2話投稿します
ゴドハルトの工房は街の外れの貧困街…とまでは言わないが掘っ立て小屋や長屋が連なる一角にあった。
噂では名工と言われていたが工房とは言い難い家に入る。
「なあ、ヴォルト。ホントに此処が工房か?」
「…剣とか打つ炉は別の場所の鍛冶師ギルドの物を借りている。この地下に親方の工房がある。」
「そうなのか…。名工って噂だからすごい設備を持っているかと思った。」
「確かに元居た国の工房は凄かったぞ。設備も慕う弟子もそりゃあとんでもないもんだ。」
家に入ると名工と呼ばれたゴドハルトが1人の少女に平謝りしている。
「もう!お父さん!あれだけ飲み過ぎは駄目って言ったのに!朝帰りじゃなくてもうお昼過ぎよ!」
「す、すまねぇ…。でもお父さんにもお酒飲みたい日だってな…」
「週7で片時もジョッキを手放さない人が何言ってるの!!…ってヴォルト?お客さん?ああ!?あの時の…」
立ち話、もとい説教を聞いていたら漸く俺達に気づいた。よく見ればカトル防具店にいた少女だ。
「そ、そうだ!アランが武器を見せてくれるって言ってな。お前も気になってだろう!アラン!地下に来てくれ。」
「こんにちは、アランさん。この前は名乗らずにごめんなさいね。私はお父さんの娘のリーナです。皮鎧、似合ってますよ」
「この前はどうも。Cランク冒険者のアランです。動きやすくて便利ですね。仲間もいいもの買ったって喜んでましたよ」
簡単な挨拶を済ませるとヴォルトに腕を引っ張られた。
「おい、アラン。お嬢に色目使うと殺すぞ。俺が殺して親方がもう一回殺す。そんでもう一回死ね」
「いや、色目なんて使ってないが…。それにそんなに殺さないでくれよ。」
下らない会話をして地下に案内される。
階段を降りると光の魔道具で辺りが明るくなり
雑多に物が溢れ手狭な作りかけた物が溢れた散乱している手狭な机と椅子。残り2つは綺麗に整頓された机と椅子。
ゴドハルトは散乱した机の物を大柄な腕で一気に払い除け机をバン!と叩き此方を見る。
「準備完了だ。見せてくれ。」
戸惑いながらも一連の説明をして電磁ブレードナイフを渡す。ゴドハルトが「おい!」とヴォルトに声をかけると手のひらサイズのルーペが手渡された。じっくりと鑑定し小声で何か喋るが聞こえない。
5分程たった後、急に振り返り質問される。
「何か切っていいか?」
「切ってもいいが気をつけてくれよ。大抵の物は切れるから。」
積み上げられた山の中に手を伸ばし黒みがかった鉱石を取り出す。あの山の中から一気に取り出すのは才能か…。
「親方!それは大事な☓☓☓☓☓☓☓の鉱石じゃ…。」
アワアワとヴォルトが焦るがゴドハルトは気にしない。☓☓☓☓☓☓☓は新たな金属か。ミスリルや鉄とは違う物質か。
そーっと鉱石の端を撫でる様にナイフを振り下ろし何の抵抗もなく切られた。
切り口を見てまたブツブツと小声が漏れる。リーナやヴォルトもナイフを手に取り色々と確認している。
……暇だ。そうだ!部屋の中の工作物を見学しよう!
……暇だ。あまり飾られていない。恐らくゴドハルトのあの山の中に何かあるのだろうか。リーナに声をかけ切り分けられた小さな金属の欠片を貰えるか頼む。1センチ台の欠片を貰い投擲用ナイフで切ろうとしたが全く傷がつかない。仕方なく更に切り分けてもらい2ミリ台になったものを皆が見ていない時に飲み込む。
(ナノム、解析を頼む)
「何らかの金属と思われますが帝国データベースにはありません。しかしミスリルより硬度があります。サンプルが少ない為確証はありませんが魔法剣として優れています。微量ですが金属自体に魔素を検知しました」
貴重なデータが得られたな。恐らく希少な金属なのだろう。
…2時間ぐらい経ったぞ。
「すまんが、もういいだろうか?宿に帰る時間なんだが…」
俺の言葉に漸く我に返る。
「おお、すまんかった!もう少し見ていたかったが…時間ならしょうがない。」
ナイフを返してもらい帰り支度をするとゴドハルトが声をかける。
「アラン…。お前さんは何処から来た?ザイリンクか?俺のいたイリリカでは見たことがない。」
「…あまり言いたくはないが流れ者だ。海を渡ってきた」
「ってなるとあの海洋大国か…。造船技術だけじゃねぇって事か…」
「恐らくその海洋大国ってとことは違うと思うぞ。確かに俺の国の造船技術は凄いがあまり詮索しないでくれると助かる」
「分かった!色々と詮索してすまねぇ。世界は広いってことだな!今日はホントに貴重な物を見せてもらった!俺はゴドハルトだ。ゴットって読んでくれ。それと困ったことがあったら何でも言ってくれ。そんで他にも俺が見たことないブツがあったら見せてくれ!」
後半の言葉が全てな気がするが…
「分かった。改めて挨拶させてくれ。Cランク冒険者のアランだ。そういえば魔道具を作ろうとしているんだが…」
諸々の話をつけ帰路につく。
◇◇◇◇◇◇◇
「親方、やっぱアーティファクトっスかね?」
「いや違う。…恐らくは人口的に作られた傑作だ。素人にはアーティファクトに見えるだろうが特有の刻印や紋章が全く見当たらねぇ。ナイフの中にあるかもしれねぇが今までそんなもの見たことねぇ。」
「それに切り口がこんなに綺麗に…。ミスリルよりも硬いアダマン鉱石が…。お父さん、これは切るってよりも金属の繊維を断つって感じよね?」
「ああ、切る瞬間にごく僅かだがナイフが振動したんだ。後は何の力も入れずにスッパリとな。神器って言われればそうかもしれんが…」
「なるほど…、振動することによって更に切れ味が増すんスね。今見ても惚れ惚れする切り口ッス。でもよかったんスか?貴重なアダマン鉱石を…」
「別にいい。此処ゴタニアじゃあまともな炉はねぇからな。それにほんの少しだ。本当は真っ二つにして切っても良かったぞ!」
「あと、アランさんから渡された設計書も面白かったわね。」
「そうだ…。このギヤとかいうカラクリは面白え。リーナ、ヴォルト、適当な銅と鉄持って明日ギルドの工房に行くぞ!」
「了解ッス!あ!?領主の発注は…。」
「んなもん今から2時間ぐらいで作るぞ!早く此方を作りたい!」
……………………
豊穣に着くと中庭にクレリア達がいた。みんな残念そうな顔をしている。
「どうした?訓練はもう終わったのか?」
「ああ!アラン。帰ってきたのね。実は…」
◇◇◇◇◇◇◇
同時刻
ゴタニア領主館ではタルス商会会頭タルス、冒険者ギルド長、ゴタニア騎士団長、そして領主での会議が行われていた。
「…では、明後日に掃討作戦を開始する。すまんがタルス殿には参加者の後方支援を、ギルド長ラーク殿に冒険者へ強制依頼を不満と報酬は私が受け持つ。支給する武器がまだ揃ってないが必ず何とかする。パーシヴァルは騎士団の最終調整を。王国民の為、ゴタニアの民の為よろしく頼む」