この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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拝啓幸運の女神様
この素晴らしいエリス様と祝福を!拝啓幸運の女神様


 

 エピローグ「恋と敵と紅と」

 

「___えーと、つまりなんだ。もう一度説明してくれないか?」

 

「ハァ…だから、ウォルバクに関してなんだけどな?」

 

 感動の再会から一夜開け、俺はミツルギとゆんゆんを外に呼び出しウォルバクの事についての説明をしていた。

 

 ウォルバクの生い立ち、問題の解決、何故今ここに居るのか、といった諸々の事情。

 

 ゆんゆんは一度ウォルバクと会った事があるらしく、一度の説明で理解してくれて今やめぐみんと一緒にウォルバクに構ってもらっているのだが……。

 

「……つまり、ウォルバクはもう敵対していないのかい?」

 

「そうだって何度も言ってんだろうが!なんでそんなに理解出来ないんだよ…ッ!!」

 

「いやすまない…にわかには信じ難い事ばかりで……。」

 

 そう言って何やら考え込む格好をして立ち尽くすミツルギ、全く……今はそんな事に時間を使っている場合じゃないってのに…!!

 

 俺はめぐみんとゆんゆんに質問攻めにされてたじろぐウォルバクを眺めながら、今後ウォルバクをどう匿うか模索していた。

 

 流石に仲間として一緒に冒険すると言っても色々と問題があるし、城の警備している奴らに見つかってマッチポンプだと思われても困る。

 

 かと言って預けれる場所があるかと言われれば………まぁ、無いだろうな。

 

 俺達の家はアクセルの町中と言う事もあってもしご近所さんにバレでもしたら大変だ、紅魔の里も……なんだかんだ受け入れられそうだがもう一度封印されたらたまったもんじゃない。

 

 どうしたもんかと唸らせていると、クリスが何かを閃いた様で。

 

「……あっ!ねぇカズマ、あの悪魔に託したらどうかな?」

 

「バニルにか?でも結局アクセルの中だし見つかりでもしたら……。」

 

「カズマ。アクセルにはもう居るじゃないか、現魔王軍幹部が。」

 

 ………あ、そうじゃん居るじゃんもう。

 

 何時もポワポワしていて一応魔王軍幹部である事を忘れてしまっていた。

 

 そう考えるとあの町大丈夫なのか…?魔王軍現幹部と元幹部、挙げ句王家の右腕の娘に幸運の女神………大規模戦争でも起きるんじゃないだろうな。

 

 まぁ一度デストロイヤーとか言う歩く厄災が来たから強ち間違いじゃないか……とても駆け出し冒険者が募る町とは思えないな。

 

「あら?その子ってもしかしてウィズって名前の子じゃ……ちょ、ちょっと貴方何処触ってるのかしらっ!?」

 

「可笑しい…!可笑しいです…!!私に足りないのは爆裂魔法じゃなかったと言うのですか…ッ!?」

 

 そんな俺達の会話を聞いていたのか疑問を浮かべた顔でウォルバク……と、そんなウォルバクの胸を鷲掴みで凝視するめぐみん。

 

 めぐみんはアレだな、探究心旺盛だからある分野に関しては我を忘れるんだろうな。

 

 自分の知らない事を知ろうとするのは素晴らしい事だからな、俺は目の前の景色をこの目に焼き付けさせて貰おう。

 

「あの時から何処か変わった子だとは思っていたけれどここまでとは…!!貴方もいやらしい目で見守ってないでこの子を引っ剥がすのを手伝ってくれないかしらっ!?」

 

「あ、お構いなく。」

 

「何がお構いなくよどう言う事なのよぉぉぉぉッ!!」

 

 そんな雄叫びをあげながらめぐみんを引き剥がすとゼェゼェと肩で呼吸を整えていた。

 

 良い物を見してもらったとクリスの方へ振り返る………と、見慣れたジト目でこちらを見つめていた。

 

「どうしたクリス?」

 

「べっつにー?そのいやらしい目を誰彼構わず向ける変態さんに言う事はないよ。」

 

「おい誰が変態だダクネスじゃあるまい。」

 

 ツーンとソッポを向いて素知らぬ顔をするクリス、まぁ何百年と生きてきてその胸じゃしかたない……か。

 

 急に変態呼ばわれして興奮している手遅れなドMは頬って置いて、俺は改めてウォルバクにウィズに関して説明する事に。

 

「それで、ウォルバクはウィズと面識があるのか?」

 

「えぇ、と言ってもそんなに関わり深かった訳じゃないけど。彼女が私がまだ魔王城に居た時に良く『将来はダンジョンを作るんです!』…って、意気込んでいたのを覚えているわ。それと一方的ではあるけど、リッチーになる前から活躍は耳に流れ込んできていたわね。」

 

 ウィズの過去……何だか凄腕のウィザードである事は知っているが、年齢を聞こうと具体的なリッチーになった時を聞いて見た事ない剣幕で怒られて以来聞けてないな。

 

「まぁ、面識あるならなんとかなるか。それに最悪バニルも居るし店員として雇ってもらえば……。」

 

「げっ、あの仮面の悪魔もいるの…?」

 

「……その反応を見るに、苦手意識があるみたいだな。」

 

 まぁアイツが苦手じゃないと言える人間など存在しないだろう……それ位厄介な相手だ。

 

「え、えぇ…まぁ。私の生い立ちを知っている人物……悪魔?でもあるから良く揶揄われてたのよ、『おやぁ?女神にも関わらず怒りに任せて魔王軍に入って来て置いて、実際に魔王軍幹部になると何処か気が引ける紛い者ではあるまいか!さぁさぁ女神の敵対者であるこの地獄の公爵にして見通す悪魔である我輩に人生相談は如何?……ってあぁ貴様はもう女神ではなく、此方側に堕ちていたのだったな!!失敬失敬!!』って。」

 

「昔から良い性格していたみたいだな。」

 

「ホントにね…。」

 

 そう言って困った様に苦笑いするウォルバク。

 

 ………あれ?でもそうなるとウォルバクの扱いは一体どうなるんだ、元女神であり元魔王軍幹部であり、女神にも戻れずかと言って魔王軍にも戻らない。

 

 一般人かと言われればそうじゃない……確かに紛い者かもしれないな、今は。

 

 まぁそんな事を考えても俺にどうにか出来る事じゃない、取り敢えず今はウィズにウォルバクを匿って貰わなければ。

 

 俺は標的を変えて胸を鷲掴みされているゆんゆん達の方を向く。

 

「おいめぐみん、そろそろ帰る準備をしろ。ゆんゆんもテレポート頼めるか?」

 

「え?え、えぇ出来ますけど……そ、そろそろ離してくれない!?」

 

「フンッ!今回はこれ位で勘弁しましょう。………カズマも何鼻の下を伸ばしてるんですか、やっぱり巨乳ですか!!巨乳が良いんですか!!」

 

 とまた暴れ出しそうなめぐみんを押さえつけながら、俺はクリス達にも伝える。

 

「おーいお前ら!そろそろ帰る準備するぞ。ウォルバクは……何か顔を隠せる物でもあるか?」

 

「えぇ、旅をするのに被っていたフードがあるわ。」

 

「良し。ミツルギはどうする?お前も一緒に帰るか?」

 

 未だ何かを考え込んでいてミツルギに声を掛けるとハッと我に返ったのか、俺の言葉に首を横にふるふると振る。

 

「いや、僕はウォルバク討伐の報告をしに行くよ。勿論しっかり君達が倒した事を、ね?」

 

「別に手柄を横取りされる心配なんてしてねーよ。」

 

 俺の手柄と言う言葉に何処か複雑そうなウォルバク、まぁ自分の殺された報告や報酬の話をされればどう感じれば良いのか困るだろうな。

 

 俺達に手を振りながら踵を返し森から離れるミツルギ、俺達は俺、めぐみん、ダクネス、ゆんゆんと、ウォルバク、クリスと二組に別れテレポートで戻る事に。

 

 ウォルバクがテレポート先にアクセルの町を設定してくれていて助かった、ゆんゆんが一人で二往復するのは魔力量的にも厳しいし何より面倒くさいからな。

 

「そ、それじゃあ先に行きますね…!!『テレポート』!!」

 

 そう言ってこれまた見慣れた光に視界が包みこまれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一章 このシスコンお兄様にご依頼を!」

 

 

 

「___と、言う訳で匿ってやってくれませんか?」

 

 テレポートで無事アクセルの街へと戻ってきた俺達は、ウォルバクをウィズの店へと案内していた。

 

 目の前には真顔でウォルバクを見下ろすバニルと、久しぶりの再会ということで手を叩き喜ぶウィズと真反対の反応であった。

 

「いやー随分と久しぶりですねウォルバクさん!でもまさかその様な経緯があっただなんて……勿論良いですよ!ね、バニルさん!!」

 

「ふむ……おい紛い物、まさかただ飯食わせとは言わないだろうな?」

 

「紛い物はやめてくれるかしら…!勿論、私の出来る事なら何でもするわよ。」

 

「そうかそうかならば良かろう!!呼び名はそうだな……貴様の半身から取ってちょむすけと呼ばして貰おう。これから共に宜しく頼むぞ?ちょむすけ。」

 

「………ねぇ、もっとマシな引き取り先は無かったのかしら…?」

 

 恨めしそうな顔で俺を睨んでくるウォルバク……仕方ない、そこら辺は割り切って貰うしかない。

 

「まぁそう言う事だから、めぐみんもちょむすけに会いたかったらここに来れば何時でも会えるからな?……っておいおい、お前じゃねーよ。」

 

「なーお。」

 

 小さい方のちょむすけが呼び名に反応して俺の足元をすりすりしてきた為、持ち上げて腕に抱えてやる事に。

 

 俺からのちょむすけ呼びに反応するのも疲れるのか深い溜息を吐き、全てを諦めたかの様な表情で天井を見上げていた。

 

 そんなウォルバクの様子を苦笑しながらも何処かワクワクした様子のめぐみん……ま、コイツがこんなに喜んでくれてるんなら命張って良かったと思えるな。

 

 もう二度としたくないけど。

 

 ちょむすけを撫でながら店の中を見渡すとあいも変わらず胡散臭そうな顔で商品を見るクリス、とそんなクリスを宥めているダクネス……アイツは何時になったらウィズ達と仲良くなれるのやら。

 

 と、店の奥隅の方でこちらをチラチラと見る少女を発見する。

 

「___今回の件は色々と助かったぞ、ゆんゆん。」

 

「ひゃっ!?は、はい。お役に立てた様でなによりです…!!」

 

 自分に話し掛けられるとは思ってなかったのかオドオドしながら返事を返すと、こちらが感謝しているのに何故かゆんゆんが頭を下げる………この子は色々と大丈夫だろうか。

 

「あ、なぁそう言えばさ。めぐみんとウォルバクに繋がりがあるのは知っていたけど、ゆんゆんもウォルバクと交流があったのか?」

 

「え、えーとですね。私が一人で旅をしている時に同じ馬車に乗っていて……!あ!も、勿論その時はウォルバクさんだとは知らなかったんですが……。」

 

「ほーんそんな事が。」

 

「は、はい!」

 

 やはり日本に居た時から感じていたが、世界って言う物は案外狭いな。

 

 にしても、ゆんゆんの強さを見るともしめぐみんが爆裂魔法に出会わなかったら……なんて考えてしまうな。

 

 その時は今よりも活躍して強いptにでも入っていたのだろうか?はたまた紅魔の里から出る事すらしなかったのだろうか……色々と考え深いな。

 

 と張本人へと目を向けると、何やらダクネスと一緒に店の商品を物色しているみたいだ。

 

 顰めっ面で爆発するポーションを見るめぐみんをオロオロしながら落ち着かせるダクネス………あの光景を見ると、とてもじゃないがこのpt以外で活躍するめぐみんの姿を想像出来ないな。

 

 てあれ、クリスは何処行った?

 

 先程めぐみんのポジションがクリスだった気がするが………そう思って辺りを見渡すと店の中に居ない。

 

「すまんゆんゆん。クリス何処行ったか分かるか?」

 

「い、いえ。カズマさんに話し掛けられる前まではお店の中に居たとは思いますが……。」

 

「そうか……ちょっと探して来るわ!ちょむすけ頼んだ。」

 

 そう言ってゆんゆんにちょむすけを預けると、店の扉を押し外に出る………と、丁度こちらに向かって来ていたクリスと目が合い手を振ってくる。

 

 振ってない方の手には何やら……手紙?らしき物を持っていた。

 

「やーやーカズマ!お迎え御苦___あでっ!」

 

「何も言わずに急に居なくなるなよ全く………んで、何貰って来たんだ?」

 

 上から目線の態度で戻ってきたクリスにチョップを構し、持っていた手紙を指差す。

 

「チョップする事ないじゃんか……はい、これカズマ宛の手紙。さっき店の中で何時も手紙を運んでくれている人見掛けたから話し掛けに行ってたんだよ。」

 

 そう言って大袈裟に頭を押さえるクリスから手紙を受け取り差出人の欄を見ると……クレア…?嫌な予感がする。

 

 俺は急いで手紙の中を確認するべく丁寧に折られているのをお構い無しにビリビリと破き中を確認。

 

 そんな鬼気迫る俺に手紙の中が気になるのかひょこりと背後から手紙を覗き込む………ちょっと近いですクリスさん良く見えません。

 

『___拝啓、サトウカズマ殿。王都近くの砦においての件に関してのお礼を送りたい、ともう一つ。これは王都、としてではなくクレアと言う一人の人間のお願いとして、聞いて欲しい依頼がある。それは………』

 

「___王女アイリスの許嫁との顔合わせの……護、衛……?」

 

 刹那流れるアイリスとの今までの楽しい時間の"記憶"。

 

 この世界に来てまだ間もなく、ptメンバーよりも短い時間でしかないたったほんの一時の時間。

 

 嬉しそうに、にこやかに、照れながら、お兄様と可愛らしく呼んでくれたアイリスの笑顔。

 

 モジモジとしながら遊んでくれと朝早くから訪ねてきたアイリス、クレアと楽しそうにお喋りをしながらご飯を食べるアイリス、悔しそうにしながらも、何処か嬉しそうな表情でボードゲームをするアイリス。

 

「……ね、ねぇカズマ?大丈夫…?」

 

 この世界に来て文句の一つのつけようの無かった煌びやかなアイリスとの思いでに今、どす黒い汚れた亀裂がピシリと入る。

 

 鳥肌が立ちワナワナと震える自分の手紙を持った腕を押さえながら、俺はクリスに振り返り告げる。

 

「………もう…駄目だ…。」

 

「カズマっ!?ちょ、ちょっと!!カズマァァァァァァァッ!!!!」

 

 急に力が抜ける感覚に陥った俺は、聞いた事のない位にデカい声で絶叫しながら俺の名を呼ぶクリスの声を最後に目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体が揺さぶられているのを感じる。

 

 俺は重たい瞼を開け俺の身体を揺さぶる人物を視認する……と、クリスが心配そうに俺を見下ろしていた。

 

「あ!大丈夫?カズマ。」

 

 そう言って顔を覗き込んでくる……近いですクリスさん。

 

「ここは……俺の部屋、か。」

 

「うん。全く心配掛けないでよカズマ!!あの後事情を話してダクネスに運んで貰ったり、倒れた原因を聞いて『カズマはアイリスの事は随分と心配するんですね?』って不貞腐れためぐみんを宥めたり色々と大変だったんだからッ!!」

 

「………そうか。に、してもめぐみんは何処に嫉妬してるんだよアイツ……。」

 

 ダクネスには後で平謝りするとして、めぐみんは俺に好意を隠さず伝えてくるのは嬉しいのだが何処かちょっと変わっている……いや、俺の事を好きになる時点で変わり物か。

 

 何て考えていると、クリスが何処か遠い目で俺を見下ろしながら口を開く。

 

「……でも、倒れる位心配してくれる好きな人って素敵じゃない?私はそう言うの憧れるなぁ。」

 

「なら、クリスに何かあっても倒れて心配してやるよ。」

 

 そう言ってカッコつけながらクリスに告げると、少し驚いた様子で俺を見た後何時もの笑顔に戻る。

 

「そう言うセリフは心配される立場の状態で言うもんじゃないでしょ。」

 

 ぐうの音も出ない正論でアハハと笑いながら立ち上がるクリス。

 

「……でも、何時も心配する立場だったから。もし心配してくれるなら嬉しいかな、私。」

 

 何処か妖艶さを醸し出しながら部屋から出て行くクリス。

 

 女神は女神なりにただならぬ事情があるみたいだ。

 

「あ、そう言えば。」

 

 先程の様子は何処へやら、何時ものクリスに戻った様子で顔を覗かせる。

 

「?どうした。」

 

「カズマって解毒魔法覚えてる?」

 

「いや、覚えてないけど。」

 

 そう言うと少し困った様子で眉を下げた後、あっと何かを思いつたのか慣れた手付きでエリスに変身。

 

 ………なんか、こうナチュラルに目の前に女神が降臨したってのにもう驚きも出ないな。

 

 クリスも……いや、エリスもエリスでこう最も躊躇しないのだろうか。

 

 アクアも言っていたが、あまり女神としてこの世界の人間に干渉するのは良くないと聞いているが……エリスも悪い意味で俺達の無鉄砲さに慣れてしまったか。

 

「ふぅ……それじゃあ、今からカズマさんに解毒魔法を掛けるので覚えて下さい。」

 

「あ、はい。」

 

 ブツブツと呟き始め、数秒も経たない内に俺の身体が少量の光に包まれる。

 

 まぁ、毒になってないので俺の身体に変化はないが。

 

「良し!これで取得出来るでしょ。」

 

「……あ、なぁ覚える分には全然良いけどさ、急に覚えろって何かあったの?」

 

 ポケットからカードを取り出し、ついでに色々とポイントを振り分け様と操作しつつ何時の間にかクリスに戻っていたクリスに気になっていた事を聞く。

 

「ん?あぁ実はね、今日の晩御飯皆で鰒でも食べようかなって。」

 

「………なぁ、もしかして毒抜き出来ないから……。」

 

「フッフッフ、流石カズマ御名答。倒れたカズマを心配してダクネスが鰒買って来てくれたんだから、感謝しなよ?」

 

「いや今不安要素が一つ出来たんだが。」

 

 分からないといった様子でコテンと首を傾げるクリス、いや今は可愛いよりも恐怖が勝つ。

 

「もし俺とクリスが同時に魔法が使えない位痺れたらどうするつもりだよ。」

 

「あー、まぁそれが心配だったからカズマにも覚えさせたんだけど。まぁ何とかなると思うよ!うん!!」

 

 何処か楽観的なクリス、女神は効かないだとかそういうのがあるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アレはきっと、いや絶対根拠ある自信じゃなく行き過ぎた自意識であろう。

 

 女神だからなんとかなる、二人も解毒魔法が使える人間……人間?が居るからなんとかなる、運が良すぎた故の事故。

 

 場所は俺達の家のリビング。

 

 七輪に乗った美味そうな鰒のヒレを囲っていた俺達は今、皆それぞれ多種多様な倒れ方をして椅子から転げ落ちていた。

 

 あるものはビクビクと何故か気持ち良さそうな顔をして倒れる者、あるものはトイレに項垂れて一定間隔で嗚咽の音を出す者、又あるものは___。

 

「___お、おまえ……全然駄目じゃねーか…!!」

 

「おかひぃ…!れっはいにおかひぃよぉあじゅまぁ…!!」

 

 俺は手と脚が痺れ天井を見上げながら、近くにいるであろう舌と手脚の痺れたクリスに悪態をつく。

 

 ダクネスは色んな意味で手遅れとして、一番毒が回っているであろうめぐみんはずっとトイレに籠もっている。

 

 不味い、本当に不味い!!このままだと鰒の毒で全滅した馬鹿なptとして世に名を残す事になる…!!

 

 それにしても何で全員ほぼ同時に毒が回るんだよ………クリスも言っていたが、とても運の女神が居るptの運じゃ無さすぎる。

 

「クッ!!は、早く。解毒魔法の範囲に来てくれクリス…!!」

 

「ほ、ほれえもいほいれるんあよぉッ!!」

 

 いよいよ聞き取れなくなった滑舌でズリズリと音を出しながら、解毒魔法を掛けれる手の先へと移動しているクリス。

 

「も、もうふほし、もうふほしえ………!!あっ。」

 

「………?おい、嘘だろクリス。質の悪い冗談は辞めてくれ、おい!クリスッ!?」

 

 何とか首を動かし声のした方へ顔を向けると……。

 

 ___し、死んでる…ッ!?

 

 口からぶくぶくと泡を吐き本当に不味い状況に陥ってしまった。

 

「だ、誰か助けてくれぇぇぇッ!!俺の、俺の手を俺の胸に持ち上げるだけで良いから!!そしたら解毒魔法掛けれて何とかなるから!!誰かぁぁぁぁッ!!」

 

 ドンッと大きな音がダクネスが倒れていた方向から聞こえてきた。

 

 ズンッ、ズンッ、と此方に近付く音が聞こえる………ま、まさかダクネスお前…!!

 

「ハァッ…!ハァッ…!ハァッ…!」

 

 何時もの火照ったドM顔では無く、本当に仲間の危機を救おうとする本気顔のダクネスが俺を見下ろしていた。

 

「ダ、ダクネス…!!」

 

「ハァッ…!クッ、後は、たの……ん…だ。」

 

 なけなしの力だったのだろう、俺の右腕を何時もなら軽々持ち上げる所ヨロヨロと脚を震わせながら何とか持ち上げ、そのまま倒れ込む。

 

 持ち上げられた俺の右腕は宙に放り出され、そのまま俺の胸目掛けポトリと落ちる……良くやったダクネス!!

 

 ダクネスのファインプレーによって何とか神経を取り戻し、まだ少しグルグルと気持ち悪い感じを頭に残しつつもヨロヨロとクリスとダクネスに手を向け『解毒魔法』を唱える。

 

「おい、大丈夫かお前ら…!クッ、効くか知らんが『ヒール』ッ!!」

 

 少し顔色が悪いが普通の呼吸に戻ったダクネスとは対照的に、泡まで吹いていたクリスは泡は出ずとも青紫色の顔色を維持していた。

 

 呼吸もまだ荒い……不味い、このままクリスが死んだらエリスってどうなるんだ…?それにアクアに何されるかたまったもんじゃない。

 

 考えろサトウカズマ、状況の起死回生の一手を……!!

 

 ………いや、一つだけ思い付いた。

 

 それに多分、というか絶対に上手くいってくれるだろう………が、個人的にこんな短期間で何故二回もしなければいけないのかと思うのともう一つ、後で何言われるか分からない。

 

 ただ背に腹は代えられないだろうサトウカズマ!!グダグダ言ってる暇あったら心を鬼にして___!!

 

「___『ピュリフィケーション』……。」

 

 あまり長い時間を掛けてしまえば俺が殺す羽目になる為、二十秒もしない内に手を喉元から引き抜く。

 

 チラリとクリスの顔色を確認すると、先程よりも幾分かマシになったのか呼吸も安定し顔色を取り戻していた。

 

 倒れ込んだダクネスとクリスを見下ろしながら立ち上がると、俺は汚れてしまった手を綺麗にするべく洗面所へと向かう。

 

 ………クリスに、ウォルバク、後はアクアに突っ込めば女神の喉元をコンプリート、か。

 

 絶対しないししたくないしする気もないが、もしこの事情を知られようものなら二人の信者に殺されてしまう……ウォルバクに信者ってまだ居るのか?

 

 本人に聞いたら怒られそうだから聞かないが、クリスにでもそれとなく聞いてみよう。

 

 そう思いながら洗面所へと移動していると………ボジャン、と水に何か落ちる音が聞こえてくる。

 

 そちらに顔を向けると音はトイレの方から聞こえてきていた。

 

 ………あれ、確かトイレってめぐみんが籠もってゲロゲロしてたよな。

 

 そう言えば、定期的に聞こえていた嗚咽も何時の間にか聞こえなくなってたよな。

 

 ___えっ。

 

「___めぐみぃぃぃぃぃぃんッ!?」

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