投稿遅れた原因:レース
なのでほっぽり投げました。
これから週2〜3投稿ぐらいになるかもしれません。
マルゼンスキー。
現在八戦八勝、無敗のウマ娘。
赤い勝負服と、あまりにも速すぎる速度。
その姿は、人々の目には昔憧れたイタリアのスーパーカーを連想させた。
『ランボルギーニ・カウンタック』
300km毎時。
その速度は人々を魅了した。
それと同じように、マルゼンスキーば誰よりも早く、ゴール板を駆け抜けた。
私と同じ、大逃げという走り。
普通に走っていたら大逃げになっていた、というのが始まりだったという。
体が耐えきれない速度。
器が、中身に耐えきれない。
それほどの速度。そんな才能を持って生まれたウマ娘が、マルゼンスキー。
着いた名は、『怪物』。
そして怪物は、自分の欠点を利点にした。
器に耐えきれない速度。それはつまり本気で走らずとも良いということ。
本人の気性は全力での走りを楽しみたいものみたいだが。
本気で走るというのは普通に走るよりも体力を使う。
平常時が毎秒1%、時速40kmなら
本気は、毎秒5%。でも、速度は時速70kmそこら。
使う燃料と速度は比例しない。
だから、燃料を節約しながら、他よりも速く走れる。
他が3%で、50kmなら。
マルゼンスキー、怪物は3%で55kmが出る。
そんなウマ娘が、このマルゼンスキーという怪物と呼ばれたウマ娘。
才能を伸ばす才能を持っていることも、強さなのだ。
「いや、少し話が長引いちゃって。待った?」
「良い話だったわ、シービーちゃん!君がルドルフの言っていた子であってるかしら?」
コクリ、と頷く。
私に似た走りをするウマ娘。
先駆者、先人。
私の走りの一種の完成形を持っている。
そんなウマ娘と練習できる。
願ってもない。
「うん、良いみたいね!それじゃあ、早速行きましょ!」
現在五冠、最も愛されている三冠ウマ娘であるミスターシービー先輩と。八度戦って、一度も影を踏ませていないスーパーカーのマルゼンスキー先輩と。
走れるということは嬉しいことなのだろう。
でも、相変わらず私の心と、表情は動かず。
二人はフレンドリーに接してくれるが……
申し訳ないというのが、本音。
でも、隠と陽は混ざり合わない。
水と油ではない。光と、影。
月と太陽。
トウカイテイオーは、マルゼンスキー先輩は、ミスターシービー先輩は。
誰かの夢になれる。
そしてその気持ちを背負ってなお、挫けない。
負けない。
進み続ける、笑っていられる。
だから、夢を見せられる。
誰かに夢を預けるのも預けられるのも私は嫌いだ。
だけど、夢を見せるのは良いと思っている。
誰かに宝物を上げるのではなく。宝物を創る。
私にそれはできない。
壊れた私は、壊すことしかできない。
走りで、夢を。
想いを。
絆を。
他人のものを壊して、残骸で自分を作り、自分を守る。
それしかできない私は、誰かの夢を作れない。
自分の心を守る鎧の作り方しか知らない。
だから、私は孤独に走るんだろうな、と。
自分が嫌いで、その自分を守るために走る。
自己補完。
自己中心。
自己肯定。
その極地にいるような存在が、私なのだろう。
と、ターフに到着した。
「シービー?タイム測ったほうがいいかー?」
「あ、お願いするよー。」
あそこに立っているのがミスターシービー先輩のトレーナーらしい。
自由な先輩のトレーナーなだけあって。
すでにゲート代わりの物やストップウォッチなど、模擬レースに必要なものが揃っている。
自由さに対応するための、準備が早い。
先輩の要求に120%答えることができるトレーナー。
私もそんなトレーナーが欲しいとは思う。
以心伝心とまでは行かないが。
「ほら、3人ともゲートに入って……君が噂の?そこのシービーのトレーナーをやってるよ、よろしくね。」
話しかけられるとは思わなかった。
少しビクッとする。
とりあえず落ち着いて一礼。
「話すのが苦手?まあいいや、よろしく。」
礼儀正しい人だな、と。
話すのが苦手というか。
事情を知らない人にはそう捉えられても仕方がないし、そのほうが都合がいいというのもある。
相手が気を遣ってくれるから。
気を使われるのにいい気はしない。
でも相手が自分を尊重してくれるなら、自分も甘んじるべきだ。
他人の無責任な感情は悪だ。
でも、好意は押し付けではない。相手と自分の感情が介在する、正しい物。
「それじゃ、始めるよー。」
スゥッと、感覚が遠のく感覚。
選抜レースではこうはならなかった。
私にとって、選抜レースよりも二人とのレースの方が大切ということか。
先輩のトレーナーがスターターを構える。
指を見る。
力が入ると、人の指は少し震える。
それが始まる合図。
ピクリ。
3人が走り出した。
先輩二人は自分のやりたいように走っている。
ミスターシービー先輩は後方に。
マルゼンスキー先輩は私の前。
逃げは前をとる走り。
私としても、先頭を渡すのは良い気にならない。
……なら、奪い返しに行く。
「あら、イイわね!」
少しペースを上げると、マルゼンスキー先輩が笑いかけてくる。
楽しく。
それを求めて、先輩は走っている。
それを本能的に理解した。
これも一つの、走りの形なのだと。
……でも、その走りは私の目指す物ではなくて。
楽しさじゃない。
自分を守るために。
他人の夢を壊して、自分を守る。
ある意味、走るというのは私にとっての道具かもしれない。
他人の夢を壊す。
そのための手段の、ひとつ。
それに過ぎない。
走ることに対して特に思い入れもなければ。
思うこともない。
それでも、勝てたら嬉しいには嬉しいのだと思う。
何も感じない、何も動かない表情に。
それでも、心の奥に温もりがあるから。
「ギア上げるわよ!」
* * * *
「イイ走りだったわ!またよろしくね♪シービーちゃんも速かったわね!」
「お疲れ〜。今日は付き合ってくれてありがとね。」
私は今ターフに座り込み二人を見上げている。
…………負けた。
負けてしまった。
負けたくなかった。勝つつもりでやった。それも、最初から。
ベストを尽くした。そう言い切れるぐらいにはやった。
……でも、負けた。多分、3と2分の1バ身。それくらい。
それくらい。
だけど、その差を埋めるためにどれだけ努力をしようと。
才能を持つものと、持たない私では。
差は縮まらない。
天才の一歩は、私の五歩に匹敵する。
追い抜かれても、追い抜けない。
ただ、差を離されるだけ。もう一度前に出られない。
勝ったのはミスターシービー先輩。
マルゼンスキー先輩とはハナ差。ほぼ差がなかった。互角。
それで私は、大敗。
二人とも速かった。マルゼンスキー先輩はあれからスピードをそこまで落とさずに、むしろ上げて。
言うなれば、逃げ差し。
ミスターシービー先輩は、後ろから凄まじい豪脚で。
追い込みの、究極系。
強かった。
私の努力が全く及ばなかった。
負けた。
負けた、負けた、負けた、負けた。
『敗北』
心に響く、響いている言葉。
でも、トレーナーたちは言うだろう。
レースと言っても、模擬レースだと。
そこまで何かをかける必要はない、負けても何もないんだから、と。
違う。
違う、違う、違う違う違う違う!
私の気持ちの問題。そこに他人の意志は、感情は介在しない。
私は、勝たなくちゃいけない。勝たなくてはいけなかった。レースをするなら絶対に。
私の過去を。
同年代の誰よりも汗を、血を流して一心不乱に走ることだけを考え続けていたあの日々を。
否定されるわけにはいかなかったから。
誰にも負けないと言える努力を。
私を、自分を。
敗北で否定されたくなかった。
だから、私は。負けちゃいけなかった、絶対に。
負けちゃいけない。
ずっと、私の中で呪いのようにずっと渦巻いていた言葉。
勝て。
勝て。
勝て。
自分のために、勝利を。自分のために、他人を否定する。
無敗であれ、強くあれ。そんな想い。
それが消えて。
私の心は支えを一つ、失った。
呼吸が速くなる。
荒くなる。
動悸がする。
苦しい。
悲しい。
悔しい。
でも、涙も声も、でない。
先輩たちがこちらを覗き込むようにして、声をかけてくれている。
でも、何と言っているかわからない。
水の中にいるように、声も視界もぼやける。
耳鳴りがする。
体操着の胸あたりを掴む。ギリィ、と歯軋りをする。
負けた自分に。嫌気がする。
今までの自分を。
『壊された』ような。
頭が痛い。
目の前が何重にも重なる。
ドクン、ドクンと心臓が脈打つ音がやけに耳に響く。
何をする気にもならない。
でも、立たなくては。
立つと、足から力が抜ける。ふらりとよろけて、倒れ込む。
瞳孔が開くのを感じる。
空の色が変に見える。
私は、悔しいのか?哀しいのか?苦しいのか?
答えは出ない。
だって、私の表情は。
尻尾は、耳は。
全く私の内の感情を写さなかった。いつも通り。
微動だにせず。ただ、重力に従い、風に揺れ、垂れるだけ。
私は、壊れているんだな……ともう一度深く、分かって。
そこから先は、あまり記憶がない。
目が覚めれば、どこかのトレーナー室のソファに寝かされていた。
保健室ではなかった。
気持ちは落ち着いている。
でも、自分のことを考えるのに忌避感がある。
ああ、負けたんだな……と。
自覚して。
ため息が出る。
負けを受け入れられていない自分を自覚して。
そんな、愚かな自分への呆れ。それが出た。
「あ、起きたみたいだね。調子どう?あ、辛いなら話さなくてもいいよ〜。」
周りのデスクにこの部屋を使っているトレーナーが居たらしい。
気が付かなかった。
とりあえず一礼。
「いや、マルゼンスキーとミスターシービーと、君のレース。結構人が見ててね。その中で君が倒れたからとりあえず僕がここに運んだんだよ。」
「とりあえず、体調は大丈夫そうだね。」
色々な人が先輩と私のレースを見ていたらしく。
その中で、このトレーナーが私をすぐに助けてくれたらしい。
倒れた原因としては不明。
多分、ストレス。
……廊下から足音。
この部屋に向かっているらしい。
扉の前で止まり、ノックをした。
「ご機嫌よう、トレーナーさん。……そちらは?」
「や、マックイーン。こちらはディッフェトーゾ。君の後輩のウマ娘だね。倒れたから連れてきたんだ。」
「……そうでしたか、トレーナーさん。まあ、深くは聞かずにおきますが……まあいいでしょう。私はメジロマックイーンですわ。これからよろしくお願いいたしますわ。」
入ってきたのはメジロマックイーン先輩。
生粋のステイヤーで、二大名家の片方、目白家の次期投手で、親のステイヤーの才能を色濃く受け継いだウマ娘。
芦毛。その美しい、圧倒的な走りから着いた名は、
『名優』。
所属は……確か、チームシリウス。
なら、ここはシリウスの部屋、ということだろうか。
チームシリウスは、前の所属ウマ娘の大半が引退したことと、前トレーナーが若手に引き継いで引退したことで若手のトレーナーしか居なくなった。
だが、その中でトレーナーがメジロマックイーン先輩を最強のステイヤーと呼ばれるまでに育て上げ、実績を残したというチーム。
そんな細い綱渡りをやって退けた。
奇跡のチームとして少し有名になっていた。
だが、食堂などでもあまり話には聞かない。
誰かが入団を希望したという話も聞いたことがない。
でも、天才という枠に入るトレーナーと、ステイヤーの最高峰がいることは確か。
なんでいないか。
理由はよく分かっていない。
交流関係がないから。
情報網が狭い。
だから、考える必要がある。
それで、考えたけど。
……理由が思い当たらない。
優秀なトレーナーが居て、何が問題あるのか。
私がおかしいのだろうか。
他人の意見を取り入れずに考えても、答えは得られないだろう、と。
思考を切る。
すると、シリウスのトレーナーが切り出す。
「君をチームシリウスにスカウトしたい。僕たちが求めるのは勝利だけ……うん、勝利してくれればいいよ。」
と。
何の脈絡もなかった。
けれど、私にとっては渡りに船に近い。
でも。
今の私は不安定で。
何かをする気も全く起きない。
それに、負けたことを受け入れられていなくて。
それで、そんな自分が嫌で。
少し、迷ってしまった。
……迷っている、けど。ここを逃したら次はないような気がした。
『お願いします』
そう、私は素早く書いていた。
その紙を少し見つめて、決心する。
この人を、私の走りの礎に、走りにおける柱にしようと。
決して思いはあずけない。
夢も見せられない。
他人の夢は壊す。
他のウマ娘の想いを、踏みにじる。
誰かの目標を、地に堕とす。
ただ、勝利のみを。栄光を。
それを……他人を気にせず、ただ勝利だけ求めているチームに、私はいたい。目的が一致した関係性。
それが一番正しくて、居心地がいい。
そう思ったから。
「ありがとう。……これからよろしく、ディッフェトーゾ。」
これで私は、ようやく一歩踏み出した。
そう、思えた。
謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪謝罪
遅れてすみません。
誰との絡みが見たい?(いずれ書く)※選択肢にないウマ娘は、ストーリーが思いつかないか、作者が書けないです。すいません。
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