうとした時。
「『カズマ…さん、そろそろお話は終わりましたか?』」
「え?あぁやっと時間か。まぁ穏便にとはいかなかったけど、二人とも漫画の話をする位には修復されたよ、な?お前ら。」
エリスの声と俺の声で硬直から目覚めた二人はハッと我に返る。
「……え、えぇ!迷惑掛けたわねエリス!!」
「『フフッ…いえいえ、私も何時までも先輩のお二人方が納得いっていないのは見ていられませんでしたから………改めて、今まで申し訳ありませんでしたウォルバク先輩。』」
「…態々魔王軍の私に有難うエリス。貴方は何時までも良い後輩だわ。」
「『有難う御座いますウォルバク先輩、また一緒にご飯でも食べましょう。………では、戻りましょうカズマさん。』」
「あぁ、そうだな。」
そう言ってアクアからの光に包まれる魔法陣を待っていると、首を傾げてアクアの隣に居るウォルバクに問う。
「あれ?あんたは行かなくて良いの?」
「?だって私女神なんだし、自分の居場所に帰って来たんだから行く必要ないじゃない。」
ウォルバクも訳が分からないと言った様子で鼻で笑い飛ばすと、アクアが青白い顔になりウォルバクの肩を掴む。
「あ、あんた分からないの…?あんた一応私のせいとはいえ天界を裏切ってんのよッ!?」
………何だか嫌な予感がしてきたな。
「………つまり?」
「もしここに戻って来たとしても、あんたは一生と言って良い程の長い期間地獄に落とされ………その後はあの学校に戻ってまたあの生活に逆戻りよッ!?」
ワナワナと震えながら肩から手を離すアクアに、ウォルバクはこの世の絶望だと言いたい女性がしちゃ駄目な顔で自分の肩を抱き身震い。
バッと俺の方を見上げると物凄い速度で俺が居る魔法陣の中に入り俺の背中に隠れる……これじゃ来た時と真逆の構図だな。
「速く!エリスもアクアも速く私をあの世界にッ!!」
「ま、ままま待ってね急ぐから……!!」
「………おいエリス。俺が言えた事じゃないが、今目の前で重犯罪が行われてるぞ」
「『………』」
今回は別の意味であたふたしているアクアを眺めながら、背中に今度は感じる余裕があるウォルバクの胸を堪能しながらエリスに聞く。
数秒程沈黙した後、エリスはコホンと咳を一つ付き少し低い声で俺に言う。
「『………カズマ、カズマの居た世界ではこの様な言葉があります。』」
脳内で人差し指を立てながら言ってくるエリスを想像し、俺は次の言葉を待った。
「『バレなきゃ犯罪じゃないんですよ、カズマ。』」
何時もとは違う立ち姿で言ってそうだな、今のエリス。
___後頭部に柔らかな感触を感じながら、俺は意識を取り戻した。
見慣れてしまった眩い光が無くなったのを感じ俺は目を見開く。
「………ただいまクリス。」
「おかえり、カズマ。」
そう言って俺の頭を撫でるクリス……これが、母性…?
俺は女神の優しい柔らかな感情と撫でられる手によってもう一度眠りにつこうとし……ウォルバクの事を思い出して起き上がる。
正直好きな女性の膝枕など一生味わっていたい……が、今はするべき事がある……それに照れくさいし。
辺りを見渡すと、そこは昨晩ウォルバクを倒す為に待機していた森林の中である事に気付く。
「ウォルバク先輩なら隣の茂みに隠して置いたよ。………流石元女神と言った所か、カズマよりも直接爆裂魔法を食らったのにも関わらず『リザレクション』が可能な程度には原型が残ってたからね。」
「まぁめぐみんも俺を巻き込み過ぎない様に多少は手加減していたとはいえ、ウォルバクとマトモにやりあって倒せる気がしないなぁ……。」
「そう?案外、カズマならなんとかしてくれたりして。」
そう言ってクスクスと笑うクリス………まぁ、過大評価ではあるだろうが褒められて嬉しくない筈がない。
………に、してもまさか二度目の恋が人間相手じゃなく女神様だとはな。
正直初恋のせいで恋愛にあまり良い思い出などないが、この世界にきて少しチヤホヤされたからだろうか……自信と勇気が有り触れている。
なんて考えながらクリスを眺めていると俺の視線に気付いたのか、少し照れくさそうにしながら髪の毛をクルクルと巻いている。
「___私を放置してイチャイチャと、お邪魔だったかしら?」
「うぉっ!?何だ置きてたのかウォルバク。」
「えぇ、『………ただいま、クリス。』ってとこからかしら?」
最初っからじゃねーか!!
別の意味で俺の顔が熱くなるのを感じていると、ウォルバクがクリスを懐かしむかの様な顔で見ていた。
その視線に気付いたクリスもまた微笑み返す。
「本当に態々有難うねエリ……いや、今はクリスだったかしら?」
「此方こそ!アクア先輩と気不味いままだと私も嫌だったからね。」
二人で握手すると、寂しいような顔でウォルバクが顔を伏せる。
「………その口調も、やっぱり男の影響かしら…。」
「え。」
「なっ!!ち、違うよっ!?元々この姿だとこの口調にしてるだけであって___!!」
「この姿?」
「あぁ、えっとね。こっちの世界と天界じゃ私姿を変えてるついでに口調も、ってことで…。」
その言ってエリスとクリスの違いをウォルバクに説明し始める……つまり、ウォルバクがこっちの世界に落とされてからエリスもこっちの世界に来たのか。
………もしかして、こっちの世界に来た理由ってウォルバクの状況を確認する為だったりして。
「成る程ねぇ……じゃあ、彼はコレじゃないの?」
小指を立て俺に指を指すウォルバク、こっちの世界にもそういうのあるんだな。
「ち、ちちち違うよっ!?誰があんな変態…!!」
と、聞き捨てならない言葉が聞こえてくる。
「おいおいクリス俺とは遊びだったのかよ!!一緒に風呂まで入っておいて……!」
「そ、そんな……あんなに可愛いかったクリスがそんな遊び人に…!!」
「もぉぉぉぉ黙っててよカズマァァァァッ!!」
俺の迫真の演技で項垂れてしまったウォルバクから手を離し、今度は俺の胸ぐらを掴みグラグラと揺らし来る。
………やっぱり、俺達はこういう雰囲気の方が合ってるな。
そろそろ視界が揺れ過ぎて吐き気を催しているその時、茂みからガサゴソと聞こえてくる。
不味い、クリスの大声で魔物か誰かが来ただろうか?
今ウォルバクが居る事がバレたら色々と不味い、俺を掴むクリスも警戒態勢を取り俺はウォルバクの前に立ち隠す。
段々と近付いてくる足音……暗闇から出てきた相手は___
「___て、あれ。めぐみんとダクネスじゃん。」
「あれとは何ですかあれとは、良い加減カズマも目を覚ましたかと思い迎えに………。」
「……何故ウォルバクが生きているんだ?」
「ち、違うんだお前達!これには深い訳が……!!」
そう言ってあった事を説明しようとすると、俺の横を物凄い速度で通り抜けウォルバクに飛び掛かるめぐみん。
ウォルバクも咄嗟に顔を守ろうと腕で顔を隠す……が、あまり意味が無かったみたいだ。
「………あ、あれ?」
「………」
そこにはウォルバクに抱き着いて居るめぐみん、そんなめぐみんを驚いた目で見下ろすウォルバク……とその状況を見守る俺達。
それもそうだな、めぐみんからしたらウォルバクの為とはいえ自分の師匠を教えてくれた魔法で殺したもんだからな。
めぐみんの精神的にかかる負担は相当の物であっただろう、アレだけ強い魔法を扱えてもめぐみんはまだまだ歳幼い少女なのだ。
この世界にもに来てから色々と倫理観というものがバグってしまっている気がするな、俺。
「………わ、わだじの事を、お、おぼえていまずか……?」
何処か涙ぐみ震えた声で顔を上げウォルバクに問うめぐみん、そんなめぐみんを懐しみにながら頭を撫でウォルバクも口を開く。
「………本当に覚えたのね。馬鹿な子ね、ほんっとに……。」
「………ッ!!」
数年ぶりの再会、自分が信じた魔法を教えてくれた師匠との対話。
お互いに抱き合いながら二人はお互いの事を噛み締めていた。
そんな二人を眺めてると、目の前が水に覆われている事に気付いた。
「………雨が、降ってきたな…。」
「ど、どういう状態なんだ!なぁクリスも泣いてないで何か言ってくれ!!カズマも雨なんて降ってないだろう!?」
「いや、雨だよダクネス。」
「クリスも何を言っているんだ…ッ!?」
何やら一人良く状況が分かっていない奴がいるみたいだ……全く、アイツは頭が硬いだけじゃなく鈍感でもあるだとか……何処まで属性を盛る気なんだあのドM。
五人の内四人が涙を流しているこの状況、端から見たら地獄絵図であろうこの状況が俺達の頑張りと成果を表している。
この後のウォルバクをどうするか、どうやって誤魔化すか、そんな面倒くさい事を今だけは考えるのを止め俺達は一人を除き皆涙を流していた。