人生三回目、現代にてポケットモンスター現る。   作:龍狐

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4 ポケモンショップ

 あれから、雪奈と氷花はリュックと金銭を持って家を出発していた。お供はスマホロトム、ゲンガー、ピカチュウ、イーブイである。ユキノオーたちはモンスターボールに戻ってもらった。

 ゲンガーは雪奈の影に潜んでおり、ピカチュウとイーブイは氷花の両肩に乗っている。先方はスマホロトムだ。ピカチュウとイーブイ、スマホロトムがとても目立つが、外出自粛のせいか人通りが全くない。代わりにポケモンが闊歩しているのがチラホラ見受けられる。雪奈からすればシンオウ地方にいないポケモンがちらほら見受けられて違和感しか感じられなかった。

 

 

「ところでさ、さっさとさっきのこと詳しく説明してほしいんだけど」

 

『さっきこのこと、ロト?』

 

「ポケモンショップでお前が必要不可欠な理由。あの後結局聞けず仕舞いだったじゃねぇか」

 

 

 急いでポケモンショップへと行こうとしているスマホロトムをルカリオに抑えてもらって、その隙に準備を整えた二人。ルカリオが「早くしてくれ」と言いたそうな顔で訴えていたので、余計に焦った。

 

 

『そうロトね。なら歩きながら話すロト!』

 

「だったら今話せや」

 

『せっかちロトね~。まず順番に話すロト!ユキナは“トレーナーID”のことは知ってるロト?』

 

「あぁ、ポケモントレーナーのことを識別するための番号(ナンバー)だろ?」

 

 

 トレーナーIDはトレーナーを識別するための番号のことであり、ポケモンの世界ではポケモントレーナーは必ず持っているものだ。基本的にカードで発行され、身分証明書にもなる便利なカード。前世でもしっかり持っていた。

 

 

『トレーナーIDはトレーナーの身分を証明する重要な個人情報の塊ロト!そしてそのトレーナーIDの番号が発行される“条件”があるロト!』

 

「“条件”?」

 

『“方法”と言い換えてもいいロト。一つ目の方法はロトム(ボク)がスマホに憑依することロトッ!つまり雪奈はトレーナーIDが発行される条件を既に満たしているロトッ!』

 

 

 『えっへんロト!』と胸を張るスマホロトム。どういう理屈かは知らないが、既に雪奈はトレーナーIDを持っていることになる。勝手に作られても困るのだが。心情は勝手に自分名義のクレジットカードを作られたようなものだ。

 

 

「え~じゃあ私のスマホにも憑依してよ~。私もそのトレーナーIDっての欲しい。よく分からないけど!(ドヤッ)」

 

 

 分からないのにドヤ顔するのは何故だろう。ついでにピカチュウとイーブイもドヤ顔を披露していた。まぁ三人(一人と二匹)とも可愛いのでよしとする。

 

 

『ヒョウカ落ち着くロト!今ボクが言ったのは“条件”であり“方法”なんだロト!』

 

「それってどういうこと?」

 

『ユキナは既に“条件”の方を達成していたからこの“方法”でトレーナーIDを取得できたんだロト!今ボクがヒョウカのスマホに憑依(はい)ってもトレーナーIDは発行されないロト!』

 

「え~…。じゃあその条件ってなに?」

 

『それはポケモンショップで買い物し終わってからのお楽しみロト~~』

 

「え~~!今聞かせてよ~~!」

 

「ピカチュ~!」

 

「イッブ~イ!」

 

 

 気の抜けた声で抗議する三人。しかしスマホロトムは既に三人の抗議を聞き入れていない。本当に買い物が終わってから言うつもりだろう。初対面の時のリアクションの薄さをまだ根に持っているのだろうか。

 歩きながら、今聞いた話を頭の中で整理して、浮かんできた質問をする。

 

 

「――ちなみに俺のトレーナーIDの数字ってどうなってるんだ?」

 

『おっ、聞いちゃうロト?やっぱり気になっちゃうロトよね~。ななななんと!ユキナのIDナンバーは“1番”ロト!おめでとうロト!ユキナは世界で一番目のトレーナーロト~~!』

 

 

 前に進みながら縦横無尽に動き回るスマホロトムを見ながら雪奈は考える。このトレーナーIDの番号はトレーナーになった順番で作られていることが分かった。一体どういうシステムなのかは全くの謎だが。

 

 

「へぇ~。じゃあお姉ちゃんは結構すごいんだねッ!」

 

『ヒョウカもこのまま行けば2番目のポケモントレーナーロト!だから胸を張っていいロトよ!』

 

「そうなの!?やった~~!」

 

「ピカチュ~~!」

 

「イッブ~イ~!」

 

 

 氷花の喜びに合わせてピカチュウとイーブイも鳴く。本当に仲いいね君たち。

 

 

『オッホン!それで本題に戻るロト!ポケモンショップに入ったり利用するためには、トレーナーIDが必要不可欠ロト!』

 

「そうなのか?」

 

『そうロト!その証拠にこれを見るロト!』

 

 

 スマホロトムが一旦立ち止まって雪奈と氷花にある画面を見せる。それは一つの記事だった。ポケモンショップに関して書かれている記事で、そこには大きく、謎の建物【ポケモンショップ】。中に入れず!と書かれていた。その続きを見ると、「なぜか厳重なロックがかかっており、外から中の様子を確認することは不可能。扉の隣には液晶画面がついており、現在機械系の専門家たちが調査中」と書かれていた。

 

 

『ポケモンショップは今主電源が入っていない状態ロト。使用可能状態にするためにはトレーナーIDに付属されているバーコードを読み込むことで利用可能になるロト!だから今世界でポケモンショップを利用可能できるのはユキナだけロト!』

 

「じゃあやっぱりお姉ちゃんすごいじゃんッ!」

 

 

 道理で世界中に点在するポケモンショップが不明な点が多いわけだ。トレーナーIDがなければ開くことができないってどんな鬼畜仕様なのだろうか。

 もしかして全世界回らなければならないのだろうかと言う最悪の想像が浮かんでくる。

 

 

「それってIDないと駄目なの?最初から入れるようにすればいいじゃん」

 

『それをボクに聞かれても困るロト。まぁブ○ワイやティ○キンのマップ埋め感覚でやってくれればいいロト』

 

「いやゲームを基準にされても…」

 

 

 ネット検索したのだろうか。まさかロトムから別作品(制作会社は同じ)の名前が出るとは思わなかった。ていうかブ○ワイやティ○キンはあるのにポケモンはないのかこの世界は。

 ていうかブ○ワイやティ○キンだってマップ埋めは滅茶苦茶大変だ。マジで世界中を回るビジョンが浮かぶ。

 

 

「あ、あと主電源ってことは他のは稼働してるってわけ?」

 

『…君のような勘のいい(ガキ)は嫌いロト。…な~んちゃって、ロト!』

 

「いつの間に調べたんだよ」

 

 

 そんな用語いつの間に検索したのだろうか。段々スマホロトムがネタキャラに見えてくる。

 

 

『話を戻して、ポケモンショップは今防犯システムだけが作動している状態ロト。無理やり入ろうとすればショップ所属のポケモンにぶちのめされるロト』

 

「ぶちのめって…ていうかショップ所属のポケモンってなんだよ」

 

『あぁそれは――って、そろそろポケモンショップに着くロトよッ!この話はまたあとでするロト』

 

「もうそんなに…。氷花、ピカチュウとイーブイ隠して。余計な騒ぎは生みたくないし」

 

「は~い…。ごめんね、ちょっと暗いけど、我慢してて」

 

「ピカ~」

 

「ブイ~」

 

 

 ただでさえポケモンが未確認生物扱いの状況だ。そこで未確認生物を連れた人間が現れれば、どんな風になるか分からない。

 氷花はリュックにピカチュウとイーブイを入れると、光が入るようにちょっとだけ隙間を作ってリュックを閉じた。

 スマホロトムをポケットの中に仕舞い、少し歩けばポケモンショップの姿が見えた。しかし――

 

 

「あちゃ~…」

 

「……封鎖の可能性を、考えてなかったなぁ…」

 

 

 ポケモンショップはその場所にあった。確かにあった。だがその周りの物が問題だった。赤いカラーコーンと警戒色を塗られたポールで規制線が張られていた先に、ポケモンショップはあった。しかも警察が警備をしているし、なんならカメラとマイクを持った人々――マスコミもいる。ついでにある程度の野次馬も。ポケモンがいるのに根性あるなと思いつつ、ポケモンショップの周りを見渡す。

 警備は五人態勢で行われており、レポーターがなにやら喋っていて野次馬がカメラを向けてポケモンショップを撮影している。

 

 

「しまったなぁ…。目立つのは避けたいし、どうにかして入れないか…」

 

「でもその前にIDをかざさないといけないんでしょ?無理っぽくない?」

 

 

 前の自分であればなんとか行けたかもしれないが、今の体はか弱い女性。とてもじゃないが突き進むことはできない。ユキノオーたちを使って強行突破の策も考えたが、これ以上ポケモンのイメージを悪くしたくはない。

 路地裏に入り、なんとかする策を考えていると、スマホロトムの声がスピーカーになって聞こえてくる。

 

 

『ユキナ、ヒョウカ、ボクに良い考えがあるロト!』

 

「ホントに!?」

 

『簡単な話ロト!ポケモンショップの稼働にはトレーナーIDが必要ロト!でも必ずしも人間が同伴する必要はないロト!だってかざすだけロト!ボク一人でもできるロト!』

 

「なるほどー!ロトちゃん頭いい!」

 

『ロトちゃんってボクのことロト?』

 

「なるほど…」

 

 

 確かにそれはいい案だ。極力目立つのを避けたいが、スマホロトムによるトレーナーIDの表示は必須事項。だったら目立つのはスマホロトムだけでいい。

 

 

『ついでにテレビカメラで宣伝もできるから一石二鳥ロト』

 

「宣伝ってなにするつもりだ…?」

 

『別に変なことじゃないロト!ポケモンショップの説明も踏まえて、ボクらのことを多少でも知ってもらえれば万々歳ロト!』

 

 

 確かに行動が早いことに越したことはない。いずれにせよ世間にポケモンのことを知ってもらうことが重要だ。対応が遅ければポケモンと人間が争おうディストピアになってもおかしくはないのだから。

 

 

『それに安心するロト!ボクはばっちりユキナとヒョウカが誰の目にも触れずにポケモンショップの中に入る策を用意しているロト!』

 

「なになに教えて!」

 

『単純明快ロト!それは―――』

 

 

 

 

 

「へぇえ、案外いい作戦じゃん。見直したよ」

 

 

 

 

 

『エッヘンロト!このくらいできて当たり前ロト!あと、ボクが外の注意を引いてる間に買い物を済ませるロト。買い物が終わったヒョウカのスマホからユキナ宛てに連絡をしてくれればいいロト』

 

 

 

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 北海道札幌市と言う広大な土地に複数存在している謎の建物の内の一つ【ポケモンショップ】。ここは元々コンビニだった場所だが、今は潰れてその面影はない。が、この建物ができた。その日の内から県や市の警察や市役所職員が派遣されたが、扉は厳重に締まっており入ることは不可能。ガラスは全てミラーガラスで構成されており、中の様子を確認することは不可能。

 他の県(とうきょう)ではガラスを割って中に入ろうと試みたが強化ガラスだったため不可能。強化ガラスであろうと回数を重ねれば割れないことはないが、一回をやった後が問題だった。

 突如警報が鳴ったかと思えば、『防犯システム レベル1作動。迎撃を開始します』と言う機械音声とともに巨大な未確認生物が飛来してきたのだ。全身が固い鎧で覆われた鳥(エアームド)がポケモンショップの屋根に降り立ち、白銀の光線(ラスターカノン)を威嚇で放つという出来事があった。

 

 それからその鳥は事あるごとにポケモンショップの周辺を飛んでいるという。この件を受けて、強行突破は危険と判断され、即刻全国全世界にて打ち切られた。しかしこの出来事は、ポケモンショップは謎の未確認生物と深い関わりがあることが決定付けられた。あの鳥が飛来してきた原因は強盗まがいのことをしようとしたためだ。実際に防犯システムが作動していることが確認されているため、ポケモンショップを調べることがこの未確認生物のことを知る鍵になるのではないだろうかと注目されている。

 

 そのため、全てのポケモンショップには規制と警備員が配属されている。そしてその情報を受けて、マスコミや野次馬が集まっている。

 

 

「私は今、ポケモンショップ前に来ています。こちらでは規制線が張られ、警察の見張りがついています」

 

 

 今話しているの一人のレポーターだ。マイクを片手にテレビカメラに向かって喋る。彼女はテレビ局に所属しているレポーターの一人。世界が騒然としている中、上司に命令され渋々来ていた。何が嬉しくてこんな時に外に出なければならないのか。ここに移動する途中だって周りにいる未確認生物が襲ってこないかとビクビクしたものだ。

 警備をしている警察だって同じだろう、今まで何度ここら辺を未確認生物が通り過ぎて行ったことか。そいつらに襲われないかと、ヒヤヒヤものだ。上司を持つ人間は、いつの時代でも大変だ。

 

 

「全世界に突如として現れたこの謎の建物。それと同時に現れた謎の未確認生物と何かしらの関わりがあると踏まれておりますが、その関係性は依然として不明です。様々な分野の専門家などが、調査に当たっており、今後の調査に期待されております」

 

 

 こんな報道に何の意味があるのだろうかと辟易する。こんなことどこのテレビ局だって同じことを言っている。しかも未確認生物と謎の建物が現れたのは今日だ。そんなすぐに分かるわけがない。一体いつまでこんなことをしなければならないのだろうか――、

 

 

『だったらボクが教えてあげるロト』

 

「…?すみません、何か言いましたか?」

 

 

 レポーターの言葉に、カメラマンや音響などのスタッフ全員が首を振る。しかし小声ではあるがスタッフ全員がその声を聴いたかのような反応を示していた。気のせいなのかと思ったが、スタジオのナレーターから「今誰か喋りませんでしたか?」と聞いてきた。こことスタジオは中継でつながっており、こちらの声が常時あっちに届くようになっている。スタジオの人間にすら聞こえたということは、きっと空耳ではない。辺りを見渡すが、それらしいものは一切見受けられない。

 

 

「気のせいでは…」

 

『気のせいじゃないロト!後ろを見るロト!』

 

 

 今度は聞こえた。確実に、瞬間的に後ろを振り返ってみるとそこにはスマホが浮いていた

 

 

「――え」

 

 

 何言っているか分からないと思うが今見たものをそのまま思った結果だ。本当にスマホが浮いている。オレンジ色のスマホから、触覚のようなものが生えていて背面に顔がある変なスマホだった。

 突如そのスマホが高速移動してテレビカメラに顔面を近づける。

 

 

『ヘイヘイ!テレビの前のお茶の間のみんな!おはこんハロチャオロト~!朝ご飯はちゃんと食べたロト?昼ご飯は?夜ご飯は?あ、夜はまだだったロト!』

 

 

 『ロトトトト!』とテレビカメラから顔を離して縦横無尽に空中を駆け回るスマホに、一同は騒然とした。そしてそれは周りにいる警察や野次馬も同じ。当然のごとく中継の繋がっているスタジオやこのテレビを見ている視聴者も唖然としていた。何故ならこれはLIVEだから。

 

 

『おっと、こんなことしてる場合じゃないロト。さっさとポケモンショップを利用可能にするロト!

 

「えっ、今なんて――」

 

 

 ナレーターの言葉を無視し、ポケモンショップの入り口へと向かうスマホ。本来そこに立っているはずの警察は、あまりにも突然の状況に警備員の役割を果たすことなく、その様を見届けていた。

 謎のスマホは扉の隣にある液晶画面に触れた後、画面をそちらの方へ向けた。少し経ったとき――変化は起きた。

 

 

ピコン

 

ピコンピコンピコン

 

 

 突如として周りの人間が持っているスマホが鳴り始めた。それもほぼ同時に。

 それだけではない、ポケモンショップにあらゆる変化が起きた。外周りの街灯に電気が通り、カチャリと鍵が外れるような音が聞こえた。それに“ゴウンゴウン”と言う、ポケモンショップの中から何かしらの機械が作動するような音も聞こえた。

 

 

『始まったロト』

 

「は、始まった!?始まったってなにが――!?」

 

『それはスマホを見れば一目瞭然ロト!これを見ているみんなも、自分のスマホを確認するロト!』

 

 

 周りの状況を確認すれば、反応はすぐに自分のスマホの様子を見れる野次馬たちだった。各々が「えっ、なにこれ?」「なんで勝手にインストールされてんの?」と言う声が聞こえてくる。

 レポーターはこの状況にすっかり固まっていた。しかし、スタジオから中継の声が耳に着けているマイク越しに聞こえてくる。「スマホを見せてもらえるよう話して」と言う内容だ。レポーターは我に返り、すぐさま近くにいた男性に声をかけ、スマホの中身を見せてもらった。するとそこにはこんな通知があった。

 

 

【北海道札幌中央区店】が開放されました。これより【北海道札幌中央区店】はいつでも利用可能となります

 

ポケモンショップのインストールが完了しました

 

 

「これは…?」

 

 

 男性のスマホに送られてきた二つの通知。この通知は周りの反応からすれば、男性だけではなくここにいる全員のスマホに来ていることだろう。この通知のことを信じるならば、このポケモンショップは利用可能になったということだ。それに、勝手にインストールされたポケモンショップのアプリ。これは一体何なのだろうか?

 

 

『驚いたロトか?無理もないロト』

 

 

 スマホの声に、一同の視線がスマホに一斉に注がれる。

 そもそもこのスマホはなんなのだろうか。いやスマホと呼べるかどうかすらも怪しい。スマホはそもそも宙に浮かないしこんな流暢に感情を持って喋らない。ていうかあんな突起物もない。

 

 

『自己紹介ロト!ボクの名前は【スマホロトム】、よロトしく!さぁ、なにから話すロト?』

 

 

 この場の全ての視線を独占したスマホロトム。

 この日、【スマホロトム】がトレンド1位を達成したことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

「本当に入れちゃった…」

 

「サナッ…」

 

 

 外でスマホロトムが注意を引き付けている間、雪奈と氷花はポケモンショップの中に入っていた。二人はどうやって入ってたのか?入口はマスコミと野次馬で囲まれている。入口も正面以外には存在しない。物理的には不可能だ。だったら、超常現象を起こせばいい。

 

 

「ありがとうな、サーナイト」

 

「サナッ」

 

 

 “瞬間移動(テレポート)”を使えばいい。雪奈はサーナイトにテレポートを覚えさせている。この力で移動を大分ショートカットできるからすっごく楽していたいのを覚えている。こうして誰の目にも触れずに入場することができた。これはスマホロトムが考えた作戦である。シンプルながら、確実な作戦だった。

 中を見渡すと、ガラスケースの中に商品が一つずつ入っており、真ん中にATMのような見た目をした機械が3台ほど置かれていた。その間にはなぜか机も。スーパーとかに必ずある段ボールやエコバックに荷物を入れるためのスペースだろうか?ガラスケースにあるものはサンプルなのだろうか?モンスターボール、きずぐすり、2、3種類ほどのポケモンフーズ、数種類のきのみが置かれていた。これだけ見ると店の割りには商品の数が少ないような気がする。がら空きのガラスケースだって複数あった。

 

 

「もう出ていいよ!」

 

「ピカッ!」

 

「ブイッ!」

 

 

 氷花のリュックに仕舞われていたピカチュウとイーブイが勢いよく飛び出して氷花に飛びついた。よほど暗い場所が嫌だったのだろうか。滅茶苦茶ほっぺすりすりしている。

 その姿を眼福にしなながら辺りを見渡すと、ある一つの事実に気付いた。

 

 

「それにしても――なんか狭くね?」

 

 

 雪奈が愚痴をこぼす。そうこの店、外観より狭い。比率で言うと6割くらい狭い。外観と比べてここの広さは4割ほどだ。残りの6割は一体どこに行ってしまったのだろうか。

 

 

「あ、お姉ちゃん見てあそこ!」

 

 

 氷花がとある場所を指さした。雪奈がその場所を見ると、そこには“関係者以外立ち入り禁止”と書かれている扉があった。

 

 

「なるほど…残りの六割はあの扉の向こうか…」

 

「どうする?入ってみる?」

 

「いや…やめとこう。あとが怖い。防犯システムが作動したらたまったもんじゃない」

 

 

 関係者以外立ち入り禁止と書いてあるのだ。もしそれを破ったら防犯システムが作動する。作動したらショップ所属のポケモンがくると言っていたため、余計なことを起こす必要はない。

 

 

「とりあえず必要な買い物だけ済まそう」

 

 

 雪奈、氷花、サーナイトはATM型の機械へと近づいた。実際に見てみるとお(さつ)を入れる場所にはボールをはめ込むくぼみが六つある。銀行のカードを入れられる場所はお札を入れる場所に変化しており、その隣には小銭を入れる穴すらある。

 画面をタップして起動させると画面は光り、“ポケモンの回復”“ポケモンの交換”“購入”の3項目が出てきた。“購入”の項目をタップすると、さらに“くすり”“きのみ”“フーズ”の項目が現れた。その他の項目もあるのだが、それらはロックのマークがかかっており、タップすると――、

 

 

現在は使用することができません。同じ地方にある10カ所のポケモンショップを開放してください

 

 

 と言う表示が出てきた。同じような項目をタップすると、数字は違えど同じような文字が表示された。

 

 

「これって、開放したショップが増えるほど商品も増えていくって感じかな?なんだかゲームみたい」

 

「……そうだな」

 

 

 ショップの商品が少ない理由はこれだった。使えるショップが増えれば増えるほどそれに連動してショップ内の商品の数も増えていく。ポケモン世界で言うところのジムバッチの数で買える商品が変わるようなものだ。そういう仕様、本当にゲームのようだ。ポケモン世界ではジムバッチの数で実力が証明される。それゆえに買える商品も変わるわけだが、この世界のルールは本当にゲームのようだ。

 雪奈は左上にあった“全項目”をタップする。商品数が少ないため、全項目を選んでもなんら問題ない。画面が代わり、そこは商品名と金額が並んでいた。

 

 

きずぐすり                300円

クラボのみ                 80円

カゴのみ                  80円

モモンのみ                 80円

チーゴのみ                 80円

ナナシのみ                 80円

ヒメリのみ                 80円

オレンのみ                 80円

キーのみ                  80円

ラムのみ                  80円

オボンのみ                 80円

モンスターボール             200円

ポケモンフーズ(オールタイプ 100g) 300円 

 

 

「まぁ最初だしこのくらいか…。とりあえずきずぐすりとモンスターボール、ポケモンフーズだな。ついでにきのみも5個ずつくらい…」

 

 

 お金を投入し、きずぐすりを20個、モンスターボールを20個、各きのみを5個ずつ、ポケモンフーズを自身の手持ち分×3購入した。買いすぎだとは思うが、今回の出来事が終わればここは調査のために封鎖されるだろう。ならば今の内に買っておいた方がいい。購入画面を押すと、“袋はご入用ですか?”と言う画面が出てきたので“はい”を押した。すると隣に置いてあった机に突如として紙袋が現れた。状況的に召喚と言い換えてもいい。

 

 

「うわっ、何もないところから袋がッ!」

 

「どういう仕組みなんだこれ…?しかもちゃんとこの紙袋の中に全部収まってるし…」

 

 

 上から除くとある程度綺麗に梱包されたモンスターボールときずぐすりが紙袋に収まっていた。それをある程度どかし、底の方を見るとある程度の大きさの長方形の箱がいくつも入っていた。その箱の上には“オレンのみ”と言う文字が見えた。箱の数は8個。ちょうどだ。そのためか紙袋自体はかなりの大きさだが。

 

 

「重ッ…サーナイト、これ持てるか?」

 

「サナッ」

 

 

 サーナイトは机にある紙袋を両手を使って持った。

 

 

「ありがとう、サナちゃん」

 

「サナサナッ」

 

「じゃあ今度は氷花の番だな。俺は自分のポケモンの分プラス欲しいもので買ったけど、自分でポケモンを持つからには、自分のお小遣いから出さなきゃだぞ?」

 

「分かってる!それに私もやってみたかったし!じゃあ早速…」

 

「ちなみに、俺はモンスターボールを過剰に購入したけど、最初はまぁ…10個あればいい。失敗用も含めて」

 

「失敗用!?なんのことだか分からないけど…分かった」

 

 

 それは分かったというのだろうか。そう思ったが心の中で押しとどめる。氷花は雪奈の行動を見ていたからか、初めてとは思えないくらいスムーズにアイテムを購入した。購入したのは雪奈の助言の通りモンスターボール10個ときずぐすり5個、ポケモンフーズを4つだ。購入ボタンを押すと、隣の机に紙袋に入った商品が出現する。

 

 

「かなり買っちゃった…。まぁ仕方ないよね」

 

「それじゃあ、早く帰ろう。氷花、ロトムに連絡頼む」

 

「任せてッ」

 

 

 氷花がスマホでロトムに連絡をしている間、雪奈は自身の影を二回踏んだ。すると、雪奈の影からゲンガーが体の半分を出してきた。

 

 

「ロトムにはもう連絡したから、回収してきてくれ」

 

「ゲンガッ」

 

「氷花、ゲンガーが回収するってことも伝えてくれ」

 

「おっけー!」

 

 

 氷花の明るい返事に微笑んで再びゲンガーを見ると、もうすでにゲンガーはいなかった。相変わらずこういうことだけは仕事が早い。昼のルカリオたちからの折檻も効いたのだろうか。

 

 

「じゃあサーナイト、帰りも頼むわ」

 

「サナッ!」

 

 

 雪奈と氷花はサーナイトの肩に触れると、サーナイトはテレポートを発動して三人はその場から姿を消した―――。

 

 

 




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