前半はクレリア視点です
◇◇◇◇◇◇◇◇
ふう、やはりアランが考案した料理は美味しい。どれだけ食べても足りないくらいだ。不安な日々が続いていたが今は幸せだ。 明日からも頑張って行かなければ…。
ん?ララが何か喋りたそうだ。
「アランさん、この後アランさんのお部屋にお邪魔していいでしょうか?」
ブ!ララ!いきなり何を言い出すのだ!口に含んでいたお茶を吐き出してしまったではないか!
「ああ、いいよ。」
アラン!アランも年端のいかぬ少女を部屋に招くなど何をするつもりなのだ…。私もアランの部屋に入ったことないのに…。
も、もしや私の知らない間に二人の関係は恋仲に進んでいたのか…?気になって仕方がない…。
横ではエルナがテーブルを叩いていた。
「ア、アラン…ララ!あ、あなた達は何てふしだらな…。」
「ん?ふしだらって何だ?」
ん?何か様子がおかしい。アランはあっけらかんとエルナに聞き直している。
ララはエルナの発言で顔を赤らめている。
「わ、私はそういう意味で言ったわけでは…。今日習った魔法の講習でよく分からない所があったので教えてもらおうと…。しかしながらアランさんが望むならこの身をさ、捧げます…。」
エルナの発言の意図を理解したように恥ずかしがっている。やはりララはそのようなつもりで言ったわけではないのか…。しかし淑女が体を捧げる等何を言っているのだ。
「よく分からないが確かに俺の部屋に二人入るのは狭いか。ガウとララの部屋の方が広いから問題ないだろう。それにララ、今日の講義で魔力を使うことは今はないだろう。」
アランは質問の意図とはズレた回答をする。魔力を使うことが体を捧げる…。言われてみればそうか、いや、ララの表情は違うように見えたが…。分からない…。というか私は何故こんなに焦っているのだろう。
アランとララが部屋に入る前、ガウに注意を促す。
「いいですか、ガウ。未婚の男女が同衾することは許されませんのでしっかりと見張るのですよ!」
「ガウゥ…。どーきんって何?」
!?どうしよう。私も経験がないからどう言っていいか分からない。そうだ!年長のエルナがいた!
「エ、エルナ、説明してくれ。」
「私ですか!?え、え~と…。それは…。ふぅ…。あ、あの…。」
「ガウ!エルナ姉!どーきんって何!」
痺れを切らしてガウが問い詰める。
「そ、それはアランとララがいちゃいちゃ…うーんと、仲良くなることです!」
「ガウ!やだ!なんで姉ちゃんとアラン兄が仲良くなるのが駄目なんて嫌!ガウもアラン兄とどーきんしてくる!」
そう言ってガウは部屋に入っていった…。ああ、絶対に意味が分かってない!(私も詳しく分かってないが)
仕方がない。いつララに危険が及んでも助けに行けるように部屋の前で待機しておこう…。此れはあれだぞ。私の名誉の為にも言っておくが、もし万が一があった場合の為だ。決して興味があるとかそういう訳ではない…。
「エルナ、部屋に戻っていいぞ。」
扉の横でエルナは聞き耳を立てている。仮にも貴族というのにその所作は暗部にも似ている。
「いえ、此度のガウの失態は私にあります。今夜は私が同衾しないか見張ります。クレリア様こそお体に障るのでお部屋に戻られてはいかがですか。安心してください。」
…今の私に対してルミナス様を前に忠誠を誓った唯一の家臣がエルナだ…。そのエルナを疑うことはあってはならないが此れは私の責務だ!エルナは此処から帰りそうにないな。というか、ただ盗み聞きしたいだけかもしれない…。
「エルナを疑う訳ではないが此れは私にも否がある。痛み分けではないが二人で監視しよう。」
エルナは黙って頷き監視の態勢に戻る。僅か5分ほどでガウの寝息が聞こえてきた。
おのれ、ガウ!あれほど言ったのになんという体たらくだ!
暫くしてアランの「目を閉じて」という声が聞こえた!やはり私を裏切ったのか!?…いや、裏切るのは違うか…。
扉の隙間から光が溢れる。あまりの眩しさにエルナと呆然としていた。
……………………
「はい。一見宝石に見える様な石ですが幻獣から頂いたとされる特殊な魔石です。」
「幻獣?特殊な魔石って何だ?」
「その魔石は自分の魔力を込めると蓄積されるのです。どれくらいかは分かりませんが。先代の治癒師が亡くなってからは里では怪我をした人のためその魔石を利用して治療を行っていました。アランさんが倒れた時にこの魔力渡しをしてアランさんをお助けしました。」
魔石は一次電池のようなもので放電機能だけだと思っていた。その幻獣の魔石は二次電池に似ているな…。充放電の性能を利用すれば色々な用途で使えるな。
そういえば盗賊の押収した宝に宝石のようなものがあったな。あれば恐らくララのものだ。
「ちょっと待っててくれ」
部屋を出るとクレリアとエルナがいた。さっきから探知魔法で部屋の外でウロウロしていたが何をしていたんだろう?
自分の部屋から宝石の首飾りを取り出す。以前は赤みのかかった明るさがあったが今は薄くなっている。
(ナノム、トレースして魔石の魔力数値を表示できるか?)
【解析してみます】
【解析完了 現在の数値16/1000です。最大値以上魔力を蓄積できるかは不明です】
驚いた!昨日回収したオークも魔石を魔力数値化して252発ファイヤボールが打てる結果だったが最大1000とは!
(少し俺も魔力を送ることはできるか?)
【艦長の魔力を放出させます。魔石に手を当ててください】
【解析完了 現在の数値は51/1000まで回復しました】
人力だとキリがないな。よし、オークの魔石を2つ使ってみよう。…数値を550まで回復することが出来た。魔石の色も以前よりも綺麗な明るさになった。これぐらいで充分だろう。後は定期的に補充していけば大丈夫だ。
ララの部屋に戻り魔石をララに渡すと驚いている。
「気付かなくて済まなかった。盗賊の押収品にララの魔石も含まれていたんだ。サービスで半分ぐらい魔力を補充しておいたよ。」
「ありがとうございます。…あの…本当に私のものでしょうか?以前よりも明るく綺麗な色ですが…」
「色が薄くなったら魔力が少なくなっている証拠だから定期的に補充するから言ってくれ。因みに今の状態でヒールは50回以上はできるよ。明日も早いからそろそろ部屋に戻るよ。みんなおやすみ。」
「アラン兄!おやすみ!ガウも寝る!」
部屋を出るまでララは呆然と「ヒールが50回も…」と呟いていた。
※参考
グレイハウンドの魔石価格350ギニー=ファイヤボール147発分
オークの魔石価格600ギニー≒ファイヤボール252発分で設定しました。