「ん……」
味のデータ化に関する実験は今の段階では成功している。
藤丸じゃなかった、ののさんにあの後に色々と味のデータを流し込んだ後に精進料理を食べてもらった。卵や牛乳、蕎麦等のアレルギー反応が起きるメジャーな食材のデータを流し込んだが特に異変は起きなかった。単純にののさんがアレルギー持ちじゃないから異変は起きなかったかそれとも味のデータならばアレルギー反応が起きないか、その辺は割と謎だ……流石にアレルギー持ってる人を対象に実験をすればただのマッドサイエンティストだ。
「5時47分…………」
本日は5月28日(火曜日)……三雲修の誕生日だ。
目を覚ましたので目覚まし時計を確認すればまだ朝の5時47分……本日は修行も仕事も無いオフであるので二度寝をしてもいい。と言うか休みの日は大体10時ぐらいまで平気で寝てる。と言うか眠らないといけない。三雲修の肉体になっても中身は別人だから精神的な問題かどうかは知らないが睡眠薬無いと意識を落とすことが出来ない。こう、寝てるって意識が落ちてるんじゃなくて体の電源をオフにしてるって意識が残留してる。なにもない寝ているという感覚が無い
「5時47分……5時47分か……」
コレが普通の中学生なら物凄く早く起きたになるのだが、生憎と俺は引きこもりの大ベテランだ。
仕事をしているから果たして引きこもりと呼んでいいのか分からないが、少なくともオフの日まで早起きしたいとは思わない、シンプルにムカつく。なにがムカつくってオフの日だって分かってるのに体が言うことを聞いてくれない事だ。ホントに用事もなにもない休みの日だから熟睡したいと思ってても熟睡する事が出来ず睡眠薬を飲んでも4時間ぐらいでパッと目が覚める。ショートスリーパーじゃねえんだぞ、俺は。
えっと、寝ようって思って薬飲んで布団に入ったのが11時でそこから眠るのに2時間半使ったから……全然眠る事が出来てない、眠いのに……。
「……は〜……」
時間的に母さんは起きてない、父さんも起きてないだろう……別にそれは構わない。
尿意を催したりしていないしスマホを弄っても意味は無い、眠いから目を閉じてみても寝ようとしているという感覚は一切無く目を閉じているだけ、意識が飛ぶとかそういうのは無いのが余計にムカつく。
「休みの時ぐらいはゆっくりしてくれよ……」
俺の体はどうなっているんだよ、マジで。
二度寝を試みるが睡眠薬の効力が切れているのか意識が落ちることはない。しかし外に出てランニングとかクソ面倒な事はしたくないから取りあえずは目を閉じていると両サイドから柔らかい感触がした。
「おはよう、修」
「お誕生日、おめでとう修」
ベッドの上に置いてあるデジヴァイスから勝手にウェヌスモンとシスタモンノワール(覚醒)が出てきて右側にシスタモンノワール、左側にウェヌスモンが入っている。人間に近い見た目で巨乳以上の乳を持っている2体のデジモン、感触が柔らかい方をと左側に顔を向けてウェヌスモンの胸に顔を埋める。ウェヌスモンは頭を撫でたり精神に干渉する技を使ってくる事はしない。選ばれなかったシスタモンノワール(覚醒)は俺の背中に抱き着いた。
「アグモン達は?」
「まだデジヴァイスで寝ているわ、私とノワールはずっと起きてるの」
「いや、寝ろよ」
誕生日を祝ってくれるウェヌスモンとシスタモンノワール。
部屋のサイズ的にはデッカードラモンとかは無理だけどもドラコモンとかアグモンとかは出てきそうだが、出てくる気配が無い。毎年祝ってくれている、朝、目が覚めればお誕生日おめでとうと言ってくれるのだが言ってこない。純粋に眠っているみたいだったがシスタモンノワールとウェヌスモンはずっと起きていた。お前等一応はデータの存在だけども睡眠が必要な生物だろう。
「修が起きたら真っ先に言おうって思ってたのよ……嫌だったかしら?」
「嫌じゃないけど、お前等が倒れたら困るのは俺だからな」
「大丈V!私達の元気の源は修の心だから」
俺にお誕生日おめでとうと言う為だけに起きていた2体のデジモン。
シスタモンノワールがちょっと怯えた感じで聞いてくるが、起きたければ勝手に起きればいい。ただ倒れて困るのは俺だからその辺は意識して欲しい。そう言えばシスタモンノワールは問題無いと言う。
「千佳ちゃんや麟児に会うの?」
「今日はオフにするって決めてる……誕生日だからなにかをするとかじゃない、誕生日だからダラっとする。何気無い平穏な日常を過ごす」
ウェヌスモンが今日の予定を聞いてくる。家族以外で親しい友人や知人とは会うつもりは無い。
誕生日だからおめでとう!って言われるのが嫌とかじゃなくてシンプルに疲れるからだ、折角の誕生日なんだからゆっくりと過ごす……でも、その前に布団から出たくない。ウェヌスモンの胸に挟まれてボーッとしておきたい。あ〜もう嫌だ……取りあえずは12月まではイベントらしいイベントは発生しない、俺がボーダーに入隊しないことでどうなるのか?その辺は知らないしなにも考えてない。
俺を三雲修に転生させた仏像の発言からして二次創作みたいに転生させてる事は多々あるみたいでよくある王道的な主人公に対して飽き飽きしている。俺みたいな捻くれ者を転生させてしっちゃかめっちゃかして混沌にしてくれた方が面白いと思っているからだろう。今の段階で言える事は本来の道筋を辿ることはもう出来ない。
「あ〜……どうしてこんな貧乏くじ引くんだ、ご褒美があるって分かってても前向きになれねえ……」
「大丈夫、大丈夫……修は一生懸命頑張ってるわ」
割と冗談抜きで原作云々を考えれば精神的にキツい。
最後にアニポケのサトシくんに転生する事が出来る、しかも初日にピカチュウを選ばなくてもいい様にしてくれるがその日が訪れるまで後、何十年掛かるんだ……いや、別に構わねえんだよ。アニポケのサトシにしてくれるんだったらそれはそれで嬉しいことだからさ。
ウェヌスモンが励ましてくれる。シスタモンノワールが頭を撫でてくれる。割と冗談抜きで心が挫けそうだ。
「あ〜……あ〜……ふぅ……」
30分ぐらいが経過すればウェヌスモンからシスタモンノワールの胸にダイブする。そしてまた30分ぐらいすればウェヌスモンの胸に戻る。
寝るのが目的だが、寝ることが出来ない。胸に包まれて精神的な癒やしを与えられるがシンプルに眠い……頑張ろうかと思うのだが、やる気が全くと言って起きない。ウェヌスモンが精神干渉系の技を使ってきてるとかじゃなくてなんかやる気が出ない。何時もならば起きるところで起きないんだ。
「修、朝ご飯が出来たと言っているぞ」
「クダモン……ああ、もうそんな時間か」
気付けば8時になっている。
クダモンが朝ご飯が出来たことを伝えに部屋にやってきたのでデジヴァイスにウェヌスモンとシスタモンノワールを入れて即座に着替えた。
「おはよう……誕生日おめでとう、修」
「うん」
誕生日おめでとうと言われてもしっくりと来ない。
盛大なまでに祝われたいとかそういうのではなくシンプルに無気力である。鬱病とかとはまた違った感覚だろう。一先ずは朝食を頂くのだが母さんが違和感に気付く。
「修、今日はちゃんと羽根を伸ばしなさい」
「休むつもりだけど?」
「そうじゃないわ……好きな事を仕事にしていて色々と境界線があやふやになってるわ。仕事の事を考えずに誕生日だからって気張らずにゆっくりしなさい」
「……そんな疲れた社会人みたいになってるんだな……」
ゆっくりしろと言ってくれる母さん。
今月はカードゲームのアニメでよくあるモンスターを立体映像として映し出すアレの実験、麟児さんの密航の阻止、
「ごちそうさま…………出掛けてくるね」
「お昼ご飯は?」
「外で食べてくるよ」
朝ご飯を食べ終え、部屋に戻って出掛ける準備をする。
財布等が入ったショルダーバッグにデジヴァイス、デジヴァイスも一応は鞄に入れておく……そしてここでスマホを確認する。
鉄子が、お兄さんが、桜が、雪が、麟児さんが、千佳が誕生日おめでとうと通知が来る。アプリの方に誕生日設定していたのでののさんから【お前、今日誕生日だったのかよ。教えてくれてもいいじゃねえか】とメッセージが送られてくるので【誕生日ぐらい余計な事は考えずにゆっくりしたいんです】と壁を作っておく。
「三門市は危険だから……な」
特になにかをするわけでもなく、蓮乃辺市方面に向かって歩く。
三門市でなにかの拍子で迅に出会ったらその時点で詰みだ、こっち側に、色々と適当な理由をつけてボーダーに取り込もうとするのが見える。
影の軍のジェネラルの母さんは基本的には動かない、黄昏の軍のジェネラルの麟児さんと赤の軍のジェネラルの千佳はボーダーに頼ることをせず何時か現れる向こうの世界の友好的な住人が来るのを備えて力を蓄える。緑の軍は……一応はジェネラルの代表が桜だが、桜もなにかしらのアクションを自らで起こすつもりは無い。鉄子もお兄さんもなにかが起きてから対処はすると言い切っている。
蒼の軍の方針としては空閑遊真とコンタクトを取る、そして向こうの世界にボーダーとしてでなく神堂財閥として連れて行ってもらう。神堂さんに近界民が人間である事を説明したら貿易を行う事が出来るのであれば貿易をしても構わないどころかむしろ手に入れてこいと言っている……ただし向こうの世界に関する情報はボーダーが牛耳ってる。ボーダーとの全面戦争が起きる可能性があるがそこまで行った場合だ…………ボーダーとの全面衝突するならばそれもまた1つの選択肢だ、後悔したりするよりもどうやって前に進むかを考える。
どうも俺は誰かを信じるんだ!って思いよりも疑ったり最初から期待をしていない感情が大きい、前世で嫌な事が多すぎたからだろう。皆が知っている絵に描いたようなお人好しである三雲修とは程遠い存在だ……全く、嫌になるよ。
「あ〜くそ、オフな日にしたいのに余計な事ばっか考えちまう」
気付けばデジヴァイスを手に取っており、色々と考えていた。
ボーダーと全面戦争をする……ボーダーにとって5つの軍は邪魔な存在でしかない、グレイモンの時点で戦闘用トリオン兵が何体来ても倒せるレベル、やったら法律的にアウトだけどもインペリアルドラモンのドラゴンモードで地球一周も余裕で出来る。
ボーダーに色々と思想があれどもこちらの世界を守るという思いだけは確かだ……だが、内側に自分達とは無関係なトリガーがあったとするならば?そうなった場合は最初から無かった事にする、迅がデジモンの戦闘力を見て千佳の人の良さに漬け込んでボーダーと協力して大規模侵攻を乗り切ろう!と上手い具合に行くのは目に見える……この世界にはこの国には嘗ては開拓していたが今は誰も住んでいない無人島が普通に存在している。それなのに三門市に基地を置いている。既に滅んだ国の分際で偉そうに気取っている王族が頭の1つも下げずに真実を告げずに上手い具合に騙している。何でもかんでも真実を伝えればそれで良いわけじゃないのは理解しているが、向こうも向こうで一歩間違えたら晒し首なのを理解してんのか?
「デジモンカード、デジメモリ、スピリット、デジクロス、デジメンタル…………」
色々と考えた末にデジヴァイスを色々と操作してみる。
デジモンカード読み取り機能、デジメモリ、十闘士のスピリット、デジクロス、11個のデジメンタル……色々と機能があって、まだまだ未知数な部分が多い転生特典としてもらったデジヴァイス。あの機能がこの世界の仕様に変更されているならば、ボーダーとの全面衝突もありだな。
「っと、いけないいけない……オフな日だ……」
デジヴァイスを見て対ボーダーとの戦闘について考えていた。
12月までは余計な事は一切考えなくていい、麟児さんは黒服の組織で世話になっている……鳩原未来が密航しようとしたが、その辺は知らん。1度ググったら鳩原未来の名前が残っているという事は色々と適当な理由を纏めて鳩原未来を残した。例えば麟児さんを倒した謎の存在、近界民の可能性がとても大きくて雨取麟児が目覚めて情報を聞き出してから処分をくだす、とかか。
「ふ〜四日市まで来たな…………海は広いな」
色々と考え事をしつつ完全に三門市から脱出、三門市に隣接している市からも脱出した。
コレで実力派エリートの魔の手から離れることが出来る、余計な事を考えなくても済むのだと海を眺める。メタルシードラモンを思いっきり泳がせたいと思う時が稀にあるがあいつ、単体のデジモンの中じゃエグザモンの次にデカいから早々に出せない。そもそもでメタルシードラモンは水中戦を想定したデジモンだからな。
「あ、神堂さんからメッセージだ……誕生日プレゼントを言えって……」
神堂さんからメッセージが入った。
俺が今日、誕生日だった事をハッキリと覚えていたみたいで誕生日プレゼントを送るという。俺は桜と違ってそこまで偉くない、アミューズメント産業に関する技術開発をしているエンジニアチーフに過ぎない。桜にプレゼントが送られるならばまだしも俺にはそこそこな値段のカーネーションが会社から送られる程度……実際、去年は会社からカーネーションとカタログギフト送られてきたし。
「SASUKEの出場権をくださいっと……リロード、アグモン」
「どうした?」
「ちょっとボーッとしておきたい」
冗談半分のメッセージを送りつけ、アグモンをデジヴァイスから出した。
いきなり自分をリアライズした事にアグモンが疑問を持つのだが、俺はただ純粋にボーッとしておきたいだけだ。
「アグモンはさ…………なにか思ったりするか?」
「なにがだ?」
「オリジナルのデジヴァイスを所持して5つの軍の中で最初に発足されたのがブルーフレアだ……ボーダーが表に出てくるまではアグモンとガブモンで近界民を相手にしたが黒服の組織のボスを倒したあの日からそれは終わった。近界民が、異世界の存在を証明する事に成功して今もこうしている時に近界民が襲ってきている」
「……お前は助けたいとは思わないのか?」
「ボーダーは自分の意志で志願した人間で構成されている、自分で決めたのならばああだこうだ言うのは筋違いだ。例え理想と現実が異なっていたとしても……俺は力を持っているからその力を行使して力を持っていない弱者を助けよう!なんて思いは薄い」
家族以外で感情移入しているのは雨取兄妹と日野兄妹だけだ。
見捨てる時はホントに見捨てる、そうじゃないといけない。無償の正義や温い友情は俺は嫌いなんだ。例え未来の知識を知っているからと言って身を挺してまで誰かを助けたいとあまり思わない、未来が1つあるならばそれは受け入れるし。未来が無数あるのならば自分で選んだ道を真っ直ぐに歩いていくだけだ。
「ブルーフレアのデジモンはジェネラルであるお前に従う、お前が望むならば千佳や鉄子とも戦う」
「戦わなくていいよ……それともお前は戦いたいって思いがあるのか?」
「いや……意味がある戦いならばオレは求める。だが、ただの快楽による戦いは不要だ」
「……お前は意外と冷静なんだな」
お兄さんのテリアモンとかは割と好戦的な性格をしている。
俺のアグモンは意味がある戦いならば喜んで応じるが快楽を求める為の戦いは興味は無い。獰猛なドラモン系のデジモンで構成されているブルーフレアだが、血の気は意外と少ない……1度戦いを始めたのならば相手が負けるまで徹底的に叩きのめすのが流儀だが。
「お前は向こうの世界に行きたいのか?麟児達はその時が来るのを待っていて向かいたいと言う思いがある」
「近界民の技術に関して興味が無いと言えば嘘になる。けど、命懸けの冒険になるのは確かだ……その日が来ても問題無い様に備えているが、俺はエンジニア、機械関係で発明をする事なら出来るがそれ以外では無理だ」
仮に向こうの世界に行くことが出来るようになって実際に行くことになった場合、なにを目的として行くのか?
麟児さんや千佳は青葉という女の子や過去に拐われた人を連れ戻したいと思うだろうが、それがどういう意味なのか理解しているのか。
原作知識に嘘がなくてこの世界がある程度は原作通りな世界だったら、こっちの世界は搾取される側の世界……だった。現に今こうしている間も搾取してこようとしていてボーダー隊員が防衛している。そのことに関して向こうの世界はどう認識しているのか?拐われた人を連れ戻すのならば……5つの勢力は文字通り軍隊として動くしかない。こっちの世界を防衛するとボーダーが言っているんだから、こっちの世界はガン無視、向こうの世界の陣取り合戦が始まる。まだ1度も使った事がないデジヴァイスのあの機能はその為にある……うん、そうだな。
「でも、行かなきゃならない……」
「お前が選んだ道ならばオレ達はなにも言わない」
誰かを救いたいとかじゃなくて純粋な好奇心等で行きたいと思う。アグモンは俺の思いを尊重してくれればデジヴァイスに戻った。
ここで逃げたら一生逃げっぱなしだからやらなくちゃいけないとかじゃない、別に逃げる事は恥ずかしい事じゃない。むしろ逃げるという選択が出来るのはいいことだ……そう考えれば二十歳になるまでの子どもの期間は地獄だな、大人ならば最悪逃げるという手段が出来るが子供は逃げない、周りと同じ事を強要される。
「ふ〜……温泉に行くか」
欲しい物があるとかは無い。温泉に行くついでに黒服の組織でお世話になっている麟児さんの顔を見にいこう。
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