人生三回目、現代にてポケットモンスター現る。   作:龍狐

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2 15分の休息

「「――――」」

 

『それではこれより15分の休憩に入ります。休憩が終わり次第、質疑応答となっております』

 

 

 官房長官の説明を皮切りに、総理と謎の人物――ニバンは会見室から去っていき、画面にはなにも映らなくなった。

 雪奈と氷花、そしてポケモンたち。この記者会見を見て、全員が思考を停止させていた。その中でも一番早い復活となったのが、雪奈だ。

 

 

「なんだ、あいつ…」

 

「うへぇ~…まさかお姉ちゃんより先に動いている人がいたなんて…大胆だなぁ…」

 

 

 それぞれが、それぞれの感想を口にする。氷花はポカンとしているが、雪奈だって十分驚いている。昨日まで、ポケモンのことを知る人物は自分だけだと思っていた。しかしそれは単なる思い込みだった。現にもう一人、今先ほどまでテレビにその姿を映している、もう一人の人物がそこにはいた。

 それにもう一つ気になったことだってある。

 

 

「ていうか二番って…氷花が二番じゃなかったのかよ」

 

「アレ?行ってなかったけ?私3番だったよ?」

 

 

 氷花が笑顔でスマホの画面――ポケモンショップアプリのマイページを見せた。そこには確かにトレーナーID 3と表示されており、氷花の前にポケモンを捕まえた人間、ニバンがいたという証拠に他ならなかった。

 

 

「いや言ってない。もっと早く教えてくれたって良かっただろ」

 

「ごめんね?もう言ったものだと思ってたから」

 

 

 笑顔で氷花はそう答えるが嘘臭い。絶対に故意的に黙っていたとしか思えない。氷花が雪奈のことを良く思っていないのは事実だ。当初から疑っていたというのなら、あえて黙っていたとしてもおかしくはない。いけ好かない奴にあえて情報を与える必要はないということだ。

 

 

「ん…。まぁもういいや。それにしてもマスコミのやつら好き勝手言いやがって…」

 

「ゲンッ…」

 

 

 雪奈の言葉に反応し、ゲンガーが落ち込んでいる。ポケモンたちが、ゲンガーのことを励ましているが、ゲンガーの顔が晴れることはない。

 しかし無理もない。自分のことを危険だと言われたら落ち込むのが普通だ。元より、ゲンガーの図鑑説明は怖すぎる。ゲンガーの絆は歪だの逃げる術はないから諦めろだの、明らかに恐怖を煽る内容だ。二度目の人生の時だって、“悪い子のところにはゲンガーが現れる”と言う言葉まであったほどだ。まぁそのほとんどが事実なため何とも言えないのが苦しいところだ。

 だからこそ、一般的に考えればゲンガーのことを危険視するのはある意味当然とも言える。

 

 

「そんなの野生だけだっての。ウチのゲンガーはちゃんと躾けられてるからそんなことしねーし」

 

「ゲンッ…!」

 

 

 雪奈の言葉に、ゲンガーは目を輝かせる。やはり、自身のトレーナーの励ましが一番の薬になったようだ。ゲンガーは雪奈に抱き着き、顔を摺り寄せる。

 

 

「うわっ!前が、見えないっての!」

 

「ゲゲンッ!」

 

 

 顔にべったりくっついているゲンガーを無理やり引きはがすが、ゲンガーは笑顔のままだ。本当に感情の起伏が激しい。“ようき”だからだろうか?

 

 

「全く…。ほどほどにしろっての」

 

「ゲンゲンッ」

 

「はぁ…。にしても、滅茶苦茶怪しかったな…」

 

 

 ニバンの第一印象は、とても怪しかった。黒と白の服に手袋までつけて、“のろいぎつねの面”までかぶっていたら不審者にしか見えないのは当然だが。

 それにしても、“のろいぎつねの面”。まさかあのお面をこの世界でも見ることになるとは思わなかった。シンオウ地方の博物館に、とても古い物が飾られているのを見たことがある。当時の人間がどのポケモンをモデルにして作ったお面なのか、研究者や博士の間ではかなり議論されたと聞いたことがある。

 

 

「ネットでも言われてるね…。怪しすぎるって」

 

「まぁあの見た目じゃ無理ないわな。身バレ防止のためとはいえ、もう少しまともな服装はなかったのか?」

 

 

 氷花がスマホの画面を見ながら、他の人間の感想を口にした。それはほとんど同じ感想だった。しかし顔を隠すとなると他に考えられるのはマスクとサングラスしかないため、結局は怪しく見える。

 

 

「でも、アイツのおかげで俺らの目標の第一段階がクリアしたって言っても過言じゃないな」

 

「第一段階?なにかあったっけ?」

 

「ほら、あの未確認生物って呼び方をやめさせることだよ」

 

「あぁ、確かに言ってたねそんなこと」

 

 

 雪奈が掲げた最初の目標は、人類の認識を改めることだ。今まで未確認生物と呼ばれていたのを、ちゃんと【ポケモン】と言わせる。これがまず第一段階だった。未確認より、明確な呼び名があった方が良いし、そうすれば認知度も高まる。

 

 

「じゃあさ、もうお姉ちゃんがわざわざ目立つ必要ってないんじゃない?」

 

「えっ?」

 

「だってさ、お姉ちゃんが目立つ理由は人間とポケモンを仲良しにさせることでしょ?でもあの人がやってくれるんだったらそんなことする必要ないよね?」

 

「――まぁ、そうだな」

 

 

 氷花の言う通りだ。目立つのは苦手だが、目立ってでもはやらなければいけないと思ったことがあるからまず最初にスマホロトムに表舞台に立たせて、自分の存在をアピールした。だが、裏から徐々にやるのではなく、表立って活動するニバンと言う人物が現れた。彼が動いてくれるのなら、(おの)ずと自分が表舞台に立つ理由はなくなる。

 しかし氷花の場合、この発言の裏で「お姉ちゃんの体で好き勝手するのは許さない」と言う脅しが裏側にありそうだ。ていうかあるはずだ。この姉妹にとって今以上に目立つのは避けたいはずだから。

 

 

「普通に考えれば俺の代わりが出てきた…だから目立つ必要はない…。でもそれはもう通用しないな」

 

「どうして?」

 

「昨日の行動は、アイツの存在なんて知らずにいたからやった行動だ。昨日まではポケモンのことを知っている人間なんて、自分しかいないって勘違いしてたから、なんとかしないとっていう使命感に駆られてた。でも一度存在を晒した以上、それをなかったことにするのは不可能だ」

 

 

 もし行動が一日遅れていれば、その方法も通用しただろう。だがしかし、既にスマホロトムを通して自身の存在を世界中に知らせた今、その術は意味をなさない。世界中の人間には自分の存在が知られているしなにより、ニバンがどう出るかが分からない。

 

 

「今後の行動はアイツの出方次第って言ったところだな」

 

「そっか…。――まぁ、仕方ないよね…」

 

 

 最後の部分がトーンが低くなっており、その間で何を考えていたのかは分からない。だが、怖いということは明確にわかった。

 

 

「ま、まぁ…できるだけ身バレしないように努めるからさ…。お前らも、あまりバレないようにしてくれよ?特にゲンガー」

 

「ゲンッ!?」

 

「お前には前科があるからな。きつく言っとくぞ」

 

 

 「ゲンッ…」と、先ほどようやく上がったテンションが再び下がっていた。こればっかりは無理はない。前回ゲンガーは不必要に目立っていた。これのせいで、ゲンガーを人の目に通すのは大分先になる。人とポケモンの間が縮まってからになる。今ゲンガーと自分が一緒にいるところを見られでもしたらスマホロトムの持ち主=【聖 雪奈】と言う図式が出来上がってしまうためだ。

 ゲンガーは今度は周りに慰められることはなかった。本当に反省してほしい。結局は無意味になるだろうが。

 

 

「でもあの人がいてくれて本当に良かった。不必要に目立つ必要ないし、人とポケモンの距離が近づけば外でもピカちゃんとブイちゃんを連れて散歩もできるしね」

 

「ピカチュ」

 

「ブイッ」

 

 

 二匹は嬉しそうに氷花に微笑む。確かにまだ世界中にポケモンが現れて一日しか経っていない。その状況でポケモンを連れている人間は目立つ。だが、ポケモンが浸透すればその心配もなくなる。だがそれも当分先のことになりそうだが。

 

 

「それは乞うご期待ってやつだな。でもあのポケモンって確か…」

 

 

 雪奈はあのポケモンに見覚えがあった。それは一度目の人生の際――ポケモンがゲームだった世界での話だ。あのポケモンはケルディオ。幻のポケモンだ。

 二度目の人生では見ることは叶わなかったが、まさか三度目の今見ることになるとは思わなかった。

 

 

「幻のポケモン連れてるって……マジでニバン、ナニモンだ?」

 

 

 ポケモンが世界に現れて早2日目。こんなにも早く幻のポケモンを連れている人間を見ることになるなんて、思いもしなかった。

 背丈から考えれば男だろうが、それ以外の情報が全くない。考えるだけ無駄である。

 

 

「――あれ?」

 

「どうした?」

 

「あのさ、今ニバンって人が連れているポケモン。今ポケモン図鑑で調べてみたんだけど…。なぜかこんな感じになってるんだよね」

 

 

 氷花の腑抜けた声が聞こえ、その理由を聞けば、どうやらケルディオのことについて調べていたみたいだ。しかしどうやら異常があったようで、氷花は自身のスマホの画面を雪奈に見せた。そこには――

 

 

「データ非公開?」

 

 

 そう書かれていた。背景は灰色と黒の縞々で、赤いバッテンの上に白い文字で【データ非公開】と書かれていた。

 どういうことだろう。何故ケルディオのデータが非公開になっている?なにか製作者側の意図があるのだろうか?う~んと唸っていると、氷花が続きを言った。

 

 

「でさ、詳細って項目があるんだけど、押してみるね」

 

「あ、あぁ…」

 

 

 氷花がそのまま詳細の項目を押すと、次の文字が出てきた。

 

 

データ公開条件

 

条件 その1

 

1番と2番への申請

 

 

条件 その2

 

ポケモントレーナー10万人達成

 

 

いずれかを達成してください

 

 

 

 と言う文字が表示され、雪奈は唸る。

 

 

「ん~…つまりこれって俺とアイツの許可が必要だってことだよな?」

 

「まぁ2番目の条件を達成するよりは楽だよね」

 

 

 ケルディオの情報を開示するために提示された、二つの条件。その一つが雪奈とニバンの許可。そしてもう一つはポケモントレーナー10万人達成。何故このような条件が出されているのだろうか。普通に掲示すれば良いものを。

 

 

「10万人か…かなり先になりそうだな」

 

「だよね。なんでこんな設定になってるんだろ?」

 

『それはポケモンショップのQ&Aに書かれているロト!』

 

 

 スマホロトムの声に、全員がスマホロトムに視線を向ける。全員の視線が自分に注目したのを確認すると、ロトムはポケモンショップアプリのQ&Aから一つの項目を表示した。

 

 

『ポケモンショップでは、まだポケモンに慣れていない人間のためにあえて情報を制限しているポケモンがいるロト。その対象は“伝説”“準伝説”“幻”の三種類ロト。今回制限された【ケルディオ】は幻のポケモンに分類されているロト』

 

「伝説とか幻って…なに?」

 

「昨日話した、時間とか空間とか操れたり、大国を一夜で滅ぼしたっていうポケモンのこと」

 

「えっ、それが伝説とか幻なの!?」

 

「そうだ……ってことはこのシステムの目的は、不必要に混乱をもたらさないためってことだな?」

 

『その通りロト!』

 

 

 これを聞いて、ある意味納得した。伝説や幻のポケモンはそれに分類されている通り強力な力や特別な力を持つものばかりだ。ただでさえ普通のポケモンでも大騒ぎなこの状況。伝説や幻レベルのポケモンの情報が出回ればどうなるか予想がつかない。

 

 

「なるほど。トレーナー10万人っていうのは、ある程度ポケモンが浸透したのを見越してのことか…まぁこれくらい浸透したなら、大丈夫か…?」

 

「じゃあ、一番最初の1番と2番の許可っていうのは?なんで3番がないの?なんで私だけハブられてるの?」

 

『そ、それをボクに聞かれても知らないロト…』

 

 

 グイグイと顔を責めてくる氷花にスマホロトムはたじろぐ。今この時だけ彼女の本性が露呈しているかのように思えた。

 だがまぁ1番と2番ときて3番が除外されているのは物申したい気持ちは分からないでもない。

 

 

『おそらく許可制なのは緊急時とかのためじゃないロトか?そこまで詳しく書かれてないからボクもよく分からないロト…』

 

「緊急時?なんだそれ?」

 

『これはボクの憶測だからボクに聞かないでほしいロト。それに、この話はできるだけ早く終わらせたいロト』

 

「なんで?」

 

『実はさっきから……閲覧許可の申請通知が鳴り止まないロト~~~!!

 

「ええっ!?」

 

 

 急にスマホロトムが奇声を上げながらリビングを飛び回る。

 雪奈は勢いよく立ち上がり、暴れまわるスマホロトムをなんとかなだめようとする――が、スマホロトムは小さいうえに縦横無尽に動き回り捉えることができない。

 

 

「ええっと、“サイコキネシス”できるか!?」

 

「ルオッ…」

 

「サナッ…」

 

 

 サイコキネシスを持つルカリオとサーナイトはサイコキネシスを発動してスマホロトムの動きを止めようとするが、対象が小さいゆえに早く動きすぎて狙いが定まらないようだ。頭を抱えた雪奈は、次の手に移すことにした。

 

 

「ルカリオ!“しんそく”でロトムを捕まえろ!極力家具にダメージが入らないように!!」

 

「ルオッ!!」

 

 

 その瞬間、ルカリオは残像のみを残して消えた。そして、次にルカリオが姿を表したのは、リビングの扉の前。手にスマホロトムを持ったルカリオだった。ルカリオは暴れるスマホロトムを両手でなんとか抑えていた。

 

 

『ロト~~!!ロト~~!』

 

「ロトム!通知切れすぐに!もしくはすいみんモードだ!!」

 

『その手があったロト!!』

 

 

 雪奈の叫びで、ようやくスマホロトムは正気に戻った。どうやら迫りくる通知の嵐がスマホロトムの脳を侵していたようだ。だが今ようやくその地獄から開放されたようだった。ルカリオの手から離れたスマホロトムは、ため息を吐いた。

 

 

『ケルディオの登場から申請通知が鳴り止まなかったロト…。今までは何とか抑えられてたけど、限界を迎えたロト…」

 

「そ、そうだったのか…気づかなくて悪かったな…」

 

『気にしなくてもいいロト。でもあの時間だけで1000を超える通知が来たからとても熱いロト…。ちょっと涼ませてほしいロト…』

 

 

 そう言うと、ロトムがスマホから飛び出し、フラフラとしながらユキノオーの体毛の中に埋もれた。氷タイプのユキノオーなら確かに体を冷やすのには最適だろう。それにしてもそんなに熱いのだろうか。ロトムがスマホから出たがるほどだ。1000を超える通知が一気に来たのであれば、スマホの処理能力がとても働いていたことになる。そう思いながらスマホを手に取ると――

 

 

「あっつ!!」

 

 

 スマホに少し触れただけでとんでもない熱さが襲ってきた。火傷するほどの熱さではないが、確かにこれ以上スマホを酷使させてはまずいと判断した雪奈はすぐにスマホの電源を切った。あとは自動的に熱が冷めるのを待つだけだ。

 

 

「やべぇ…ロトムが撃沈したのもよく分かる熱さだ…。こりゃしばらくスマホは使えないな…」

 

 

 未だにユキノオーの体毛に埋もれて「ロト~…」とへばってるロトムに同情する。あとでなにか作って食べさせてやろうと思った。

 

 

「大変だね~。もう申請が殺到してるんだ」

 

「以外に早いな…。まぁ今すぐケルディオのこと知れる方法が俺とニバンだけだからな…。仕方ないっちゃ仕方ないか」

 

「札幌のニュース、公開されてるよ。『謎の人物、ニバンが連れた未確認生物、図鑑でも詳細を確認できず』って」

 

 

 氷花が自身のスマホで見せた、地元のニュース。現状ポケモンショップのアプリおよび全国ポケモン図鑑を使えるのはこの中央区の人間のみだ。ゆえに情報が一番早いのは地元の記事になる。

 この記事には他にも1番と2番の許可、もしくはポケモントレーナーが10万人達成する必要があることが書かれている。

 

 

「情報早えーなー。流石マスコミ…」

 

「こういうところは油断ならないよね」

 

 

 おそらくフル稼働して作っているのだろうが、あの会見が中断してまだ10分ほどしか経っていないのにそんな記事がネット上にすでに投稿(アップ)されているのはいくらなんでも早すぎだとは思う。まぁそこらへんに詳しくないのでこれ以上考えることはやめるが。

 

 

「ていうか、もうそろそろで会見の続き始まっちゃうよ?」

 

「えっ、もうそんな時間?」

 

 

 時計を見ると、確かにあの会見が一時終わったときからそろそろ15分の時が終わろうとしていた。時が流れるというのはこんなにも早いことだったのか。

 

 

「あ、ほらッ。画面に映ったよ、あの人」

 

 

 氷花がテレビを指さすと、総理大臣、ニバン、ケルディオが姿を表した。ニバンとケルディオが檀上に上がり、ニバンがマイクの位置――中心に立ち、その隣にケルディオが立った。

 そして進行役を務める官房長官の一言で、緊迫の時間は、再び始まる。

 

 

 

『それでは質問を受け付けます』

 

 

 

 




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