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「こ、これは…此処らへんで打てる品物じゃネェな…この黒い光沢は光を吸収しているのか?切れ味は想像がつかねぇ…。それにしても柄のグリップの肌触りは…」
ブツブツと男は独り言をつぶやいている。鍛冶師はナイフを見ただけでわかるのだろうか?まあ、帝国でも希少な超合金を使用したナイフを褒められるのは嬉しい事だな。
「…あ、悪い。アランだったか。とんでもねぇブツだなこれは。俺はヴォルトだ。これをどこで手に入れた?」
「まあ、いろいろとね…。あまり詮索しないでくれると助かる。それにエルナの魔法剣も中々の業物なんだろ?素人の俺でも切れ味が凄そうなのが分かる。」
エルナの武器をちらりと見て振り返る。
「あれは確かに親方の自信作だがお前さんのは次元が違う。この世界の物とは思えない。嗚呼!もう少し調べたいが早く帰らないと親方の機嫌が悪くなる。時間があったら親方の工房に来てくれ!そのナイフを持ってきてな。絶対だぞ!」
嵐のようにまくし立てヴォルトは去っていた。
「…なあ、ジョー。ヴォルトの親方の工房って場所は何処だ?」
あれだけ興奮して重要なことを教えてもらえず店長のジョーに聞く。
「…飲み屋街の外れにあるらしいが、実はよく知らんのだ。すまん。親方の名前はゴドハルト。どっかの国の名工だったらしい。」
「え!お得意さんじゃないのか?」
「半年ぐらい前に流れ着いたみたいなんだが…。武器に関して一級品だが、あの調子だろ?実は親方と別の武器屋の主人と大喧嘩してな…。
それも【この店は手入れが行き届いてない!武器を殺すような店にはやらん!】だぞ。再度依頼をしに親方の工房に行ったらしいが【素人風情がウチの工房嗅ぎつけやがって】って出入り禁止だ…。
名工の武器を自分の店に卸してもらうためゴタニア中の武器屋が手入れをやり直したもんだ。うちの店に卸してくれた時は大旦那様も大層喜んだが失礼のないようにと厳命されてる。」
「なるほどな。まあ、2週間後またヴォルトに会いに店に来るよ。」
ジョーは首を振る。
「納品の話だがあてにはしないでくれ。今ヴォルトが納品したのは1週間前の注文品だ。親方は納得するまで作り続けるらしいからな。」
「成程な。如何にも職人気質な人だな。ヴォルトを見ても探求心があって俺も気に入ったよ。」
「それを卸す商売人にとっちゃ大変だかな!」
2人で可笑しくなって笑いあった。
……………………
今日の最後の目的地宿屋【豊穣】にチェックインする。中々の高級宿らしく一人部屋で一泊五百ギニー、二人部屋で七百五十ギニー。安宿の相場が百ギニーらしいが風呂付きの条件は譲れない。とりあえず2週間ほど予約するとしよう。
皆に聞くとクレリアとエルナ、ガウとララは二人部屋でいいというので。連泊割引とサービスで3万ギニーを支払う。
看板娘のタラちゃんに夕食のお願いをしささやかなシャイニングスター結成の打ち上げをする。宿泊客は商人1グループだけらしい。明日には出ていくみたいなので暫く貸し切りか。
「昨日と今日で色々あったが明日から本格的に活動していく。今日はいっぱい食べて飲んで鋭気を養おう。では、シャイニングスターに!」
乾杯してエールを流し込む。ビールとは違うので喉越しはそこまでではないがよく冷えていて上手い!クレリアもワインを飲みながら山盛りのマスの塩焼きをパクパクと口に運んでいく。俺も注文した肉料理を食べよう。
「上手いな!このステーキ!焼き加減も好みのミディアムレアって感じでエールが進む!なによりこのガーリックチップの風味がいい!食欲をそそる!」
思わずの美味しさに声を上げてしまった。皆も頷きながら舌鼓しているとコックがやってきた。
「聞こえたぞ。お前さん料理について中々わかってるじゃねぇか。俺はこの宿の大将のバースだ。」
「シャイニングスターのアランだ。暫く厄介になる。風呂付きの宿を探してたが此処は飯もホントに上手いな!気に入ったよ。」
「ハハハ、おすすめのビッグボアのフィレだ!マスも脂の乗ったのを仕入れている。最近米っていうのも仕入れたからパンに飽きたら頼んでくれよ。」
「本当か!出来れば今後ライスを出してくれ!俺も料理が趣味だから勉強させてくれ!」
俺の発言にクレリアも口に入れたものを飲み込み賛同する。
「そうだ。この宿の料理も美味しいがたまにはアランの料理も食べさせてくれ。」
クレリアの発言にバースも戸惑いながら
「…まあ、店が暇な時は厨房を使ってもいいぜ。そんなに上手いなら俺も食ってみたい。」
「バース、いいのか?」
「厨房にあるものは使って構わないぞ。もし欲しい食材があったら買い出しに付き合ってくれ。客に提供するレパートリーも増やしたかったんだ。記念だ、お前らのエールやワインは今日は1杯サービスだ。飲め!」
……………………
妙な約束を取付け、歓迎会を終える。バースの話では大金を叩いて最新の調理器具を揃えているらしい。風呂に入りながらこれからの事を考える。
冒険者として今後は危険な依頼や討伐が増えるな…。リーダーとしてパーティーの皆を怪我させるわけにはいかない。
本来なら俺1人で全て事足りるがパーティーは皆のものだ。できる限り経験を積ませ活躍させたい。俺もリーダーとしての判断や指示を出す責任が必要だ。色々と考察してみるか。
俺やガウは探知魔法や気配察知ができるから斥候は問題ない。怪我した場合はララが治癒魔法を使えるみたいだが俺も試してみよう。これは急務だな。
また、戦闘のメインはクレリアとエルナだ。エルナは剣の使い手だ。近接戦闘では重宝するだろう。神剣流剣術第2階位は相当な実力を持っているだろう。クレリアも前衛に出すか?いや魔法の腕もあるので中盤がいいかもしれないな。ベックとトールがいた時の旅も冷静な判断力が光っていた。経験を積んだら今後はその場の現場判断を任しても良いかもしれない。
嗚呼、考えるのが楽しくなってきたな!そういえばハイスクール時代に少しだけやったオンライン星間シュミレーションRPG【惑星アデルの奇跡〜サイヤン帝国の野望〜】に似ているな。あれは艦艇同士の戦いがメインだが訓練と実戦を積んで下士官や提督を育てるのも重要なファクターだった。
よし!問題はガウとララだ。ガウは戦力として申し分ないが以前の暴走した事を忘れてはいけない。あの時はしょうがなかったがこれからはパーティーの一員として危険な行為を慎まなければ。最もララがいれば問題ないが、そのララに危険が迫れば同じことになるだろう。
ララの戦力アップもこれからの課題だな。ゲームでは補給艦ーヒーラーー無しではどんなに強い艦隊もあっという間に全滅した覚えがある。コストがかかる護衛艦を付けるよりも装甲や砲艦能力を向上させることが大事だな。
…なんか話が脱線してきた。とりあえずララと魔術ギルドへ行ってお手頃な魔法があればそれを買おう。そして皆には簡単なハンドサインを覚えてもらう。情報の伝達は生存率に直結すると思っている。明日から訓練だな。
よし!今から治癒魔法の特訓だ!切り傷と打撲ぐらいは治せるようにしないと。
……………………
部屋では痛みに耐えながら治癒魔法を覚えるアランの姿があった。
「出来た!これで簡単な怪我は治せる!ん?そういえば痛覚はナノムに命じて無くせばよかったな…。」
【痛覚を遮断すると艦長の怪我のダメージ量と治癒の伝達イメージが分からなくなる恐れがあるからです。】
(そういうものなのか?基本的には仲間に対して使用するからある程度の怪我の状況が分かればいいと思うんだが。まあ、いいか…)
【フフフ、艦長の痛み耐性について重要なデータを取ることができました。】
…何かどうでもいい事が聞こえた気がするが、大分遅い時間になったから今日はもう寝よう。
【惑星アデルの奇跡〜サイヤン帝国の野望〜】のゲームは提◯の決断+信◯の野望を足して2で割り、蒼き◯と白き◯鹿の継承引き続き要素を持つ全銀河一億人程のプレーヤーがいた人気のオンラインゲームでした。
アランは途中から参加した者ののヘビーユーザーにカモられそこまでやり込むことはなかったようです…