「ふ〜……キツい……」
フーディエがオープンして3日が経過した。
最初の安い金額から定額に切り替わったので、どうなるのか?色々と心配だが、フーディエは真の目的の為の踏み台に過ぎない。
3時間ぐらいぶっ通しでパソコンと向き合いプログラミングを弄ったり成果報告を聞いたり色々とやっていたので体を解す。流石にジジイじゃないのでゴキッとは言わないけども固まっているのが分かる。
「15分ぐらいの息抜きするか……残業すれば母さんが強制的に連れ帰るからな」
母さんは恐らくはフーディエに入った際にこの事を予見していたんだろうな。
俺が8時間以上の労働、所謂残業をしようとするのならば問答無用で首に縄をつけて引っ張っていく。物理的にだ。比喩とかなにかの表現じゃなくてマジで引っ張っていく……恐ろしい母さんだ。
「公式設定集を置いてくれてるのはホントにありがたいわね」
「早矢、んなに積んで読み切れるのか?」
他のネットカフェには置いていない本をフーディエは結構仕入れている。
例えば公式設定集、皆が知りたいあんな事やそんな事が書かれている読者のロマンが詰め込まれた漫画を置いてあるコーナーがある。
「延長してでも全て読むわ!新テニスの王子様の公式設定集にはキャラクターのパラメーターが書かれているの。主人公やそのライバル達のステータスの高さ、そしてそれを上回る高校生達の圧倒的なまでのステータス……夢に溢れるわ!」
「お客様、当店ではお静かに」
「あ、すみません」
橘高さんと藤丸さんが来店していた。
弓場隊の面々でなくこの2人、純粋に漫画喫茶として楽しみに来たんだろう。公式設定集に燃えに萌えている橘高さんだがシンプルに五月蝿かったので注意をすれば普通に謝る。根は善人なボーダー隊員である。
「……結構持ってかれてるな」
新テニスの王子様の公式設定集、Fate/Grand Orderのサーヴァントの設定集、五等分の花嫁の設定集、僕のヒーローアカデミアの公式設定集、ブラッククローバーの公式設定集、銀河英雄伝説の公式設定集、鬼滅の刃の公式設定集……残ってるのはキン肉マンとかの完全なまでの男にしか需要が無さそうな物だけだ。ガンダムの公式設定集まで持っていくのか……特撮系に手を出していないのは筋金入りのそっち系の人間だと言うのが分かる。
「ほら、だから持っていきすぎだって」
「あ、別に構いませんよ。お客様がうちの商品を使っていただくのが1番ですので。自分は他のを選びますので」
大事な客から本を奪うわけにはいかない。
ここは妥協をすると言う意味合いを込めて3年Z組銀八先生を読むことにした。本音を言えば銀魂の公式設定集を読みたかったが持っていかれたので無理なんだ。丁寧に断って小説が置いてあるコーナーに向かおうとすると曲がり角で人とぶつかりかけるが急ブレーキで止まる。
「きゃ!」
がしかし、向こうの方が驚いてバランスを崩して背中から転けようとする。
流石に数日前のののパイの一件で学習している。咄嗟に動けるようになっている俺は倒れようとする人の手を掴んで倒れないようにして腰を支える。
「すみませ……」
「ごめんなさい、私ボーっとしちゃってて」
嘘だろ、おい…………倒れそうになっていた人の正体は那須玲だった。
こんな辛気臭いところに何故この人が居るのだろうか?烏丸さんからの紹介……烏丸さん→小南パイセン→那須玲的な感じだろうか?とにかく体制を立て直させる。
「すみません、前方不注意で。お怪我はありませんか?」
「大丈夫よ」
「なら、よかった……っと、怒られるな」
那須さんを助ける為に本を地面に置いてしまった。
本来の目的は違うけれども一応はネットカフェなので普通に問題ありな行動だ。直ぐに地面に置いてある銀八先生を回収しようと持ち上げるのだが1冊だけ落ちてしまう。
「はい、沢山あるわね」
「ああ、すみません」
「ううん、元はと言えば私がボーっとしちゃってたから…………こういうところに1人で来るの、はじめてだからどうすればいいのか分からなくて」
「え……なにか目的があってとかじゃなくてですか?」
「うん……ダメ、かしら?」
「いえ、お客様が来るのは基本的には拒みません」
「…………お客様?」
「ああ、俺、じゃなかった。自分はこのフーディエのオーナーを務めている三雲修です」
お客様発言に疑問を抱く那須さん。
オーナーが中学生で話題を攫っているかと思ったがそんなにだった。ポケットからフーディエの名刺を取り出すと驚いた顔をした。この行は何度やっても楽しい。しかし……なんも返ってこない。なにかを言ってくるのかと思ったのだが、少しだけ間が開けば那須さんは口を開いた。
「オススメはあるかしら?」
「オススメですか?」
「折角、お店に来たんだしオーナーから色々と聞きたいわ」
「はぁ……当店では有名な漫画の小説版等を置いていますね。例えば有名漫画の銀魂の小説、3年Z組銀八先生が置いてあります。近い将来アニメ化される漫画で、笑いあり涙ありと面白い小説です」
なにかオススメはないのかと聞いてくるのでオススメは銀八先生だと伝える。
安易な小説家じゃないしっかりとした小説であり素直に面白いのだが那須さんは少しだけ困った顔をする。
「銀魂って確か物凄く下品な漫画って小夜ちゃんが言ってたわ……お下劣なのはちょっと」
「……その認識自体が文学的にはいけないことですね」
「え?」
「確かに銀魂は多方面に全力で喧嘩を売りに行っている漫画です。お下劣、下品と言われても仕方がない事をしています……ですが、それを否定的になり見てはいけないと言うのは心を悪くします」
「どうして?下品よりも上品な方がいいじゃない」
「それは大きな間違いです。内容が上品だから良い、下品だから最低の認識自体がダメです……それを言い出せばバトル物の漫画等は私的な理由で悪事を行ったり確信犯になって悪事を行ったりしている下品よりも下な外道、人の道にそれた行いをしています」
「そんな元も子もない」
「ええ、そうです……でも、忘れてはいけないです。フィクションはフィクションとして楽しむ、読者になる上でコレは物語だから面白いと思える心構えを持たないといけない。仮に上品さや常識を貫いてみましょう。なんの異変も起きないただの平穏な日常になってしまいます。貴女が、いや、読者が求めているのは刺激です。本を読みたいと言うのは何かしらの異変を見たいと言う一種の野次馬根性かもしれません」
物語を物語として楽しめるから悲劇が存在している。
コレが現実になれば圧倒的なまでのクソだが物語として見るのならば実に楽しい事だ……でもまぁ、漫画が当たり前の時代になりすぎてとりあえず主要人物達に悲しい過去を背負わせておけばいいなという空気はな。なにも持っていない人間は逆にダメなのか?と言う素朴な疑問はある。まぁ、なにかがあるから物語になっているんだけど。
「貴女が本を求めているのは今までに無い刺激を求めているから……那須さんは国語の授業を受けた際に教材としてなにか有名な本は出ましたか?」
「えっと、宮沢賢治の注文の多い料理店とか夏目漱石の坊っちゃんとかが出てきた事があったわ」
「あ〜……じゃあ、ダメですね」
「え?なにがダメなの?宮沢賢治も夏目漱石も歴史に残る文豪よ」
「確かに2人は歴史に残る文豪……ですが、それを決めているのは誰か?」
「…………文学賞の人とか?」
「まぁ、概ねその認識で間違いじゃないですね。でも、そういうところが認めてる作品を仮に授業で出した際にここで感動する等を教えられたりしますよね……正直に言って、それ自体が間違いだと自分は思います」
「どうして?」
「読者には読者の解釈があり、ここが感動する場面等と言われても心に来ない時が多々あります。ここで感動する、主人公の気持ちを述べよ等の授業はゴミでしかない、当事者しか分からない事が多いんですから」
「そう言われれば……」
「貴女の中でコレは面白かったな。そう思える作品と現実を照らし合わせましょう……現実じゃありえない事ばかりが起きてませんか?」
「うん……起きてるわ」
「プラスでなくマイナスな部分も世の中に存在している。でも、人間は綺麗な部分しか見えない見せないようにする悪癖を持ち合わせている……もしそんな悪癖で隠れている汚い部分が見れるなら?貴女の日常の中で絶対に見れないものが見れるならばそれは何処にある?」
「…………漫画、ね」
「そう、漫画です……コレは貴女の知らない世界を教えてくれる1つの国語の教科書、エゴイズム等の人の負の側面を見れば人は愉悦に走れるっと、コレは早いですね。とにかくお下劣だからと言う考えで全てを否定せずに1から10まで読んでみる。無論中には読んでても面白くないと思えるものがありますが、人間なんにでも得意不得意好き嫌いが存在しています。どういう物なのかの認識を踏まえた上で好みを見つけるんです」
刺激があるからこそ漫画は面白い。
おっさんの趣味を美少女にやらせる系の漫画が無くならない、一時のブームになるのもそこに未体験の好みの刺激が存在しているからだ。
ただ下品だなんだで否定したりするのは良くないこと、大人になる前に色々と刺激を与えておかないと…………
「大人は若い頃には買ってでも苦労はした方がいいなんて言うけども、あんなのゴミ!若い頃にも苦労して大人になって苦労して老害になる頃には苦労している人を見て楽しむ人間がこの世にはごまんといる……」
「っ!?」
「怯えないでください。とにかく、刺激は大事です。プラスと言う存在もあればマイナスな存在もあります。マイナスな側面を見ない……例えばボーダーがどれだけ綺麗な言葉で見繕っても異世界との戦争を国でなく1つの組織として受け持ち殆どの情報を非公開にしているとか」
「……気づいてたの?」
「自分はただのオーナーですよ。さ、こんなメガネを気にせずにフーディエを楽しんでください」
美しいものしか見ないのも汚いものしか見ないのも良くないこと、全で1にして見ておかないとな。
那須さんは自分がボーダー隊員である事を気付いていた事を意外そうにするが、この人はなんだかんだで有名人なんだよな。
「じゃあ……この銀八先生を読もうかしら?」
「え?」
「オーナーさんが面白いって思っているからコレを取ったんでしょ?だったら私も読んでみたいわ」
「……そうですか、どうぞ」
まさか銀八先生を取られるとは思いもしなかった。
那須さんに銀八先生を渡そうとするのだがついでだから他にもオススメはないのかを聞いてくるのでGガンダムと銀魂をオススメしておく。
銀魂に対してあまりいいイメージが無いのだが、銀魂は漫画の中でも割と異端な存在だ。それを笑いとして受け入れることが出来れば……立派なオタクになれる。Gガンダムは……独特の世界観で好きだ。
「いい感じの展開になると思ったけれども純粋に布教しているだけだったわね」
「母さん……そういうのは無いから……」
那須さんと仲良く談笑している姿を見て、いい感じの展開を思い浮かべる母さん。
そういう下心は一切無い、俺は純粋に漫画や小説の負の側面の面白さを伝えてそこから高まる読解力なんかを教えているだけに過ぎない。
「でも、割と楽しそうにしていたわよね?」
「まぁ……こっちの世界に足を踏み入れるキッカケになったんだから、それほどまでに嬉しい事はないよ」
こんなご時世だけどもまだ漫画がダメだなんだ言う大人はいるからな。
そりゃ異種族レビュアーズみたいなのはアウトだけどタイトルだけで暗殺教室がダメとか言うのもある……ジブリ達が最高なんて言う考えは古い。確かに俺も紅の豚や猫の恩返しやカリオストロの城は好きな方だけども。
「っと、気付けば15分過ぎてしまったか……気晴らしになったからちょうどいいか」
15分もあれば銀八先生を3冊は読むことが出来るが仕方がない。
他人と触れ合う事で多少はリラックスすることが出来た。仕事を再開する。今のところは一応のシステムの基礎は出来ているが、が!な感じだから土台をもっとしっかりとしておかなくちゃいけねえ。
「修、さっきの子が呼んでるわよ」
「え?何故に?」
「……それは、本人の口から聞いたほうがいいわ」
なに若干だが意味深に言うんだろう。
母さんが那須さんが呼んでいる事を言っているので呼び出しに応じれば那須さんは笑みを浮かび上げる。
「オーナーさん、とっても面白かったわ」
「そうですか……」
「他にもオススメはないのかしら?」
「ぶっちゃけた話、この店に置いてある殆どが俺が選んだ本なので……アイシールド21とかオススメですよ」
「どんな漫画なの?」
「スポーツものの漫画でアメフトを題材にしていますが、アメフトの細かなルールは知らなくても世界観に飲み込めます。原作を書いている人は幾つもヒット作を叩き出している人でして37巻あります」
「ちょっと長いわ。30巻以内で終わるのはないかしら?」
「でしたらジョジョの奇妙な冒険ですね。60巻以上ある作品ですが、一部二部と構成されていて第3部のスターダストクルセイダース、第4部のダイヤモンドは砕けないがオススメで」
「う〜ん……」
今まで見たことがないジャンルに挑もうとする那須さん。
可憐なる美女をどっぷりとオタクの世界に放り込む……いいねいいね、いいねぇ!オタクになってくれるのは色々な業界でご褒美なんだよ!
とりあえず有名どころを手堅く抑える。本音を言えばああ播磨灘とかを見せたいがまだ早すぎる。定番中の定番を見せる……トリガーで
「甘いわね。ジョジョは1部から読み込んでこそ意味があるのよ、語り継がれる黄金の精神や漆黒の意志との因縁を見るのもジョジョの醍醐味よ!」
「え?」
「……って、ののが言ってたわ」
「おい」
ジョジョの布教の仕方に異議があるのだと橘高さんが横入りしてくる。
あまりにも熱くジョジョを言ってくるので那須さんがポカンとなっており最終的には藤丸さんに押し付けた。
「また随分と珍しいところに来てるな。
「小南ちゃんが紹介してくれて……あ、烏丸くんのお友達紹介をするのを忘れてたわ」
「あの人、既にQUOカード2枚渡してるのに3枚目に突入しそうな勢いだなぁ…………じゃあ、ふしぎ遊戯は?」
「それは見たことがあるからいいわ」
「だったらよ」
「あ、すみませんが自分は仕事がありますので……3人で仲良くお願いします」
他にもオススメは色々とあるのだと藤丸さんが少年漫画を教えようとする。
しかし俺はこう見えても結構忙しい立場である。俺に渡してくれた銀八先生はまた15分休憩の時にパラッと読めばいい。
さぁ、仕事をするぞと3人部屋を薦めておいて自分の部屋に戻ろうとすれば母さんが銀八先生を取り上げてきた。
「なにをやっているのよ、貴方は」
「…………いやいやいや、母さん」
「次に貴方はあの人達に対してもあの人達もそうだけども下心とかは一切無いんだからと言う」
「あの人達に対してもあの人達もそうだけども下心とかは一切無いんだから………………何故にここで……」
「1度でいいから言ってみたかったのよ。修、貴方は馬鹿なの?いえ、馬鹿だったわね。勉強の出来る馬鹿だったわね。オススメされた漫画に満足したのならば本を返却するスペースに置いておけばそれでいいだけよ。それなのにわざわざ1度貴方を呼び出しているのよ?貴方がここで積極的なコミュニケーションを取らないでどうするの?」
「だからさぁ、そういうのよくないよ。もう四十手前なんだからさ」
「四十手前だからそういうのを気にする年齢なのよ」
「息子まだ15歳」
「ええ、恐ろしいぐらいに順調に行き過ぎているわ……だからこそ浮いた話の1つでも聞いて愉悦に走りたいのよ」
悪趣味だ、悪趣味だよ母さんは。
浮いた話を求める年齢じゃないよ、思春期に入った男子に「童貞捨てたか?」って聞いてくる親戚のおじさんやお祖父ちゃん並みの老害だよ。
「フーディエってとっても楽しいところね」
那須さんは喜んでるけども気にしない。
後日、那須隊の面々が来るけれども見なかったことにしておく。
今後の展開どうしよっかな
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2人まとめては最高さ
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那須玲のお尻は素敵
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藤丸ののの、ののパイは、おっぱいは正義