この話はどちらかというと閑話です。
シーモン商会やゴロツキが去り周囲から声が上がっている。
「すげぇ、何だ…、今の攻撃…。何したかわかんねぇぞ。」
「かっこよかったぞ!兄ちゃん!」
「ラドンっていやぁ腕っぷしは強かったはずだ…。それをあんな簡単に…。まあ、横柄な態度だったからいいざまだ。」
「おい!後ろの姉ちゃん達はめっちゃ美人だぞ!」
一部関係ない声も聞こえるが、振り返るとクレリアは満足そうな顔をしている。エルナは口を開けたまま放心して俺を見ている。ガウはいつも異常にテンションが上がり、ララは微笑みながら胸元で拍手している。
「アラン。気になっていたけどアランの流派は何なの?私達の神剣流とは全く違う異種の剣術に見える…。」
「ん!?あぁ…。…えぇっと、……コリント流剣術です。ハイ。」
ああ!どうしよう!?不意に聞かれたので頭が追いつかず言ってしまった…。ジュニアスクールの友達にも言わなかったのに…。
「「コリント流剣術…。」」
ザワザワと野次馬が噂する。やめろ!俺の黒歴史を拡散するんじゃない!
エルナが下を見ながら何かつぶやいていた。
「コリント卿は自ら流派を興す家系…。それに今の身のこなし、近衛騎士が10人で闘っても勝てる気がしない…。クレリア様が出会えたのは正に僥倖…。そのコリント卿が味方にいるなんて…。」
「今のも奥義なの?以前見せてくれた技よりも短いがやはり連打が素晴らしい。相手に隙を与えない動作は私も学ばなければ。今の技名は何?」
「あれはただの脅しだよ。奥義でも何でもないよ。」
クレリアは興奮して驚いている。
「あの技でも奥義でもないのね…。あれで脅しなんて嘘でしょ!?。ねぇ、技名は?決まっていないなら今決めて!」
(うーん。ナノム、なんかいい名前ないか?)
【コリント流剣術 『アランの黒歴史〜序章〜』はどうでしょうか?】
(全会一致で却下だ。これ以上傷をえぐるな。仕方ない自分で決めるか…。厨ニっぽいのは避けたほうがいいな。技名なんて適当でいいか。)
「ジャスト・ア・スレッドだ。」
「ジャスト・ア・スレッドね。覚えたわ。また練習に付き合ってね!」
「コリント卿!わ、私もコリント流の鍛錬をお許しいただけますか!?」
「わ、分かったから、エルナ。敬語とコリント卿はやめてくれ。」
色々あったが漸くタルスさんの所に迎えるな。
アラン一行の後ろでララがガウに語りかける。
「アランさんと模擬戦を行った場合、ガウは勝てますか?」
「ムリ!だってアラン兄の剣、強いもん!族長よりも強いよ!」
「族長より…、そうね…。ではもし素手同士での戦いなら?」
「ガウぅ、…分かんない。…多分負けると思うけど戦ってみたい!ガウ頑張る!」
「そうね、アランさんが本気を出されたらその力は未知数。ガウ、もしアランさんに命の危機が訪れたら命をかけて守るのよ。勿論、私もアランさんの命の盾になる。
(そうは言っても今の私では力にもなれないのがもどかしい…。何かお役に立てる事ができれば…)」
……………………
歴史書【人類銀河帝国〜其の二百七十八番目の武道〜】より一部抜粋
…惑星アレスにおいて、後に【神剣流】以上に絶大な人気を誇る剣術【コリント流】が世に出たのは時のアロイス王国が建国された頃だと言われている…。当時の噂によれば亡国の皇女やその家臣団もコリント流を参考にしたとされる。
門下生が1度、始祖アラン・コリントにコリント流の成り立ちを聞いたことがあった。始祖は何かを思い出したように頭を抱え俯き何も答えなかったという。この事から自らの哀しい思い出や苦難を経て今の流派ができたのだと噂され、以降この質問は禁忌とされた。
本人も生涯、流派の生立ちについて誰にも話すことはなかったので現在も真相は謎に包まれている…。
またコリント流免許皆伝のダニエル・ノリアン名誉侯爵が記した著書【剣聖列伝】にはこう記されている。
数々の技の中でコリント流の登竜門と言われている【ジャスト・ア・スレッド】は初見では絶対に避けられない技と他流派から恐れられ対策法が現在も研究されている。始祖は簡単な技と言われたらしいが私はそうは全く思わなかった…。
幼少期に1度祖母が披露したあの技の素早さと美しさは奥義と言っても過言ではなかった。幼い私がコリント流を目指したのも此のときだ。
初めて会得できた時は感動で涙が止まらなかった。その他の技を知れば知るほどコリント流が奥深いことがわかる。始祖の言う「簡単な技」という意味がわかったのはそれから数十年後の事である。
この話は書いていて面白くなって没頭していました(笑)
コリント流は今後も書きたいです。
ネタバレですが【ジャスト・ア・スレッド】は和訳で【ただの脅し】そのままです。