言い訳として、生活に大きく変わったり、ブルアカのストーリーで「これ一旦全消しした方が…?」みたいな内容だったりと様々ありました。
【no title】
ごきげんよう。歌住サクラコです。
また怪我をなされたと聞きました。
貴女の事ですから、無茶をしたのでしょうね。
早い怪我の回復をお祈り申し上げます。
―――――
トリニティ総合学園。
その校内に厳かに建つ大聖堂。シスターフッドが根城……いや拠点である。そこを勝手知ったると歩き進む。
辿り着いた礼拝堂に入ると、静かに祈りを捧げている人物が一人いた。
「熱心だな」
「――カザナさん…?」
少し驚いた様子で振り返ったのは、歌住サクラコ。
まぁ怪我人が呑気に出歩いてんだから驚くのも無理ないだろうけど。
怪我の具合を心配されたが大丈夫とだけ答え要件を聞くと、サクラコは何か言い出そうとして小さく頭を振り、礼拝堂の奥、裏の密談室へ案内してくれた。ここに招くって事は聞かれたくない案件なのか。
「本当に大丈夫なのですね?」
「ああ。かすり傷だって」
「……」
まぁ信用されない。
昔から負傷してシスターフッドや救護騎士団の世話になったことは数知れず。そして無理するなと釘を刺され、改めて話をすることに。すると、既にテーブルに置かれていたものを示した。
「こちらを貴女に預かっていただきたいのです」
「……預かる?」
「はい」
「……」
それは普通のジェラルミンケースより少々一回り大きな黒いケース。
表面には何も描かれていないが、何処となく高級な雰囲気なのを見ると、何処の物かバレるとマズい物らしい。
「中を拝見しても?」
「ええ。どうぞ。むしろ、あなたは見て知っておくべきものですから」
確認できるのか。
もしサクラコが拒否するなら丁重に断るところだった。……中身を見せて断れないようにするかは別として。
んで、近くで見るとケースに鍵らしきものは見当たらない。どう開くのかと思ったのを察してか、持ち手、ハンドル部分の下辺りに触れると……スキャナーか?それに似たような小さい鏡のような物が現れ、サクラコがそれに親指を押し当てる。
スキャンしてるのは指紋? いや手袋を着けたままでは無理だろうから圧か何かか?
――などと疑問に思っていたら、サクラコのヘイローが淡く光り出し、認証されたようなピピッと言う電子音と一緒にロックが解除されるような音が響いた。
「……」
「このケースは、私かカザナさんにしか開けられないよう細工を施してあります」
「これは…」
「……懐かしいでしょう。昔、よく三人で宝物を集めましたよね」
「まほうのあいかぎ、か」
……そうだ。これならピッキングの心配は無いだろう。
このカギは私とサクラコ、そしてアティの三人で偶然見つけたオーパーツを使った錠。謎の力で鍵を掛ける事ができる。ただそれだけのもの。
詳しい仕組みは理解してないが、この小さい鏡のようなものにヘイロー、自身の神秘だかなんだかを認識させ、あとは締める、開けるをイメージすることで開閉は自由。ただしカギに記憶させられる人数に限りがある。
「――っ!」
「あの娘の、
「……」
「預かっていただけますね?」
「……断る選択肢は端から無いのか」
ケースに納められていたのは二丁の大型銃。
……アティが使っていた、白と黒を基調にし、金の装飾と銃身にトリニティの校章が刻印された大型の拳銃。
あいつが眠った後、サクラコ含め、シスターフッドが守っていた。
「これがあるとまずいのか」
「ええ。この銃が持つ危険性は担い手であるアティが居らずとも、カザナさんなら理解しているでしょう」
「あいつ以外扱えない代物に何を警戒してるんだ」
端からみればただの銃だ。しかも常人には扱えないし、ケースのような特殊な仕掛けが施されている。
扱えるとすればアティ本人並に強い神秘を持つ奴か。
「未だ神秘とは何か。それすら曖昧なものをあの娘は平然と扱い、数々の
「あれが救いな訳ないだろうッ!!」
――思わず吐き捨てるように怒鳴ってしまう。
「天使のようでありながら、悪魔のような力で罪を裁く。我々を救う神の御使い。……影では今だにそう讃える声があります」
「屑共が…」
まさかあれだけ大騒ぎになったにも関わらず、脳を灼かれた馬鹿共は生き残っていたのか。
「エデン条約はご存知ですか?」
「……いや。初耳だ。それと関係あるのか?」
「大まかに言えば、トリニティとゲヘナ間の蟠りは抜きにして、両者間の争い事を協力して解決し合う。というものです」
トリニティとゲヘナは仇敵、不倶戴天。
時に取るに足らない小さな諍いが巨大な全面戦争にまで発展してしまう可能性がある。
そうならないようそれぞれのトップ全員が中立となり収める。
それが『エデン条約機構(Eden Treaty Organization)』。
「御大層な約束事だな」
「本来なら連邦生徒会長が発案され、取り持つはずでしたが、その……。行方知れずとなったため空中分解の危機でした」
「過去形…。そこから持ち直した?」
「ティーパーティ、現フィリウス分派代表でありホストの❝桐藤ナギサ❞さんが纏め上げました」
ティーパーティー。三人のトップで成り立つトリニティの生徒会。
その一角、フィリウス分派の桐藤ナギサ。……フィリウスか。
あのトリニティとゲヘナの万魔殿を手段はどうあれ話を纏められたってのは相当…今までで一番頭が切れる奴なんだろう。
「私にこれを預けるよう言ったのはサクラコじゃなく、その代表か?」
「……御内密に」
奇跡や救済を体現したアティを象徴する双銃。
三年前の事件。
エデン条約。
「せっかくの条約に過ぎた力は邪魔、というか厄ネタ過ぎるか」
「表向き、事件後すぐに解体されたという事になっています」
「苦しいな。バレたらあのマコトが黙ってないぞ」
「承知の上です。…ここにあるというだけで危険なのです」
トリニティにあるというのが危険ならば、ゲヘナの懐に入れてしまえと?
もし双銃がまだあると疑われトリニティ中を捜索されても、モノは自分達のところにあるのだから「無いものは無い。言い掛かりだ」と言い訳も可能か。
連邦生徒会に預けるという選択肢もあったが、そもそも存在しているという事実と、処分したという嘘でトリニティの立場が危うくなる。それに今の連邦生徒会ではまず信用が置けない。
「……解った。納得できない部分があるが、預かる」
「ありがとうございます。……もう、こういう事にあの娘は関わらないと、思っていたのですが…」
「軌跡は与り知らぬところで一人歩きか」
――ジェラルミンケースを閉じ、鍵を掛け、取っ手を掴みケースを持ち上げる。
……右腕にズシリと、感じたくも無い重みが掛かる。
「裏口、使わせてもらうぞ」
「ええ。……お気をつけて」
こっそり、ひっそりと裏口から教会を後にし、人目のつかないから堂々と表の道に戻る。
この堂々としてるのが一番。ここでこそこそすれば逆に怪しまれてしまうし、要らぬ疑いもかけられてしまう。
私はただの運び屋なんだから、仕事上あちらこちら立ち入るんだから「仕事ですが何か?」と素知らぬ顔をしていれば良い。
「あっ、運び屋さん。ごきげんよう。この前はありがとうございます」
「どうも。またよろしく」
こうやって、トリニティでもゲヘナの出の私にも声を掛ける生徒もいる。
「……見てあれ。汚らわしい悪魔がうろついてますわよ?」
「まぁ!なんてことでしょう!神聖なトリニティに踏み入るなんて…!」
「………」
ああいう陰口ですらない陰口を堂々と言い放つ奴もいる。
やってられない理由でもないからスルー安定。これでも最初の頃に比べたら激減と言っていいくらい少なくなった方だ。
トリニティだからと因縁付けたり、盗みを働いたり、無差別に爆破なんか一切していない。……いや嘘付いた。昔依頼で暴走した車両を吹っ飛ばしたら運悪くトリニティの校舎にダイブさせてしまった事がある。あれはノーカウントだ。ノーカウント。
そんなことをぼんやり思いつつ、校門に差し掛かった時――。
「あれぇ? どうしてここにゲヘナの子がいるのかなぁ?」
「……」
不意に背後から掛けられた困惑、ではなく巧く隠されている圧のある声音。
「ここはトリニティの敷地なんだけどさぁ。よく白昼堂々と歩けるよねぇ?」
「仕事で寄っただけだが?」
徐々に、ゆっくりと近づいてくる足音。
「あっそ。じゃあ早くいなくなってくれるとありがたいなって」
「言われずとも」
例え怪しまれようとも、振り向かず、話しかけられた相手とはこれ以上関わらないようにするため歩みを速め――
「――ちょっと待って」
「――何か」
ようとしたが、呼び止められてしまった。
無視してい行けば良い。そう思うだろうが、今背にしている相手が相手だ。無下にすれば大損害は確実。
桃色の美しい長髪をふわりと靡かせ、あどけない笑みを見る人が見れば本物の天使だと言わんばかりの美少女。
現ティーパーティーの一角であり、神秘の暴力なんて囁かれる、関わってはいけない相手。
❝『聖園ミカ』❞
「あなたの持ってるそれ、何かな?」
「……」
……どうする。冷や汗を、焦りを気取られないよう、努めて冷静に対処しなければ、早々に任務失敗となってしまう。