恵まれなかったウマ娘   作:any

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他人視点
時は飛んでホープフルステークス。
かわいそうな人1人追加。


玖話 現実

 

 

 

 

 

 

私は走るのが好きだ。

すごく好き、違いない。走ることばかり考えているわけではないけど、やることがないなら走る、時間があれば好きに走るようなウマ娘。

お隣さんにも、先生にも

 

「とっても元気で、走るのが好きなんですね」

 

なんて言われるような。

小さい頃の記憶を思い出せばいつでも走っているほどには走っていたと思う。

ずっとウマ娘のお母さんと一緒に走っていて、地元では一番早かった。休みの日には隣の県にあるトレセン学園まで走って、私もいつかここに通うんだ!っていつも言ってた。

 

私の地元では、私は一番だったし、成績も良かったから誰もが行けるって、応援してくれたし、背中を押してくれたし、確信していた。

中には、私がスターになるのを疑わずに、もうサインを求める人までいたくらい。

 

 

 

 

みんなと、友達と走ればいつも一着で……それをお母さんや、お父さん、先生や友達に褒めてもらって。そう、きっと私は……ヒーローだとか……アイドルだった。

だから、私は自分が強いと思っていた。だから、大きくなったら有馬記念や、日本ダービーに勝つなんて夢を見ていた。

だから私は疑わなかった。いつかテレビの画面の向こうでキラキラ輝いて、みんなに笑顔を振りまいている私の姿。家に帰ってきたら、おっきいトロフィーを持ってお母さんに笑顔でただいまって言える。

 

 

インタビューは何を答えようかな、なんて考えもした。

それは、中学生男子がよくなるいわゆる厨二病みたいに。まあ子供の可愛いもので終わったんだけど。

それが間違いだって気づいたのは最近。

 

 

 

 

入学して、すぐは順調だった。

余裕で受験には合格、トレセン学園の紫色の可愛い制服を着て、リボンをつけて……校門で懐かしそうな顔で桜並木を眺めるお母さんと、大泣きしているお父さんと写真を撮って、大きく一歩を踏み出した。

 

同じクラスのこともすぐに仲良くなれたし、クラスのほとんど全員が参加した競争もタイムは一番だった。みんなに口々に褒められて、すごく浮かれてた。

学年で一番速かったトウカイテイオーには負けたけど、いつか勝てる。私だって強いんだ、早いんだって自信満々でいられた。

 

 

担当トレーナーもすぐに決まった。新人の人ではなく、中堅上位……ほぼベテランのトレーナーについてもらえた。トレーナーを選べる側に立つということがどういうことかわかった。

『君なら勝てる』って、いろんなトレーナーに言われて。

すごく気持ちがよかった。

トレーナーともいい関係を築けた。

 

 

 

その勢いのまま望んだメイクデビュー。

私は外枠だったけど、トレーナーに教えてもらった走り方で差し切って2バ身差の勝利。お母さんから電話も届いて、その頃はすごく楽しかった。

私はもっと走るのが好きになった。どこまでも行ける気がしてた。

そんな全能感とも言える何かが続いたのは4ヶ月くらい。

メイクデビューでの戦績が認められた私はなんとG1レース、私の代のジュニア級王者を決めるホープフルステークスの出走が叶った。

 

 

自信を持って参加したそのレースで私は。

 

 

 

 

 

どうしようもない現実を知った。

 

 

 

 

 

 

『一着はディッフェトーゾ!今年のジュニア級王者が誕生した!』

 

 

『凄い記録が出ましたね。今年はトウカイテイオーが注目されていましたが……これは来年からも期待ですね。』

 

 

 

 

 

 

結果は二着。

悔しくても、悲しむことはないって誰もがいうだろう。

惜しかったって、みんな言ってくれるだろうし、慰めてくれるだろう。

お母さんもお父さんも、かっこよかったよ、すごかったよって褒めてくれるだろうな。

 

 

でも、ただの二着じゃないから。

レースが終わった後に、私はターフで、ディッフェトーゾに……あの化け物に話しかけに行った。立ち上がって、近づいていった。『すごかったよ、でも、次は負けない。』って言おうとしてた。

そうして。

声をかけようとした瞬間。

 

 

 

 

 

気付いた。

汗をかいてない。

息を切らしてない。

 

 

脚が止まる。

こちらを振り向いたあの顔を忘れることはない。

まるで、私を見ていないような、感情も生気も感じられない冷え切った目。

 

 

 

そこに私は尻餅をついた。

頭に駆け巡った言葉。

 

 

『なんで?』

 

 

お前も2000m走っただろう。

本気で走っていたはずだろう、なのに、なのになぜ息も切れていない。

同じ生物かと疑った。

 

呼吸が荒くなる。

動悸がする。

 

 

 

私を見下ろす目は、変わらず何も感じない、私を生き物として見ていないような目のまま。

私を見ていないような気がした理由。

見ていないんじゃなくて、見えなかった。私とあいつの間にある差は、計り知れない。なんせ、呼吸も切らしていないような化け物と、走り切った瞬間倒れ込んだ私。

あいつが、あの化け物がもし本気だったら、大差どころじゃ済まなかっただろう。

 

遠すぎて、見えなかったんだろうな……と、理解した。

 

 

 

そこで、アイツは地下通路に戻っていった。

一言も言葉を発することはなかった。

 

 

 

 

7バ身差での二着。約18m程度。大きな、大きな差。

それは同じくらい大きな爪痕を私の記憶に残した。私は幸いにも折れずに走り続けたけど、アイツが本気だったら私は今走っちゃいない。

心が折れていたんだろうと分かる。

 

 

 

 

私は天才を理解した。

 

 

 

 

私はその後、クラシック・シニアを走り抜き、生涯4勝で終わる。

その中で、あの時のディッフェトーゾから感じたのと同じくらいの覇気を、圧力を感じたウマ娘は1人もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうでしたか?』

 

 

 

「うん、凄い完成度だったね。君、逃げ差しのはずなのに差しも上手いの。」

 

 

「トレーナーさん、そういうことを聞いてるんじゃなくて…」

 

 

「わかってるさ。わかってる上でこれしか言葉が出ない。本当に、完璧だったとしか……え、僕タイミングとかふわっとしか教えてないよね?もしかして前世ミスターシービーとかだったりしない?」

 

 

 

 

ホープフルステークス、G1レース。

無事に私は一着で、勝利した。トレーナーの提案で逃げ差しではなく、差しで勝負したがまあ上出来ではあったんだと思う。反省点もかなり多いと思うが、トレーナーからは高評価だった。

 

個人的には反省会を開きたいのだが、トレーナーやメジロマックイーン先輩の時間を奪うのもよくないし、トレーナー的には話すこともないようだからやめておいた方がいいだろう。

 

 

「今日のニュースが楽しみだね。うん、改めて考えるともう一冠か……」

 

 

「ですわね。強い、とは思っていましたが」

 

 

一冠、王冠をかぶることができるウマ娘はトレセン学園に入れる各地方や地域のエリート、名門一家の集まるトレセン学園でも上位1%を切る勢い。

それをもうひとつ手に入れた私は異次元でもあるのだろうが、私からしたらまだ一つだ。

私はまだまだ強くなれる、ならなくちゃいけない。

 

足を止めてはいけない。

止めれば、後ろに落ちる。

底の見えないような暗闇に飲み込まれてしまう気がするから。一度止まれば、もう今の場所には戻れない。

 

 

私は、私の求める玉座を手に入れるまで振り返らない。

そのために過去を捨てて来た。楽しみよりも求める高みへ。ずっと、ずっと望み続けた私の在り方を邪魔するものは叩き潰す。

勝利至上主義。強さ以外はいらない。

 

 

 

私の物語は、勝利の物語。

そこには、喜怒哀楽、一切の感情はいらない。必要ないから、切り捨てた。

 

 

 

「次のレース、何に出る?多分なんでも出れるとは思うけど、とりあえず言ってみて!」

 

 

「あ、天皇賞・春やヴィクトリアマイルは出走制限で出れないので出れませんわ。なので候補としては三冠路線、ティアラ路線、後は安田記念に宝塚記念ですわね。」

 

 

 

トレーナーと先輩からの質問。

私としては、あまりトウカイテイオーの邪魔にはなろうとは思っていない。

でも、日本ダービーは……これだけは、出たい。なんせ今でも有馬記念や宝塚記念のような二大グランプリに並んで語られるレース。

勝てば、ダービーウマ娘と呼ばれるようになるレース。

トウカイテイオーが大きな障害になることはわかっているけど、それでも取っておきたい。

それと、宝塚記念。

グランプリ制覇もしたい。

案外私も欲があるものだ。取れるものは全部取りたいとも思う。

 

 

 

「ほーう……いいね、これで行こうか。宝塚記念に出るなら有馬にも出るってことでいいのかな?」

 

 

「その時は、私が相手になるかもしれないですわね。」

 

 

『あ あと

菊花賞ももしかしたら出るかもしれないので』

 

 

 

忘れていたが、菊花賞も出たい。3000mは走って見たい。

少し楽しみにおくとしよう。

 

 

 

「ん、そうだ。多分日本ダービーには今日出てた子も何人か出るとは思うんだけど、研究しておきたいから教えてほしい。目立って強く感じた子とかはいた?」

 

 

 

今日のレースを思い返す。

真ん中よりも後ろ、後方の馬群に控えての差し切り。

これと言って印象に残ったこともない。

 

 

『居ないです』

 

 

「ふーん……じゃあ二着だった子はどうだった?最後近づいてたように見えたけど」

 

 

 

最後近づいて来た……ああ。

あのウマ娘か。

 

 

 

『別に 何も』

 

 

 

記憶に残るようなウマ娘じゃなかった。

私の生涯になるであろう素質も、才能も、炎も感じられなかった。勝つ気も自信もありありと感じたが、それだけ。それ以上は何もない。

ただ、やる気だけあった。

 

 

 

本当に、それだけ。

 

 

 

 




後付け設定ありますがご容赦を……
終わり方雑ですいません…

誰との絡みが見たい?(いずれ書く)※選択肢にないウマ娘は、ストーリーが思いつかないか、作者が書けないです。すいません。

  • オグリキャップ
  • サイレンススズカ
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