今回はシリアス薄め。
自分の中のルドルフのトレーナーはこんな感じです。
誰かが言った。
あの日は、伝説になるだろう、と。
日本を牽引する、日本のウマ娘の中でも頂点に立つ、立っているであろう二名が選抜レースに出走した。
同じレースではなかった。
最後、後ろから2番目のレース。当時、期待されていなかったウマ娘は最後のレースだった。
期待されていたウマ娘、トウカイテイオー。
皇帝、シンボリルドルフを追いかけていた紛れもない『天才』。
柔軟性。
加速力。
そして、成長曲線。
その全てが平均を大きく上回る。
シンボリルドルフから安定感を少し削り、適応力と、爆発力に割り振ったような一つの『完成されたウマ娘』。
そして、もう一人。
期待されなかったウマ娘。
ディッフェトーゾ。
幼い頃から孤独でいた、恵まれなかった……神に愛されなかったウマ娘。
彼女は、天才ではない。
秀才……努力の天才だった。
何かを成すために、自分でできることを全てやる。自己完結している。
ディッフェトーゾには、トウカイテイオーにあるものが、最初からあったわけではないのだ。
柔軟性。
加速。
適応力。
その他にも、色々と。
その全てを、努力によって身につけ、補った。
天才と秀才がいた年。
そんな年。
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僕は、天才よりも、秀才の方が優れている。
そう時々感じることがある。
別に僕が秀才だったとか、天才だとか思っているわけではなくて。
今、トレーナーの資格を取得して……正式にトレーナーと認められて、トレーナーになってからすでに4年目。
今まで担当してきたウマ娘は一人。
天才よりも、秀才の方が上である。
こう思うのは、担当しているその一人のウマ娘に起因する。
『皇帝』と呼ばれたただ一人のウマ娘。
日本初の無敗三冠、7つのG1レースを制した七冠ウマ娘にして、現生徒会会長かつ、日本最強の名を我がものとする歴史に残るウマ娘。
シンボリルドルフ。
シンボリルドルフ……ルドルフは、天才だった。
それと同時に、秀才でもあった。
天才であったことに間違いはないし、否定のしようもない。だが、そばで見てきた、皇帝の杖としては、本人の才能よりも、努力の方が上だと思う。
秀才というのは、何かを成すために努力を惜しまない、そのことに疑問を持たないような人のことを指す言葉だ。
天才というのは、何かを簡単に成してしまう人のこと。
同じ結果を得る過程が違う。天才は、初めから最強。秀才は、途中から最強。
同じ最強でも、決定的に違う。
僕にとって、ルドルフは秀才に見える。
秀才は結果を得る過程に時間をかけて、そこに重きを置く。
だから、天才よりも得るものが多い。だから、いつか天才は秀才に負けるときがくると思う。
でも、ルドルフはたった3度しか負けなかった。
幾度の勝利よりも、三度の敗北を語りたいウマ娘。そう呼ばれる所以がそこにはあった。
ルドルフは、才能だけという面で見ればミスターシービーやマルゼンスキーに劣る。
努力で見れば、カツラギエースに劣る。
けど、それら2つを合わせれば。合わさっているから。
だから、シンボリルドルフは皇帝と呼ばれるようになったのだと思う。
そして、僕は。
そんなルドルフに、夢を重ねた。
日本最強、世界最強のウマ娘を育てたいという少年の頃からの夢を。
けど、それは叶わなかった。
ルドルフはもはや半分レースを引退している。
そうなれば、無敗三冠という偉業を成し遂げたウマ娘を育てたという実績がある僕は、新たな担当を持つように、理事会から要請が来る。
実際、去年には届いていた。
去年と、それよりも前のウマ娘たちにも、宝石の原石と呼べるようなウマ娘はたしかにいた。
メジロマックイーン。
シンボリという日本トップの家と唯一肩を並べられる存在、メジロ家当主の娘として生まれた。
ステイヤーとして有名で、長距離なら、ルドルフでも苦戦するだろう。
それほどには、メジロマックイーンも強い。
たしかに、確実に日本の歴史に残る名ウマ娘だと思う。
でも、不思議とスカウトする気が起きなかった。
選抜レースを見て、メジロマックイーンに人が集まるのを見て、ふらりとコースを離れていた。
興味がない。
ともに歩みたいとは思わなかった。
そう思えるウマ娘がいないまま、今年になっている。
そして、今年もそうなるような予感がする。
今、まさに選抜レースが行われているというのに、こんなことを考えるようなら、僕は今確実に上の空だ。
今年の目玉は、トウカイテイオー。合格者首席。
あのシンボリルドルフが優れている、と明言するそのレースに対する天性のセンス、柔軟性、末脚。
この前評判を聞きつけた新人のトレーナーから、テレビの記者会見やインタビューでよく見るようなベテランまでもが。
トウカイテイオー、たった一人の選抜レースを、スカウトをしようと集まっている。
「どうしたんだ、皇帝の杖様?その皇帝が絶賛する今年の一番の目玉、トウカイテイオーがこれから走るんだぞ?俺もさっき見てきたけど、ありゃ別格だな。
仕上がりが違う。」
「ん、あぁ……」
みんなが言っている、皇帝のイチオシ。
これは。実は間違っているのだ。実際、本人も苦笑しながら否定している。
ルドルフは言っていた。
『実は今年、もう一人……トウカイテイオーを超える、怪物がひとりいるよ』、と。
トウカイテイオーは、数十年に一人だとか、そういうたぐいの、紛れもない天才だ。
けど、ルドルフが言うには、そのウマ娘とトウカイテイオーの差には超えようのない壁が、差が横たわっているらしい。
「ルドルフが言うには、一人、トウカイテイオーよりも強い娘がいるんだってさ。」
「いや、マジか?あのトウカイテイオーを超える逸材が、か…?うーむ、けどお前がシンボリルドルフのトレーナー本人だからな……」
「いや、はっきりいうと僕もちょっと疑ってる。まだ、選抜レースには出てないみたいだけど……たしか次で選抜レース、終わりだよね?」
「お、トウカイテイオーのレースが始まるぞ。」
そう、同僚のトレーナーに言われたから、トウカイテイオーのレースを見てみる。
スタートは普通。
ただ、それだけでもどよめきが出る。
選抜レースで、大抵のウマ娘はゲートを潜るのは初めてになる。だから、出遅れたりだとかが当然なのだ。
だが、トウカイテイオーはクラシック期のウマ娘と見比べても遜色ないスタートだった。
その後の位置取りも完璧。
中団で、ある程度前が見える場所に陣取っている。
スカウトをするつもりのトレーナーは皆が皆目を見開いて、トウカイテイオーのレースを食い入るように見つめている。
下で、最前列の方で観戦しているトレーナーの数は、パッと見たらトレーナー全員が集まっているのではと思うほど。
それほどに、トウカイテイオーは注目されている。それだけ、期待されている。
G1を取るのは確実と言われるようなウマ娘、それがトウカイテイオーだ。
そしてその期待をすべて理解しながらも完璧なパフォーマンスを見せてくる。
レースはすでに終盤に差し掛かる。
「お、こっから見どころだぞ……おい、速すぎんだろ……?!」
トウカイテイオーが一瞬で先頭に踊り出た。
その柔軟さを生かした、雷光のような、綺麗で複雑なステップ。
足を駆使して、最短で最善のコースを突っ切った。それはまるで、前のウマ娘をすり抜けたかのような。
レースとしては、トウカイテイオーの単純な差し切りだった。
ただ、その内容がトウカイテイオーという一人のウマ娘の才能を物語っている。
完璧なレース運びに、逃げウマ娘のようなペースコントロール。自分の圧力、存在感を駆使している。
けど、ルドルフはこれよりも上のウマ娘がいるといった。
眼下では、大勢のトレーナーがスカウト合戦をしている。
トウカイテイオーという一人に、数十人、もしかしたら100人を超えるかというトレーナーが群がっている。
「おー、すげえなぁ。俺も、ワンチャン賭けて行ってくるか。お前はどうするんだ?」
「あー……僕は、いいや。」
でも、僕はそのトウカイテイオーにもあまり興味がわかなかった。
踵を返して、次のレースのパドックを見に行く。
パドックはトウカイテイオーの影響で数人しか見ていなかった。
でもどうやら、ギリギリお目当てのウマ娘は見れた。
今年最後の選抜レース、5枠6番、ディッフェトーゾ。
……息を呑んだ。
はっきり言って、次元が違う。ルドルフがああ言うのも納得する。
『超えられない差』
それをありありと感じさせてくる。
体に余分な筋肉はない。やせ細っているように見える体も、バランスを均一に、一切の偏りのないように。
筋肉の量が、明らかに人為的に、走りに影響のない最適な量に調整されている。
特に足。
筋肉は浮き出ていない。
だが、これと言って余分な筋肉だとかは見当たらない。
痩せているようにも見えない。
その状態を例えるとしたら。それは、まるで。
完成された、一つの作品。
芸術家が生涯で作り上げるような、最高傑作。それを見たときのような感動。
そんなコンディション、完璧な状態を。
然も当たり前かのような顔で、選抜レースに持ってくる。
普通ではない。
こんな完璧な状態、世界でもあまり見られない。
だが、これは才能じゃなくて、努力の結果であることも一目でわかった。
トウカイテイオーを天才とするなら、ディッフェトーゾは、秀才。自分が努力することを疑わない。
それでいて。自分の努力を疑っていない。
今までの自分を信じている、というよりはその努力で得た実力を理解している。
自分が今、どれほど強いのかを、誰よりも正確に理解している。
それでいて、その上。
自分の体の状態を、凄まじい精度で理解している。
まるで、常に自分の体をもう一つの目で見ているかのような。そうでないと、説明がつかないほどに。
ルドルフが絶賛するのもわかる。
納得では、ない。共感だ。彼女一人が、別格だと。
それを確認した後、トウカイテイオーのスカウト合戦をしていたコースの観客席の方に向かう。
コースに戻れば、スカウト合戦が終わっていたようだった。
同僚が少ししょげた様子で話しかけてくる。
「よう、やっぱり、だめだったよ……お目当てのウマ娘はいたか?」
「うん……見つけた。そうだ、どの娘が勝つか、予想してくれない?」
「ん?ああ、まあ……順当に行けば、2番か、5番の子だろ。落ち着きというか、雰囲気が違う。」
大抵のトレーナーの目には、そう映る。
少し見ただけなら、やせ細って、怯えているように見えるから。
でも、それは違う。パドックで、近くで見ないとわからない。それほどの、微妙な調整。
間違いなく、戦えばトウカイテイオーは負ける。
仕上がりを見るだけでも、そう、確信してしまった。
そして、肝心のスタート。
それすらも、異質だった。
「お、6番の子……いいスタートだけど、勢いが足りなくないか?」
無音のスタート。
ゲートがきしむだとか、揺れるとかじゃなくて、なにもない。余分な力をすべて抜いて、100%のスタートを引き出した。
そしてそのまま、先頭を取った。
逃げだろうか。
逃げならば、感覚的には3,4バ身ほど2番手と差を広げたら息を入れるはず。
それが逃げの常識。
だが、ディッフェトーゾは、ペースを落とす気配がない。
掛かっている気配もない。
「ん、先頭の、6番の娘か?掛かっちゃってるっぽいな。うーん、スタートは良かったんだがな……」
掛かっているわけではない。あれは……
おそらく、大逃げ。
後続を突き放して、大きな差を作る。後半に後ろからくるウマ娘たちから、リードで逃げ切る。
一部のウマ娘しかできない、やらない走り。
逃げではあるが、逃げとは一線を画す。
それが、大逃げ。
レースは、そのままディッフェトーゾが独走し、そのまま勝利した。
驚くべきことも、もう一つあった。
ディッフェトーゾは、『逃げ差し』もできるということ。
だけど、久しぶりにレースに高ぶっていた僕の前には些細な事実に過ぎなかった。
ここまでレースを楽しんだのは。
時間を忘れてしまうほどに、レースに興奮したのはいつぶりだろうか。少なくとも、一年やそこらではない。
小さな頃、日本ダービーを見に行ったときのような感覚。
その時のような、純真な、興奮を今まさに、思い出していた。
気がつけば、レースが終わっていたから。
それほど、ディッフェトーゾというウマ娘に魅了されていた、夢中になっていた。
階段を駆け下りて、
「キミを、スカウトさせてくれ!」
返答は、なかった。
代わりに、紙が一つだけ手渡された。
『すみません。』
きれいな字で、そう書いてあった。
ルドルフのトレーナー
『自分のことよりウマ娘』
・かなりの気分屋。天才だけど、努力のほうが大切だと思っている。
・ルドルフファーストに考えている。
・頭よりも体が先走ることがある。
・かなりのウマ娘好きであり、自分よりもウマ娘と仕事、それよりもルドルフ。
誰との絡みが見たい?(いずれ書く)※選択肢にないウマ娘は、ストーリーが思いつかないか、作者が書けないです。すいません。
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