恵まれなかったウマ娘   作:any

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高評価、感想、お気に入り登録、誤字報告マジ嬉しいです。
今回の話は、少しだけオリ主の性格、考え方に変化が起きています。
次回からは多分戻ります。


明日投稿できるかはわかりません。
すみません‥



後、高評価、お気に入り登録、感想、ください(強欲)
なんて思ってますが読んでくれるだけでも嬉しいです。


肆話 選抜

 

 

 

 

 

人生で、たった一度だけ走ることになる、『人気』が存在しないレース。

選抜レース。

 

 

 

 

その、選抜レース本番。

私の出走するレースは、最後のレースで、トウカイテイオーの出るレースのひとつ後。

パドック……自分の仕上がりを見せる場所にも観客は数人しか居らず、大半がトウカイテイオーのスカウトにいそしんでいるだろう。

 

 

コースに立つと、案の定地下道の方に群がるトレーナーらしき人たちが見えた。

観客席は人が見当たらない。

いるにいるけど、それも数人。自分をアピールしたいウマ娘にとっては最悪の状況。

 

自分を知ってくれる人が減るからだ。

 

 

 

……たった6つの、はずれくじ。

そんな呼ばれ方をしている。いつの時代も、彗星の後にはチリしか残らないように、スターの後ろは知られずに終わる。

でも、私にとっては当たりくじになる。

 

 

 

恐怖の対象であるトレーナーという存在が少ないというのは、好都合な状態。

スカウトも受けなくてはいけない。

だが、レースぐらいは精一杯やりたい。だから、この状態が一番とまではいかなくとも、良い状況といえる。

 

 

そもそも、私は人混みが苦手だ。

好き、嫌いではなく、苦手。我慢はできるけど、あまり長居はしていたくないな、と思うくらいのもの。

ただ、レースにはそう言った、本当に小さな心の変化すらも大きな影響を及ぼす。

 

 

だからこそ、これがベストコンディション。

 

 

 

「皆さーん、ゲートに入ってくださーい。」

 

 

 

指示に従って、かなり狭い、暗いゲートの中に入る。

後ろが閉まれば、中はほぼ完全な暗闇となる。隣のウマ娘が、息を飲んだ音が聞こえた。

緊張しているようだ。

無理もない。というか、緊張して当然。私だって、多少は緊張しているのだ。

 

 

ただ、その度合いが違う。

私は、まだ負けていない。レースをしていないから、でも。その無敗という言葉は、心のひびを埋めてくれる。私の緊張を消してくれる。

 

負けていないから、自分は正しい。

 

 

自己肯定とは、そういう事。

 

 

生きている上で、大切な事。

自己肯定とは、自分を信じ抜く事。自分を疑わない事。それは、俯瞰を得意とする私にとってはそこまで難しくはなかった。

 

 

自分が嫌いでも、自分は正しい。

矛盾しているようだが、それぞれには別と裏表がある言葉同士だから、成立する。

 

 

 

私が信じるものは、積み重ねてきたもの。

 

私が自己を高め続けたあの数年間を疑わない。自分の進化を、理解して、受け入れる。

自分の変化を、俯瞰する。

努力したからこそ、今があるのだから。

 

 

 

『ウマ娘は想いを乗せて走る』

 

 

 

そう言われている。

けど。他人に夢を託してはいけない。夢とは、自分で叶えてこそ意味がある。

 

 

想いは、他人に預けてはいけない。

自分の考えは、自分だけの、いわゆる自己を形成する要素の一つ。一人に一つだけのものだから。

 

 

 

あくまで、自分のために。

走るのは、誰かの思いなんて背負っては行けない。

夢も思いも、努力すらも。自分が積み重ねたもののほうが上だと信じていなければならない。

 

 

 

頂点に立つものは、常に一人。

そして、独りなのだ。

 

 

山の頂上は、玉座は一つ。

私は、その玉座に座る。

 

 

 

生きるため。自分が生きていいと、納得するために、私は走る。勝利を狙う。それでたとえ他人の夢が潰えようとも。

どれだけ嫌われようと、私が私を嫌ったまま終わらないように、と願って。次は、勝利を積み重ねる。

 

 

『選抜レース 3日め 最終R 芝2000m、ただいま開始いたします。』

 

 

ついにゲートが開く。

息を吸って、構える。見据えるのはゲートの扉と扉の間、そこから少し漏れる光。

余分な力はいらない。

 

 

ゲートが軋む音。

トレセン学園のゲートは古い。まあ、レースでも使われるゲートは総じて古いものが多いのだが。

まあ、だから。

 

 

ゲ(・)ー(・)ト(・)の(・)音(・)で(・)、(・)開(・)く(・)タ(・)イ(・)ミ(・)ン(・)グ(・)が(・)何(・)と(・)な(・)く(・)分(・)か(・)る(・)。(・)

 

 

完全に予想だ。

でも、それで他のウマ娘よりも0.何秒得をする。

 

 

1秒ではない。

0.1秒、その世界。一秒で20mがすぎる戦いにおいて、0.1秒は大きな有利となる。

それは、人間で言う陸上競技と同じ世界。

ウマ娘は、アスリートの一種だ。アイドルの側面も持っている。けど、その本質は競技者。

 

 

 

『妥協』だなんて、できない。

 

 

 

レースに人生がかかる。

この先の人生が変わる。そのようなところでは、誰もが最善を目指して走る。

だから、最強とは、勝ちきれる実力を持ち、最善の状態をいつでも持ってこれるようなウマ娘だと思う。

 

 

きっと。

私は、多分どこかで負ける。

 

 

私には、才能がない。

 

 

天才は凡人の友情に憧れる。

秀才は天才の才能に憧れる。

凡人は秀才の努力を尊敬する。

 

 

天才は、周りよりも常に先にいる。

秀才は、その差を努力で埋める、努力を疑わない。

凡人は、自分の身の丈を一番理解している。

 

 

では私は何だ?……答えは出ない。

でも、決して天才じゃない。だって私には。

 

 

 

神業と呼ばれるようなスタートも。

『暴風』と言われるスピードも。

『刀』と表現される末脚も。

『機械』と言われるような正確さも。

『無尽蔵』のスタミナも、

レースを運ぶ知識も、運さえも。

 

 

 

そのすべてが与えられなかった。

だから、努力した。本当は、ずっと昔からわかっていたんだと思う。私は、おじさんの入った家を知っている。

 

シンボリ家。

 

 

そして、

シンボリを冠する者、メジロの名を持つ者に、私は絶対に勝てない。

 

 

 

メジロラモーヌ(メジロの至宝)という、メジロ家随一の宝石に。

 

 

シンボリルドルフ(シンボリの最高傑作)という、日本を代表するウマ娘に。

 

 

 

二人の天才に。

だけど、負けず嫌いだった私は、努力をした。

ときに、肉体は魂を超える。才能とは、魂に刻まれているものだ。本能でわかること。

それを信じて、努力した。

 

 

それでも、負けるだろう。

 

私の近くには、トウカイテイオー(生まれ落ちた星)がいるから。

 

 

 

でも、その時のことを後悔しない走りをする。

今はそれの第一回。はじめの一歩、この先に大きく関わる、小さいようで大きな一歩。

 

 

 

ガコン。

 

 

案外軽い音で、ゲートが開いた。

『無音』のスタート。

スタートの影響でゲートが揺れるだとか、そんなことは一切ない、余分な力のすべてを抜いたスタート。

 

 

スルリ、と。

抜け出すようにすぐに先頭を取った私は、一定のペースで走る。

一切ペースは落とさず、後ろとのウマ娘との差を広げる。これだけで、メイクデビューや、選抜レースではペースを崩してくれる。

 

 

 

おそらく二番手との差は現在4バ身ほどか。

まだ、足音の聞こえる範囲。聞こえる限界距離としては、大体15バ身。普段なら、もっと遠くまで聞こえるが、レース中はそればかりに気を回せないし、風もある。

まあけど、15バ身でも、かなり広く聞こえる。

 

レース中に相手の足音から聞き取れることは多い。

 

 

相手のペース。疲労具合。

精神状態。

相手との、距離。

 

 

 

それらを合算して、ペースを調節するのが、逃げの基本形。

大逃げでは、その足音を、相手と自分との距離を測るために使う。もちろん、相手が掛かっているかどうか、の判断にも応用するけど。

それと同時に、自分のことも。

 

 

 

 

耳と、感覚。それと、心。

耳で、自分の心臓の鼓動、血の流れを意識すると、酸素がより巡る。心臓と肺の動きは、自分の体力をよく表している。

心拍数を測る、という行為をレース中に。

 

 

感覚で、自分の体に異常がないことを確認する。

足の痛み。体の歪み。そういったことだとか。爪の違和感も、故障の一つ。

どこまでも、徹底的に。

 

 

心で、自分を俯瞰する。

俯瞰は私の得意なことだから。俯瞰というのは、違う視点から見ること。

私は、完全に違うもう一人の自分、という立ち位置から俯瞰をしている。そばで、自分を見る。そうすると、自分も分からないことが見えてくる。

 

 

 

現在、二番手との差は9バ身。

バックストレートを一人で独走している状況だ。中団に3人。足音の聞こえない、後方に一人。

 

 

 

見事なほどに掛かっている。

走りを恐れてしまっている。

 

 

 

レースにおける大逃げの役割、それは、破壊。

逃げや、先行の……調律、管理のすべてを無に帰す走り。

 

 

それを全うする。

 

 

 

幸い、このレースに天才はいない、誰一人。

第三コーナーに入った。

私だけが大きく前に出ている。

 

この後すぐの、第4コーナー。

私は独りだけ、早くもそこに入る。

 

 

……いい出来だったと思う。

私には、明確な勝つ条件があった。

 

 

 

独りで、第四コーナーに入ること。

 

 

誰かが掛かっていること。

 

 

それだけ。

でも、それは難しい。

大逃げだからこそできる芸当であり……これから私が行うのは、走る前に思いついたこと。

思いつきだ。

 

 

 

でも、それは、極めれば名家にも引けを取らぬ。

私だけの走りになるだろう。

自己肯定と、下剋上。

 

少し走るだけで、私にはある思いが芽生えた。

 

 

『才能を否定する』

 

 

才能は、努力を否定する。

生徒会長は、努力をした。だから今、あそこに立っている。

 

 

でも、玉座じゃない。

自身のうちに秘める炎と、怒り、不安、責任と、自分自身の凄まじいまでに自己中心的な、獅子と呼ばれた顔を。

日本の玉座に縛り付けた。

 

 

 

才能があるものが努力をした高みと、

才能無き者の努力の高みは、どうしても高さが違うから。

私は、誰よりも早い時期から、独学で体を、走りを作った。『才能を作った』。

 

 

 

だから、私は人が作った、天才。

 

 

……ここで苦戦する訳にはいかない。

 

 

 

「ッ……!加速したぁっ……!」

 

 

 

そう、後ろからその声が聞こえてくる。

逃げる。大きく。

でも、それだけじゃない。

 

 

名家は、名家のウマ娘は。この差なんて一瞬で埋めてくる。

だって、強いウマ娘は、シンボリルドルフは。後ろから、吹き荒れる風のように、飛んでいくから。

確実に、相手の息の根を止めるための走りを。

 

その走りを思いついた。

 

 

 

誰かが息を呑んだ。

誰も、私なんかマークしてなかった。シンボリルドルフのときとは違う。

注目されない。観客もいない。

『誰も知らない物語。』

 

 

孤独に生きる私に、お似合い。

 

 

 

 

 

 

他の5人には、悪いとは思わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば、レースは終わっていた。

名家のウマ娘への、シンボリルドルフというウマ娘への、嫉妬と尊敬。従姉妹という存在を初めて許容した。

 

名家のウマ娘に、なりたいとは思わない。

でも、才能に否定されない。才能を否定する走りは身につけたのだから。

 

 

 

私は、恵まれなかったけど。

走れないことは不幸じゃない。病気でも、怪我でも。

真の不幸は、壊れることだって、私が一番良くわかっていることだった。壊れているのは、私だけ。

 

 

レースの間にも、ずっと、レース以外のことを考えていた。

 

 

 

私よりはるか上にいる存在を。

頂点たる玉座にいる者のことを。

ずっと、考えていた。そして、それらを倒せば、私の心は、ヒビは、満たされるのだろうかと。

 

 

 

 

私の走りは、逃げ差し。

『異次元の逃亡者』という走り。

弱者である私が使う、最強だったEclipseの走りだ。Eclipseは、人にすら恐怖された。

あのウマ娘に追いかけられれば、逃げられない。

夢にまで見る、出てくるほどに、鮮烈な末脚。無限に等しいスタミナ。

 

差しも、追い込みも。

そのすべてを超える末脚。

 

 

 

 

自他ともに認める頂点だったEclipse。

そんなウマ娘に憧れていたらしい。

 

 

でも、末脚がないから、先に速くなることにしたのだ。

弱者である、ということに気づけた、いいレースだったように感じる。

 

 

 

 

 

…今は何故か生徒会長と三者面談しているわけだが。

 

 

 

 

 

 

 

 





弱者は、強者に近づこうとする。
でも、強者の強さとは、当たり前なことを誰よりも完全にできること。

弱者はそれに気づけないから弱い。
強者とは、その当たり前なことが、できないことに疑問を持つもののことである。

弱者は、強者を真似る。
でも、絶対に気づかない限り、差は縮まらない。

誰との絡みが見たい?(いずれ書く)※選択肢にないウマ娘は、ストーリーが思いつかないか、作者が書けないです。すいません。

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