次の日、魔術ギルドのカーラさんに明日は休むことを伝え講義を受ける。残念がったが支部長も明日の討伐依頼の負傷者の治癒要員として参加するらしい。口元のニヤつきを見ると結構な金額が貰えるような気がするのは俺だけか…。
その後皆と合流し冒険者ギルドによると受付のアミィさんが明日の強制依頼についての説明があった。ギルド職員が少なかったのは酒場や定宿にいる冒険者達を探している最中らしい。明日は七時に正門前に集合だ。
夕食は数日振りのカレーだ。コクが合って前作ったときよりも上手い。皆の士気も最高潮だ。クレリアとガウ、食べ過ぎで明日動けないようなことがないように祈る。…気付けば今日は満席だな。
……………………
翌朝6時過ぎに朝食を食べ出発する。ガウが眠たそうな以外は皆元気だ。バースから弁当をもらい別れ際に「絶対に必ず全員帰ってこいよ」と声をかけられ出掛ける。
ゴタニア正門前には既に騎士団と守備隊が整列しており冒険者も疎らではあるが徐々に集まっている。
(ナノム、どれくらいの人数がいる?)
【守備隊の装備をしている者は150名、その他統一された装備をしている者は51名、冒険者と思しき者は我々を含め64名…今到着した者を含めると72名です。その他武器を携行していない非戦闘民が83名。総勢356名です。】
非戦闘民が多い気がするがよく見ると統一されたローブの一団が15名ほどいる。魔法兵なのか?
お?荷物の運搬をしている中にウィリーとペーターがいた!手を振ると俺達に気付き手を振り返してくれた。クレリア達も気付き笑顔になる。エルナが、
「タルス商会も☓☓☓として参加するのですね。思っていたより大掛かりなものですね」
「☓☓☓って何だ?」
「必要な物資を供給する部隊です。長期戦を想定し食料や武器を運び戦線を維持する目的です」
ナノムにアップロードをしてもらう。
補給艦…じゃなかった。補給隊って事だな。此方の言葉では輜重隊っていうのか。
「7時の鐘が鳴るとの宝飾をした鎧を着るでっぷりとした中年1人とその従者と見られる10名が横に立ち演説を始めた。
「私は王国貴族のホルスト・ジャージー男爵だ!急な要請にも関わらず諸君達の討伐参加に感謝する!しかし、しかしだ!この火急の事態に参加するのは王国民の義務だと言っていい!
聞いているものもいるだろうが此処ゴタニアと王都を結ぶ街道に魔物が千匹程現れたという。此れは我がベルタ王国の危機だ!
…本来ならばそこにおるパーシヴァル殿が指揮を取るはずだ。しかしながら騎士爵では不安が残る。それは皆の気持ち…私も分かるぞ。
そこでゴタニア伯たってのお願いにより私が指揮を取ることとなった!公務中にも関わらず私はこの愛するベルタ王国の為に立ち上がる事にしたのだ!
偶然にもゴタニアに訪問していた私に感謝するが良い。
それから私は… 」
10分間のスピーチにクレリアが怪訝な顔で質問してくる。
「ゴブリン500匹って話じゃなかったの?」
「タルスさんの話ではな…。状況が変わったのかもしれないが…ただ貴族が今言った討伐隊800人は嘘だ。此処には400人もいない」
「見るからに出世欲の塊みたいな貴族ですね。自分を大きく見せようと大言壮語で汚らわしい。」
エルナも不満を口にする。よく見ると騎士団や守備隊の人達は壇上の貴族に対してかなり睨みつけている。
大事な戦闘でこれでは連携もできないのではないか?
号令を受け進軍が始まる。
……………………
1時間の行軍で目的地まであと1キロの距離で進軍が止まる。俺達は騎士団のすぐ後ろの冒険者グループの中にいる。何事か、先頭集団に何か起こったのかと思うが後ろから1人の騎馬が先頭に向かって走っていったのがついさっきだ。
進軍を開始してから定期的に探知魔法を行っているので1キロ先にはゴブリンが100匹程確認出来た。
(ナノム、仮想ウインドウで敵のマッピングを頼む。魔物は赤、パーティーや見知った者は緑、それ以外は黄色で表示してくれ範囲は探知魔法限界距離の2キロだ)
【2キロではゴブリンの魔素は微弱すぎて検知限界を超えています。正確なマッピングは1キロです】
(了解した。1キロで頼む)
欲を言えばバトルフィールドマップを作成したいが今は探知魔法で把握できる自分の範囲が全てだ。いずれ改善したいな。
更に1時間が経過した頃、豪華な馬車が先頭に向かった。恐らくあの貴族が乗っているのだろう。その後進軍が再開し開けた平野に皆が整列する。
遠くの方でコブリンが集まって此方に近づいてくる。
騎士団の兵に囲まれた馬車で何か演説しているが聞こえない。
「皆、聞いてくれ。貴族が言ってた事はあながち間違っていないぞ。今見えている集団とその奥だけで500匹はいる。
更にその北700メートル先に上位種を含めた物が100匹、これは普通のゴブリンを含めていない数だ。
クレリア、エルナは魔法は温存だが囲まれる前にエアバレットが放てる対応をしてくれ。ガウ、昨日言った以上に俺達から離れすぎるな。俺達が囲まれる前に引っ掛き回せ。ララ、君は俺を除いた最大戦力だ。魔法の消耗は気にしなくていい。少なくとも10匹以上は仕留められる魔法を頼む。」
「「了解」」「ガウ!」
矢継ぎ早に言ったが伝わり安心したのもつかの間。騎士団の怒号で戦闘が始まった。
ホルスト・ジャージー男爵のホルストの語源はホルスタインから来ていますが顔はオークをイメージしてください