「え〜以上が事の顛末です」
黒服の組織のアジトこと温泉に雨取夫妻と千佳を呼んだ。
完全に私的な理由である為に、移動費用は俺の自腹であるがどうしてここに麟児さんが居るのか?その件に関して色々と嘘を混ぜつつ3人に話した。別に特別な事は言っていない、ボーダーからトリガーを横流ししてもらって近界民の世界に向かおうとした。なので俺が食い止めた、その際に多少手荒な真似をして利き手じゃない方の腕の骨を折った。
「……ホントなの?」
「麟児さんと向き合ってください……ただ、今言えるのはボーダーは死ぬ気で麟児さんを探そうとしています。もし捕まれば最後、ボーダーの記憶封印措置等を受けます……マインドコントロールやフラッシュを利用したエピソード記憶が宿る海馬、つまりは脳味噌に直接影響を受けさせる様な事をして記憶を弄られます……まぁ、封印措置が取られれば海馬をこっち側から弄って記憶を読み取る事は出来ますけども少なくとも今は怪我の治療の為にも熱りが冷めるまではこの温泉旅館に麟児さんを、宿泊費用はこちらが持ちます……先ずは、麟児さんを引っ叩いてください」
雨取夫妻は奥の部屋に居る麟児さんに会いに行く。
麟児さんを殴るのは確定で、問題はその後はどうするのか?麟児さんを一時的に隔離しておく事に関して賛同してくれないと困る……
「……行かないのか?」
「…………私が、私が原因なんだよね…………っ…っ…っ……」
また自分が原因で誰かを傷つけてしまった、そうなりそうになった。
千佳は今にでも泣きそうな顔をしていが堪えている。俺が麟児さんを殴って止めたおかげで最後の一線を守る事が出来た。
「私なんかのせいで……」
だが、絶望の底の沈みかけている。仮にデジモンが居たのならば暗黒進化する。
どんなアドバイスを送ればいいのかが分からずにポロポロと涙を流していく。俺にはここで差し伸べる手を持ち合わせていない、絶望で全てが終わりならば相手を殺して終わらせる。俺は絶望の底で死を意識した……死の淵や地獄から生還した人間の強さは半端じゃない。
「どうする、千佳……今回は麟児さんが事前に俺に知らせていたから止める事が出来た、あの人の事だから千佳の事は任せたとか言う腹だと思う……」
「私が、私が居なかったらいいんだ!兄さんの妹に生まれなかったら、私が……私が居たから青葉ちゃんが、兄さんが…………」
「そうか……」
自分が居なければ、こんな事にはならなかった。千佳は自分の存在を激しく否定している、そんな千佳に対して優しい嘘は送らない。
「確かに、千佳の為に麟児さんは向こうの世界に勝手に行くことを決めた…………だったら麟児さんを安心させてやらなきゃいけない」
「兄さんを?」
「麟児さんを安心させて、青葉ちゃんを助ける……それしか道は無い……」
「青葉ちゃんを、何処に居るのか分からないのに!?」
「このままじゃいけないのは分かっているだろ?」
「っ……でもっ……私がボーダーに入隊して戦うなんて……」
「誰がボーダーに入隊してって言った」
千佳の手に白色のデジヴァイスを置いた。
「コレって……」
「リリエンタールじゃなくて俺が作ったデジヴァイスだ、本物には及ばないがある程度はオリジナルのデジヴァイスを再現している……色は桃色か」
デジヴァイスに色をつける。ピンク色でない薄い色、桃色のデジヴァイスになった。
デジヴァイスをジッと見つめる千佳、千佳専用のデジヴァイスで千佳の物だと登録をした。
「コレの説明についてはしなくてもいいだろ?」
「うん……アグモン達と戦うんだね……」
デジヴァイスに関する説明はしなくてもいい、千佳の前ではデジクロスやマトリックスエボリューションを何度か見せている。
アグモン達と一緒に戦う、そういう意味だと分かっている……ここで千佳がデジヴァイスを返すのならば俺は握り潰して壊す。千佳はどう返事するのかと思っていれば奥の部屋から雨取夫妻が出て来た。麟児さんを1発殴った、千佳の為に自分を犠牲にしたら本末転倒で止めてくれた俺を心の底から感謝していた。そんな弱味を握っているので、麟児さんを止めた事や麟児さんがここに居る事を黙ってくれ、麟児さんが何処かに行っていて帰ってきていないと言ってほしいと頼んだ。
「兄さん」
「……お前は詳しい事情を聞いているんだろ?」
「否定しないんだね……」
雨取夫妻は麟児さんの私服を取りに行くと一旦家に帰った。
仮にボーダーが来ても見ていないと言う設定を貫いてくれると約束をしてもらい、千佳と一緒に麟児さんの部屋に入った。先ずはと千佳は麟児さんに声をかけるのだが麟児さんは悪びれもしない。俺がデジモンを用いて麟児さんを止めた、そのことに関して聞いてくるが千佳は返事をしないが殆ど答えを言っているみたいなものだ。
「……すまなかった……なんて言ってももう遅いな」
「遅いよ……修くんが止めてくれなかったら……」
「……千佳、友達に青葉ちゃんに会いたいか?」
「……会いたいよ。でも、代わりに兄さんが居なくなったら元も子もないよ……うん…………兄さんは私の為に動こうとした……修くんは凄い技術を作った……私は変わらないといけない、このままなにもしないままなにも知らないままはもう嫌なの……」
千佳はデジヴァイスを麟児さんに見せる。麟児さんはどういうことだと俺を睨んでくるが怖くはない。
麟児さんが目に見える反応をしたのでデジヴァイスがなんなのか理解しているのかと千佳が疑問を持っていると麟児さんは自身のデジヴァイスを取り出した。
「修、千佳を巻き込むのは」
「最初に逃げたのは麟児さんだ…………千佳は変わろうとしている。だから、俺は千佳に変わる力を与える」
「だが……」
「本当の事を言えば、怖いよ」
「!」
「アグモン達と一緒に戦うって、アグモン達が何時も私を守ってくれていたから分かるけど近界民はホントに危ない存在なのは嫌でも知ってる……怖くないって言えば嘘になる。けど、私はそれでも変わりたい……青葉ちゃんを助ける為にも、私自身が前を歩く為にも」
千佳を戦わせることに反対をする麟児さん、千佳は自分自身が怖いという思いを抱いているのを理解している。だが、それでも前に進まなきゃいけない。誰かに言われたわけじゃない、自分自身の意志で前を歩きたい、友達を助けたい……そう強く願えば、俺のデジヴァイスが光った。勇気の紋章と友情の紋章が同時に出現したのでデジヴァイスを構える
「千佳の勇気と友情を……デジクロス……」
千佳の勇気の心と友情の心をデジクロスする。
そうすることでデジヴァイスから光が放たれ、千佳のデジヴァイスに飛んでいき……デジヴァイスからデジモンが、シャウトモンが生まれた。
「よう!お前がオレのジェネラルか!オレはシャウトモン!未来のデジモンキングだ!」
「シャウトモン……私は千佳、雨取千佳。よろしくね」
「千佳か!よろしく頼むぜ!」
シャウトモンは千佳と握手を交わす。変なデジモンが生まれたら色々と大変だからな、シャウトモンが生まれてくれてホッとした。
この調子で一気にデジモンが生まれればいいのだが、普通に生まれたのはシャウトモンだけで幾つかデジタマが千佳のデジヴァイスに映っている。千佳が成長していけば、デジモンが生まれる。麟児さんが居なくなると言う厄介なフラグを圧し折り千佳は勇気と友情を見せた、デジタマも直ぐに生まれるだろう。
「んじゃ、オレ達のチームの名前を決めようぜ」
「え……修くんや兄さんと一緒のチームじゃダメなの?」
「蒼の軍、黄昏の軍、緑の軍、そして影の軍……千佳は赤色の軍……」
「オレたちゃ千佳の熱い思いからパワーを得てるんだ!思いを重ねて強くなる!ブレイブクロスハートってのはどうだ?」
「蒼の軍が
ボーダーがいざという時に頼れなくても、自分達である程度はどうにかする事が出来るようにしとかなきゃならねえ。
ボーダーが黒か白かよりも頼りになるか頼りにならないか、そこが重要だ。使えるものはなんでも使うのが三雲修の流儀だが、少なくとも今の段階ではボーダーに力は求めていない。大規模な侵攻が仮に起きても千佳と麟児さんと母さんを守ることが出来ればそれで構わない……言っておくが非情じゃないからな、なにも感じていないだけだ。ボーダーに関しては知らねえしどうでもいい、自分の意志で戦うと決める権利があった。外国みたいに軍に所属しなきゃいけない義務は無いんだ。自衛隊と同じ義勇兵……そこには色々と派閥があるけども。
「残り2つの軍はなんなんだ?」
「残り2つは軍って呼ぶのは難しい……けど、どっちも恐ろしいぐらいに強い。1つの軍でボーダーを滅ぼす事が出来るぐらいには凄まじい」
「……ホントなのか?」
「えっと…………誰かと戦っている姿は見たことがないからなんとも……」
「昔、この黒服の組織のボスと激闘を繰り広げた……イメージした物を作る事が出来る凄まじい敵だった」
「なんだその反則な能力を持った敵は……」
味方にもそれが居るんだよ……と言っても当人はただの弟だと言っているが。
とりあえずデジタマが出来たし、デジヴァイスを渡すことも出来たし、麟児さんを食い止める事を出来た。ここまで上手くやることが出来るようになった。だが、まだ終わりじゃないと俺はノートパソコンを置いた。
「麟児さんと千佳にはデジモンについて学んで貰わないといけない……コレ、ホントはバグとかも多いし、色々と解析する事が出来ていないブラックボックスな部分があるから使いたくないんだけどな……」
ノートパソコンを起動させて作っていたデジモン戦闘プログラムを起動する。
デジヴァイスを構えてくださいと画面に出てくるのでデジヴァイスを構える千佳と麟児さん、パソコンの画面が光れば麟児さんと千佳は倒れる。
直ぐに麟児さんと千佳を掴み安全な場所で寝かせるとパソコンと向き合う
『ここは……何処だ?』
『おう!ここはデジタル空間だな!』
『シャウトモン……何時出たの?』
『オレが出たんじゃねえよ!千佳と麟児がインターネットの中にダイブしたんだよ!』
『『…………?』』
「2人共、コレを見てくれ」
インカムを装備し、マイクの部分に声を当てる。
俺の声が聞こえたと麟児さんと千佳は左右をキョロキョロするが、俺はこの場には居ない。デジモン戦闘アプリにVRMMOの説明の分を入れる。
『VRMMO……仮想空間内部で………………要するにここはインターネットの中、と言うことなのか』
「千佳と麟児さんの精神を電子データ化させてインターネットにダイブさせてて……コレはまだ未完成どころかどういう原理かどういう理屈か一切分かっていなくて、デメリットばかり抱えた欠陥品だ……例えばこんな風に」
『っ!?』
『兄さん!?』
「今、麟児さんの折れた腕を動かした……生身の肉体のダメージがモロに精神に来ている」
『ああ、腕から痛みが感じる……ん?折れていない?』
「そこは仮想空間なので自由自在に動く事が出来ます、例えばこういう事も出来ます」
なにもない真っ白な場所から市街地に場所を切り替える。
それと同時に千佳と麟児さんの服装を和服に切り替えたり、ハロウィン風に切り替えたりした。
『修……コレ、世紀の発明品じゃないのか?』
「コレは色々とデメリットあるんですよ、例えば尿意を催した場合は現実空間で尿を漏らしてるとか……そもそもでどういう感じで精神のみを向こうの世界にダイブさせているのか、千佳、歩いてみてくれ」
『うん』
千佳はテクテクと10歩ぐらい歩いた。
「今、千佳は歩いているけど千佳の体はピクリとも動いてない……でも、千佳は何時もと同じ感覚で歩いた。この感覚を脳味噌で再現する事は簡単ですけど実際にやった場合、ホントに体を動かしてしまうんです」
『……足を動かそうと思って足を動かすのは普通の事じゃないのか?』
「いえ、生身の千佳や麟児さんは一切動いていない、ここがミソなんです。VRMMOは完全にゲームの世界に意識をダイブさせている物で脳味噌で足や手を動かす命令を出しても生身の肉体は一切動かない、でも呼吸等の命を維持する動きはしていて尿意等を抑える、熊の冬眠状態にする。俺が目指しているVRMMOのシステムに1番近い物で……デメリットも割とあるんです。例えば今、このパソコンを壊せば千佳と麟児さんが生身の肉体に戻れなくなるとか、千佳達以外のデータ化した精神を、そこに居るシャウトモンの人格データをぶち込めば肉体を乗っ取ることが出来る……やろうと思えば千佳と麟児さんの中身を入れ替える事も出来る」
『そ、そんな事も出来るの!?もうSFとかじゃなくてオカルトの世界だよ!』
「だからこのプログラムは俺しか使えないんですよ……そもそもでコレはロックマンエグゼのディメンショナルエリアの再現中に生まれた産物でマヨヒガ現象を……っと、この辺の説明はいいか」
お兄さんもヤバいとハッキリと言い切った禁断のシステムで、基本的には使わない方針だが麟児さんを匿った以上はボーダーに頼れない。
ボーダーと戦う事が決まったとしても構わないが千佳と麟児さんを戦えるようにしておかなきゃいけない。原作開始は12月、現在は5月4日でたった7ヶ月しかない。デジモンは危険な存在でもあり使い方を間違えれば大変な事になるしデジモンがいるからと心の贅肉をつけてしまう可能性もある。目標として究極体クラスのデジモンと戦う事が出来るようにしなくちゃいけない。
トリオン兵みたいな見た目の仮想敵を出現させる。麟児さんと千佳は手元にあるデジヴァイスを構えるが、既にシャウトモンが外に出ている。
『俺にデジモンが居ないんだが……』
「え〜っと……闇のスピリットを送りますね」
自分のデジモンが居ないから戦えないと言う麟児さん。
闇のスピリット、いきなりのビーストスピリットは無茶があるので闇のヒューマンスピリットのデータを麟児さんのデジヴァイスに送れば電脳空間内に居る麟児さんのデジヴァイスに闇と書かれた文字が浮かぶ。なんだこれはと麟児さんがデジヴァイスを見ていると千佳がもう片方の手を見るように言えば、麟児さんのデジヴァイスを持っていない手にデジコードが宿っていた。
「そのデジコードをデジヴァイスでスキャンして『スピリットエボリューション』って言ってください」
『……スピリットエボリューション!!』
闇のスピリットを使ったスピリットエボリューション、麟児さんは眩く光に身を包めば……レーベモンに進化した。
『コレは…………コレは…………そうか、修が使ったのはコレなのか……コレならば戦うことが出来る……』
「麟児さんはレーベモン……」
『修くん、私も!』
「いや、既にシャウトモンがいる千佳にはこっちを覚えてもらう」
パソコンを操作すれば千佳の腰にカードホルスターが装備される。
千佳が戦えるかどうか怪しいし、麟児さんと同じことが出来たとしても意味は無い。一点突破も大事だが色々と出来る事も大事だ。千佳はカードホルスターからカードの束を取り出した。それはデジモンテイマーズに出てくるカードデヴァイスを模した物で、デジモンのパワーアップやデジモンの技、武器を再現する事が出来る。
「そのカードを使えば武器や技、能力が手に入る……試しに1枚使ってみろ」
『うん……カードスラッシュ!白い羽!』
『おぉ!コレで空を飛ぶことが出来る!』
シャウトモンに翼を与えた……麟児さんもその内覚えてもらうがカードを使った戦い方を重点的に鍛える。
無論、千佳も戦えるようにする……が、スピリットエボリューションは危険だ。ハイブリット体のデジモンじゃなく、究極体のデジモンじゃないと危ない。鉄子みたいに生身の肉体で異常なまでの戦闘能力を持っているんだったら問題は無いが……う〜ん……まぁとにかく頑張るしかないか。麟児さんを匿った以上はボーダーに協力を要請する事は出来ないし。
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