人生三回目、現代にてポケットモンスター現る。   作:龍狐

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どうもお久しぶりです。この三連休を使って修正を何度も行い完成しました。
基盤自体はチマチマと作ってて、そこから編集と修正を繰り返してやっと今の形に落ち着きました。

と言うわけで、楽しんでください!


5 友達ご招待

 雪奈は頭を悩ませる。目の前にはサーナイトと、氷花の友達であろう華凜という少女が腰を抜かしている。まずサーナイトにはどうしてこの状況でピンポンに出たのかと言いたい。でも先にやるべきことがある。どう収集つければいいんだこれ

 

 

「あっ、華凜ちゃん。どうぞ上がって~」

 

「いや無理やわ!ビックリしすぎて腰抜かしてもうたわ!」

 

 

 腰抜かしてる相手に何普通に対処しているんだこの子は。腰を抜かして動けない華凜に対して、氷花は平然と、さも当然のように家への入場を促す。しかしこの状況は誰が見ても普通に入ることなど無理だ。

 

 

「ポポポポ、ポケモンやろこれ!?あの二匹だけやなかったんかいな!?」

 

「――えっとね…」

 

「……サーナイト、“サイコキネシス”」

 

 

 ここで説明してたら、時間を喰うし、なんなら声がいちいち大きい。近所に気付かれることを懸念してサーナイトに命令をする。サーナイトのサイコキネシスが、華凜の体と荷物を浮かす。動けない相手に無理をさせてはいけない。華凜は突然の出来事に困惑し、喚きだす。

 

 

「えっ、ウチの体浮いとる!?どうなっとんのやこれ!?」

 

「サーナイト。ついでに扉も閉めといて」

 

 

 サーナイトが華凜の体をお姫様抱っこする(なお、負担にならないよう華凜の体は少し浮いている)と、再びサイコキネシスで玄関の扉を閉めた。荷物(スーパーで買ったもの)は冷蔵庫に袋ごと入れた。

 

 

「それじゃ、上がってって」

 

 

 雪奈は口調を変え、違和感のないように華凜をリビングへと連れていく。リビングの扉を開けると、ユキノオーとリザードンはいたが、ゲンガーの姿がなかった。またどこかの影に隠れたのだろうか。ユキノオーとリザードンが華凜の顔を覗く。華凜はもはや涙目だ。まぁ雪男とドラゴンに睨まれたような状態だから致し方ないが。

 

 

「うへぇええ……大丈夫なんか?襲ってきたりしないんか?」

 

「しないしない。大丈夫だって、ほら!」

 

 

 氷花は一度しゃがむとその両腕にピカチュウとイーブイを抱き寄せた。

 

 

「ピカチュ!」

 

「ブイッ!」

 

「こんなに人懐っこいんだよ?この子たちも大丈夫だから安心して!」

 

「そ、そか?まぁ、氷花がそういうんなら信用してみるわ」

 

 

 華凜は折れてくれたようだ。どちらかと言うと、二匹のつぶらな瞳によるものだろうが。華凜はサーナイトにソファーに寝転ばさせられ、一息つく。そしてすぐにピカチュウとイーブイが華凜の体の上に乗ってきた。

 

 

「ごっつ可愛い…。ええ子やん…(でも流石に二匹は重いな…)」

 

 

 両手でピカチュウとイーブイの頭をなでる。特に抵抗はせず、二匹とも気持ちよさそうに鳴いている。しかし流石に二匹一気に体の上に乗ってきたのは重いが、なんとか我慢する。

 すると、台所からルカリオが出てきた。その両手にはお盆を持っており、その上にはグラスに入った氷入りのお茶が人数分乗せられていた。

 

 

「ルオッ」

 

「おっ、飲み物だ。ありがとー」

 

「ありがとね、ルカリオ。そこに置いといて」

 

「―――?……ン」

 

 

 自身のトレーナーの急な口調の変化に一瞬戸惑っていたが、すぐに理由を理解していつもの凛々しい顔に戻る。そのままお盆を机に置いて正座をする。

 

 

「ははっ、ビックリさせちゃってごめんね?」

 

「いやホンマにビックリしたわ…。この二匹だけかと思うたらこんなごっついのおったら誰だってビビるわ」

 

 

 華凜はため息をつくと、ルカリオが置いたお茶を一気飲みした。「プハ~!」と言う掛け声とともに、ゆっくりグラスを机に置く。豪快な飲み方とは裏腹に置き方が穏やかだ。まぁ横になっているし当然とも言える。華凜はゆっくりと起き上がると、背をソファーに預ける。それと同時にピカチュウとイーブイはその場から離れ、ピカチュウは氷花の膝上に座り、イーブイは華凜の膝上に座った。それに華凜は顔を緩めながらイーブイをモフる。

 

 

「いやぁ、最初はビビったけどしっかりしとるやん。ビビッて損したわー」

 

「そっちが勝手にビビったんでしょ…」

 

「確かにそうやけど……お姉さん、いつからそんな饒舌に話せるようになったん?」

 

「え゛っ」

 

「前会ったときには無口で暗くて、喋っても「うん」とか「そっか」くらいしか言わんかったやん。事情が事情やから、しゃあないっちゅうのは分かってはいるんやけど、あまりにも変わりすぎてビックリしたわ」

 

 

 華凜の疑問に、雪奈はなんとも言えない。『雪奈』がこれまでの生活と家族を亡くしたことで暗い性格だというのは分かり切ってはいたことだった。『雪奈』を知る人間からすれば今の雪奈はおかしい。と言うか変わりすぎている。『雪奈』を演じる上で大事な設定(じょうほう)が頭からすっかり抜け落ちていた。

 

 

「え、えっと、その…」

 

「ホンマにどないしたん?キャラ変にもほどがあるで?」

 

「あのね、お姉ちゃんは――」

 

「ちょ、氷花!?」

 

 

 まさか華凜にも転生云々のことを話すつもりなのだろうか。それはまずい。本当に不味い。しかし、時すでに遅し。

 

 

「ほら、世界がおかしくなっちゃったでしょ?」

 

「まぁ、せやな」

 

「だからお姉ちゃんもおかしくなっちゃったんだ」

 

「はい?」

 

「――――」

 

 

 あまりの暴論に、時が止まった。全員が目を点にして氷花を見た。なんだその説明は。不自然すぎるし暴論が過ぎる。そんなの誰も納得するわけがない。

 

 

「いやいやいやいや!なに素直に受け入れてんねん!?お姉さんおかしくなったんやろ!?なんでそこまで冷静でいられるん!?」

 

 

 いや信じたのか。あの説明を信じたのかこの子は。それともただ単に混乱しているだけなのか。全然分からない。だが言っていることはまともだ。家族がおかしくなったなら不安でいっぱいになるはずなのに氷花は冷静と言うか興味なしみたいな感じだ。もう一度言おう。華凜の反応は正しい。

 

 

「まぁ最初は混乱したけど、前より明るくなってくれたからいいかなーって」

 

「それでええんか!?氷花はそれでええんか!?いや、確かに明るくなったのはええことやけど、なんかこう…違う気がすんねん!」

 

 

 華凜が勢いよく立ち上がり、盛大なツッコミをかました。抜かした腰は大丈夫なのだろうか。勢いよく立ち上がったことでイーブイが降りて、氷花の隣まで移動した。そして君の言っていることは正しい。もっと言ってやってくれ。

 

 

「でも明るくなってくれたでしょ?前のお姉ちゃんよりずっといいから、別にいいかなーって」

 

「そ、そんなもんか…?ウチは兄弟とかおらへんから分からんけど、そういうもんなのか?」

 

 

 いや絶対違う。一度目も二度目の人生も一人っ子だったが断言できる。そういうものではない。

 

 

「お姉さんはどうなん?なんでそんな急にキャラ変わっとるん?」

 

「いやー…お、私もよく分からなくて…なんか、ほら、急に?こうなった?みたいな?」

 

「なんやそれ……本人が分からんかったら手詰まりやな…」

 

 

 熱が冷めたように、華凜はソファーに体を委ねると、残りのお茶を全て飲み干した。華凜は目を閉じてため息をつくと、気持ちを切り替えたのかキリッした目に戻る。

 

 

「それで、なんでウチのこと呼んだん?いや、ポケモンのこと見せるためっちゅうのは十分分かってるんやけども、一応な」

 

「もちろん、それが目的だよ?でもね、他にもあるんだ」

 

「えっ?」

 

 

 なんだそれは、聞いていない。華凜をここへ呼んだのはポケモンたちを見せるためだ。その目的は十分に達成できている。だというのに、他に目的が?放心状態の雪奈を放っておいて、氷花は話を進めた。

 

 

「華凜ちゃんも、ポケモントレーナーになってみない?」

 

「えっ」

 

「はい?」

 

 

 ポケモントレーナーになってみないか。つまり、ポケモンを捕まえて見ないか。そんな急な提案に、華凜と雪奈は硬直する。そんな状態異常(こうちょく)を解くように、氷花が穏やかな声で言った。

 

 

「私もお姉ちゃんもポケモン好きだからさ、身近な人にも好きになってもらいたいの。だからそこに、華凜ちゃんに白羽の矢が立ったのでした!」

 

 

 そう笑顔で華凜を指さした。それを真似してかピカチュウとイーブイも前足で華凜を指した。氷花の提案に、華凜はあからさまに悩んだ。無理もない。この大激変からまだ二日しか経っていない。普通の人間に慣れろと言う方が無理がある。

 

 

「そな急に言われてもなぁ…正直言うて怖いし、無理あるわ」

 

「でもでも!世界は今や大海賊時代ならぬポケモン時代!ポケモンを持ってないと自分の身も守れないよ!」

 

「んー、それを言われるとなぁ…」

 

 

 氷花の言うことは正論だ。今街中では普通にポケモンたちが闊歩している。ここに来るまでの間ポケモンに襲われることはなかったが、もし襲われでもしたら大問題だ。そこで自身の身を守る手段が必要になる。そうなるとポケモンしかない。つまり必然的にポケモンを持つ必要がある。

 

 

「ちなみに、二人はどんな感じでポケモンを捕まえたん?」

 

「私は昨日朝早くから駅で!最初にブイちゃんと仲良くなってその後ピカちゃんと仲良くなってそのまま捕まえたッ!」

 

「ブイッ!」

 

「ピカチュ!」

 

 

 キメ顔をするとピカチュウとイーブイも一緒にキメ顔をした。それを見て「仲ええなぁ…早すぎやしないか?」と呟いた。そこには全力で同意する。

 

 

「それでお姉さんは?強そうなやつばっかやけど、どうやって捕まえたんや?」

 

「えっと、それは…」

 

 

 言えない。と言うか言えるはずがない。「宅配で送られてきました」なんて言えるわけがないし、信じてもらえるわけがない。

 今雪奈の隣にいるのはユキノオー、リザードン、ルカリオ、サーナイトの四匹。ゲンガーはどこかの影に隠れているはず。もう一匹は不在。今いるポケモンたちも威圧感が半端ではない。これら全てを16歳の少女が2日で捕まえたと言っても無理がある。

 

 

「あの、その、はは…」

 

「なんか宅配で送られてきたらしいよ」

 

「ちょ、氷花ァ!?」

 

「は?」

 

 

 言い訳を考えてたら、隣で氷花が全てぶちまけてしまった。なにやってるんだこの子は。雪奈の頭の中はフリーズした。確かに変に誤魔化すより真実を伝えたほうが後々大変なことにはならないが、それでもそんなこと信じるはずがない。その証拠に、華凜の顔は怪訝で染まっている。

 

 

「いや何言ってるん?そんなのあり得へんやろ。嘘つくにしてももうちょいマシな嘘を――」

 

 

 華凜のその言葉は、途中で途切れることになった。その理由は単純だ。雪奈のポケモンたちだ。雪奈のポケモンたちは華凜のことをすごい形相で睨みつけている。おかしいな、雪奈のポケモンたちは全員“にらみつける”を覚えていないはずなのだが。

 

 

「あ、すんません。信じるんで、あの、睨みつけるのやめてください」

 

 

 先ほどまでの関西弁はどこへ行ったのやら、敬語で雪奈のポケモンたちに懇願する。縮こまって小動物のように天敵に許しを請いている。

 

 

「ちょ、皆ストップストップ!気にしてないから、全然気にしてないから!むしろ当然の反応だから!」

 

 

 雪奈の言葉で、雪奈のポケモンたちは一斉に華凜を睨みつけるのをやめた。敵意から開放されたことによって、一気に肩の力が抜けたようだ。華凜はソファーの背もたれに身を任せた。

 

 

「ご、ごめんね?私のポケモンたちが…」

 

「え、ええって。ウチも疑って悪かったからな。……ていうか、なんか急に寒くなったんやけど、クーラーとか着いてたりするんか?」

 

「――――」

 

 

 華凜が両腕を組んで肌をこすり合わせる。もしやと思い、華凜の影を見てみると案の定、ゲンガーがいた。ゲンガーは「ニシシ」と笑いながら華凜の影に潜んでいる。ゲンガーが潜んだ人間の体温は5度下がると言われており、そのため華凜は急に寒くなったように感じているのだろう。

 雪奈が華凜の見えないところで手首を動かし「シッシッ」とすると、意外なことに素直にゲンガーは華凜の影から離れた。

 

 

「あれっ、寒気がなくなった…。気のせいやったか?」

 

「そ、そうじゃない?家クーラーついてないし…。きっと、ユキノオーの冷気じゃないかな?ほら、ユキノオー“こおりタイプ”だし…」

 

「オノッ!?」

 

 

 見知らぬ罪を擦り付けられたユキノオーは「何言ってるんだ」と言わんばかりに雪奈を睨みつける。こればかりはユキノオーに罪?をかぶってもらうしかない。ゲンガーの存在を悟られるわけにはいかないためである。

 

 

(すまんユキノオー、今日の晩御飯いつもより多くするから許してくれ…)

 

 

 冷や汗をかきながら心の中でユキノオーに謝罪し、笑顔を張り付ける。華凜は「こおりタイプってなんやねん」と言う疑問が出てきたため、氷花が一から説明した。その説明をしている間、雪奈はゆっくりため息をついた。ほんの少しの休憩タイムを存分に利用した。

 説明を聞かされた華凜は常識外の知識を聞かされ、まだ理解が追い付いていないのか、無理矢理飲み込んだようだ。オーバーヒート寸前の脳の情報処理を強制中断し、話題を変える。

 

 

「宅配で送られてきたっていうのは正直まだ信じられへんけど、こんなに仲良くなれるもんなんか?」

 

「えっとほら、氷花もピカチュウとイーブイと一日目ですっごい仲良くなったから、同じ要領で」

 

「……そういうもんか?」

 

 

 確かに普通に考えれば一日で謎の未確認生物とここまで仲良くなるのは無理がある。ピカチュウやイーブイなどの小さく可愛らしいポケモンとならば短時間で仲良くなれるのはある程度納得できる。だが雪奈のポケモンたちはデカくて強そうだ(実際強い)。そんなポケモンたちと一日で仲良くできるかどうかと言われれば無理がある。

 

 

「ま、まぁなんとか頑張ったって感じ、かな…?」

 

「ん~~?まぁええわ。しっかし、そうなると全然参考に出来へんな…。……それで、ウチもポケモントレーナーになるって話やけど、正直言ってむずいわ…。オトンとオカンがなんて言うか分からへんしな」

 

 

 華凜の顔が難しくなる。雪奈と氷花、華凜の違いは親の有無。姉妹の両親は既にいないため、とやかく言う人物がいないが、華凜の場合は両親が健在で、親の同意がいる。いきなり正体不明の生物と一緒に暮らすといっても、無理がある。

 

 

「そっか…それだと確かに難しいね」

 

「そうなんやよ。正直言って、氷花のこと見てええなーっては思ってはいるんやけど…」

 

「―――だったら話は簡単!」

 

 

 氷花は立ち上がった。

 

 

「華凜ちゃんの両親も納得するような可愛いポケモンを捕まえればいいんだよ!」

 

「いやそれなにも解決しとらん」

 

 

 なんともな暴論である。それではなにも解決していないし一直線すぎる。それで堕とせる両親であることが前提だが、雪奈は華凜の両親について全然知らない。だからこればっかりには口が出せない。

 

 

「大丈夫!モンスターボールだって1個くらいなら私のあげるし、もしなにかあったときはお姉ちゃんが守ってくれるから!」

 

「正確には私のポケモンが、だけどね」

 

「まぁまぁ細かいことは気にしないで!それにね、もう行ってみたい場所も決まってるし!」

 

「早ッ!」

 

 

 やることが早い。氷花の行動が早すぎる。まるで予定していたかのように行く場所を決めていた。いや、むしろ最初から決めていたのだろう。でなければ話が進まないから。

 氷花は準備していたであろう、スクショ済みの地図を二人に見せる。

 

 

「ほらここ、この植物園なんだけどさ、ここにならたくさんポケモンがいると思うんだよね」

 

 

 氷花が見せたのは少し遠くにある植物園だ。とても広く、有名な場所のようだ。植物園の名の通り、たくさんの植物があり木々が生い茂っているだろう。それなりの大きさの池もあり、ここならポケモンがたくさんいてもおかしくない。それに、ここ札幌市は県庁所在地であるため、都市部が多い。必然的に野生のポケモンたちはこういった場所に集まる。

 

 

「なるほどなぁ。広いから野生のポケモンもたくさんいるだろうし、ポケモンを見るのが目的だから現実的ではある」

 

「せやけど、こっから自転車で行っても30分はかかるで?どっちかって言うと近くの公園の方がええんとちゃうか?あそこの公園だったら歩いても行ける距離やで?」

 

「あそこの公園は小さいから、ポケモンも少ないと思う。やっぱり広いところに行かなきゃ」

 

 

 わざわざ植物園に行かなくとも、近くに記念公園があるのだがそこは植物園と比べると敷地が小さい。圧倒的に植物園の方が広い。多種多様なポケモンを探すなら確実に植物園の方が都合がいい。

 

 

「つってもなぁ、今から移動は時間かかるで。こういうのはまた時間ある時にでも――」

 

「大丈夫!私たちには秘策があるから!だよねお姉ちゃん!サナちゃん!」

 

「えっ」

 

「サナッ…」

 

 

 急に話を振られた二人は困惑する。同時にその秘策とはなんなのかをすぐに理解した。

 

 

「サナちゃんの“テレポート”なら一瞬でここにいけるよね?場所さえ分かってれば」

 

「まぁ…行けなくは、ないけど…」

 

 

 氷花の言う秘策とはサーナイトのテレポートのことだ。確かにソレを使えば時間なんてかけず一瞬で目的地に着くことが出来る。しかしこのまま氷花の言いなりでいいのだろうか。なんか誘導されている気がしてならない。言い淀んでいると、氷花の両手が雪奈の両肩に優しく乗った。

 

 

「お姉ちゃん。お願い」

 

 

 可愛い声で懇願されるが、その顔と声は真逆だ。真顔である。THE真顔。華凜が自分の顔を見れない立ち位置にいることをいいことに真顔で見てくる。元々の顔がかなりいいため真顔になると猛烈に恐怖を感じる。どう見ても副音声で「さっさと連れてけ」と言っているようにしか聞こえない。

 ここで断ったらあとでなにされるか分からないため、従うことにした。

 

 

「て、テレポート…。さっきのマジックと言いなんでもありやな…」

 

 

 華凜がサーナイトをチラリと見ると、サーナイトはニコリと微笑む。実際はマジックではなくサイコキネシスなのだが。そこらへんの違いの認識の改定はまた今度でいいだろう。

 

 

「分かった。分かったから…」

 

「へへっ、ありがと、お姉ちゃん!」

 

「いやいや、まだウチ行くって言ってへんで。何度も()うてるけど、オトンとオカンがなんていうか分からへんねん」

 

 

 問題があるとすれば、肝心の主役とも言える華凜が行く気になっていない。その理由として両親を上げている以上、強く言うことはできない。捕まえてきて押し切るというパターンも行けるとは思うが、いささか時期早々過ぎる。

 

 

「ん~……。じゃあ、今回は下見ってことでどう?それでもし気に入った子がいれば捕まえるとか!」

 

「まぁ…それだったら構わへんで」

 

 

 氷花の提案に華凜は了承――と言うか折れた。元々押しの強い子なのだろう。華凜の顔には呆れが浮かんでいた。それに華凜も先ほど言っていたようにピカチュウとイーブイを見て自分も可愛いポケモンを捕まえたいという気持ちが芽生えているはずだ。この了承には華凜の欲望も含まれているだろう。

 

 

「それに正直、テレポートって聞いて興味湧いたわ。どうなるか試したいねん」

 

「あ、やっぱり?私もやったけどすごく新鮮っていうか楽しかった!」

 

「やったことあるんかい。まぁでも、それは確かに楽しみやな」

 

「そっか。じゃあ決まったことだし頼んだよ、サーナイト」

 

「サナッ!」

 

「じゃあ行く場所なんだけど、とりあえずここに跳んでから――」

 

 

 氷花がサーナイトの隣に近づいてスマホを見せながら目的地を知らせる。その時のサーナイトの顔が物凄いことになっていたが見なかったことにした。サーナイト以外のポケモンをモンスターボールに仕舞う。

 

 

「うわっ!い、一瞬で消えた!?いや、中に入ったんかこれ!?どうなってんねん!?」

 

「あっ…」

 

 

 そういえばだが、まだ大半の人間はモンスターボールがポケモンを捕まえる道具であるという認知は広まっているが、この小さなボールにどう入るのかを知る人間はまだ圧倒的に少ない。華凜もその一人だ。ポケモンの収納を始めて見た彼女は予想通りと言うべきなのかリアクションが大きい。

 正直言ってさっきの記者会見でやってくれれば良かったのに。

 

 

「そういえばモンスターボール使うところ見るの初めてだっけ。これでポケモンを捕まえたり仕舞うことができるの」

 

「はぁ~。不思議やな~…。ホンマ驚かされてばっかやわ…」

 

 

 疲れたのか驚き慣れたのか、次第にリアクションが小さくなっていく。

 

 

(さて、と。いくら俺がいるからって野生のポケモンが大量にいるから準備するに越したことはない。きずくすりとか全部持っていくか)

 

 

 きずくすりは全て自分の部屋にある。そのため荷物を準備するために声をかけてからリビングを出る。

 

 

「はぁ…つっかれたぁ…」

 

 

 リビングを出たと同時に、一気に腰を落とした。今日の疲れが一気にどっと来たのだ。ただでさえニバンの登場でお腹いっぱいだというのに、今回のフィールドワークときた。気分は引率の先生。もう何から対処すればいいのか分からなかった。

 

 

「でも、考えてても仕方ないか…。さっさと取って戻ろ――」

 

「ゲンガッ」

 

「ん?」

 

 

 ふと、自分の足元から聞きなれた声が聞こえ、下を向くとそこにはゲンガーの上半身があった。ゲンガーは雪奈の影に潜んでおり、トレーナーが自分の存在を認知したことを確認し、再び影に潜ると、今度はリュックを持って再び顔を出してきた。

 

 

「これは…」

 

 

 雪奈はリュックを受け取る。持った瞬間、それなりの重さがあって踏ん張った。前世(おとこ)の体であったらこの程度難なく持てたであろうが今世(おんな)の体ではそうもいかなかった。

 リュックを一回地面に置いて、中身を確認する。そこには、きずぐすりときのみ、そして――

 

 

『ヤッホーロト。スマホロトム、復活ロt――』

 

「―――――」

 

 

 スマホロトムが入っていた。いつの間にリビングから抜け出していたのか。まぁゲンガーなら難なくやってのけるからあまり考えないようにする。とりあえずリュックのファスナーを閉めた。中でスマホロトムがなにか言ってるが気にしない。

 リュックを背中に背負って、自身の影に潜むゲンガーをチラリと見て、

 

 

「お前、ほんと憎めないわ」

 

「ゲゲゲッ」

 

 

 そんな笑い声が聞こえた。

 そのままリビングの扉を開けると、全員準備満タンのようだ。

 

 

「あ、お姉ちゃん遅い!」「ピカチュッ!」「ブイッ!」

 

「いやいや…準備しないといけないから。それに急ごしらえだから…」

 

「それじゃあ、少し頼りにさせてもらいますわ。よろしくお願いするわ」

 

「うん、よろしくね。それじゃあサーナイト。お願い」

 

「サナッ!」

 

 

 サーナイトに全員が触れると同時に、「テレポート」と指示を出す。その瞬間、全員がリビングから姿を消した。

 

 




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