次の日、カトル防具店に行き防具を受け取った。ワイバーンの皮鎧は動き易く、腕を伸ばしても全く気にならない。クレリアの鎧はくすんだ冒険者仕様の鎧になりエルナの鎧も気に入ったようだ。
午後からは魔法や剣の鍛錬を行いその中でクレリアがエアバレットの風魔法を覚えることができた。風を起こすイメージを教えたララのアドバイスのおかげだ。
気づいたがララは誰よりも火魔法と風魔法を使いこなせるようになっていた。
魔石の供給を行わずに10連射は確実に放てるようでそれを3セット行える。連射をしない理由は10連射を越えると一つ一つの制御が難しくなり今の段階では此れが限界とのことだった。また、午前中に魔法を使っても午後には魔力が回復するようで朝に魔石に魔力を充電させ昼からの練習時には魔力は完全に回復している状態なので驚いた。ナノムのおかげだが獣人特有の性質なのだろうか?夜にも回復した魔力で充電させているらしい。
それを聞きクレリアとエルナは魔法の練習を午前中にも行うようになった。少なからず効果はあったようで以前より20%程魔力が高まったらしい。
クレリアに関しては魔力の回復するスピードも上がり朝に魔力使用して昼過ぎには全体の50%程は回復するようだ。限界まで魔力を消費すれば総容量が上がる傾向みたいだが俺はナノムに問いかけても限界値が上がることはなかった。体質的な関係なのか分からないが魔石から抽出することができるので諦めた。
5日目を過ぎたあたりから練習中時折出てくる魔物がゴブリンが多くなった。本当は動きの素早いグレイハウンドあたりが魔法の練習としては適しているんだが、小銭稼ぎとして倒していった。
7日目は30匹のゴブリンが群れをなして襲ってきたが難なく(討伐証明と魔石回収は手間だが)倒した。
魔術ギルドの基礎講習は順調で10日目には前倒しで講習を修了してこれからは残りの日数は師匠の好意で魔道具作成の時間にしてもらえる。ギルドから買った魔導液で夜は簡単な魔道具作成でも作っていこう。後は簡単なパーツ加工は自分で出来ない部分は何処かの工房に発注しなければならないな…。
昼にクレリア達と合流し昼食を取ろうとしていた時に【鋼の刃】のジェフに声をかけられた。
「おお!アンタはアランさんじゃないか!この前はホントに助かったよ。今近くにリーダー達もいるから飯でもどうだ?奢らせてくれ!」
「元気そうだな。もう体は大丈夫なのか?」
「この通りバッチリだ!助けてもらった次の日には武器を握れたぜ!ちょっと待ってな。みんなに伝えてくる。」
鋼の刃と合流し昼からやっている酒場で話をする。俺はエールを頼みクレリア達はワインを1杯だけ頼んだ。午後からの練習に支障を出したくないようだ。その代わり鋼の刃が驚く量の料理を頼んでいたが…。
「いやあ、あの時はなんのお礼もできずに済まなかった。今は臨時収入で少しだけ懐に余裕があるからいっぱい頼んでくれ!」
リーダーのジャックがそう言い料理を食べながらエールを追加する。
クレリアとエルナは女性のリンと会話が盛り上がっている。
「臨時収入って何かの依頼達成か?」
「ゴブリン狩りだよ。ここ数日やけにゴタニア近くで見かけるようになってな。シャイニングスターを見習って俺たちも練習がてら狩ってるんだ。噂じゃ廃村の集落に里を形成してるって話だ。」
ジャックの話に大柄なギルが頷く。
「…しかしこの数は異常だ。」
「ああ、日に日にその数があり得ないぐらいに増えてきたから暫くは狩りは中止だ。ゴブリンといえども数で集られてきたら厄介だからな。恐らく上位種もいるはずだ。」
ジャックの発言の上位種が気になる。
「上位種はどんな奴がいるんだ?強いのか?」
「少し大きいのがゴブリンロード。こいつは大したことはないが動きはゴブリンより素早い。後はホブゴブリンだな。こいつは力が強いから囲んで倒さないと攻撃が怖い。俺たちが知ってるのはこんなもんだ。他にも見たことないゴブリンはいるはずだ。」
色々とゴブリンについて話を聞いていた時に酒場の扉が開いた。荒々しく扉を開けカウンターで飲んでいる客を見つけると走ってカウンターに向かった。
「親方!いつまで飲んでるんスか!今日領主の使いから緊急で武器の発注がきたんスよ!」
「あー?ヴォルトか?俺がひとり酒を楽しんでんのに」
「昨日の晩から何時間飲んでるんスか!?さっさと工房に戻りますよ!」
「まだ宵の口だ…俺の酒を邪魔する輩に武器はやらん!」
呆れるような会話の相手はジョーの武器屋で会ったヴォルトだ。恐らく相手は親方のゴドハルト…なのか?挨拶するべきか…いや、酔っ払いにわざわざ絡むことはやめよう。
「アラン、知ってるのか?」
ジェフが俺とカウンターを交互に見直す。
「親方って方は初めて見るが弟子はこの前あったよ。親方に紹介させてくれって。」
寡黙なギルが目を大きく開いて俺を見る。
「あの人は噂では高名な鍛冶師らしいが…それをアランに紹介してくれとは…」
カウンターを見た時にヴォルトと目があった。
「おお!お前さんはアランじゃねぇか!この前の武器は凄かったぞ。今親方の工房に行くから一緒にどうだ?親方の武器も見てくれ!」
…デジャブのような会話でカウンターに連れて行かれる。
「親方!前言ってたアランって奴ッス!見たことないブツ持ってびっくりするっスよ!」
俺を見て髭を撫でながらギロリと睨みつける。
「ほう…。ヴォルトが言ってた面白い奴だな。酔いも冷めてきたしお前さんの武器を見せてくれ。」
「此処は酒場だぞ?楽しく酒を飲む場だ。武器を見せるのは他の場所にしてくれ。それに緊急の仕事があるんじゃないか?」
俺の言葉に弟子のヴォルトが冷や汗をかく。
「ア、アラン!親方に何て口の聞き方…」
親方はエールの入った木製のジョッキを勢いよくテーブルに叩きつける。酒場の皆が俺たちに注目する。
「おい、若造。仕事が忙しいかどうかは俺が決める。そうだな…此処は確かに酒を飲む場所だ。今から工房に来い。今の俺の仕事はお前の武器の研究だ。」
「勝手に決められても俺にも予定があるんだかな…」
喧嘩になりそうな雰囲気の中、ヴォルトが場を諌める。
「そうッス!親方!今から工房に戻るッスよ!アランも着いてきますんで!ついでに武器も作るッスよ!」
勝手に約束されて戸惑うがヴォルトがアイコンタクトで懇願している…。クレリアとエルナは親方を睨みつけララは笑顔だが目は笑ってない。
「…ということで俺は今から工房に行くことになった。昼からは俺抜きで自主練をしてくれ。魔力と体力に気をつけて絶対に無理はするなよ。リア、パーティーを頼んだ。ゴブリンが大量に来たら迷わず逃げろ。ジャック達もすまなかった。」
クレリアは機嫌が悪かったがパーティーを頼むと言われ表情が真剣になり頷く。エルナも俺がクレリアを頼りにしていることに満足したようだ。
鋼の刃の皆は理由もわからずうんうんと頷いていた。
そんな中ゴドハルトが急に立ち上がる。
「酒場の皆!騒がせて悪かった!此処は俺ゴドハルトの奢りだ。足りなかったら申し訳ないが後は楽しんでくれ!おい若造行くぞ!」
テーブルに金貨5枚を置き酒場を出る。どう考えても飲み台に500万ギニーは過剰だ…。
親方のゴドハルトは足早に工房に向かいその後ろでは「さっきは助かった」と何度もヴォルトが謝っていた。