あのパンクラチオンを夢に見る 作:マリーザの姉御が嫌いな奴はおらんのよ!!
「みなさん! 大変です!!」
「どうしたのですか、落ち着いて話してください」
「落ち着いていられますか!! 外が、外に!!」
「待て待て、落ち着け君。いくら大変な状況だとしても、冷静さを欠けば伝わるべきことも伝わらない。落ち着いて……」
「超巨体の女生徒が聖園ミカ様と私共の委員長相手に大立ち回りしていて!!」
ナギサとセイアはお茶を噴き出した。どういうことなのだ。聖園ミカは間違いなくトリニティの最高戦力クラスのはずだ。それに委員長と言えば『正義実現委員会』の剣先ツルギ……彼女もまた、最高戦力。その2人が手を組んだ、夢のドリームタッグに互角だと? 舐めているのか。幻覚でも見たのかと問いたくなるのも無理は無い。しかし、きちんとこれは現実である。
パタパタと外に走るナギサの後をセイアは歩いて追っていく。病弱さと、『なぜそのような存在が今トリニティと対立しているか』を考えるというふたつの理由で。
「ひひひひひひひ……!」
「あははははっ☆」
「楽しいなぁ、闘いってもんは!」
全力で2人が銃撃を放ち、1人は真っ直ぐに駆け抜ける。赤く染まる筋肉は、時に銃弾を通さぬ鎧と化していた。その光景に頬を引き攣らせながら笑うのはサブマシンガンを携えた女……すなわちティーパーティーのひとり、聖園ミカだった。
もう1人の相方……剣先ツルギもいつも通りの笑いを放ちながらも口角が引き攣っている。ショットガンを正面からブチ抜くという意味不明な行動をされればそうもなろう。
事の始まりはほんの5分前。
「……きひひ、お前、見たことないツラだな」
という声を聞いたところからである。その方向に向き直ると、ミカは言葉を失った。
筋肉。筋骨隆々の女生徒が、頭の上にヘイローを輝かせて立っていた。服装は辛うじてトリニティの制服と言えようが、筋骨隆々すぎて違和感しかない。というかそもそも、身長が目測1.9mあった。
見たことないツラ以前に言うことがあるだろうと、聖園ミカは正直に思った。
「へぇ? 見ないツラをどうするつもりだい?」
「話を聞かせろォ……連行だ、着いてきてもらうぜェ」
「悪いんだけど、それには付き合えないんだよ」
「なら……強制連行だなァ!!」
「自由はこの手で掴み取ってやろう!!」
スムーズにバトルに入ったな、と聖園ミカは思った。コイツら脳筋だな、とも。聖園ミカはティーパーティーに入ってからは棚上げすることが得意になっていた。
そして、剣先ツルギが凄まじい膂力によって吹き飛ばされた瞬間、なんとなしに自分の中にあった『ツルギが対応するのなら安心だ』という思いが同時に吹き飛び……
「あはっ☆すごい力だねー! でもさすがに目の前で暴力なんて見たら止めなきゃね!」
「ほう……新たなる挑戦者か」
「ギャハ……勝手に殺すなよォ……生きてるぜェ、なんなら完治したァ!」
「嘘だろおい、二三本はへし折ったつもりなんだが……頑丈だな、テメェ」
彼女は、拳を鳴らして私たちに問いを投げた。
「まあいい、私はなんかこっちにいたんだよ。理由はわかんねぇ。だがまあ……闘えるんだろ? 闘ろうぜ、せっかくだ……逃げようとすれば闘ってくれんだろ!!?」
「まあ、そういうことになるな……ひひひひひっ!」
「ツルギちゃん☆私も協力、するよ!」
「聖園ミカァ……感謝、するぅ。私だけでは厳しいと思っていたところだァ」
「ねぇ、あなた! 援軍を呼んできて☆この子を運ぶ、援軍を!」
「ひゃ、ひゃい!」
走り出す正義実現委員会の1年生を目端に写しながら、彼女と正対し……
「行くぞォ!!」
「「ッ!!」」
凄まじい威圧感が、最強のふたりを襲った。
かくして今に至るという訳だが、この女、怪物すぎるというのが2人の率直な感想であろうか。
なぜ銃を使わないのかは不明だが、鉄のような拳と鋼のような肉体から放たれる膂力満載の一撃はあるいは自分の神秘のよく回った肉体をも遥かに凌駕している。鋼のような、と言った肉体は、放った弾丸を微塵も通すことなく押しとどめることすら可能にしていた。肉防弾ジャケットとは驚きだ、と聖園ミカはさすがにドン引きしていた。
「さぁ喰らえ!」
至近距離まで巨体に見合わぬ猛速で接近した彼女はツルギの腹部めがけた全力のストレートを叩き込む。
「【グラディウス】!!!」
「甘いなァ! 喰らえェ!!」
ショットガンの正面一撃、お互いに痛み分け。大きく自分から弾の反動すら利用して大きく吹き飛んだことによる衝撃軽減がツルギへのダメージを最低に抑えた。
ならば次と言わんばかり、吹き飛ばず体幹でその場に残った彼女は私の方へ走り出す。
そう来るなら、と迎撃する私の、前に出したサブマシンガンを彼女は瞬間的に前に出るような凄まじい速度を一瞬で出すことで掴み、銃口を上に上げ……
私の拳を彼女に、叩き込む。そう来るだろうと思ってはいなかったが、それでも瞬発的な判断で銃は最速で手放した。よろめきかけた彼女が腕を頭の方で固めた防御姿勢を取るのにお構いなく、2発目。さらに追い討ちのアッパーを叩き込もうとして……
「動くんじゃないよ!!」
「んなっ!!?」
圧倒的な膂力で2発目を打ち込んだ左手を掴まれると、引き寄せられながらも頭の側頭部を押され、地面に組み伏せられる。そのまま彼女は私の左手を天に挙げ、私の足を跨ぎ……いやこれ待ってまずっ!!
「【エンフォルド】」
「あっがぁっ!!?」
脳天に、凄まじい衝撃が叩き込まれた。
「寝てな」
彼女はそう傲岸に言い放ち、気を失いかけた私の頭を蹴り飛ばした。それを機に、私の意識は消失した。
彼女たちが辿り着いたのは、その瞬間だった。ミカが、筋骨隆々の女に組み伏せられ、その後頭部に豪打を叩き込まれた、その瞬間。確かに彼女たちは見たのだ。聖園ミカのヘイローが消える瞬間を。聖園ミカが、負けた。その現実を。
しかし、最強は未だ定まらぬ。当然だ。ここはキヴォトス。ツルギが走っていく。そして、凄まじい量の掃射が……凄まじい量の掃射? サブマシンガンを持つはずの聖園ミカは倒れた、であればこれは。
「全く。どうしていつもこう、乱暴事に巻き込まれるのかしら。アコ、何か知ってたりしない?」
「分かりませんよ、私にだって! ……とにかく、後方支援はおまかせください、ヒナ委員長!!」
「じゃ任せる、アコ。さて……私はゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナ。同盟相手に対しての武力行使は、見逃せない。エデン条約条項に則って、あなたとトリニティとゲヘナ、アリウスのすべての戦力で交戦する。……勝てると思わない事ね。降伏を勧めるわ」
新たなる、最強。キヴォトス最強を争う中でも耐久と火力、という2点において特化した女……ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナが降臨した。その手に、長大なマシンガンを携えて。
そして、それに気を取られずに構えていた彼女だけが、それにも気づいた。
「…………ぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!」
「舐めるなァ!! 【ファランクス】!!!」
彼女は地面から飛び上がり……空中から降ってきた翼と盾と銃持つ女を迎撃した。一瞬の交錯、殴り抜けた彼女はしかし、その身に小さくは無いダメージを追う。
「ぐっ……! やるなお前! 名乗れ!」
「救護騎士団団長、蒼森ミネと申します。救護が必要な方が、いらっしゃるようですので。最速で、救護致します!」
「ふむ……さすがに分が悪いな! だがそれでもやることに意味がある! かかってきなァ!! ギアをふたつ上げてやるよ!!」
激突の勝者はいずれか。今はまだ、誰も知らない。
マリーザの【エンフォルド】(コマンド投げ)をどうしてもいっぱい書きたくて始めました。皆さんよろしくお願いします。