「おい!待て!」
イタリアのヴェネツィアで、私は追いかけられていた。
後ろを振り返ると、私の知っている顔が銃を持って叫んでいる。
フェニックス、それが彼の名だ。炎を操るイギリス人レディアント。流行に敏感でいつでもイケてるクール・ガイ。
いつもは声をかけられたら喜んで話を聞くのだが、今日は少し事情が違う。何故ならあいつは、私のよく知るイケメンではないからだ。
あいつが狙っているのは、私の背中にある鞄に入った爆弾、【スパイク】。
「待てって言ってんだろ!」
…うるっさいなぁ。
そう思って私は腰に引っ提げているナイフを5本取り出した。別に近づいてこれをあいつの体に叩き込むわけじゃない。なんせ相手は銃を持っているんだ。そう易々と近づけるわけがない。
後ろを振り向いて自分の腰のあたりでナイフから手を離すと、まるで魔法のようにナイフが浮いた。どこからともなく現れた気流に乗ったそれは私の周りを囲むように展開されていく。
風を操るレディアント、ジェット。それが私の名前だ。
「はっ!」
私が手を振ればナイフは高速で飛翔し、弾丸の如く体に風穴を空ける。
一斉発射されたそれらはしつこいあいつの方へ飛んでいった。
「うおっ!?」
4本のナイフをどうにか避けたものの、残りの1本のみが肩に刺さって走る足が一瞬遅くなったフェニックスを横目で見た私は、この隙に【テイルウィンド】…所謂ブリンクで疾風の如く前方へ飛んでいき、あいつとの差を開く。
「やんのか、おい!」
炎が燃えるような音がして上を向くと、あいつが作った火の玉【ホットハンド】が私の前をめがけて落ちてきている。
次の瞬間燃え広がる地面を前にして、私は臆することなく地を蹴り、【アップドラフト】で屋根の上へと飛んだ。
あいつは空を飛べない。これでようやく撒けるはず。
そう思って煉瓦の屋根に着地し、走り出そうとしたその瞬間、銃声が聴こえた。一切の刹那さえ許さない速さで1発の弾丸が飛来する。
「うわっ!」
肩を抉られ、体勢を崩した私は屋根の向こう側に落ち、受け身を取る間もなく地面に叩きつけられた。
全身が痛い。肩を押さえながらふと向こうを見ると、肩に当たった銃弾によって紐が引きちぎられたのであろうスパイクの入っているショルダーバッグが落ちていて、その向こうではフェニックスが炎の壁【ブレイズ】を作りながらこちらへ駆けてきている。
スパイクが奪われる!
立ち上がった私は全速力でスパイクの方へ走り出す。
しかしあともう少しのところで炎の壁がスパイクを囲み、私は燃える炎に弾き飛ばされ、後ろの壁に激突した。
ぜえぜえと肩で息をしながら、スパイクを奪われたことに私は自分の不甲斐なさを感じ、同時に責め立てた。
もっと隠密性の高いルートで目的地に向かえなかったのか?この広く複雑な街に、そんな道はいくらでもあった筈だ。そもそもあいつに見つかりさえしなければ…
「お遊びはここまでだ」
フェニックスの声だ。どうやらまだスパイクを回収して撤収してはいないらしい。事実足音がこちらへ向かってきている。炎が燃える音で少し聴こえづらいが。
焦げた梁が目の前に降ってきた。このままでは本当に逃げ道がなくなってしまう。ブリンクを使えばこの炎の壁を抜けて攻撃できるかもしれない。
自分の脚に風を纏わせて、腰についているハンドガン【ゴースト】に手をかける。
チャンスは一度きりだ。あいつがどこにいるのか、その裏をかけ。
次の瞬間、纏った風を解放し、生み出した気流に体を乗せ、炎の壁を突っ切った。
刹那、服に少し火が燃え移ったような気がしたが、知るもんか。風で消し飛ばしてやる。
見事に裏をかいた私に間抜けヅラを晒したあいつを目でしっかりと捉えて、銃を構えたその瞬間ー
「ねぇ、何してるの?」
「「…え?」」
水色の閃光と共に、私の射線がオレンジ色のゴーグルをつけた少女に遮られる。突然の邪魔に思考が一瞬停止し、間抜けヅラを晒した2人の間抜けな声が響いたのだった。
最後の部分以外まんまトレーラーと同じ内容なので、わかりづらかったらYouTubeでDuelistsのトレーラーを見てください。