先日のパーツの修理御依頼と、捕獲されたロボットの件についての御報告です。
まず、修理の件から。
こちらは遅くなりまして申し訳ありません。
修理は一日で終了しましたが、戦闘データの収集と整理に時間が掛かり納品を後回しにしてしまいました。
つきましては、ロボットから得られたデータから製作したパーツをお送り致します。
決して体の良い実験とは思っておりません。
所属不明機と名称:ゲルニカ・ゲドについて。
全企業と照合した結果、確かに武装、装甲ともに
しかし、少なくとも我がメーカーが技術を提供した事は断じてありません。
盗用された可能性もありますが、引き続き全メーカー全企業と連携し、調査と精査を続けその都度報告させていただきます。
≪お世話になっております。❝企業❞でございます≫
「どうも。送った砂漠の地形データの解析は出来てます?」
≪ええ。カザナ様が戦闘を行なった地域、アビドス砂漠中央区から東北部の地下深くに不自然な空間を発見致しました≫
「構造は?」
≪空洞、というほど広くはありません。精々見栄を張って新調したが全く使われないオフィス程度の広さかと≫
「……それなりに広いか」
≪あのロボット類の専用スペースと推測しますが、資料ではそれほど大規模に必要なのかは疑問です≫
「こういうのがキヴォトス中にある可能性は?」
≪それについては現在調査中ですが、調査していただければ進むかと≫
「言われずともしますよ」
≪でしたら対価に見合うだけの成果を期待します≫
「あれで見合わないんすか」
≪それはそれ、これはこれ。便利な言葉ですね≫
現在自宅……の地下室。
所謂隠し部屋というよりは倉庫兼研究室って感じの場所。薬品とかは装備点検用、機械類は通信やら何やら用、あとは予備パーツなり武器なりと。決して怪しくない。
そして今会話しているのは世話になっている企業の秘書?さん。本当に秘書なのかどうかは分からないが、そう本人が言ってるのだからまぁそう思うしかあるまい。
≪装備はいかがします?≫
「……大量に必要になるかと」
≪畏まりました。施設制圧・破壊用にミサイル、ヒートキャノン、ヒートハウザーの準備をしておきます。新製品のパルス系統はいかがします?≫
「パルス?」
≪端的に、レーザーマシンガンです。カザナ様が捕獲したゲルニカ・ゲドの解析により漸く製品化の目処が立ちましたので≫
「ふーん。効くので?」
≪試作段階では、そこそこかと≫
「…なら使ってみますかね」
≪承りました。パルスマシンガン【HATSUKARI mdl.1】発注致します≫
大体決まったところで、アレについて聞いてみる。
「秘書さん。
≪無論です。既にカザナ様へフィットするよう調整済です。使われますか?≫
「お願いします」
≪では準備を指示しておきます。以上で確定します。よろしいですね?≫
「ええ。モノは整備部に頼みます」
≪畏まりました≫
ブリーフィングではないが、買い物を終え通信を切ろう、としたところ……
≪……カザナ様≫
「ん? 珍しいですね、秘書さんが呼び止めるなんて」
≪………いえ。何でもありません。健闘を≫
「あいどうも」
歯切れが悪かったが、まぁ激励をもらったから気にすることじゃないか。……それよりいつの間にか『モモトーク』と呼ばれるグループに入れられており、連絡先…は多分他の生徒から知られているから仕方無い。そのチャットから先生直々に依頼が来たのを思い出す。
<先生>
〝カザナ、君の力を貸してほしい〟
―――――
―――
―
日付と所変わって現在ゲヘナ整備部の格納庫。企業から届いた物資の確認をしている最中だ。
「いやーすんごい物資の量っすねぇ」
「どうせ大半は撃ち尽くすから少なくなるさ。…あれの調整は?」
「バッチシっす。さすがメーカーなだけあって誤作動は万一も無いっす」
大型輸送ヘリ『カササギ』に積み込まれている装備は、あのゲルニカ・ゲドから引っ剥がして、人が扱えるサイズにした大型ヒートショット【Wa-V-S11】。
使用感はヒートハウザーに近いが山なり弾道ではなく、散らばり方が小さい当たる拡散バズーカとでも思えばいい。と、メーカー側からの説明書にあった。
更には頼んでいた試作品、パルスマシンガン【HATSUKARI mdl.1】も積み込まれている。あと他にも色々積み込んではいる。
「さてさて、後は乗組員だけっすか?」
物資のチェックと積込は終わった。
あとはここにメンバーが揃えば……
「…来たな」
その時、上と繋がるエレベーターから現れたのは
「風紀委員会四名、到着」
風紀委員会のヒナ、アコ、イオリ、チナツ。
「はーい。救急医学部から貴女の佐々倉カコ、到着でーす♡」
救急医学部からカコ。
「ぶ、ブンブン団!全員到着したっす!ウッス!」
そしてブンブン団のエルカ、ヒカリ、カスミ、マイオが来た。
「では、作戦内容の説明と確認をする」
格納庫に備え付けられた収納可能な高性能作戦会議テーブルを囲み、簡単なブリーフィングを始める。
「依頼主はシャーレの先生。
目的はアビドス砂漠中央部へ突入する先生と対策委員会メンバーを援護すること。
風紀委員会とブンブン団は、北部に駐留している大部隊の足止めをすることになる」
「大部隊って、どのくらいなんすか?」
「約2,000。一個大隊になりますね」
「マジっすか!?…ですか」
「普段通りでいいですよエルカさん」
チナツが解説したのをエルカが驚くのも無理無いが、ヒナ率いる風紀委員のトップ四人なら造作もない数だろう。ましてやそこにブンブン団も入るんだから過剰戦力と言ってもいい。
「八人だけで2,000…」
「大丈夫。八人“も”いる」
初めて経験するだろう大規模戦に不安がるヒカリを、ヒナが優しく諭す。その通り、PMCと言えどそこまで強い訳じゃない。補給無し、遮蔽物無し、増援無しとか過酷な事にはならないよう準備はしてある。
「ちゃんと支援機も投入する。イレギュラーが無い限り、苦戦は一切しないと考えていい」
「お~至れり尽くせりで~」
正直どうなるかは未知数だが、色々試すのには持って来いな状況だ。この作戦にはメーカー側も協力してるし、私にも報酬を出るしで色々キナ臭く感じるが仕方無い。
「ここがカイザーPMCの駐屯地。先生達はここの第51地区を目指している。
で、ここが大部隊がいる北部。ゲヘナから空路で西側から侵入し、中央区をはさんでここで部隊投下、のちヘリは一旦離脱して東側へ行く手筈だ」
会議テーブルに移された砂漠マップに先生達を示すピンクの点と、ゲヘナチームを示す緑の点が表示され、赤い線で経路を表した。
「…で? 私達を運んだ後、運び屋はどうすんの?」
「まぁ話は最後まで聞けイオリ。この東の砂漠に、あのオートマトンの隠れ家らしきものが確認された」
「ホント!?」
「ああ。…これだ」
理事からくすねた話から企業が見つけ出した隠れ家。主戦場となる場所から離れた東の砂漠、その広大な砂の海の下に謎の空間が表示される。
「まさかとは思いますが、前回やられたくせに一人で突入するつもりですか?」
「勿論。……私がやられても風紀委員会とブンブン団、先生達もいる」
「ダメそうならこっちに誘き出せばいい。無茶はしないで」
「善処する」
アコに尤もな疑問を口にされ、ヒナに釘を刺されたが、前に不意打ちで転がされたという借りがある。そこは譲れない。…まぁ、割ける戦力が無いというのもあったり。
「ヘリは副部長が火器管制、カコがパイロット、オペレーターはアコとチナツで良いな?」
「異論無いっすよ」
「はーい」
「まぁいいですよ」
「了解しました」
取り敢えずのブリーフィングを済ませ、後は各自武装の点検とヘリへの搭乗、そして先生の連絡を待つのみとなる。
カササギは大型輸送の名の通り物だけじゃなく人員も結構な数運ぶこともできる。今回みたいに物資を詰め込んでもまだ余裕があるほど。ただその物資は私に限定している場合だがな。人数分をとなるとさすがに乗せられる人員は少なくなる。
「――来たか」
格納庫に響く電子音。先生アビドスチームが戦闘を開始したという先生からの合図が来た。
「ではカササギ、出発しまーす!」
物資ヨシ、人員ヨシ。
格納庫のカササギがエレベーターによって上へと昇って行き、天井が開き青空の下に姿を現す。
「わぁー!すげぇー!」
「ヘリなんて初めてー!」
「このヘリ、中はこんな広かったんだ…」
「どれくらいで現場に到着するんです?」
「積載関係でおよそ三十分の予定でーす。それまでは快適な空の旅をお楽しみくださーい♪」
―――――
―――
―
「皆様ー、アビドス砂漠に入りまーす♪」
眼下に広がる大砂漠。空から見ても彼方まで砂漠が広がっていて、かつてここがキヴォトス最大の都市だったなんて嘘のようだった。
「全員、装備の確認。降下準備」
〚システム スキャンモード〛
遥か下方に戦闘を確認。豆粒にしか見えないが確かにあれはアビドスチーム。
実はカササギ、かなり高くを飛行している。理由としてはカイザーに気付かれないようにするためでもある。低く飛べばすぐにアビドスチームに師団を向けられて混戦になる可能性があった。……おっと、噂をすれば空からでもハッキリと分かる大部隊が移動を開始しようとしているじゃないか。
「さて…」
シートベルトを外し、私も準備を始める。
後部の武装ハンガーに掛けてある大型ヒートキャノンを背負い装備。…思ったより重いなこれ。インカムにシステムを合わせさせる。
それを皆が不思議そうにこちらを見ていた。あれ?手持ち武器は?みたいなところだろう。
〚武装接続 完了 誤差微修正します 完了〛
「よし。副部長」
「了かーい!」
副部長に合図をすると、私が立っているヘリの後方下部が開いた。
「な、何する気!?」
「まぁ見てな」
背部ユニットにウィンチを掛け、足を固定する器具に両足を乗せ、そのまま開いた箇所へ前に倒れるように出る。
「えっ!?」
「カザナさん!?」
「うおマジかよ!?」
「っと…。聞こえてるな副部長」
≪モチロンモチロン♪ そっちも落ちてないみたいっすね!≫
落ちた訳じゃなく、逆さまに立っているって言えばいいか。
足を固定したやつはスライダーみたく動くようになっている。それにより、普通に撃つよりは安全に下に向けて撃つことが出来る。欠点としたら頭に血が上りやすいってくらい。まぁこんなやり方、後にも先にもこれっきりだろうし。
〚システム 戦闘モード〛
「Wa-V-S11起動」
レールとシリンダーが可動し、連結。シリンダーが回転し小さく火花を上げながら砲塔と連結。組み上がった巨大な二門の砲身が両肩に乗る。…サイズダウンしてるとは言えまだ大きいし重すぎるな。普通じゃ使える気がしない。
ともかく照準を地上の大部隊に合わせ……放つ。着弾した所が砂煙と爆煙を巻き上げた。
傍から見ればヘリから拡散弾が放たれているように見えるが、撃ってるのは私だ。上、じゃなく下ではてんやわんやの騒ぎになっている。ので、更に撃つ。満遍なく撃ち込めば、降下する皆も少しは楽になる。
≪ヒュー! 派手にやりますねー!≫
≪これはかなり楽できそう≫
≪…しかしヒナ委員長、これは個人が持つには行き過ぎた代物では…≫
〚残弾 50%〛
「……熱っ!?」
黙々と撃っていたら何故か頭の左右が異様に熱くなっていた。見れば砲門が赤くなっており、排熱が追い付いてない様子。
〚シリンダーと砲身が異常過熱しています〛
「嘘だろ…あちゃちゃちゃ…! 排熱冷却!」
使用を止め強制的に排熱させる。砲身の背部からものすごい蒸気が吐き出された。このままじゃ私の頭がオーブンされて茹だるより酷い状態になってしまう。顔だけの日焼けマシンか何かか。まだまだ扱うには調整不足なのか、連続使用が不味かったかはあっちに任せよう。
≪運び屋さーん、大丈夫ー?≫
「絶好調だよマイオ。それより降下開始してくれ。こっちは店仕舞いだ」
≪了解。イオリ、それとブンブン団の皆。期待してる≫
≪は、はい!よろしくです!≫
ウィンチで巻き上げられている途中ヘリの左右のドアが開き、ヒナ、イオリが先に飛び降り、続いてヒカリとカスミが手を繋ぎながら降下
「お疲れっすー。どうでした?」
「威力はバッチシだが排熱関係に問題アリだな…。あっつ…」
「ありゃ」
「撃つ時に間を空けないと排熱しないのは改善点って後で要望書出しとくわ」
「了解っす」
まだ熱を持ってるヒートショットを外してハンガーに移し、改めて装備を変える。
肩部ハンガーと左手にブレードを装備し、武装コンテナからまずヒートハウザー二丁を装備する。
「それじゃあ例の地点に移動しますねー」
「あいよ。アコ、チナツ、下の様子は?」
「何も心配入りませんよ。既に相手側が哀れなくらい総崩れになってますから」
「この様子なら、カザナ先輩が降下する頃には終わるかもしれません」
おお、サスガダァ…。やはり過剰戦力だったか。
それはそれとして、早くも予定地点に近付いてきたので私も降下準備に掛かる。
「そろそろ降りる」
「はいはーい。ハッチ開きまーす」
「降下と同時にコンテナも落とします。うっかり下敷きになったりしないでくださいね」
「了解」
「着陸後、ヘリはヒナ委員長達の援護に回ります。どうかお気をつけて」
「あいよ。…出るぞ」
一面砂しか無い大地へと飛び降りる。直ぐ様後ろでコンテナも射出され、落下速度を合わせてコンテナの手摺部分を掴み、共に落下していく。…そしてすぐ砂地に激突という名の着陸をし、コンテナから離れスキャンモードに切り替えて隠れ家の入口を探す。
〚システム スキャンモード〛
「……」
企業のマッピングが確かなら、この場所がそうらしいが………あった。入口というハッチらしきものがセンサーに引っ掛かった。映る形状からして大きな上開き型のようだ。多分このタイプは外からだとスイッチとか何かが無いと開かない。別の入口があるかも知れないが、生憎ちまちま探してる程暇じゃない。そこでこのヒートハウザーの出番って訳。
「行儀よくノックしないとな!」
〚フルバースト〛
当たりを付けて前の砂丘に両腕のヒートハウザーをたらふく撃ち込む。
深さだとか警戒されるとかどうでも良い。丁寧に掘り返すのも面倒ってこったよ!
舞い上がる爆煙と砂、一応こちらに掛からないよう撃ってるはず。傍から見たら癇癪起こしてデタラメに撃ち込んでるようにしか見えないだろう。
〚左腕右腕 残弾なし〛
「……」
ヒートハウザーが弾切れしたので煙が晴れるまで待つ。すると、砂の中からメカニカルな何かが確認できた。白い表面に黒く焦げたような大穴があり、ハッチにヒートハウザーが直撃したのが見て取れる。
「ヨシ」
入口は確保した。のでコンテナの近くに戻って開放する。中にはズラリと銃器が揃っていて、何を隠そうウェポンコンテナなのだ。弾切れのヒートハウザーをしまい、右肩ハンガーにバトルライフル【Au-C-B19】。
左肩ハンガーに新兵器パルスマシンガン【HATSUKARI mdl.1】。
右腕にショットガン【AM/SGA-204】。
左腕にマシンガン【01-HITMAN】と手首にレーザーブレード【LB-ELTANIN】を装備。
腰には【追従型リコン】とマガジン数個。
最悪、全て弾切れになってもウェポンコンテナまで逃げれば何とかなる。…何とかなればな。
〚システム スキャンモード〛
「……行くか。記録開始。今から所属不明オートマトンの隠れ家に侵入する」
この先に何が待ち構えているか分からんが、今は油断も精神的動揺も無く、
「…明るい?」
施設に侵入し、十分程慎重に歩みを進めたがトラップらしきものも無く、誰かが居たような痕跡すらスキャニングに引っ掛からなかった。
あれを誰かが整備しているのならば居住スペースに繋がるような扉があるはずだがそれが一切無い。一切、無かった。それなのにこの通路をLEDライトのような薄い電灯が照らしている。しかも緩やかにだが下に下に降りて行っている。
更に気を引き締めて歩みを進めると、突然やたら広い空間が現れた。
(…何だ?)
肉眼では向こう側の果てが薄暗くなりどれだけ遠いかが伺い知れる。スキャニングしてみれば、あの秘書さん、
(なんだこのだだっ広さは…)
ちょっとしたオフィスどころではなく、トリニティが所有する無駄に広い敷地並に広い。
――瞬間、謎の空間が一気に照らされた。
この部屋?の照明が点灯したらしい。向こう側まで見えるように………
「……!?」
突然一部の床が開き、何かが迫り上がってくる音が響く。
〚未確認反応多数確認〛
「罠か…!」
穴の広さからして然程大きくないとは思うが正体不明なのはまずい。爆弾でも出てくるなら大逆走するんだがな。とにかくリコンを頭上に打ち上げスキャンの範囲を拡大する。
疑似モニターに表示される情報が増えた。
(……穴の数は10。高エネルギー反応は無い。姿は……
何時でも仕掛けられるよう構えながら情報を読むがノイズとエラーが走り正確に読むことが難しい。ただのエラーなら持ち帰って企業なり副部長に解析を頼めば何とかなるかも知れないが、スキャンが弾かれてしまう部分はどうしようもない。幸い、疑似モニター自体にノイズもジャミングも無い。
「っ!」
そうこうしていれば、お待ちかねの相手がゆっくりと姿を現した。……なんだこいつは?
「……ドローン?」
小さいかと思ったがそれでも2mくらいあるデカさにシルエットが円周率の『 ∏ (パイ)』に似ている気がするそいつは、くの字に曲がるの逆関節のゴツい脚部があり、頭らしき所には二門の砲身が取り付けられている。AMASに近いやつか?
「十機…、どうす――っ!?」
――動いた。
中心だと思われる部分が滑らかに動き、真っ赤に光る目玉のような気味の悪いカメラアイがギョロリと一斉にこちらを向いた。
❴ 侵入者確認 ❵
❴ ...該当データ一致 ❵
❴
❴ To-605 起動 ❵
❴ 排除開始 ❵
先生アビドスチームに主人公を回す案も考えましたが、装備的にアビドスの旧校舎まで爆破してしまいそうなのでお流れに。
…風紀委員会側もヘタしたらデカグラマトン起こしちゃうんじゃ?
寝坊助だろうから大丈夫っすよ( ;・3・)~♪