人生三回目、現代にてポケットモンスター現る。   作:龍狐

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3 世界騒然ロト!

「う、ううん…」

 

 

 ゆっくりと、雪奈は目を覚ます。最初に視界に入ったのはリビングの天井だ。次第に目も冷めてきて、意識もはっきりとしてきた。ゆっくり起き上がると、隣から声がかけられる。

 

 

「お姉ちゃんッ!」

 

 

 その声の主は氷花だ。氷花はとても心配そうに雪奈を見ている。その後ろにはユキノオーやピカチュウたちもとても心配そうに見ていた。どうやらリビングのソファーで寝かされていたようだ。

 

 

「大丈夫?」

 

「うん……なんとか。あ、でも起き上がるの辛い」

 

「ゆっくりしてて。解熱剤あるから、飲める?」

 

 

 氷花に解熱剤とコップに入った飲み物を渡され、それを口に入れ、飲み干す。飲んですぐに効果は出ないが、のちに出るだろう。そう思えば気分がいくらか和らいだ。

 

 

「……俺、どれくらい寝てた?」

 

「…?……もうお昼。お姉ちゃんすっごい熱だったんだよ?この子が冷やしてくれてたから良かったけど」

 

「オッノ」

 

 

 ユキノオーがこちらの顔を除いてくる。どうやら彼がずっと雪奈の看病をしてくれていたらしい。現状こおりタイプは彼一人。それに巨体ゆえに力のコントロールだって長時間は難しいはずだ。だというのにやってくれたユキノオーには感謝しかない。

 

 

「ありがとな…ユキノオー」

 

「ノオッ」

 

「へぇ、この子【ユキノオー】って言うんだ。いやぁビックリしたよ。帰ったらいきなりこんなデカいのがいたんだからさ」

 

「ははッ…」

 

 

 雪奈は笑って誤魔化すしかなかった。

 

 

「俺も…ビックリ、した。まさか、【ピカチュウ】と、【イーブイ】、連れて帰って、くるなんて」

 

「ピカチュウ?イーブイ?……それもあの子たちの名前?ピカピカブイブイ鳴いてるし」

 

 

 二人でルカリオとともに遊んでいるピカチュウとイーブイを見やる。まさかポケモン界でも屈指の人気を誇るあの二匹に懐かれたうえに連れて帰ってくるなんて、流石のトレーナー歴10年の雪奈でも予想できなかった。

 

 

(でもここら辺にピカチュウとイーブイは生息していなかったような…。まぁ世界も違えば生息地も違うか?だけど――、)

 

「あの二匹…結構人気、だぞ?可愛いし。知名度も高いし…」

 

「え、何言ってるの?あの子たち、始めて見る生き物だったし…。なんなら、ピカチュウだっけ?なんかバリバリ~って、電気放ってたし」

 

「えッ?……ポケモン、知らない、のか?」

 

「ポケモン?なにそれ?」

 

「…嘘だろ、おい…」

 

 

 氷花は「何を言っているのだろう?」と言う顔だ。とても冗談を言っているようには見えない。

 ここで雪奈はある一つの勘違いに気付く。雪奈は今までこの世界が“ポケモンが実在している現代世界”だと思っていた。自分の手持ちが配送で送られてきた意味は未だに分からないが、それでもこうしてポケモンがいるのだから、きっとそうなのだと、勘違いしていたのだ。

 ポケモンが実在している世界なら、氷花がポケモンを知らないはずがない。と言うことは――

 

 

(現実の世界に、ポケモンが現れましたってか…。どこの異世界自衛隊物語だ…)

 

 

 自身の大きな勘違いに、雪奈は頭を抱える。これが現実だとしたら今世界は――、

 

 

「ちょっと、テレビの電源つけて」

 

「分かった。えっとリモコンリモコン…あった」

 

 

 氷花がリビングの電源をつけると、そこには大きな文字で『未確認生物出現!?』と言う大きな文字が出ていた。公共放送のニュースのようで、場所は東京近辺だと伺える。

 

 

『本日未明、世界中に置いて謎の生物が現れるという現象が起きました。このことを受け日本政府は、外出自粛の呼びかけと、事態の収束に向けて動いております。それと同時に、謎の木の実も世界中で発見されており、これに関しても専門家たちが調査を進めています。』

 

 

「マジか…」

 

 

 今世界ではゾンビパニックならぬポケモンパニックが起こっていた。ポケモンが存在していない世界に、突如としてポケモンが出現した。リアルな大パニック状態だ。カメラがコロコロと切り替わる。

 

 空を映せばポッポやオニスズメ、ムックル、スバメ、マメパトなどが。

 森を映せばキャタピーやパラス、ハネッコ、テッカニンなどが。

 草原を映せばウール―やミルタンク、ヨーテリーにケンタロスなどが。

 川を映せばコダックやヤドン、コイキング、ウパーなどが。

 海を映せばヒトデマンやオムナイト、クラブ、シザリガーなどが。

 

 中でも以外にも街中に一番ポケモンが多い印象だった。ロコン、ガーディー、ポニータなどの炎ポケモンに、日光浴をしているフシギダネや眠っているナゾノクサとナッシー、騒いでいるペラップやエレキッド、ゴミ捨て場にはベトベトンが、逆に掃除をしているチラーミィやそれを指揮しているであろうチラチーノがいた。

 見事に地方や生息地など関係なしにバラバラに存在していた。

 

 

『明らかに既存の動物たちとは違う生物です!危険ですので、絶対に不用意に近づかないようにしてください!視聴者様方からの情報提供によると、この生物たちは炎を吐いたり、高圧洗浄機並みの水を発射したり、電気を放ったり毒を持っていたりなどの情報が入っております。実際に近づいて怪我をしたという事件も起きています!』

 

 

 そう、実際に街中を映しているレポーターが言う。レポーターは頭にヘルメットを被り、野球のキャッチャーが使う胸や腕、脚を覆う防護具をつけている。危険防止のための措置だろう。まぁその程度の防備でポケモンの技を防げるわけがないが、気晴らしになるだろう。

 画面が移り変わって、通常の画面に戻る。

 

 

『他にも道路や線路上にも未確認生物が出現しており、高速道路や鉄道にも影響が出ており、一時停止状態。さらに、海や空にも未確認生物が出現しており、船便や空の便は今のところ全便欠航となっております。』

 

 

 交通系にも影響が出ており、早急な解決が求められます――。ここで一度ナレーターの言葉が途切れた。スタッフの手だろうか、一枚の紙がナレーターに渡され、それを読んだナレーターが信じられないといった顔で見ていた。しかし流石プロ。その紙の内容を語り始めた。

 

 

『さらに、こちらをご覧ください』

 

 

 ナレーターの言葉で画面が変わる。画面には左右とは違う写真が流れており、左側には雪があらゆるところに積もっている街中の写真。右側は一切雪が積もっていない。冬と夏の写真だろうか?

 

 

『実はこの写真の違い、たった1日なのです!』

 

 

 ナレーターの言葉とともに、テロップが出てくる。左側の写真が2026年2月26日の写真であり、右側の写真が一日経った後の2026年2月27日の写真だ。この写真は北海道札幌市と書かれており、雪奈たちが住んでいる場所だ。

 

 

『そしてそれとは逆に日高山脈などの山岳地帯では吹雪がさらに酷くなっており、急激な環境の変化がみられています。』

 

『ここまで環境が変化することなどあり得るのでしょうか?専門家は――』

 

『常識的に言って、あり得ないですね。人為的にしてもここまで広範囲まで行うのは不可能です。確実に、今日この日に現れた謎の未確認生物たちによる影響だと思って間違いないかと思います』

 

 

 状況から察するにほのおタイプのポケモンの仕業か、天気を晴れにする“にほんばれ”を使ったか、もしくはその両方か。

 どちらにしても普通に考えれば“あり得ないこと”であることは間違いないだろう。しかしどちらかと言うと、現実の世界がポケモンの世界に寄せられているように感じる。

 

 

『ありがとうございました。えー、次のニュースです。どうやら、街中では未確認生物以外の不思議なものが出現しているようです。現場の○○さーん』

 

 

『はい。現場の○○です。こちらをご覧くださいッ!なんと、この未確認生物出現現象と同時に現れた謎のお店ですッ!』

 

 

 そういい、カメラに映し出されたのは赤色と白色で統一された建物。看板には【Pokemon(ポケモン) Shop(ショップ)】と書かれている。

 

 

「ポケモンショップ…?ポケモンってこの子たちのことだよね?」

 

 

 いつの間にか氷花の膝に座ってテレビを見ているピカチュウとイーブイ。そしてユキノオーやルカリオ。彼らを見る。逆に彼らがポケモンでなければなんだという話だ。

 

 

「逆にそうじゃなかったらなんだっていう話だよ…。ていうか何あの店?あんなの知らない…。ポケモンセンターなら知ってるけど…」

 

「ポケモンセンターってなに?」

 

 

 氷花の疑問を聞き流し、テレビに集中する。

 

 

『この店はこの現象と同時に世界中に現れ、現れた場所は現在は廃屋になっている場所や、テナントを募集していた場所など、様々な場所にこの日、同時に現れたらしいですッ!』

 

 

 さらに情報が続き、一つの市や町や区や村などに必ず一軒建っているらしいと言う情報が明かされた。

 

 

『この現象と同時に…?しかも世界中に。そんなことが可能なのでしょうか?』

 

『いやぁ、確実に無理だと思いますね。誰にも気づかれずに一日でこんなことをするなんて、不可能ですよ』

 

『その建物はどんな目的で作られたのでしょうか?』

 

『はい。この建物の看板があり、どんなことが出来るのかと言う項目が書かれていました。その項目の中には、“ポケモンの回復”“ポケモンの交換”“モンスターボール きずぐすり きのみ、フーズの販売”と書かれていました』

 

 

『ありがとうございます。項目を見て、きずぐすりときのみ、フーズと言うのはなんとなくわかりますが、【ポケモン】や【モンスターボール】とは一体なんなのでしょうか?』

 

『詳しくは分かりませんが、この事態に深く関わっていることは確かでしょう。』

 

『これからも詳しいことが分かり次第、お伝えしていきます』

 

 

 ここでこのニュースは終わるらしい。他のチャンネルを回してみるが、どこも大抵同じような内容ばかりだ。観ていても飽きるのでテレビのリモコンの電源ボタンを押してテレビを消す。それと同時に突如後ろから声を掛けられる。

 

 

「サーナイ」

 

 

 そこにいたのは一匹のポケモンだ。頭部は緑色の髪の様なものがあり、胸元からは白いロングドレスの様なもので覆われている。その中から少しだけだが細く白い脚見える。

 このポケモンは、雪奈の手持ちの一体、【サーナイト】だ。

 

 

「サーナイト…」

 

「サナッ」

 

 

 サーナイトの両手にはおかゆの入った器があった。サーナイトは雪奈の口に届く位置かつ、テレビがしっかり見える位置に座り、おかゆをスプーンですくった。

 

 

「……あ~~ん…」

 

「サナッ」

 

 

 口を開け、おかゆを受け入れる。薄くも、優しい味が口の中に広がった。流石病院食の王様と言っても過言ではないだろう。

 

 

「ありがとう、サーナイト」

 

「サナサナッ」

 

「その子ね、お姉ちゃんが倒れて、すぐに出てきたんだよ?あのボールの中から。いやぁあれは本当にビックリした」

 

 

 どうやらサーナイトも本気で雪奈のことを心配してくれていたようだ。優しさが心に染みる。それにしても、今日一日で謎現象が多発しているというのにこの落ち着き様、「この子頭のネジ一本外れてるんじゃないのかな?」と心配になる雪奈だった。

 

 

「それにこの子だけじゃないよ。お姉ちゃんが倒れて、他の子も出てきたんだからね」

 

「ほかの子…。……出てきたってことは、今どこに…」

 

「あぁそれはね――」

 

 

 氷花がそのことを言おうとした瞬間、突如雪奈の影が揺らめき――、

 

 

「ゲゲゲゲゲッ!!」

 

「うわぁッ!」

 

 

 その影から、紫色のポケモンが現れた。手足のあるずんぐりとした可愛らしい体型に、大きな舌を出して笑っている。フヨフヨと宙に浮きながら、まるでいたずらが成功した子供のような印象を受けるポケモンだ。

 

 

「ゲゲゲッ!!」

 

「ビックリした…。【ゲンガー】か…」

 

 

 目の前で浮いているポケモンはゲンガー。雪奈の手持ちの一匹である。ゲンガーはいたずらが成功したため未だに笑っている。すると、隣のルカリオから【サイコキネシス】が放たれ、ゲンガーを拘束して地面に叩きつける。ちなみにルカリオはわざマシンで【サイコキネシス】を覚えた。

 

 

「グルッ!」

 

「グゲッ!?」

 

「オノッ…」

 

「サナッ…」

 

 

 地面に拘束されたゲンガーを、ユキノオー、サーナイトとルカリオが睨みつける。病人に対してドッキリを仕掛けたゲンガー許すまじといった感じだ。これにはゲンガーも苦笑い。

 

 

「ゲン…」

 

 

 ゲンガーがこちらに助けを求めるように見てくる。あのイタズラ好きにも困ったものだ。

 このゲンガーはゴースだった頃から一緒にいる、付き合いの長いポケモン、ユキカブリの二番目に入手したポケモンでもある。

 

 

「はぁ…お前ら、許してやってくれ。ソイツのいたずら好きは筋金入りだからな」

 

「ノオッ…」

 

「ヴァウ…」

 

「サナイッ…」

 

 

 三匹は仕方がないといったようにゲンガーを睨むことをやめる。あのゲンガーはいたずら好きだが、いざと言うときは言うことをちゃんと聞いてくれる。扱いずらいポケモンだ。

 そして、しばらく時間が経ったためか、解熱剤の効果が出てきたのか、ある程度マシになってきた。

 

 

「少しはマシになった…。……ところで、あと二匹はどうした?」

 

 

 そう、今ここにいるのはユキノオー、ルカリオ、ゲンガー、サーナイトの四匹と氷花のピカチュウとイーブイのみ。雪奈の手持ちは六体だ。計算上あと二体足りない。

 

 

「なぁ氷花?俺が倒れてから全員が出てきたって言ってたよな?そしたらアイツらはどこ行ったんだ?」

 

「ドラゴンちゃんと忍者ちゃんのこと?」

 

「ドラゴンちゃん、忍者ちゃん…。まぁ間違ってないけどさ」

 

 

 確かに何も知らない人物があの二匹を見ればそんなあだ名をつけていてもおかしくはない。だとしてもザックリしすぎている。

 

 

「ドラゴンちゃんはね、あのボールに戻ってるよ。しっぽが燃えてるし、家具に燃え移ったりしたら大変だから」

 

 

 氷花は一つのモンスターボールを取り出し、それを雪奈に渡す。そのモンスターボールにはしっかりと重みがあり、その中にちゃんといることが確認できた。

 

 

「お前も俺のこと心配してくれたんだな。ありがとう」

 

「――(ユラユラ)」

 

 

 雪奈の感謝に呼応するかのように、モンスターボールが揺れる。喜んでいるのかもしれない。ゆっくり微笑むと、顔を直す。

 

 

「じゃあ、アイツは?」

 

「忍者ちゃんのこと?ごめん、私も分からないの。お姉ちゃんの容態が良くなったら、急にどこかに行っちゃってさ」

 

「アイツ…主人ほっぽって何してんだ…」

 

 

 しかし雪奈は彼の性格上、トレーナーの無事が分かればすぐにでも飛び出していきそうだということを理解していた。なんなら彼の性格は“せっかち”だから。おそらく今もどこかでバトっていてもおかしくない。不用意な争いの種を生んでほしくはないのだが…。

 

 

(まぁそこらへんの分別は一応わきまえてるやつだからあんまり気にしなくていいか…)

 

 

 雪奈は、考えないことにした。

 あれから時間も経って、立ち上がって動けるくらいには回復した。雪奈は大きく背伸びをする。解熱剤が効いたのだろうか。非常に心地いい。

 

 

「ん~~。あんなことがあったのに、なんか妙にすっきりしてるな。解熱剤すごくね?」

 

「違うよ?この子が持ってきた木の実を絞って、お姉ちゃんに飲ませたの。もしかしたらと思ってね」

 

 

 氷花が台所まで移動して、雪奈に見せたのは【オレンのみ】と【オボンのみ】だ。

 オレンのみは固いが不思議なおいしさがあるきのみ。

 オボンのみも固いが辛味はなくまろやかで整った味わいが特徴的なきのみだ。

 ちなみにこの二つの実は親戚のようなもので、もとは同じ種類のきのみだったが、環境の変化で別種に分かれている。

 

 そして氷花の指している「この子」とはゲンガーのことだ。ゲンガーは大きく胸を張っている。確かにゲンガーなら影を移動できるためあまり目立つことなくきのみを取りに行けるだろう。あのドッキリがなければ普通に褒めていたのだが。

 

 

「この木の実をミキサーで潰して砂糖を混ぜてジュースにしたの。おいしかったでしょ?とても美味しかったからね!」

 

「ちゃっかり自分も飲んでたのか…。ていうかよく今日出現したばかりのきのみを食べようと、しかも人に飲まそうと思ったな」

 

「だって今日の朝この子たちとこっちの方食べたしッ!固かったけど、不思議と美味しかったよ?」

 

「食べたのか…。で、そっちのオボンのみは?」

 

「これ?この子が一緒に持ってきて、食べてみたらとっても美味しかったから混ぜてみたの。で、どうだった?おいしかったでしょ?おいしかったもん!」

 

「とりあえず二度聞くくらい美味しかったことは分かった。……」

 

 

 チラリと先ほど飲み干した飲み物が入っていたジュースを見る。そこには数滴ほどの緑色の汁が残っていた。青色のオレンのみと黄色のオボンのみを混ぜたことによる結果だろう。意識が朦朧としてたから、特になにも考えずに飲んだが、あれが原因か。

 オレンのみとオボンのみには両方とも体力を回復する力がある。それを飲んだことで睡眠で失われた体力を一気に回復することができたから、これほどまでに気分が良いのだろう。

 

 

「まぁ結果的に元気いっぱいになったし、ありがとうな」

 

「いいのいいの。それより、これからどうする?」

 

「うーん…とりあえず――ポケモンショップに行ってみるか」

 

「あぁ、さっきテレビでやってたところ?全世界にあるって言ってたね、確か」

 

 

 そう、世界中に突如現れた謎の建物【ポケモンショップ】。そこではポケモンの回復に交換、きずぐすりやきのみ、ポケモンフーズなどの様々なポケモンに関するアイテムを売っている謎の場所。わざマシンなんかも売っててくれればうれしいのだが。

 

 

「あそこで買っておきたいものとかいろいろあるし」

 

「…でも、そこってどこにあるの?」

 

「一つの市や町には必ず一軒あるんだろ?だったら簡単――スマホで調べればいい」

 

 

 ズコッっと、氷花の体幹が崩れる。よく見れば隣のピカチュウとイーブイも氷花に合わせてズッコけていた。仲いいね君たち?

 

 

「そこまで言ったら虱潰(しらみつぶ)しに探すとかじゃないの…?」

 

「いや無駄に歩くより最初から場所分かってた方がいいだろ。と言うわけでスマホスマホ…どこ行った?」

 

 

 周りを探すが、自身のスマホは一向に見当たらたない。倒れる前までは確かにテーブルの上にあったというのに。

 

 

「氷花。俺のスマホ知らないか?」

 

「お姉ちゃんのスマホ?それならね――」

 

 

『ようやくボクを紹介できるロト!』

 

 

 突如として聞こえた浪○ボイスに、雪奈は目を丸くする。声が聞こえた方向を向けば、そこには触覚のようなものが生え、背面に顔がついたオレンジ色のスマホが浮遊していた。

 

 

「――――」

 

『おっと、驚きすぎて声も出ないロトか?仕方がないロト!自己紹介するロト!ボクの名前は――』

 

「【スマホロトム】だろ」

 

『ガビーン!!既に知っていたロト~~!?』

 

 

 フラフラと揺れながら地面に落下するスマホロトム。スマホの背面から見える顔はとても渋い顔をしていた。

 

 

『おかしいロト。この姉妹おかしいロト。ヒョウカは反応薄いし、ユキナは何故かボクのこと知ってるしで、いろいろとおかしいロト…』

 

 

 どうなら大きなリアクションを期待していたようだが、残念ながら雪奈は二度目の人生でスマホロトムなど何度も見ている。なんなら持ってた。もう驚いたりもしない。

 しかし、氷花の反応が薄かったというのは驚きだ。

 

 

「いや、なんかもういろいろ慣れちゃって…」

 

「適応能力すげぇな」

 

 

 まぁ一日でこんなことが連続で起これば、もうこの程度?で驚くようなことはないだろう。

 

 

「で、この流れから察するに今ロトムが入っているスマホが俺のスマホってことだよな?説明プリーズ簡潔に」

 

「お姉ちゃんが倒れて少し経った後に急にコンセントから出てきて、お姉ちゃんのスマホに入ってこうなった」

 

「うんとても分かりやすい説明をありがとう。だけど…なんで急にお前俺の家に来たんだ?」

 

 

 氷花のとても分かりやすい説明で状況は大体把握できた。しかし次に何故急にロトムが都合よくこの家に現れたのだろうか。

 “プラズマポケモン”ロトム。小さな丸い身体にとんがった頭頂部を持ち、エクトプラズムを思わせる薄緑と白のオーラ状のもので体中が覆われ、両側からは手の様な形で雷マークが飛び出している青い目にオレンジの体をしているポケモンだ。

 ロトム最大の特徴は、その体。“プラズマポケモン”の名の通り、体は100%プラズマで出来ており、そのため電線の中を移動したり、あらゆる電子機器の中に潜り込んで操作する事が出来る能力を持ったポケモンである。頭の軽いイタズラ者が多い種族であるため、偶然ココにきたという理由もなくはないが――。

 

 

『あぁ、それはロトね。ボクはあの機械に呼び出されて来たんだロト!』

 

 

 ロトムが雷マークで指さしたところには、謎の形状をした機械が台所の机に置かれていた。

 そして、その形状は雪奈にはとても見覚えのあるものだった。

 

 

「…ロトム図鑑?」

 

『おぉ、流石ロト!ボクのことを知っているならこれも知っていると思ったロト!だけど違うロト!これは見た目はロトム図鑑だけど、これに図鑑の機能は搭載されていないロト!これは僕たちロトムを呼び寄せる特別な電波を放つ機械ロト!』

 

「なるほどな…。で、なんでこんなもんが家にあるんだ?」

 

『あの段ボールの一番下の下敷きになっていたらしいロト!紙とかで梱包されていたから気付かなかったんだロト!』

 

「(そういえば隙間埋めの紙があったような…)…待てよ?じゃあなんでこの機械が作動しているんだ?」

 

 

 ここで当然の疑問に帰結する。ロトムが都合よくこの家に来たのはこの機械の仕業であったことは判明した。しかし機械と言うのは動かさなければただの鉄の塊だ。誰かがこれを動かす必要がある。

 

 

「氷花が動かしたのか?」

 

「違うよッ!お姉ちゃんが起きるまで私付きっ切りだったんだからね!?」

 

「ご、ごめん…。じゃあ一体誰が?」

 

 

 一同が「う~~ん…」と唸っていると、

 

 

「ピカチュ!!」

 

 

 ピカチュウが突然鳴いた。全員がピカチュウに視線を向けると、ピカチュウは顔を弄り――、

 

 

「ビカピカ!」

 

 

 顔芸を披露した。その顔芸はとてもよく似ており、骨格まで変わっているんじゃないかと疑うほどだ。だがそのおかげでこの機械を動かしたのか誰なのかすぐにわかった。ピカチュウは雪奈が見慣れているカエルの顔を真似ていたのだ。

 

 

「あっ、忍者ちゃんだ!」

 

「あの野郎…よく分からん機械作動させたうえでどっか行きやがったのか…?」

 

 

 アレの突発的な行動には困ったものだ。まぁそれがなにかといい方向に繋がるときはあるのだが。今回みたいな事例がそうだ。

 

 

『でもそのおかげで時間短縮にはなったロトよ。』 

 

「どういうこと?」

 

『この先はボクにお任せってことロト!さっきの会話の時にポケモンショップの場所を検索しておいたロトッ!ここから一番近いのは徒歩10分のところにあるロト!』

 

「仕事はやッ!」

 

 

 あの会話の最中にそんなことをしていたのかと感心する。実際二度目の人生の際にもスマホロトムはよく使っていた。その恩恵ははかり知りれない。

 

 

『そ~れ~に~。ポケモンショップの利用にはボクが必要不可欠ロトッ!』

 

「えっ、それってどういう――」

 

『まぁボクが必要不可欠なのは最初の一回だけロト。そのあとはボクがいなくても使用できるロト。まぁ買い物を楽に終えたいっていうのならやっぱりボクが必要ロト~』

 

 

 楽しそうに縦横無尽にリビングの中を飛び回るスマホロトム。その重要な部分を聞きたいのだが、聞くタイミングを逃した。

 

 

『さぁさぁ善は急げロト!早速出発するロト!』

 

「ちょ、まだ準備が―――」

 

『リュックはちゃんと持ったロト?お財布の中身は十分ロト?それが出来たらもう安心ロト!出発進行ロト!』

 

「話を聞けぇえええええええ!!」

 

 

 スマホロトムのはしゃぐ声と、雪奈の叫びが木霊した―――。

 

 

 




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