人生三回目、現代にてポケットモンスター現る。   作:龍狐

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「……嵐のように過ぎ去っていったなぁ…」

 

 

 雪奈はニバンがいなくなった後の会見室が映っている画面を凝視する。急に入ってきて自分の都合でいなくなったあの男?女?かは分からないがかなりの自由人であることが伺える。それに退出時にダルマッカ弁当とか言っていたのも思い出す。

 

 

(ダルマッカ弁当って確かイッシュ地方の駅弁だったよな…?なんでケルディオがそれのこと知ってるんだ…?)

 

 

 疑問が頭の中に浮かぶ。しかしそんな疑問など些細なことだ。それにケルディオはイッシュ地方のポケモン。知っていてもおかしくはない。さらにニバンの口から【コバルオン】の名前が出てきたことも驚いた。となると【ビリジオン】も【テラキオン】もいてもおかしくはない。ある程度予想はしていたが、伝説や幻のポケモンもこの世界にいるようだ。

 それよりもっと、とんでもなく重要な情報がニバンの口から飛び出ていた。このポケモンショックの真相だ。この事件の真相、それは二つの世界の融合。人間の世界とポケモンの世界が融合した、と言うのが現実だったのだ。

 

 

「世界の融合かァ…なんかスケール大きすぎるね」

 

「ピカァ…」

 

「ブイッ…」

 

 

 氷花とピカチュウ、イーブイは宇宙猫状態になっていた。雪奈は事前知識があるためある程度話についてこれるが、氷花は別だ。あまりにも突拍子な話過ぎて話についてくる以前の問題であった。

 

 

「おーい、大丈夫か~?」

 

「――あっ、大丈夫大丈夫。ちょっとビックリしてただけ。でもそっか~みんな、異世界の生物なんだ~」

 

 

 氷花はピカチュウとイーブイを見た後、雪奈のポケモンたちを見渡す。二日前までいなかった異世界の生物と一緒に暮らす、なんというシュールな光景だろうか。

 

 

「異世界の割には、みんな可愛いよね~」

 

「割にはってなんだよ、割にはって」

 

「いやほら、異世界って言うとゴブリンとかオークとかそっち系のをイメージするじゃん?」

 

「まぁ…分からなくはない」

 

 

 共通認識で異世界とは、別の世界。そして剣と魔法のファンタジー世界を妄想するだろう。そこで異世界の生物として有名どころと言えばゴブリンやオーク、スライムなんかもいる。しかし予想から外れて異世界の生物はでんきネズミなどなどである。

 

 

「でも世界の融合ってほどだから、それもポケモンが関係してるのかな?」

 

「大いに関係してると思うぞ。ていうか心当たりある」

 

「えっあるの?」

 

「シンオウ地方の神話に登場するポケモンだな。あ、ちなみにシンオウ地方って言うのは北海道と地形が全く同じの場所」

 

「へ~~……」

 

 

 雪奈の説明に氷花は薄い反応を示した。元来の『雪奈』であればこんな情報を知っているはずはないが、氷花は『雪奈』の体に入り込んでいる“ダレカ”の存在を知っている。そのダレカの片鱗が出たとき、氷花は露骨に態度を変えた。

 

 

「――――」

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんでも…」

 

 

 その態度に雪奈が固まっていると、氷花が通常通りに心配しそうにしてくる。気を取り直して説明することにした。

 

 

「シンオウ地方には神話が多数存在していて、まとめて【シンオウ神話】って呼ばれてる。その中には、世界を創造した始まりの存在がいる。ソイツの名前は【アルセウス】。まぁ創造神って立ち位置だ」

 

「創造神…」

 

「世界を創造した神様だからな。二つの世界を繋ぎ合わせるなんて朝飯前だろ」

 

 

 実際、世界の融合のことを知る前から雪奈はこの事件の犯人がアルセウスであることを疑っていた。アルセウスは宇宙を創った創造神。一から創った経験を持つならば、既存のものを二つ繋ぎ合わせることだって可能なはずだ。

 

 

「しっかしなんでアルセウスは二つの世界を融合したんだろうな…」

 

「それは神様本人じゃないと分からないんじゃない?」

 

「そうだなぁ…」

 

 

 一番の疑問はそれである。何故アルセウスは二つの世界を融合したのだろうか。最も、各地で邪神扱いされてる神の考えなど分からないし、分かりたくもないが。

 

 

「じゃあさ、あの人が言ってた“知識を授けてくれた”って言うのも、アルセウスなのかな?」

 

「まぁその可能性が高いな。神様だしあんま人前に出たくないって言うのも頷ける」

 

 

 雪奈も氷花も、ニバンに知識を授け、ニバンにあのような恰好をさせたのはアルセウスだと考える。むしろそれしか選択肢が思い浮かばない。

 う~んと唸っていると、氷花のか細い声が雪奈の耳を刺激する。

 

 

「あの、さ…。お姉ちゃんはさ、あの人の言うこと、どう思ってる?」

 

「どう、って…?」

 

「一緒に架け橋になろうって話」

 

「あぁ――」

 

 

 ニバンの言葉を思い出す。同じポケモンを想い、ポケモンを捕まえた人間として人間とポケモンを繋ぐ架け橋になってほしいという、あの言葉。ポケモン第一の雪奈にとって、それは喜んで受けたいほどの提案だが――

 

 

「もちろんさ、ポケモンたちのことを大事に思うのは悪くないんだよ?私も人間とポケモンは仲良くなってもらいたいって思ってるし。でもそのせいでお姉ちゃんが目立つって言うのは、なんか違うと思うんだよねぇ」

 

 

 この悪魔(ヒョウカ)の存在である。氷花は、絶対にそれを許さない。目立つというのは聞こえはいいが、それは同時に期待や欺瞞などを一斉に受けることに他ならない。それを、姉の体を借りてるだけの他人にやらせるわけがない。

 

 

「もしお姉ちゃんが有名人になっちゃったら、いろんなメディアに出るワケじゃん?その分、いろんな人がお姉ちゃんを見るわけじゃん?それでさ、もしなにか問題があったらきっとみんな中心人物のことを糾弾するよ。きっと、あの人もそうなる」

 

「氷花…?」

 

「だからさ、私はお姉ちゃんに極力目立ってほしくない。正直もう後の祭り状態だけど、まだお姉ちゃんのこと自体がバレたわけじゃない。いくらでも軌道修正できる。だからさ、慎重に行動しよう?」

 

 

 そう笑顔で言ってくるが、雪奈からすれば「お姉ちゃんの体で好き勝手したら分かってるんだろうな?」と言っているようにしか見えない。現に氷花の後ろにいる相手の心が分かるルカリオとサーナイトが凄い形相で氷花を睨みつけている。だから大体あってるかもしれない。

 

 

「ま、まぁそうだな…」

 

「良かった!分かってくれて!それじゃあ遅いけど朝ご飯の準備するね!」

 

 

 爽快な顔持ちで立ち上がり、氷花は台所へと向かっていき、その後ろをピカチュウとイーブイはついていく。

 

 

「――――」

 

 

 一種の恐怖から開放された雪奈は、脱力してソファーから崩れ落ちる。それを見かねてルカリオたちが持ち上げようとするが、雪奈は自力で再びソファーに座り、テレビに視線を向けた。今テレビでは、ニバンが去ったあとに総理大臣が檀上に立ち、調査本部の詳細を語っていた。

 捜査本部のことを纏めるとこうだ。

 

・ポケモン図鑑を活用したポケモンの調査

・ポケモンによる被害を抑制する

・ポケモンを扱えるものの育成

 

 大きく分けてこのようになっていた。

 これを聞いて思ったのは実質調査本部と言うのは名ばかりのものだということだ。既にポケモン図鑑と言う基盤ができている状態で、わざわざ調べる必要などあるのだろうかと言うのが疑問だ。まぁ図鑑と事実がちゃんと合っているかと言う照合をする必要があると言えばなにも言えないが。

 ポケモンによる被害の抑制。まぁこれも理解できる。いくら日本政府がポケモンと共存の道を選んだとはいえ、まだ2日目。人々のポケモンへの恐怖はぬぐえていない。それらを抑制するためでもあるのだろう。

 そしてこれが一番の目的だろう。ポケモントレーナーの育成。むしろ調査本部ではなく教育機関と言った方が良いとすら思っている。トレーナーの真骨頂はポケモンに指示を出し戦わせること。ただポケモンを捕まえただけでポケモントレーナーを名乗るのはトレーナー歴10年の自分のプライドが許さない。だから調査本部より教育機関の方がいいと思っている。

 

 

「調査本部っつーかもうトレーナーの学校だろ、これ」

 

 

 そう一人で愚痴っていると、後ろから“チンッ!”と言う音が聞こえた。後ろを振り向くと電子レンジの扉を開けている氷花がおり、どうやら今の音は電子レンジの音だったようだ。そこから取り出されたのは唐揚げだ。しかも甘ダレつきの。

 

 

「あ、美味しそっ!」

 

「でしょー?ご飯よそるから座ってて」

 

 

 氷花に促され、台所の椅子に座る。よく見れば、すでに全員分の食事も用意できていた(きのみはゲンガーが調達している)。全員がそれぞれの食事の前に立つが、雪奈のポケモンたちはジト目で氷花を見ている。その視線に気づいたのか氷花は笑顔で対応した。

 

 

「大丈夫だよ、別に苦手なもの入れてないから。昨日の食事を参考にしたから、大丈夫のはずだよ!」

 

 

 その氷花の言葉に、視線がルカリオとサーナイトに向く。グッっと、二匹はグッドサインを出した。どうやらその言葉に嘘はないらしい。

 

 

「それじゃあ、いただきます!」

 

「いただきます」

 

 

 二人の言葉で、ポケモンたちも食事に手を付け始める。箸で唐揚げを掴み、口で頬張る。甘ダレが良い味を出している。とても美味しい。ご飯と掛け合わせてもっとおいしくなる。

 ご飯を咀嚼していると、ふと、氷花のスマホが鳴った。今雪奈のスマホは電源を切っているし、ロトムは未だにユキノオーの体毛に埋もれている。ゆえに実質氷花のスマホとなる。

 

 

「あっ、【華凛(カリン)】ちゃんからだ」

 

「華凜?」

 

「私の友達だよ。昨日遊ぶ約束してた子だよ。忘れちゃったの?」

 

「え、いや…うん。そういえばそうだったな。はは…」

 

 

 氷花が首を傾げながら普通にそう聞いてくる。『雪奈』なら知っているだろうが雪奈は知らない。だから知らなくても無理はないのだが、あえて聞いてきてる。いや、この場合は聞き返したのがまずかった。『雪奈』は華凜と言う少女のことを知っているはずなのに、聞き返すのはおかしい。完全に雪奈の失態だ。

 氷花はスマホを取ると、メッセージを確認する。

 

 

「えっと、内容はさっきの会見の話か…う~ん…」

 

 

 氷花は返答に困っているようだ。それに見かねた雪奈が動く。

 

 

「メッセージ、見せてもらってもいいか?」

 

「―――うん。いいよ?」

 

 

 雪奈の提案に、少しの沈黙のあと笑顔で画面を見せる氷花。少し怖かった。

 メッセージを見ると、「さっきの記者会見見たかいな!?」と書かれていた。何故関西弁なのだろうか。その上を見てみると、昨日のメッセージが残されており、約束を果たせなかったことへの謝罪の文が綴られていた。

 

 

「普通に「見た」って返せば良くないか?」

 

「まぁそうなんだけどね」

 

 

 氷花は画面を自分の目元に戻して操作し始めた。この時雪奈は思った。からかわれた、と。

 放心中の雪奈を放っておいて、氷花は友達とメッセージのやり取りを続ける。しばらく氷花がスマホを弄っていると、スマホをテーブルに置いた。

 

 

「お姉ちゃん」

 

「―――?」

 

「今日【華凜】ちゃんが来ることになったからよろしくね」

 

「―――はい?」

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

華凜:さっきの記者会見見たかいな!?

 

氷花:うん、見たよ

 

華凜:めっちゃすごかったな!

 

氷花:そうだね。私は世界の融合云々からついていけなかったよ

 

華凜:まぁ無理ないな。うちも正直話についていけへなんだ。

 

氷花:それでどう思ってる?ポケモンのこと

 

華凜:まだなんとも言われへんな。ネットで被害が出とるとか書き込みあるけど、まだ実際に見たわけやないし

 

氷花:だったら見に来る?

 

華凜:どういうことやねん?

 

氷花:こういうこと

写真添付(ピカチュウとイーブイが身を寄せ合って寝ている姿)

 

華凜:ファ!?ポケモンやんけ!しかもごっつ可愛い!えっ、まさかもう捕まえたんか!?

 

氷花:昨日ねー。可愛かったから連れ帰って、ショップ使えるようになってからすぐにポチッた

 

華凜:行動早いなー。

 

氷花:それで、どうする?

 

華凜:行かせてもらうわ。今ちょうど氷花の家の近くにおるんや

 

氷花:えっ、この状況で?なんで?

 

華凜:買い出しで氷花の家の近くのスーパーにおったんや。オトンとオカンはデスクワーク中やから、動けるのが私だけなんや。こんな状態でもスーパーは開いてて助かったわ。ガランガランやったけどな。

 

氷花:ははっ…

 

華凜:それじゃあ休憩がてら寄らせてもらうで

 

氷花:でも荷物とか大丈夫?重くない?

 

華凜:自転車で来てるから安心せぇ。荷物も篭に入るくらいの大きさだけやし。ほな、今から行くで!

 

 

 

 

 

 

――と、こんな内容のLI○Nを見せられた。

 それを見て雪奈は頭を抱える。とんでもないことになった。まさか二日目で家族以外の人間と会うことになるなんて。不味い、非常に不味い。

 

 

(――不味い)

 

 

 雪奈の中身が別人であることが、唯一の肉親である氷花にすらバレているのだ。氷花の場合は前世の口調(男口調)で常に話していたことが最大の要因である。なら口調を女性らしくすれば――だがここで問題が一つある。雪奈はその華凜なる少女のことを全く知らない。妹の友達であるのなら、姉と合っていてもおかしくはない。つまり華凜は『雪奈』のことを知っている人物。つまり、氷花のように違和感からバレてしまう可能性が十分あるのだ。

 

 

(これ以上バレるのは流石に勘弁だ!なんとかしないと――!)

 

 

 雪奈は最後の望みとして氷花の方を向いた。氷花は雪奈の視線に気づくと、ニッコリと笑った。一見穢れのない綺麗な笑顔だが、その裏にはどう考えても企みがあるようだった。

 氷花を当てにできないと悟った雪奈は静かに頭を抱える。だから、今の内にできることはしておくのが一番(ベスト)だ。

 

 

「とりあえず、こいつら全員モンスターボールに入れて――」

 

「なに言ってるの?この子たちも見せようよ」

 

「えっ?」

 

 

 雪奈が立ち上がろうとしたところを、氷花が腕を掴んで阻止した。その手は妙に力が籠っていて抜け出すことができない。しかし雪奈は放心状態でそれどころではなかった。聞き間違いでなければ、今氷花はユキノオーたちをモンスターボールに戻すことを拒否している。

 

 

「せっかくこの状況で見に来てくれるんだから、ピカちゃんとブイちゃんに合わせるだけじゃもったいないでしょ?」

 

「いや、氷花さーん?先ほどの発言覚えてます?こいつら見せたら俺が1番だってバレるから。特にゲンガー見せたら隠しようがないから」

 

 

 氷花の行動は先ほどの言動と矛盾している。氷花は自分も含め雪奈をあまり目立たせたくないはずだ。話題性の塊である雪奈を第三者に見せることは明らかにおかしい。そのためつい他人行儀になってしまった。

 特にゲンガーなんて見せたら一発でバレる。現在ゲンガーを連れている人間なんて世間的に『1番』しかいない。つまり第三者からすればゲンガー=1番と言う図式が出来上がっているのだ。

 

 

「大丈夫だよ。華凜ちゃんの口の固さは私が保証するし。それに華凜ちゃんってさ、結構勘が鋭いところがあるんだよね。だからさっさとバラしちゃった方が手っ取り早いと思って」

 

「いや手っ取り早すぎる!このご時世どっからバレるか分からないんだから!やめた方がいいってマジで!」

 

「そんなことないって!華凜ちゃんも可愛いもの好きだから、きっとみんなのこと気にいるよ!」

 

「進化前だったらそうだけど、今じゃ俺のメンバー全員カッコいいの方だから!」

 

 

 大抵のポケモンは初期形態は可愛い。だが進化するにつれて厳つさが増していくのがポケモンでもある。特に御三家なんかがいい例である。

 ポケモンを知らない人間がユキノオーたちを見ても『可愛い』と言う発想が出てくることはまずないと思う。

 

 

「それに、仲間は多い方がいいと思ってね」

 

「――仲間?」

 

「ポケモンのことを良く思ってくれる人。まずは身近な人から誘って行かないと。それに、そのためにはお姉ちゃんの協力も結局は必要不可欠だし」

 

 

 意外だ。雪奈の頭はその一言に尽きた。氷花の本性を知り、氷花が雪奈の正体を知り、何度か揶揄われてきた。ここまでくればまた雪奈を揶揄うための行動かと思いきや、物凄くまともなことを言われて面食らった。

 笑顔でこちらを見つめる氷花は、そのまま手を離した。

 

 

「だからそのためにも、まずは華凜ちゃんに納得してもらわないと」

 

「――納得って?」

 

「やだなぁ。私や華凜ちゃんは初心者だよ?でもお姉ちゃんは結構な熟練者でしょ?だったらお姉ちゃんにやってもらうことはただ一つ――」

 

「あ、そっか…」

 

 

 氷花にここまで言われ、ようやく気付いた。氷花が雪奈を必要としている理由。それは――

 

 

ピンポーン

 

 

 そんなとき、家のチャイムが鳴った。こんなときに家への来訪者。心当たりは、ただ一人のみ。しかし、いくらなんでも早すぎる。

 

 

「あ、来た」

 

「いや、いくらなんでも早すぎないか?」

 

「華凜ちゃん自転車だし。スーパーはここから歩いて15分くらいはかかるけど、自転車なら4,5分で着くからね」

 

「それでも早すぎる気が…。まだそのメールのやり取りから2分くらいしか経ってないと思うんだけど」

 

「多分家の近くにいたんじゃないかな?華凜ちゃん買い物終わってたっぽいし、ちょうどウチの近くにいたのかも」

 

 

 確かにそれなら説明がつく。帰宅の途中に氷花の誘いを受けたのならば、この短時間に来てもおかしくはない。その華凜なる人物は買い物が終わったからと言ってそのスーパーにいるという確証はないのだから。

 

 

「それじゃあちょっと出てくるね――ってあれ、サナちゃんは?」

 

「ん……?あ、サーナイトどこいった?」

 

 

 氷花に言われてサーナイトがいないことに気が付いた。どこへ行ったのだろうか。しかしそんな疑問は玄関先からの「はいぃ!?」と言う女性の甲高い声で理解へと至った。

 雪奈と氷花は玄関に続く扉を開けるとそこには、玄関の扉を開けて立っているサーナイトと、驚きで腰を抜かしている少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 【渋沢(しぶさわ) 華凜(かりん)】。れっきとした日本人であり、生まれは大阪。黒目黒髪の美少女だ。髪は短髪のボブで統一しており、姉御肌を感じさせる。スタイルはそれなりに自身があるが、友達の姉妹に比べれば断然敗ける。胸の大きさだって大きすぎず小さすぎずを維持している。

 そんな彼女はこのポケモンショックの中、自転車を走らせていた。その篭の中にはスーパーで買ったジュースや調味料、食材などが入っており、なんとか篭に収まる程度に収めた。

 中には肉物などの常温保存できないものもあり、早く帰らねばならなかった。しかしあの記者会見をスマホで、スーパーにあるベンチに座って見ていたもので、すっかり忘れてしまっていた。

 

 様々な非常識が華凜を襲った。正直言って話についていけなかった。だから考えるのをやめた華凜は、別のことを考えるために友達に連絡をした。少しでも自身の感情を共有したかった。宛先は【聖 氷花】だ。

 学校で知り合った友達。まず最初に浮かんだのが彼女の顔だった。彼女にメールを送れば、驚くべきことが判明した。なんとすでにポケモンを保有していたのだ。しかも二匹。それにとてもかわいい。

 

 

「本当かいな…」

 

 

 一瞬氷花(とも)の言葉を疑ったが、なにより写真があるため判断材料には十分だ。そのまま会話を続ければ、家に来ないか?と言う提案を受けた。今いる場所はスーパー寄りの場所。ここから少し行けば氷花の家だ。何より今の自分には自転車がある。行ける。

 返信をした後、氷花は自転車を漕いだ。行きも同じだったが道中、世界で話題のポケモンをちょくちょく見かける。皆通り過ぎる華凜のことを眺めるだけで、襲ってくることはなかったが、曲がり角なんかには特に注意して走行していた。もしぶつかりでもして怒らせたら後が怖いからだ。そんな細心の注意を払いながら走行する。

 

 やがて氷花の家に着き、玄関の近くに自転車を止める。この際荷物も持っていくことにする。氷も持ってきたから肉類などもある程度時間をおいても問題ない。

 そのままチャイムを鳴らした。

 

 

ピンポーン

 

 

「――――」

 

 

 10秒ほど経過した。しかしいつまで経っても扉が開くどころか足音が近づくこともない。姉妹ともに二階にいるのだろうか。それならここまで長いのも納得がいく。もう少し待ってみることにした。

 すると、ゆっくりと扉が開けられた。

 

 

「おはようさん!ちゃんと来たで……って、はいぃ!?」

 

 

 驚きのあまり、腰を抜かした。扉が開けられ、向こうに立っていたのは女性的なフォルムをした未確認生物――ポケモンだった。この家に来た時点でポケモンがいることは確定はしていたが、まさか他にもいるなんて思いもしなかった。

 自分の声に反応したのか、リビングから雪奈と氷花が姿を表した。互いが互いを見つめ合い、静寂が辺りを支配していた――。

 

 




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