人生三回目、現代にてポケットモンスター現る。   作:龍狐

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 最近ポケモン×現代の小説にはまって作ってみました。
 そして同時に【精神的BL】の要素にもはまってたんだよなー。

 てなわけでどうぞ。


【聖 雪奈】2026年2月27日
1 憑依しちゃった!?


 重い瞼をゆっくりと開けたら、知らない天井でした。――いや訳分からん。

 

 彼が目覚めて最初に思ったことはそれだった。彼の知っている天井は木製だ。それは変わらないが、自分の知っている天井じゃない。何故なら彼が住んでいる部屋は設計から建築まで一から関わっている。それに住み始めてもう何年も経っている自分の家の天井を間違えたりしない。

 

 

「どこだ、ここ……えッ?」

 

 

 言葉を発して、彼は自分の体の異変に気が付いた。声が異様に高い。自分の声はバリトンのはず。こんなソプラノ声ではない。体の異変をもっとよく知るために、自分の喉に触れた。そこには男ご自慢の喉仏(のどぼとけ)が存在していなかった。

 

 

「はっ、えっ、なにこれ?」

 

 

 現実が理解できず、体のあちこちを触る。そして判明する自分の体との相違点。

 髪はサラサラ肌もスベスベで、上質な絹を触っているかのような感覚だ。自分の髪は天然パーマでとてもじゃないがこんな髪質じゃないし、肌もどちらかと言えば弱い部類だ。それに髪色だって、黒色のはずの髪は青みのかかった銀髪へと変化していたし、肌色も透き通るような白だ。首筋まで伸びている髪で、それが確認できた。

 そして、なにより一番なのは自分が床を見下ろそうと思ったらそれを阻害する、大きな二つの山。触ってみるととても柔らかい。というかくすぐったい。

 

 

「――――」

 

 

 最終的に自分の股座(またぐら)を探ってみた。――ない。本来そこにあるべきものが、ない。

 

 

「――――」

 

 

 放心のまま、部屋に置いてあったドレッサーで自分の姿を恐る恐る見てみる。そこには――

 

 

「嘘だろ、おい」

 

 

 首筋まで伸びた青みのかかった銀髪の髪と碧眼を兼ね備えた超絶な美少女が、そこにはいた。体系もボンキュッボンで出るところは出て引っ込んでるところは出ているという男にとってはまさに理想の体型ともいえよう。そんな超絶美少女が、鏡に映ったいたのだ。

 そんな変わり果てた自分の姿を見て、彼は―――否彼女は。

 

 

「なんじゃこりゃぁああああああッ!!!???」

 

 

 甲高いソプラノ声を、家中に響きわたらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 彼は男性だ。そう――昨日までは。

 実は彼は【転生者】なのだ。一度死に、なんらかの要因で違う生を生きる存在たちのこと。普通ならこの身体的な変化を思えば『転生』が行われたと思えば自然だが、生憎彼は既に転生を果たしている。

 彼の一度目の人生は現代世界で中年辺りの年齢で病気でこの世を去り、彼は【ポケットモンスター】の世界へと転生を果たした。

 

 【ポケットモンスター】――海、山、街中、果ては宇宙から来たものまで、様々なところに存在するポケモンを主人公たるトレーナーが捕まえ、そのポケモンでもって時に冒険し、時に他トレーナーとバトルするゲーム。漫画化もアニメ化もされている有名なゲーム。そんなゲームの世界に、彼は転生していた。

 

 生まれた場所はダイヤモンド・パール・プラチナの舞台たる【シンオウ地方 コトブキシティ】。そこで男性としての生を受け、10歳にしてポケモントレーナーとして旅をした。相棒を引き連れて様々な場所、地方を旅して数多のポケモンを捕まえ、育て、自分だけのパーティーを結成した。今やどれほどポケモンを捕まえたのか覚えていない。

 

 そんな彼はリーグにも出場しまぁまぁな成績を残すほどの実績を得ていた。魑魅魍魎レベルのトレーナーたちが跋扈(ばっこ)するリーグでそこまでの成績を残せたのだからと、彼は悔しさも残しながら甘んじて満足することにした。

 

 そしてそんな彼だが、20歳になったことを機に今までバトルや大会などで得た賞金を大奮発して自宅(マイホーム)と島を買った。何を言っているのか分からねーと思うが全て事実である。ありとあらゆるリーグに参加している彼は着実に実力を伸ばしていき、最大まで残り8人のところまでいったことがある。

 そんなこんなで着実に賞金を貯蓄していってからの大奮発だ。かなり減ったが彼に悔いはなかった。

 

 その島では今までに捕まえたり保護したりしたポケモンを放し飼いにしている。要するにポケモン博士もどき兼ポケモンシッター的なことを始めたのだ。そして彼はこんな状態になるまで基本的に買い出し以外は自宅で過ごしていたわけだ。

 

 

 こんな感じでいろいろ大事な部分も端折(はしょ)って説明をしたわけだが、いつまで経っても彼――彼女は現実を受け止め切れていない。まぁ当然ではあるが。誰だって目が覚めたら性別が変わっていたなんて事態になれば混乱しないはずがない。

 

 

「嘘だろおい…どうしちまったんだよ俺の体!声が高い!髪がサラサラ!超美少女!おっぱいがある!しかもデカい!そして一番大事なアレがなぁああああああい!!」

 

 

 自分の体の変化を一行でまとめた。大声で。その後滅茶苦茶叫んだあと息切れを起こしながらやっと落ち着いてきた。

 

 

「よーし、落ち着け俺。ポケモントレーナーたるもの冷静であるべきだ…」

 

 

 SAN値直葬状態からなんとか復帰した彼女(彼)がまず最初に行ったのは現状把握だ。自身の部屋を確認してみることにする。

 周りを見渡すがどう考えても自分の部屋ではない。自分の家はログハウスだというのに、この家は一度目の人生の家とほとんど同じ材質で出来ていて、全てが異なっている。彼の部屋はタンスやベットはもちろん、ポケモングッツやテレビ、エアコン、挙句の果てには大型の冷蔵庫など、その一部屋で全てが簡潔してしまうほどの快適さがあった。

 だがこの部屋は質素。質素オブ質素。キングオブ質素。生活に必要な家具だけが置いてあり、部屋が広いのに何もなさすぎる。もしかしたら何もないから広く見えているだけなのかもしれないが、実際この部屋は広い。彼女(彼)はベッドから立つ。

 

 

「こりゃねぇだろ…漫画どころか雑誌一冊すら見当たらねぇ。……ん?」

 

 

 ほとんど何もない部屋を探索していると、勉強机に目が行った。その机の上にはスマホがあった。そのスマホは指紋認証タイプで、右の親指を押し当てて起動するとロックが解除されてホーム画面が表示される。日付を見てみると、2026年2月27日(日)の文字が目に入る。

 

 

(俺の最初の生の時より少し未来だ…。なんなんだ一体?…あ)

 

 

 次に彼の目に入ったのは勉強机の戸棚だ。鍵穴付きなのだがそこが少し開いていた。彼女(彼)はその戸棚を何の躊躇いもなく豪快に開くと、シャーペンや鉛筆などはもちろん、そこに紛れて通帳と印鑑、保険証があった。

 

 

「不用心だな…鍵くらい締めとけよ。まぁ助かってるけど。さて、どれどれ…」

 

 

 彼が最初に見たのは保険証だ。保険証は個人情報の塊。この体の持ち主のことを知るにはもってこいのものだ。

 

 

「【(ひじり) 雪奈(ゆきな)】…それがこの()の名前か。生年月日は2009年3月2日……て、もうすぐ誕生日じゃんッ!!」

 

 

 2月は28日しかないから、彼女の誕生日は3日後と言うことになる。

 

 

「それで、今の日付から逆算すれば…この子は今16歳でもうすぐで17ってわけか。それで住所は…【北海道札幌市】と…県庁所在地か」

 

 

 この少女の生まれと育ちが北海道札幌市と言う点に共感を覚えた。シンオウ地方のモデルは北海道で、コトブキシティのモデルは札幌市だ。世界が違うだけで故郷は同じと言えよう。

 

 

「次に通帳だなァ……どれどれ……って…え」

 

 

 乾いた声が響いた。目を丸くして通帳の桁の数を見る。

 

 

「数字が、6、7、8桁―――」

 

 

 気が遠くなってしまいそうなので通帳を閉じた。一瞬別人の通帳かと思ったが、通帳に刻まれている【聖 雪奈】の文字がそれを否定する。どう考えても高校生くらいの年齢の子供に持たせていい金額ではない。彼女の親は一体何を考えているのだろうか。これ以上考えると頭が痛くなってくるので考えるのをやめた。

 

 

「とりあえず部屋出よう」

 

 

 彼女(彼)――雪奈が部屋を出て視界に移ったのは、長い廊下。その奥には下に続く階段が見える。その階段を下って下に降りれば、リビング兼キッチンへと到着する。ここは繋がっているようだ。

 リビングには大きなカーペットに真っ新な木製長机など一般家庭にありそうなものもあれば、キッチンは新型のIHでしかも食洗器付き、テレビも壁掛けの65インチのものと明らかに一般家庭ではお目にかかれないものが並んであったりもした。

 

 

「はぁ~…最初の俺の家にないもんたくさん…。ん、これは…」

 

 

 キッチンの机の上には一枚のメモ用紙が置かれており、そこには『お姉ちゃんへ 朝ご飯先に食べました!今日は友達と遊んでくるね! 氷花(ヒョウカ)より』と書かれていた。

 一番前に『お姉ちゃんへ』と書いてあり、氷花と言う明らかな女性の名前から察するに、この子の妹であろうことが分かる。それにこんな置き手紙を置いていくほどだからよほど姉妹仲は良好だと思われる。スマホがあるのだからL○NEを使えばいいのにと思うが。

 

 

「この子、妹がいたのか…。この子に悪いことしたな」

 

 

 自分ですらこの状況は不本意だというのに、罪悪感が込み上げてくる。保険証や通帳を見ていた時点で気が付いた。ここはポケモンの世界ではないと。そもそもあっちの世界で保険証なんて見たことないし。書かれている住所だって【北海道札幌市】の時点でここがポケモンの世界ではなく現代の日本だということは一目瞭然だ。

 これが夢だったとしたら手っ取り早いのだが、既に『転生』を経験している身からすればこれが夢ではないということくらい分かる。と言うより夢の世界特有の感覚がない。一度経験したからこそ判別できることだ。

 

 話を戻すが、おそらく自分は『憑依転生』を果たしたのだろう。もしくはただの『憑依』か。どちらにしてもこの姉妹には偉い迷惑な話だろう。ご都合的な展開でこの少女の記憶を全て引き継げたらよかったのだが生憎そんな感覚は全くない。アフターサービスもっとしっかりしろ。

 そんなことを考えていると、腹の虫が鳴った。ちらりと時計を見てみると、針は8時半を指していた。

 

 

「腹減ったなぁ…なんかないかね?」

 

 

 キッチンの冷蔵庫を開けば、綺麗に整頓されている状態が視界に広がる。そこから『ごはんだろ(海苔の佃煮)』を取り出し、炊飯器から既に炊けてあるご飯を、自分のが分からないためみそ汁のお椀によそう。そして箸も分からないため数分かけて見つけた割り箸を割って食す。

 

 

「うまい…。とりあえず、妹ちゃんが帰ってくるまでにここのこと把握しとかねぇと…」

 

 

 ここで一番危惧されることは血縁に不審がられることだ。しかも毎日一緒に暮らしている家族であればいつものと違う様子に真っ先に気付くはず。転生の話なんてしてもややこしくなるだけだから極力隠す方針がいいなと思っている彼である。

 家族構成は分かっている限りで両親とこの姉妹。日曜だからこそこの体の妹である氷花は友達と遊びに行くからいないのはまだ分かるが両親までこんな朝早くにいないとはどういう了見だろう。

 

 

(複雑な家庭なのかねぇ…。まぁ娘の通帳に8桁入れてるくらいだから、普通じゃないのは確かなんだろうなぁ…)

 

 

 白米を咀嚼しながら考えていると、

 

 

ピンポーン

 

 

 インターホンの音が鳴った。この瞬間雪奈は焦燥に駆られた。もし今来ているのが彼女の知り合いだった場合、どう対応すればいいのか不明だからだ。家族に次に不審がられるのは友達か知り合いの類だ。家族の次にその人物のことを見ている人間。極力そういう人間には今は合いたくないのだ。

 しかし、出ないわけにはいかない。居留守を使うのもいいが、それは早計だ。重い足取りで近くについていたテレビドアホンで来訪者の正体を見る。

 

 

『宅配でーす』

 

 

 そこから男性の声が聞こえた。その一声でホッとため息が出た。これなら問題なく出られる。画面の奥の男性は防止を深くかぶってその容姿を確認することはできないが、雪奈の視線はその荷物の方に言っていた。両手で持つほどの大きな荷物。これは速く出ないといけないと思い、すぐに下駄箱がある方――そこが確実に玄関だから――の方へと走った。

 

 

「はいはーい。お待たせしま……あれ?」

 

 

 サンダルを履いて玄関のドアを開けると――そこには誰もいなかった。変わりに玄関の前には荷物がポツンと置かれていた。周りをキョロキョロと見渡すも、既にあの宅配業者の姿はなかった。

 

 

「なんだあの宅配業者…評価最低にしてやる」

 

 

 愚痴りながらも荷物を受け取った雪奈は扉を閉めてリビングにまで戻る。キッチンの机に荷物を置いて、荷物の内容を確認する。

 

 

「あれ、これ、この子当てだ」

 

 

 荷物には【聖 雪奈】の文字があり、この子が注文していた荷物だということが分かる。あんな質素な部屋に住んでいるいる少女が頼む荷物とは一体何なのか、気になる。人の物を勝手に開けるのは罪悪感があるが、今は自分が【聖 雪奈】だ。つまり開ける資格がある。

 

 

「開けてみるか…」

 

 

 リビングの戸棚にあったカッターでダンボールを開封した。包み紙などで隙間が埋められており、それを取り出すと、上側が赤、下側が白のボックスが出てきた。

 

 

「このカラーリング…モンスターボールを彷彿とさせるな。さてと箱の中身はなんじゃらほ~い……って、えッ」

 

 

 そのボックスに入っていたのは、六つのボールとオレンジ色のなにか。そのボールはボックスの色と同じく、上側が赤色で下側が白の簡素な見た目をしていたボールだった。だが、そのボールはあまりにも見覚えがありすぎていた。なんなら数秒前に例えで出したほどだ。

 雪奈はその6つの内の一つ――傷が複数ついているモンスターボールを恐る恐る手に取った。

 

 

「なんでモンスターボールが…オモチャか?でもそれなら製品の箱に入ってるはず。なんでこの子にこれが送られて…それにこのモンスターボール…」

 

 

 訳も分からず思考の海へとはまる雪奈。現代の世界においてポケモンは架空の存在だ。だからこそこれが本物だなんて考えは雪奈の頭にはなかった。だが数秒後――その考えの根底は覆る

 

 

「とりあえず開けてみるか――」

 

 

 モンスターボールを開けようと捻ろうとした瞬間――

 

 

ポンッ!!

 

 

「うわッ!……って、嘘…」

 

 

 モンスターボールが開いた瞬間、青い光が飛び出してきて、それが形を形成する。それは2mを超える巨体の姿だった。頭が天井に届きそうなほど大きく、圧倒される。白い体毛と、手足を覆う青い体毛は、さながら雪男を想像させる見た目だ。白い巨体を持つ二足歩行の生き物。腕の先、足の先、尻尾は青く、とても目立ち、背中に正方形状に並んだ4つの突起がある。

 

 その大きな生き物――ポケモンに、雪奈は見覚えしかなかった。

 

 

「ユ、ユキノオー…?」

 

「ノッオッ!!」

 

 

 彼女――彼の、相棒ポケモンだ。

 

 

 

 

 

げんじつ の せかい に ポケモン が あらわれた!

 

 

 

 

 

 




と、言うわけで主人公ちゃん(くん)の相棒ポケモンは色違いユキノオーとなります。
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