◆ ◆ ◆
『
『
街が燃える。空が泣く。
ビルは崩れ、路は割れ、いたるところにモノ云わぬナニカが無数に転がる。
空は黒く、赤黒くなり、
その地獄のような光景に一人、佇む少女がいた。
彼女は何もかもを灼き尽くした。
彼女は救われる事を望めない。
滅びを齎す黒い鳥。
天使でも悪魔でも無い。ましてや神などでもない。
『聴こえない』
『聴こえないんだ。祈りの声が』
『―――ああ、恐ろしい』
彼女の頭上の光の輪の輝きが収束し
放たれる
◆ ◆ ◆
目を覚ましたのはついさっき。
どうにも夢見が悪かったのか、頭が痛い。
……ここは、どこの病院だ? 装着されている酸素マスクが逆に息苦しく、自力で外す。と、左肩の痛みが走ってきた。
(……そういやそうだ)
ゲヘナで暴れてたオートマトンを破壊して、隠れてたもう一機にカウンターを喰らったんだったか。あの野郎…いや製作した奴か? ああいう場合を想定していたかのような装備位置だったな。
データ取り、ぶつかり稽古、色んな言い方があるがイイ性格をしてる。
「………」
寝ていても仕方無いので身体を起こす。何日眠ってたのか判らんがあっちこっちの関節がギシリと軋み音を上げた。
「あっ、カザナさん! 起きたんですか?」
「ああ!良かったぁ!」
気付くとこの部屋、病室に誰かが入室してきた。
……キッチンワゴンを押しながら『給食部』の『
「ジュリ、セナさんを呼んで!」
「はい!」
―――――
―――
―
「そんなに眠ってたのか…」
フウカとジュリ、そして駆け付けてきたセナから話を聞けば、どうやら丸5日は意識不明だったようで。
あれから何かあったかと聞けば。
「風紀委員会が『アビドス高等学校』といざこざがあったみたいで…」
「…“あの”アビドスとか?」
『アビドス高等学校』。
今だ砂漠に呑まれ続けている廃校寸前の学校。
何度か配達に赴いたことがあるが、何年か前に一悶着あったこと、あの陰謀屋が『アビドスにヤバいのがいる』と洩らしたのを耳にした記憶がある。
だが配達したときにそんな奴がいた記憶は無いが…?
「詳細は?」
「私が伝えます」
フウカとジュリが作ってくれた療養飯を食べさせてもらうというやや羞恥プレイをしながら、事のあらましを私に繋がれてた点滴やら包帯やらを交換しながらフウカから引き継いだ。
イオリ、アコ、チナツの三人が、あのオートマトンの捜索をヒナを押し切る形で専行。
私を気絶させたのちイオリの狙撃を掻い潜って逃亡。そりゃ頭来る。風紀委員会に泥塗ったんだから。……それを言ったら私も同じか。依頼されてたのに気絶して担ぎ込まれたとは情けない。ヒナに全額返金する手続きしてもらうとしよう。
「逃げた先がアビドス方面らしいというのは判明したようです」
「まさかそれだけの理由でアビドスに喧嘩売ったのか?」
「まぁ…、虫の居所が悪かったというのもあるかも知れません」
「はい、答鵺先輩。あーん」
……ぁむ。大方、イオリとアコが吹っ掛けたんだろう。
「美味い! で、どうなったんだ」
「カザナさん。このメロン、ジュリが育てたんですよ!」
「何? ……メチャメチャ美味いぞコレ!」
「話を続けても?」
「あっはい」
なんだこのメロンはぁ…ンまいなぁぁ…。
っと、セナがキレそうだから一旦フルーツ類は備え付けの冷蔵庫にしまってもらって話を続けてもらう。
「その後はヒナ委員長、アビドスの小鳥遊ホシノさん、『シャーレの先生』が仲裁してくれたようですので戦闘にはならずに済んだようです」
「…そうか」
危うく取り返しの付かない事になりそうだったのを、先生たちが上手く収めてくれたらしい。
……ん? 先生?
「シャーレが介入したのか?」
「どうやらアビドスに赴任していたので巻き込まれた形にはなります。おそらく、噂を聞きつけたアビドスの依頼を受けたのかと」
ああ思い出した。たしかサンクトゥムタワーで暴れてた不良共を追っ払ったとか話があったな。
……ワカモに誘われてたような。
「ごきげんよう、ワタリガラスさん。
D.U.外郭部を襲撃します。ご一緒しませんか?」
「私が受けるとでも思ってたのか?」
それもあって名声が広まって、アビドスの話を受けて……って感じだろう。ご苦労なこって。だが助かった感はある。
あのオートマトンへぶつけるための戦力を他校にぶつけるのは流石にお門違いだ。アビドスがオートマトンをけしかけたなんて証拠がある訳でも無し。
「チナツはともかく、アコとイオリはそれからどうしたんだ」
「騒動にはならなかったとはいえ、アビドスと事を構えそうになりましたから大人しく反省文を書いているそうです」
「そうか。あぁそれと、私の装備は?」
「全て回収して、整備部が管理しています。勿論、破壊された銃も」
「助かる」
「では、包帯類の交換は終わりました。あとは大人しく療養していることです」
そう言うと、セナは使用済みの包帯やら処分するものやらを持って退室していった。
「フウカ、ジュリ。飯ありがとな。美味かった」
「その言葉だけでも報われますよ」
「答鵺先輩、あまり危ないことは…」
「善処はするが約束は出来ないな。…今回のは不意打ちだったから」
飯を届けて…く、食わせてもらって有り難い事だ。これで学校の連中は感謝すら無いんだからゲヘナだよなぁ。いっそ攫ってシャーレに運ぶのも手だが……二人が納得しないだろう。
「今更な話だが、あの時無視して悪かった」
「あの時? ……ああ!あの変なオートマトンたちと争ってたとき!」
「目ぇ合っただろ。あの時はとてもじゃないが…」
「あの時は仕方なかったですよ。でも、カザナさんのおかげで私もジュリも怪我が少なくなって、かなり抵抗もできるようになりました!」
「ほう。アレ役立ってるか?」
何を隠…して無いんだが、何かと美食研究会に拐われるフウカと、ついでのように気絶させられるジュリを何かしてやれないかと思い、武器をいくつか貸し出している。使用料とかレンタル料なんかは取らない。代わりに使用感と要望、つまりデータ取りを協力してほしいと約束をしているだけ。
フウカに貸し出したのは、本人が使っているのよりは少々大きくなってはしまうが、マシンガンの【MWG−MG/800】を。
何かと被害に遭いやすいジュリには中型シールドの【KSS−SS/863B】とショットガンの【USG−11/H】を渡している。
二人ともよく使いこなしているようで、『メーカー』からも好感触。是非他のも試してほしいとの打診があったが、『産廃』を送り付けてくる可能性がな…。
おう何でバズーカ撃ったら弾の方が出た瞬間に散り散りになってるんだよ。拡散弾?嘘を言うな!
「バシバシ当たるし、ガンガン撃てるんですよあれ!」
「私も盾のおかげでフウカ先輩をお守りできて嬉しいです」
「よしよし、あいつらも多少は懲りるだろ」
毎度毎度何かに付けて給食部を急襲していくのは借りがあるとも流石の私でも目に余るからな。
まぁ、後は先生が何とかしてくれるだろう。
じっとしてるのも暇なのでフウカとジュリに着替えを手伝ってもらい、繋がっている点滴やら何やらを外し、ゲヘナの整備部へと行くことにする。生憎左肩が動かせないから二人の監視…見守り付きで。
そこはゲヘナ学園でもかなり広い1画を持つ部活でもある。
大体は自分ではどうにもならない品の故障から、頼めば定期的なメンテナンスまでしてくれるゲヘナにしてはマトモな部活だ。……まぁ、機械いじりが好きな変わり者が集まった、ミレニアムのエンジニア部に近い感じがある。あそこまでの天才の集いじゃないし、付けるなといったのにとんでもない改造をやらかす奴らではない。マトモなんだ。マトモの基準は知らんけど。
「おっ!カザナさぁん!今日は給食部のお二人連れて両手に花っすかぁ?」
「見る目あるな。あとで給食部でフウカとジュリの真心料理を食う権利をやろう」
「ヒャッハー!」
今軽口を言い合ったのは整備部の副部長であり、私と『メーカー』専門の整備をしてもらっているメカニックでもある。しかも堂々と部室内の一画を使わせてもらってるいう充実っぷり。
私がよくそこに来ることを誰が呼んだか【Raven's Nest (渡鴉の巣)】なんて言われてたりもする。
まぁ悪い意味ではないし、寧ろカッコイイまである。言った奴、良いセンスだ。
「あのぅ…私達はお話聞いても大丈夫なんですか?」
「あー構わないっすよ! 整備に関することだけなんで!」
まぁ特に聞かれて困る話でもなし。それに付き添ってもらっておいてよそで暇潰しといてくれなんてそれは無い。
「さてさて。預かったインカムから映像データを見させてもらいました。……ありゃ何処の回しもんっすかね?」
「それはこっちが聞きたいくらいだよ」
「ウチのガトを、しかもバレルをぶった斬るなんて相当っす。しかもカザナさんしか使わないようなレーザーブレードで! あれ作ったやつはとんでもない変態、いやド変態っすよ!」
副部長の愚痴、基所見はまだ続く。
「そも何なんすかあの設計!近距離と遠距離のみしか対応しないてか懐に入ってきたら斬ればいいみたいな発想は!上半身人型、下半身フロート式タンクっていうアセンブリはいいとしてあのグレネードのようなもんの設置場所からしてやられる事を想定したような位置っすよ!一体何と――」
「分かったわかったから。長くなるか?」
「なるっす! まぁ残りは今度にして、今は武器の修理とオートマトンについてっすね」
あれやこれやと長くなりそうだったので区切らせる。聞いてたフウカとジュリも若干引き気味。
本題はそっちだ。後で目一杯聞いてやっから。
「まず。ここじゃ修理不能っす。故障くらいならどうとでもなるっすけど、バレル丸ごととなるとメーカーに持ってくしかないっす。ここで似たようなモノは作れるかもしれないっすけど、そこから最悪全部ダメになったーなんて笑えなくなるのは勘弁願いたいっす」
「交換ならどれくらいかかる?」
「データは抽出してあるんで二、三日くらいで終わるはずっす。ただ…、原因が原因なんで一日二日延びるかもしれないっす」
「構わんさ。早急に使うもんでもない」
私の武装を扱っている
延びる主な理由としては、私が負けたり、データでは分からない壊れた原因を探るため。またはオプション類の選択、センサー類の調整とか。……もしくは、研究員が変なモノ作ったから対処してた、とか。
更に謎なのは、要求するのは何故か金ではなくデータ。研究員と言われてるあたり、そういう集団なのか。ネットで調べても出てこない企業なんてヤバい以外無い。
そのヤバい企業達と約束しちまった私は何なんだってね…。
「んでんで、いつもみたくあっちから色々依頼やら連絡やら来ますんで、よろしくっす」
「あいよ。あれから私の装備は?」
「モチ全部回収してもらって全部メンテ済っす。インカムもアップデートしてあるっすよ」
「助かるよ」
「さすがに医学部の方々がここまで持ってきたのは面食らったっすけどねー」
……医学部、ひいてはセナやカコには頭が下がる。今度何か差し入れたり手伝いをしますか。
―――――
―――
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[ 新着メッセージが届いています ]
―――アビドスへ出向前。
[真昼のゲヘナ自治区騒然!]
[謎のオートマトン大暴れ!]
[風紀委員会も全力全壊!?]
著:風巻マイ
そんな見出しが躍る『月刊キヴォトス』。
読めばゲヘナで事件が起きたとのこと。
発端はユウカが連邦生徒会に問い詰めた風力発電のシャットダウン。それと同じような騒ぎがゲヘナでも起きたらしい。その調査を風紀委員会が行い、その最中にオートマトンの暴走事件が発生、対処したようだった。
そこに上空からの写真がいくつか掲載されているが、肝心のオートマトンの写りがボヤケている。
「………」
“先生”はアビドス砂漠に向かう準備として最寄りのコンビニへと赴いていた。
その時に、ふと表紙に目を引かれた。
「ゲヘナが…」
読み進めてはみたが、憶測と風紀委員会への言いがかりに近い批判しかあらず、流石にこれ以上の情報は無いと立ち読みを止め、必要な物を買い求める。
その後、アビドス高校の『アビドス廃校対策委員会』の皆に出会い、無理矢理占拠しようとする不良達と戦い、多額の借金の謎を追い、ブラックマーケットに行ったり、そこで会ったトリニティの生徒と、たまたまいたブンブン団と一緒に銀行強盗をしたり、『便利屋68』の皆とも出会った。険しくてもどかしい問題があるが、なかなか楽しい時間でもあった。
しかし―――
「お前ら、アビドス高校の生徒だな?」
裏で手ぐすねを引いていたカイザーコーポレーションの証拠を掴み、一安心して、セリカがアルバイトをしている柴関に入ろうとした矢先……
「あなたが噂のシャーレの先生ですね? 私は風紀委員会の行政官、天雨アコです。少々お訊ねしたいのですがよろしいですか?」
ゲヘナ学園の生徒三人を筆頭に風紀委員会がやたら重武装をしてアビドス自治区にやってきた。……妙に殺気立っていて、有無を言わさぬ雰囲気だった。
「な、何よアンタら!?」
「ゲヘナの風紀委員会がどうして…」
「先日、ゲヘナ自治区でオートマトンの暴走があった事を先生はご存知で?」
「雑誌で見たよ」
「そうですか」
「それがどうしてこういうことに?」
「そのオートマトンは風紀委員を振り切り逃亡したのです。このアビドス方面へと」
つまり、アビドスが何か細工したんじゃないかと聞いてきている。……とても乱暴な話だとは思うが何か引っかかる。
「なんでウチがあんたらの自治区を破壊しなきゃなんないのよ!」
「ん。事実無根すぎる」
「自治区の一画を破壊し、生徒に重体者を出し、
「あー、ここで暴れられるのは困っちゃうなー」
一触即発の雰囲気を割る何処かのんびりした声。
「ホシノ」
「ホシノ先輩!どこ行って――」
「アコ、イオリ」
「ヒナ委員長…」
そこに揃って現れた対策委員会の『
ゲヘナ側の空気がピシリと締り、殺気立っていた雰囲気が小さくなった。
「いやねぇ、さっきここに来る途中でばったり会ってさぁ」
「ホシノ先輩、風紀委員長とお知り合いだったんですか…?」
「うへぇ。まぁちょっとねぇ」
「初耳ですヒナ委員長…」
「あまり大っぴらに話すような事でもなかったから。別件で顔を合わせたことがあっただけ」
「そ、そうですか…」
どうやら双方知らないところで既に既知となっていたようだ。
「話は風紀委員長から聞いたけどさ、ちょいと乱暴すぎやしないかなぁ?」
「……」
「逃げたオートマトンをアビドス砂漠へ捜しに行くんでしょ? なら少し話せないかな? オートマトンをけしかけたって疑われてるけど、力になれるとは思うよ?」
「っ…」
「アコ。このまま風紀委員会独断専行したら万魔殿どもが黙ってない。なら砂漠を捜索するために現地協力を求めた形になれば少しは口を挟みにくくはなる。……あなたがシャーレの先生?」
「ああ。初めまして、かな」
「私は空崎ヒナ。今あなたがアビドスにいるなら後日改めて協力依頼をお願いしたい」
「分かった。アビドスも風紀委員の皆も、それなら良いかな?」
「おじさんはいいと思うなぁ。皆も怪我しないし、案内くらいならねぇ」
両者まだ納得はいってないが、上がそういうなら…という感じで引き下がる事が決まったようだ。……便利屋の皆はこそこそとこの場を離れていた。
「風紀委員、撤収。……風紀委員会が迷惑を掛けた。謝罪する」
「うへぇ。だいじょぶだいじょぶ。事情は分からなくもないからさ、大事にならなくて良かったよ~」
「ありがとう。 アビドスも先生も気を付けて。運び屋、カザナを戦闘不能にするくらいだから」
「カザナが…!?」
「まだ表には出してない。映像のみだけど、あのオートマトンは異質すぎる」
「りょーかい。忠告ありがとね~」
「ヒナ、カザナの容態は?」
「今はまだ意識が戻ってない。医学部に聞いた話だと、
「ヘイローに? ……うへぇ、こりゃちょっと厄介な事になりそうだなぁ」
「それと、もう一つ」
「アビドスの捨てられた砂漠で、カイザーコーポレーションが何かやろうとしている」
色々とHARDモードです。
パーツ製作してるのがその手の技術者ではなく変態糞研究者だったとかなら産廃がでやすいのも納得…できませんねぇ(6連ハンドガン)