俺の一週間は主に働いている。4日間働き、3日休んでいる。
夏休みがある時だけ週5で働いており基本的には週4,週休3日で残業が無し、仮にあった場合は1分単位で残業代が出る最高の職場だ。
働いている4日の間はなにをしているのかと聞かれればカードゲームのアニメでよくあるモンスターを立体映像として映し出す装置をはじめとする色々な物を作っている。一時期はロックマンエグゼのPETを作ろうとしたがスマホに成り代わる機械を作らなきゃいけない事なので最終的にはナビを作る程度で終わった。俺の仕事の主な方向性はゲーム業界の再起だ。
ゲーム業界は既に十二分に潤っている、昔はバカにされていたゲームだが今じゃeスポーツという1つのジャンルとして確立する事に成功したんじゃないのか?と言われれば確かにそうだが、まだまだ建て直さないといけない部門はある。
ガンダムビルドダイバーズと言うアニメではVRMMO世界で自身が作ったガンプラを実際に戦わせる事が出来る、あのシステムを今は実装しようかと検討中だ。
「知らない人?」
「あ、出穂ちゃん紹介するね。この人は私の兄さんなの」
「雨取麟児だ」
俺の主な仕事は置いといて、三門市の山のところにある道場にやって来た。
ライトニング光彦に鍛えてもらう為の基礎的な運動能力を高める為に鉄子から紹介された道場であり、麟児さんを引き連れて千佳と鉄子と一緒にやって来た。麟児さんを見るのはなんだかんだではじめてである夏目が誰だとなっているので千佳が自分の兄だと紹介すると夏目がこれはどうもと頭を下げる。
「んじゃ、どれぐらいやれるか試すからかかってきなさい」
「鉄子、手加減はしてやれよ……流石に1か月で骨をボキボキ折るのは勘弁だ」
今回ここにやってきたのは麟児さんを鍛えるためである。
麟児さんは闇のスピリットと適性があった、まだビーストスピリットのカイザーレオモンをコントロール出来ないが時間の問題だろう。だから実際に戦ってもらう、なんて考えは持っていない。戦わないなら戦わないでそれに越した事は無いんだから。
鉄子がかかってこいと言う、男女平等主義かどうかは分からないが麟児さんは戦うことに関して躊躇いはない。麟児さんは鉄子に正拳突きをくらわせようとするが鉄子は軽く避けて間合いを詰めて肘で麟児さんを数メートル吹き飛ばした
「あ……」
「おい」
手加減の1つをしろと言ったのになんの迷いもなく肘打ちで攻めてきたぞ。
鉄子は直ぐにマジでやってしまった事に気付いたので思わず声を出してしまう。手加減の1つをしろと言っているのに、割と本気で行ったぞ。
千佳が麟児さんのところに向かう。麟児さんはゲホゲホと咳き込んでいるが千佳に手を翳して大丈夫だとアピールをする。
「兄さん」
「大丈夫だ……激痛が走っているが折れている感覚は特に無い、数分ぐらいしたら動ける」
「そんなバトル漫画みたいな事があるんスね……鉄子さん、マジで強いッスから気をつけてください。肘でコンクリートを破壊出来るから」
バトル漫画みたいな事を言い出す麟児さん。まだまだ戦うぞという意思はあり今は痛みが引いていくのを待っている。
やる気があるのはとてもいいことだ……鉄子は麟児さんが無事だった事を聞けば手加減はしてるわ!と言い切るが絶対に嘘だろう。
「それで、なんで急に麟児さんを連れてきたわけ?」
「やっぱ聞くか?」
「そりゃそうよ……千佳はまだ理解出来るけど、なんで麟児さんが私と組手をしなきゃいけないのよ」
「……麟児さんと千佳にデジヴァイスを渡した」
「え……なんで?」
「色々とあったが今言えることは千佳が友達を助けたいって思いがある、麟児さんは千佳が前に進むには友達を助けるしかない……だから馬鹿な真似をしようとした。結果的に止めることは出来たけども、その代償は大きくてデジヴァイスを2人に託した」
麟児さんを匿った以上は表立ってボーダーと協力は難しい。神堂さんにデジヴァイスを渡した事を一応は報告している。
ボーダー側が近界民関係を完全に牛耳っている。神堂さんがその気になればハッキングの1つや2つ出来なくもないだろうが、恐らく無理だろう。ハッキング対策をしていると言うかボーダーのアレコレをトリオンを動力に動く専用の端末でやっている。パソコン関係ならば神堂さん、いや、もっと極端な話をすればデジモンを使えば強奪する事が出来る。
「あんたはそれでいいの?……デジヴァイスを作るの物凄く苦労したんでしょ?4つ以上作れば自分の知らないところでなにかが起きると困るって作らないようにしてるし」
「それで構わない、俺は少なくともそう思ってる……」
「神堂は怒らないの?」
「デジヴァイスは俺の所有物、リリエンタールから生まれたのもだ。だから神堂さんが無理矢理取り上げるとかはしてこない……デジモンに関する研究の1つでもすればVRMMOを直ぐに完成させる事が出来ることを気にしてたけども」
「アグモン達をモルモットにしたらぶっ飛ばすわよ」
「しねえよ……コレで良かったのかって思いは心の何処かにあるけども、選んだ以上は前に進むしかない……ボーダーは政府の傘下の組織じゃなくて民間組織だ。だったらこっちも民間組織として独自に近界民と貿易を行う……神堂さんにはそういう風に報告している」
ボーダーに深く干渉はしない、それが俺達の出した結論だ。
麟児さんについて深く攻められればあの手この手で言い逃れをしておくが、少なくともボーダーとは異なる独自路線で行く。その為にはキッカケが必要だ……リリエンタールの力を使えば向こうの世界に行くことが出来るだろうが、なんのアテもなく行くのは愚策だろう。
「向こうの世界と貿易って、そんな事が出来るの?」
「出来る……そもそもでボーダーは向こう側の世界の人間となにかしらのコンタクトをあった筈だ、こっちの世界に資源を求めている人間が居る以上は交渉する事が出来る。シュバインさんもその時は一枚噛ませてくれと言ってる」
「……黒くなったわね、あんたは」
「……綺麗事で片付ける、それこそファンタジーなRPGに出てくる明確に見える悪者の世界征服ならば楽だ。けどこれは……2回目の幕末だ」
「そう……まぁ、あんたなら馬鹿な真似はしないと思うわ……神堂と兄貴の次にはメカに強いんだから」
「そうなったら俺は向こう側の世界に行かなきゃいけないけどな」
「海外に行きたくないってゴネまくってるって桜から聞いてるけど?」
「海外怖いじゃん……」
後、飛行機も怖いんだよ。怖いんだよ、あんなに高いところに飛んでいるのを。
マグナガルルモンになっている時は気分が高揚して高いところは怖くなくなっているんだけどな。
「もし仮に向こう側の世界に行くことになったら、その時は」
「私も行くわ」
「え?」
「千佳と麟児さんとあんたが行くなら
「でもお前、マトリックスエボリューションして究極体にならなきゃ戦えないだろう」
「うっ…………デジソウルを纏ったら近界民倒せるわ」
「向こう側の世界の人間は確実にトリガーで戦ってくる、マトリックスエボリューションは必須だ」
マトリックスエボリューションでとあるデジモンになる鉄子。
究極体の名に相応しく戦闘タイプのデジモンであり中の人こと鉄子が異常なまでの強さを秘めているのもあって滅茶苦茶強い。カイゼルグレイモンになった俺をボコった。スサノオモンになってやり返したのはいい思い出だ。
「アレはホントに合ってないから嫌なのよ」
「スピリットエボリューションで妥協するか?」
「アレもアレで嫌なのよ!ファンシーなのは嫌よ!」
鉄子はマサルダイモンルートを着実に通ろうとしているな。
風のスピリットを貸しておこうかと思ったが、鉄子がシルフィーモンにはなりたくないという。開幕ダブルスピリットエボリューションでジェットシルフィーモンになっても普通に自我を保っていた奴が羞恥心でデジモンに進化したくない、難儀である。
「もう大丈夫だ……再開してくれ」
「……鉄子は強すぎるから俺が代わりにいきますね」
いきなりの鉄子は早すぎた。幾つかの段階を経てから鉄子と戦わせた方がいい。麟児さんの痛みが引いてきたので組手を再開する。
「じゃあ、シミュレーションです……ボーダー隊員に尾行されて絡まれた。俺がボーダー隊員だと思ってください」
スピリットエボリューションでレーベモンに進化すれば大抵の奴等は倒すことが出来る。
ハイブリット体のデジモンはそれだけの高スペックを持っているが、いきなりのスピリットエボリューションは出来ない。時と場合によってはこっちが殺されるパターンも普通に存在している。だから俺達は備えないといけない、あらゆる状況を。備えて備えて、それでも何もなかったら良かったねの一言で終わるならばそれで構わないんだ。
「……ボーダーだ、お前が持っているトリガーを……はい、アウト」
それっぽい演技をしてみるが麟児さんが動こうとしない。
ボーダーであることとトリガーを持っている事に関して追求して数秒待ってみたが麟児さん側からアクションが起きなかった。
「麟児さん、ボーダー側は完全に油断しています。自分達がトリガーを持っているから勝てると思っています……そこを突く、トリガーを起動する前に殴らないとダメです」
俺や母さんの様に意識してデジソウルをオン・オフ出来るのならばまだいい。だが、麟児さんはデジモンになっていたりデジヴァイスを持っていなかったらデジソウルを放つことが出来ない。だから万が一ボーダーに絡まれた際にはデジモンに進化する事が出来ない可能性がある。その気になればデジモン達はデジヴァイスから出る事が出来るが、デジヴァイスを取り上げられれば俺達ジェネラルは詰む。
「トリガーを奪いさえすれば向こう側はなにも出来ない、向こう側は武装した状態で来る確率は低い……ボーダーが戦闘区域外で武装していたら怪しまれるから」
「複数居た場合はどうするんだ?」
「グランドロコモンを出して逃亡してください……ボーダーとの敵対意思は無い、あくまでも俺達はボーダーとは異なる独自路線で行く、そう決めてますので」
麟児さんがグランドロコモンを引き当てたのはとても運がいいことだ。
グランドロコモンは線路が無い場所でも自在に走ることが出来る……向こうの世界に行くことに成功したらグランドロコモンが向こうの世界の移動手段になるだろう。トリコで言うところのキャンピングモンスターを引き当てたのはホントにデカい。
「……ボーダーと協力する道は」
「あるんだったらあの時に麟児さんを引き渡している、貴方はそれだけの事をしでかした」
ボーダーと協力した方が効率が良いのかもしれないが、麟児さんはボーダーからトリガーを横流ししてもらった。
その件さえなければある程度はボーダーと協力する事は出来たが、貴方がしでかしたせいでそれが出来ない。ボーダーは恐らくはマグナガルルモンを探しているだろう、この街に潜伏している可能性が高いだろうと思わせないようにシュバインさんにもしかしたらボーダーが出来る前にこちらの世界に流れ着いた近界民かもしれなくて、三門市には居ない可能性が高いと意識を誘導してくれた。
実際問題、マグナガルルモンについてどう調べているか?トリオン反応を調べても無理だろうし、麟児さんの協力者が居たと考えるならば……捜査線上に俺が浮かぶには浮かぶだろうが、俺の血筋は普通だ。家柄が特別だなんだそういうのは無い。アリバイも一応は作っているし、問題はないが万が一が恐ろしい。
「さっきからボーダーとか言ってるけど、なにかあったんすか?」
「ボーダーを色々と取材してやりすぎてしまってな……すまないが、この事に関しては内密に頼む」
話が若干聞こえた夏目がなにかをやったのかと聞いてくるので麟児さんが適当に誤魔化す。
夏目は色々と聞きすぎたんだと納得しており、それ以上は深く追求はしてこない。
「メガネオーナー、色々と秘密にしなきゃいけない事が多いっすね」
「俺は機械技術関係のエンジニアだから、守秘義務がかなり多いんだよ……この前のとかまだ完全に完成してないから、誰にも言うんじゃないぞ」
秘密にしなきゃいけない事を多くしているのを気にする夏目。
機械技術関係のエンジニアだから嫌でも守秘義務にしておかなきゃいけない物が多いんだ。
「ゲームその物はまだ作らない……ハードを作るのには時間がかかるし、最終目標は既に決まっているんだ」
VRMMOと言うゴールに向かって色々な技術を開発しておく。
「メガネオーナー、輝いてるッスね」
「修くんが本当にやりたい事をやってるからね……神堂さんが一緒にスカウトしてくれて良かったと思うよ」
俺はホントにやりたいことをやっている。色々な知識を授けてくれたから、その知識を思う存分に利用しているだけに過ぎない。
夏目や千佳は俺が輝いてみえてるが神堂さんが居なかったら出来なかった事だろう……仲介人になってくれた紳士組には感謝しても感謝しきれない。そうなると桜の異常さが際立つ。
「ていうか修、あんた進路は大丈夫なの?修学旅行は行ってないし、テストの時しか学校に行ってないっておばさんから聞いてるわよ」
「内申点は物凄くガッタガタだけど、テストの方で点を稼いでる……授業態度とかの成績は0に等しいけどもテストで満点だから」
「高校はどうするって聞いてるの!」
「高校ねぇ……神堂さんの所に就職しててゲーム部門のエンジニアチーフになってるし……学校だけが全てじゃない、学歴が大事だって言うならいっそのこと高校生クイズ常連の灘とかに」
「普通は、うちの高校に入るってのが筋ってもんでしょうが!!」
鉄子は俺にアームロックを決める。
三門第一高校じゃなくて別の高校に通っている鉄子……中学が蓮乃辺市の中学じゃなくて三門第三中学なのを怒っていたな。自治体と話し合いをした結果だから仕方がない事だ。
「俺は学校の環境が嫌いなんだよ、教師が絶対っていう所が気に食わないし関わり合いを持ちたくないタイプの人間と無理に付き合わないといけないのがキツい……人間合う合わないの問題がある。無理に気が合わない人間と付き合うよりも自分と趣味嗜好が合う人間と付き合ってた方が良い」
仕事ならばとある程度は割り切ることが出来るけども、そうでないならば無理がある。
ただでさえうちのクラスに底辺なDQNが居るんだ……ちゃんとした進学校ならそういう奴は居ないけども、進学校で習うレベルの問題ならば余裕でどうにか出来てる。漢検とか1級持ってるし今以上に勉強するとなれば学者とか専門家とかそっち系で飯を食ってる人間レベルの知識が必要になるぞ。
「もうちょっと青春を楽しもうって思いはないわけ……」
「……夢中になれることが見つかってるからそれでいいんじゃないのか?」
アオハルを楽しもうと言う思いが無い俺に呆れている鉄子だが、麟児さんが間に入ってくれる。
俺が夢中になれる事を見つけて、それに没頭している。だったら無理に学校に行かずにその方面に輝かせたらいい。一時期引き籠もりをしていただけあってか、その辺について言われれば言い返すことが出来ない。
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