騎士団の怒号で突撃が始まりゴブリンを蹴散らしていく。
冒険者の斥候は出したのだろうか?
前線では騎士団と守備隊が戦線を構築していくが俺達冒険者には指示がない。
騎士団が突出するとゴブリンが包囲するよう切れ間を攻めてくる。あのゴブリンにそんな知能が?暫くすると侵攻が止まり横陣の様な形になった。
所々では守備隊が苦しい声を上げている。騎乗した騎士は懸命に鼓舞をするが多勢に無勢だ。現在201対475だ。後ろから更に200匹加わりそうだ。長期戦になるとジリ貧だ。
周囲の冒険者も不安な表情の者が増えてきた。やはり恐怖が伝搬するのは人類に連なるもの共通だな…。
騎士団が戦っている距離200メートルまで近づくと馬車の横で初老の冒険者が叫んでいる。
「だから我々は斥候を出して状況を把握したいのです!許可をお願いします!ゴブリンがこの数がいれば必ず上位種が潜んでいるはずです!我々は兵の訓練はしていないので安易な突撃は怪我をするだけです!低ランクの冒険者は後方支援の手伝いと約束したはずです!」
…成程、どうやら此方の連携は最悪なようだ。上位種が100匹以上いる事も知らないようだな。俺が言ってもパーティー以外は信用しないだろう。
馬車から例の貴族が降りてきて剣を抜く。
「貴様!平民の冒険者風情が貴族に対して意見するとは!更にゴブリン如きに弱腰の物言いとは言語道断!冒険者等関係あるか!貴様ら全員突撃して名誉の死を遂げろ!貴様の首を上げこの戦い士気を上げる!」
「「嗚呼!ギルド長!?」」
おいおい、士官は冷静な判断力と決断力が求められるのに部下の献策を認めないとは無能にも程がある。いや、貴族からしたら部下ではないか…。やばい、剣を振り上げた。
「ガウ!あの冒険者を守れ!」
「ガウ!」
刹那の速さで冒険者を抱え貴族と距離を取る。剣を振り下ろした貴族は呆気にとられている。
「君は…?先日ギルドで報告があった…いや、助かった。感謝する。」
「へ、平民のくせに…巫山戯た事を…。ん!?貴様は獣人か!汚らしい!あっちへ行け!」
怒りで剣を振り回しながら叫ぶ貴族に反吐が出てきた。ガウや獣人に対する差別に怒りが込み上げてくる。
「アイツ…悪い人間…キライ!」
ガウが貴族を指差し叫ぶ。ギルド長が間に入り冒険者側に振り向く。
「もういい!冒険者はギルドマスターの私が士気を取る!
各パーティの斥候に精通するものは隠れて情報を収集してくれ!奇襲されないよう情報を頼んだ!
Bランクパーティー及びCランクのソロは守備隊の左右に別れ遊撃を頼む。私ともう一人ギルドのケニーが左右の指揮を取る!
Cランクパーティー及びDランクパーティーはその後ろで交代要員として待機!
Eランク以下の者は商隊の護衛で商人と物資を守れ!
以上!!」
冒険者達は何が起こったのかポカンとしている。まだ恐怖と混乱の最中にいるようだ。まだ戦局は此方が優位のはずだ。折角ギルド長が指揮をするんだ貴族に戻されてはいけない。恥ずかしいが一肌脱ごう。
「皆!今聞いた通りだ!ギルドマスターの指示通り守備隊を助ける!ゴタニアを守るのは俺達冒険者だ!シャイニングスター!行くぞ!」
俺の大声にすぐ「「おお!!」」とクレリア達は状況を察し返答した。周りからも「やってやるぞ!」と息を吹き返す。
冒険者達はギルド長の決意にやる気を取り戻した。
「君はシャイニングスターのリーダーのアランだったな…。さっきは助かった。君たちは右のケニーの指示に従ってくれ。Bランクの冒険者は実は4つのパーティーしかいないんだ。申し訳ない前線に出てもらおうと思うが大丈夫か?」
「了解ですギルド長。ですが、できれば臨機応変に対応したいので拠点防衛よりもゴブリン達の戦線を崩すことに力を入れても良いですか?」
「良かろう…。ケニーには伝えておく。しかし今の君たちは貴重な戦力だ。命だけは捨てるなよ」
……………………
右翼では守備隊が大盾でゴブリンをただ抑えているに過ぎない状態だ。守備隊の後列は怪我人が蹲っている。
「ララ、重傷者を見かけたらヒールをかけてやってくれ。軽傷者は申し訳ないが後回しだ」
「はい!」
「俺が特大のファイヤボールを放つ。ガウはその後奴らを引っ掻き回せ!リアとエルナは隊列が乱れたゴブリン達にトドメを刺せ!行くぞ!」
(ナノム、5倍のファイヤボールをゴブリンの集団に放つ。味方に被害が無い位置に照準を合わせてくれ。)
仮想ウインドウには50メートル先の後方にTARGETの赤表示がされる。今だ!
「「おお!何だあれは!!」」
俺の頭上1メートル上にファイヤボールが現れゆっくりとゴブリンの後方に向かっていく。
次の瞬間ドーンという音と爆散する数十体のゴブリンが舞う。
ゴブリン達は後ろを振り返り混乱する。此れはチャンスだ。しかし守備隊も大きな音と衝撃で体が追いついていない。説明なしにいきなりだから当然か。
ガウは命令通りゴブリンの中腹で暴れている。クレリアとエルナもゴブリンの混乱が回復しないように上手く撹乱している。ララは後方からくる増援に特大のエアバレットを喰らわし薙ぎ倒していく。よし、皆よくやっている。
俺も皆を鼓舞しよう。
「いいぞ!流石シャイニングスターだ!」
冒険者達も俺達に続きゴブリンを討伐していく。正直、俺達だけで手柄を立てるのは忍びないので安心している。
馬上の騎士が剣を振り上げ激を飛ばしている。崩れかかっていた守備隊も隊列を直してきた。
騎士団や守備隊も勢いを取り戻し掃討作戦が漸く始まった。