【本編完結】ジョジョの奇妙な冒険RTA 三部主人公チーム全員生存チャート【参考記録】 作:Damned
──『黒き光』に手を伸べる『狩人』は、闇を裂く残光により、その趨勢を知る。
「随分と面白い言葉を吐いてくれたな。DIO様の物を盗み、僕の忠義を疑うクソ虹霓坂のくせに……貴様は……貴様だけは……塵も残さず殺す……」
「……ハッ、しぶとすぎるだろ、オマエ。腹ブチ抜かれたなら死んどけよ、化け物」
「貴様こそ、中身はボロボロのくせに良くそんな言葉が吐けるな。しかし、もう終わりだ……DIO様に倣って、僕は貴様を食って回復するとしよう」
嫌な予感は、あった。
イロウド・アンド・ディサピアーの頬に貫手が掠めた時、彼は表情ひとつ変えずに銃を向けたまま。こらえている様子もなく、まるで感覚がないかのように、レモはただ、なんの反応も示さなかった。
そして、幾度かの応酬のあと──虹霓坂は、レモの腹に穴を開けた。ハイドロ・グラムで増強されたパワーでもって、彼の胴体を貫いたのだ。普通の人間ならば即死である。それで死んでいないということは。
「ヴァニラ・アイスと同じ『
水銀の鎧を纏った虹霓坂に対して、レモはくるりとショットガンを回し唇を歪めた。
「ならばそのまま返そう。死ぬか伏せるか選べ、虹霓坂彩雲」
刹那、ず、と書庫内の空気が重くなった気がした。否、空気に重量があったらこの部屋が潰れているだろうと……そう思えるほどの空気が、二人の間から漂っていた。
虹霓坂は息を吸い。
レモは手に持つショットガンの排莢を終え。
互いに待つ気はなかった。
殺す──ただ殺す。やらなければやられる。被害予想を省みるための脳のリソースは、他所にやっていた。
再び、ハイドロ・グラムとイロウド・アンド・ディサピアーのぶつかり合いが始まる。近距離パワー型とはいえ、ディサピアーはハイドロ・グラムを纏った虹霓坂にパワーで劣る。ゆえに、制圧は容易いこと。虹霓坂はそう踏んでいたし、事実そうだった。
スタンドとは別に向けられる銃口さえなければ。
黒白と蒼で構成された散弾銃が、スタンドを援護する様に引き金を引くのだ。しかし、散弾は自身の障壁で防げることを、虹霓坂は知っている。
それを加味しても──虹霓坂がこうも苦戦しているのには、本人の精神状態が絡んでいた。レモに殺されかけたあの時から、虹霓坂はずっと、恐怖していた。
その身に刻まれた恐怖に、呼吸さえも支配されていた。
「貴様」
薄々気付いていたのだろう。レモが指摘した。
「波紋を使えないな。始めは使わないのかと思っていたが」
「……身体の調子が悪いだけだぜ。寧ろ、オマエにとっては好都合だろ」
「ああ、実に好都合さ。貴様が波紋を使えないということは、僕を殺す手段はないのだからな」
「オレが逃げる、ってことは考えね〜のな」
「ふはっ、そんなことか。……残念ながら」
今までとは違い、レモがその手にイロウド・アンド・ディサピアーの弾丸を顕し、装填した。
「貴様にはもう、逃げるための手段は無い」
咄嗟の回避が幸いした。ほとんどノータイムで放たれた散弾は極わずかに命中しただけに留まり、しかし水銀の守りを崩す。
一度崩れてしまえば、この堅牢な装甲はしばらく使うことが出来ない。
背中に冷や汗が伝うのを感じた。
「知ってやがったな。オマエ……」
「貴様がそれを使う時は、やたらと金属製のものを避けようとしていたからな。そして何よりも、安直なその名前が僕にヒントを与えていたのに気付くといい」
「まんま『水銀』だからな。鉛のスラッグって所か、コイツは」
「ハズレだな。
それでは死んでもらおうか、と告げたレモに踵を返して走り出す。レモは見逃さなかった。銃声の後に足が燃えたように熱くなる。死ぬほど痛いが、ここで逃げられなければ痛みすら感じられなくなる。
的が大きくなるのを嫌って、『
どうにかして、波紋を練るしかない。考えると同時、既に試していた。ひゅっと喉が不穏な音を立てて意識が遠のき、破裂音に引き戻される。
「く……そ、ンでだよッ……」
虹霓坂は生まれながらの波紋使いである。今まで意識すること無く使ってきたものを、この数週間で鍛錬してきたとて、どうやってどうやって制御すればいいのかなど皆目見当もつかない。ぐらりと身体が傾いた。『エル・バイト』のみの使用に絞っていたからだろう、レモが虹霓坂の腕を掴み、書庫の床に引き倒される。
咄嗟に不完全な『ハイドロ・グラム』を展開し、左の拳で殴り飛ばした。嫌な音が腕から耳まで伝って届く。
「酷いな。肩が砕けてしまっては、貴様を殺すのに時間がかかるじゃあないか」
喋りながらも、レモはその銃とビジョンでもってで虹霓坂を攻め立てる。『劣化』の影響を受け、体力も精神力も削れきった虹霓坂は『エル・バイト』を数枚展開したあと、よろめいて壁に手をついた。
「オレだって、死にたくねぇ、んだよ。ほとんどパワーなくなっちまって、しんどいんだ……」
「早く楽になればいいものを。無駄にあがくから、苦しみが長引くのさえわからないのか?」
「無駄かどうかは……分かんね〜だろ。もしかしたら、仲間が来てくれるかもしれないしな」
「そんな希望を持つのは今すぐやめろ、虹霓坂彩雲。貴様が独断専行する愚か者なのは、僕でさえ分かっている」
レモが左手の手袋を口で引っ張った。右手は散弾銃をこちらに向けたまま、白い指を露出させる。何を、と眉を顰めたと同時に、ディサピアーの剣が肩に突き立てられる。
ふはっ、とレモは笑いをこぼす。
「肩を砕かれた意趣返しだ。……そういえば、以前貴様と殺しあったときも同じことをしたが、援軍は来ないという意味では……真逆だなァ……?」
「ぐ……っ」
レモの指が腕に突き刺さる。なにか、全身が内側から冷えていくような感覚があって、虹霓坂はその手に視線を向ける。吸い付くような音を僅かに立てたその手は、血管が拡がっているのかほんのりと色付いている。
血を吸われているのだ、と認識した時には、レモの指が肉ごと引き抜かれる。
「あが……ッ」
痛みに喉が引き攣る。指は皮膚を貫き、骨まで到達していた。もともと治りかけだったヒビが、再び入ってしまったかもしれない。
「……オマエ、やっぱ強いな。近距離パワー型であることを加味しても──いや、だからこそ、そのショットガンが輝く」
「何が言いたい」
虹霓坂は一つ、気になることがあった。
「なのに、オマエが積極的に仕掛けてこなかったのには、なんか理由があるだろ」
かつて波紋による戦闘の修練をし、それを弱点とする者を討ち果たしジョセフが言うに、
かつて、ストレイツォという波紋使いがいた。彼は永遠の若さに魅せられ、吸血鬼となってしまったという。最終的に若き日のジョセフに敗北し、自ら波紋を生成し自害した。
つまり、波紋の呼吸とは一般的に『意識して行う』ものであり、『修行によって身につく』ものなのだ。──生まれついての波紋使いを除けば。
ならば、無意識に波紋の呼吸をしているという
「……だとしたら、どうする。どう足掻いても貴様は死ぬ。僕に血を吸われて、な」
一つ目──死ぬ。吸血鬼になった波紋使いは、自らの身に巡る
二つ目──そもそも『ならない』。吸血鬼になるプロセスは全て波紋によって相殺され、何も変わらない。
そして三つ目──拮抗した末に吸血鬼となる。恐らく、自壊と修復を繰り返し、想像を絶する苦しみの果てであろうが。
「なら尚更……おかしい。DIOに加勢もせず、この建物の中に引き籠ってたのは、どうしてだ」
DIOを主君と仰ぎ、彼のためなら命さえ投げ出しそうなレモが、どうしても動くことが出来なかった理由が、そこにある。虹霓坂はそう、考えた。
「オマエも……生まれながらの波紋使いだったんじゃないのか。オレと、同じように」
レモの無表情が、怒りのような何かに変わった。図星だったのか、見当違いだったのか。虹霓坂には分からないが、それでも今、彼は息を吸う。落ちそうな意識を留めて、無理矢理に右腕を持ち上げる。
現状の自身を生み出したのが恐怖だというのならば、至って簡単な事だったのだ。
呼吸を整える方法など。波紋を練ることなど。それこそ、
「なあ、レモ……」
「どうした、遺言か?」
薄く笑ったその口に、虹霓坂は『スマラ・グドス』の欠片を捩じ込んだ。
「オレからの、
「ぉ、がぁ……ッ?」
「『
「ぐ……ぅ、……ッッ!」
喋ることの出来ないレモが、小さく呻いた。苦悶の声を上げながらも、しかし『虹霓坂彩雲を殺す』という目的は忘れないらしい。怒りと苦痛に震えながらもショットガンのトリガーを絞った。銃声と着弾の衝撃に意識がシェイクされる。右足から腹まで散弾が抉ったあと、もう一発、シールドの切っ先を突き入れた腕も吹き飛ばされた。
自身に降り注ぐ血液を熱いと思った。そして──急激に、寒くなる。
「は、は──」
気付けば虹霓坂は、天井を仰いでいた。
「がッ、あぁあああ、ぎ、ざあぁ……!!」
渾身の波紋を流され、身体を内側から破壊されたレモがのたうつ。もう終わりだ──自身も、彼も。だが、それでもいい。少し前まで知らなかったとはいえ、自身の手で血の因縁──と言いたくは無いが──に収拾がつけられたのだから。
……ああ、でも。
典明と一緒に、出かけたかったな。
虹霓坂が抱いた、数少ない望みは、それだった。
はぁ……はぁ……はぁ……シニソ……シヌ……シニスギィ!
レモは倒しましたが、虹霓坂の右腕が吹っ飛びました。まさか、DIOに使わなかった波紋入り
スタンドは波紋の伝導率が百パーセントであり、吸血鬼や屍生人によく効きます。しかし、虹霓坂は生まれながらの波紋使いではあるものの、今まで修練を積んでこなかったので、波紋カッターのような遠隔攻撃の手段がありません。そこで編み出したのがこれ──波紋を流した【スマラ・グドス】による【
波紋をしっかりと練れずとも、シールドの体をなしているこれならば真っ直ぐ飛び、かつ有効な攻撃を叩き込めます。【ハイドロ・グラム】は確かに強力なのですが、対策をされれば崩壊に追い込まれてしまいます。先程の一幕のように。
土壇場で恐怖を感じる間もなかったのでしょうか。虹霓坂が波紋を使えるようになってよかったですが……身体が、動きません。右腕の欠損に加えて、ちょっと内臓もはみ出ています。ポルナレフやミスタのような頑丈枠でなければ、この手の状態になるとゆっくり這ってしか動けなくなるんですよね。
流石にこのままでは死ぬので、レモが塵になって残った着衣を拾って止血します。自分のことを殺そうとした奴の服とかちょっと嫌ですが、失血死するよりはマシです。
さっき吸血されましたし、とっとと外に出て病院に戻りたいです。紐がちぎれた鞄も持って……はい、準備完了です。
諦めて地面を這うことにして、階段を上がりましょう。うーん亀の歩み、これたどり着く前に絶対死ぬじゃないですか。諦めて遺言書書いた方が──上から誰か来ます。また敵ですかァ!?
いや、違いますね。白い総裏の長ランを来た敵なんていません。花京院です。
なんでここに居るんですか? まだ休んでると思ったんですけど、おひとりさま?
>……病室にいないのに気付いて探しに来て見たら、君は一体、何をしているんだ。
>は、はは……よう、典明。元気そうでよかったぜ。
>ふざけるなっ。ここで何があったか知らないが、何も言わずに消えて出る言葉がそれか!? 少しは自分の状態を見ろ!
呆れと怒りが混ざった声で怒鳴られました。そらそうよ。
花京院は長ランが汚れるのも構わず虹霓坂を抱えました。動けなかったのでありがたいです(人の心のないクズ)。大急ぎで階段を上がり、屋敷の外に止まった財団の医療車に乗せられます。ドバドバに輸血されながら止血もやってて、腹も抉れてるので車内はドッタンバッタン大騒ぎです。
いやーきついっす。こうなってるのを見越して花京院が財団の協力仰いでなかったら死んでました。まさかこんな屑運引くとは思ってなかったので、走者の予想を斜め上イキスギィ!
>彩雲ッ、死んだら許さないからな……!!
>なあ……そんな怒んなよ、典明。迷惑、かけたの、……は、悪かったから……その、ごめん。
>…………僕が怒っている意味がわからないのか? この期に及んでそんな事を言って!
>えぇ……?
虹霓坂の思考回路も斜め上行ってました。迷惑かけたので花京院が怒るわけないでしょ! よく考えてくださいよ花京院は貴方とすごく仲がいいんですよ????
>迷惑? ……迷惑、だと? 僕がそんなことで、怒っているように……フフ、そうかい、君にはそう見えるんだな。
>は、はへ……。
>僕が怒っているのは、その一人で突っ走る悪癖だ……!!
とうとう花京院が涙を零しました。あーあ虹霓坂が花京院泣かせた。一人で突っ走って花京院に怒られるのこれで三回目ですよ貴方。
泣き始めた花京院を宥めすかしていると病院に着きました。緊急車両は早いですね。
ちなみに虹霓坂はぱたっと気絶しています。(出血多量で片腕吹き飛んでる重体なんだから)当たり前だよなぁ? 死ぬか死にかけるか選んだだけでなので仕方ありません。後で花京院にこってり搾られてください。
こってり絞られるってなんかエロいなぁ(超時空要塞スーパーホモ)
キリがいいので、今回はここまで。
ご覧いただき、ありがとうございました。
お気に入り登録が300を突破していました。
いつもご覧いただきありがとうございます。
誤字報告助かります。大量にあって「なんで今まで放置してたん?」と自省しています。本当にありがとうございます。