夕方頃にタルスさんの館に着きペーターが出迎えくれた。ヨーナスさんを呼んでもらいエルナを紹介する。宿を紹介してもらおうと頼んだが本日も快く泊まることも了承してくれたのでお言葉に甘える。
そして、クレリアの出自を伝え現在のスターヴェーク王国の状況を知るためタルスさんの都合を伺う。
外出中らしく2時間程自由時間ができたためヨーナスさんにお願いし夕食後に食べるプリンを作ることにした。ララが手伝いを買って出てガウも興味深そうに見ている。味見をしたら中々の出来だったので皆の美味しいと絶賛してくれた。
ヨーナスさんもこれは商品になると感動していたので後でレシピを渡すこととなった。無償で良かったがタルスさんと話、金額を決めるということに落ち着いた。
その横で更につまみ食いを行おうとするガウにララが手をつねり悲鳴を上げていた。皆の食べる分がなくなるので俺も注意する。
後は時間まで冷蔵庫で冷やし待つだけだが時間が時間なので心配だ。
話は変わるが、この厨房は魔道具を使用した調理器具は新鮮だ。冷蔵庫は魔石を使用するので初期投資と維持費もかかるとヨーナスさんに教えられた。趣味の料理に1台30万ギニーの冷蔵庫は高すぎるな。魔石は狩りをすれば定期的に手に入れられるな。今後落ち着いた拠点が出来たら購入してもいいな。
夕食時になり食卓を囲む。タルスさんも到着し今日も美味しい料理を頂いた。食後のプリンだが皆口々に美味しいと言ってくれた。しっかりと冷たく固まっていたので上々だ。
クレリアとガウがお代わりを所望したが余分に作った2つを奥さんのラナさんや娘のタラちゃんも食べたいということで2等分ずつ分けられた。
ウィリー達も給仕を手伝っていたので後で食べてもらおうと思っていたが…すまん、ウィリーとペーター。
ガウが美味しく食べてる横でララは見たことのない冷たい表情でガウを見ていた。ララもお代わりしたかったんだな…。
食後、タルスさんの執務室で話をする。クレリアの出自を聞いた際は驚愕された。執事のヨーナスさんにスターヴェーク王国の情報を商人仲間の情報を元に伝えてくれた。
籠城戦前のルドウイーク城で少なくない人数の兵が領地を脱出したこと
ルドウイーク城での戦いが終わり辺境伯の遺体が確認されたこと
その後、辺境伯領のレシーバ山の山火事が複数回に渡って頻発したこと
35日前に北部と東部の貴族が全て降伏したこと
20日前に南部の貴族、ロートリゲン・アゴスティーニ候が貴族を取りまとめアロイス王国に改名したこと
貴重な情報に感謝すると、タルスさんは命の恩人の頼みと父の出身もスターヴェークということで王女のクレリアを手助けすることは当然ということだった。
「…それと、アランさん。先ほどシーモン商会がベック君達が襲われたのを退治したと聞きました。大丈夫でしたか?」
「ああ、何も問題はなかったですよ?もしかして不味かったですか?」
「…まさか我々の商いにシーモン商会が首を突っ込んでくるとは思いませんでした。シーモン商会の先代は良い方だったのですが、今はあまり良い噂を聞かなかったので…。」
どうやらタルスさんのもとにはこの街の情報が至るところから入るらしい。思えばゴタニアでも有数の商人だから当然だな。
「あれだけの騒ぎが起きれば嫌でも噂は広まってきますよ。
それにアランさん。遅れましたがパーティー結成おめでとうございます。何でも特殊な剣術を使ったそうで。
恐らく近くの酒場では新進気鋭の冒険者が悪徳商会を懲らしめたとでも酒の肴していることでしょう。」
「いや…。まあ、特殊かどうかはおいて…。そういえばタラス村の荷の査定を大分高くつけていただいたみたいでありがとうございます。ベックもトールも喜んでいましたよ。」
タラス村の話になるとタラスさんは真剣な表情で話した。
「今回の荷の査定は息子のカトルに一任しましたが、カトルも利に聡い商人です。
詳細は私も聞いていなかったのですがアランさんの話でシーモン商会がタラス村の商品をどれだけ買い叩いていたのかが容易に想像できます。
カトルがウチの商会が損をする査定は絶対に行わないですからね。まあ、多少の融通はあったかもしれませんが…。それでも尚、シーモン商会がアランさん達やベック君達に迷惑をかけるようなら私も考えます。」
最後は怖い表情になっていたが笑顔を取り戻す。そして俺に耳打ちする。
「最後にアランさん、ララさんとガウ君の事ですが…。
獣人についてはスターヴェークでは聞いたことがありません。
…これは此処だけの話にしてほしいのですが隣国のセシリオ王国は獣人奴隷が増えてきたと聞きます。
ララさんを誘拐した盗賊は恐らくセシリオ王国に売るために生かしておいたかもしれません。何れにせよセシリオに行く際はご注意ください。」
「貴重な情報ありがとうございます。」
「いえいえ、アランさんやクレリア様の為に今後も我々タルス商会は協力を惜しみませんよ。」
(ナノム、信用できるか?)
【真偽判定モジュールによると真実を言っている可能性は95 %です。】
タルス商会との貴重なコネクションを築き会合を終えた。
……………………
アラン達が去った執務室に残る2人
「ヨーナス。」
「はい。旦那様。」
「アランさんの今後の情報を逐一私に報告するようにしてくれ。それにスターヴェークに関する情報も分かり次第頼む。また、アランさん達が望むに値する有益な情報もだ。」
「畏まりました。クレリア様の件はカトル様にもお伝えしますか?」
「それは伝えなくていい。…いや、この話は我々以外に絶対に口外しては駄目だ。この件は危険すぎる。アランさん達も我々を信用したため伝えてくれたのだ。裏切ることは絶対にしない。」
ヨーナスは小さく頷きタルスを見る。
「何れにせよ私の命の恩人達なのだ。ヨーナスよ、アランさんは大成を成す人物に見える。そう思わぬか?まあ、私などでは計り知れない大成のような気がするが…。」
「旦那様、先代から後を継いだ日に誓った目をしております。きっと間違いないでしょう。」
◇◇◇◇◇◇◇
戦艦イーリス・コンラート艦内生命維持セクション
「「…うぅ。」」
「2人とも目覚めたな。これより帝国軍規第3条4項に従い貴官らに任務を与える!帝国軍制服に着替えフタヒトマルマルにメインフレームブリーフィング室に集合!」
追記
コミックで語られている帝国軍規第3条4項を使用しました。
この話では「帝国軍に入隊する者は上官の命に従い帝国軍人としての素養・能力・資質向上をはからなければならない」的な意味で受け取ってください。