あのパンクラチオンを夢に見る   作:マリーザの姉御が嫌いな奴はおらんのよ!!

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#2 『ギアを上げて、前に』

 始まった戦闘は、完全なる五分が連合生徒の有利に傾き始めるという形に収まりつつある。

 

 ツルギとミネが飛び込み、ヒナが撃ち込み、到着した増援の中に紛れた2人のスナイパー……正義実現委員会副委員長羽川ハスミと風紀委員会の切込隊長銀鏡イオリが的確に弾を打ち込んでいく。

 

 次第に彼女の体にも傷が増え、ついに戦闘を継続しつつもヒナは口を開いた。

 

「さすがに……聖園ミカを倒したと言えど、私たちをひとりで相手するのは無理だと思うけど」

「バカは休み休み言うんだね……私が全力出してるわけないじゃないか」

「バカはそっち。一騎当千の実力者だろうと、無い袖は振れない……余力はないでしょ。アコの分析に狂いはないわ」

『えぇ。あなたに残存する余力のパーセントは14パーセント前後。誤差2パーセント範囲ですが……反論はありますか?』

「あぁ、もちろん」

 

 虚勢か、ハッタリか。そういうのが上手いヤツだ、とその場にいた9.9割の者は感じた。ただ1人だけだ。その場にいて、ただ1人だけ、それを虚勢でもハッタリでもない、事実だと認識できる者がいた。

 

「おおおおおっ!!!」

「「!?」」

 

 だから、その者は駆けつけて早々、目覚めんとする猛獣に己の神秘を込めた最高の一撃を叩き込み……

 

「はァっ!!!」

 

 弾が、弾き飛ばされた。

 

「やるじゃないか。戦場で相手を侮ったヤツから死んでいく……お前さんは違うな」

「当たり前だ。私はもう何も失わないと決めたのだから、油断はできない」

「見たことない制服だな。『アリウス』か」

「そうだ。私はアリウススクワッドリーダー、錠前サオリ……お前を、ここで討つ。如何な理由かは知らないが、ここまでの強さを以て私たちに強襲してきたのだから」

 

 4人。強者が、4人。これだけの戦力。正しく構築され、アリウスをも巻き込んで生み出された『エデン条約』は、今その全能を発揮して一人の女に立ち向かっていた。

 

 だが、これだけでもない。

 

「お待たせ致しましたみなさん。シスターフッド、現地到着です……ヒナタ、マリー、散開して連携を!」

「「サクラコ様の仰せの通りに!」」

「それと……もうお体は平気なのですね?」

「私は頑丈さには自信があるからね〜☆……にしてもまあ、舐めたマネしてくれちゃってさぁ、あなた? 絶対ブッ飛ばすから……!」

 

 シスターフッド団長歌住サクラコとその部下、及び寝転がされてから戦況が変化したことで救護委員会の手が届き即座に回復した聖園ミカの戦線復帰。普通に考えれば、絶望そのものである。

 

 しかしながら、それで止まるならば彼女は彼女たり得ないのだ。

 

「面白ェ」

 

 一言。彼女はそう告げて笑い出した。

 

「面白ェな、ホント。闘いってやつは……『外』じゃ、まともに闘れもしねぇヤツばかりだったがここじゃバーリトゥードか! 師匠に拳を見せてもらってからっつーもの、磨き上げてきた私のこの『パンクラチオン』。結果として負けるのはいいが……過程じゃ負けられねぇよ、なァ!!」

 

 ズドンッッッッッッと轟音が響き、地面がヒビ割れ、もうもうとした土煙が彼女らに覆いかぶさった。

 

 ただ、軽くあげていた片足を勢いよく下ろしただけでそんなことができるとは誰も思いもよらない。目の前の空間からそれが飛び出す瞬間を固唾を呑んで待ち……

 

 ソイツはまだそこに居た。

 

 紅い髪のショートカット。胸と腰元のみを覆う独特な服、しかしながら肌の露出によって得られているのは女性らしさによるエロスではなく、鍛え抜かれた筋肉による男性らしさ、強さだ。

 

 拳に金具をつけ、ガゴンとぶち当て1鳴らし。

 

「悪いが単なるお色直しだ。名乗るぜ、私は『神楽舞リイザ』。『外』の師に負けずとも劣らぬ強き者を求める求道の無骨……行くぜ、悪いが……最早手加減はできねぇ」

 

 次の瞬間、世紀末とも思える戦いが始まった。

 

「おおおおおおお!!!」

「救護の時間です!!」

 

 激突するはミネとリイザ。しかしながら、最初の交錯とはその様相は異なる。飛び込んだミネに対し、リイザは大きく対空の構えを取り、空中の彼女を掴み取る。

 

「見慣れたぞ! そら、喰らえ!! 【メテオリティス】!!」

「なぁッ! ぐぅぅぅぅぅっ!!」

「「ミネ団長!」」

 

 ミネを大きな飛びで掴み取ったリイザはすかさず大地へ己の拳ごと彼女を叩きつける。地面に叩きつけられたにも関わらず、バウンドするミネの身体に救護委員会の2人が声を上げ、咄嗟の銃撃がリイザを襲ったことでそれ以上の追撃は取り消される。

 

 次に交錯するのは無論2番手に飛び込んできたツルギ……ではなく、その後ろ。アリウススクワッドリーダー、サオリであった。

 

「テメェは後だ」

「!!!」

 

 ツルギを見た目を遥かに超えた俊敏さでブチ抜く。そのまま、ツルギとサオリの僅かな隙間に飛び込み……

 

「サービスだ! 【クアドリガ】!!」

「なっ!!」

 

 前方へ踏み込む、最速最強の前蹴りが咄嗟に銃を盾にしたサオリに叩き込まれる。銃を盾にして、それでも、近くの建物の壁に叩きつけられ、凄まじいヒビを建物に残し、サオリは壁に埋め込まれるほどの衝撃を受けていた。

 

「相手してやるぜ哄笑の!!」

「キヒヒヒハハハァッ!」

「私を忘れるなんてひどーい☆」

 

 ミカとツルギ、初手もやり合った2人に対しては次は技巧の一手。

 

「足元がお留守だなァ、喰らえ【プロケッラ】ァ!!」

「グヒィッ!!?」

「お前もだ、【トニトルス】!!」

「はぁっっ!!!」

「へぇやるじゃないか……!」

 

 轟速の腿砕きの【プロケッラ】をツルギにぶち当て、その間隙に差し込まんとしたミカに両手を重ねたスレッジハンマーをぶち込もうとするも完全な迎撃態勢のミカに流される。

 

 であれば投げるまでだ。ツルギの左手を取り、流れるように再び腿を蹴り腹に入れ、空中に浮かせ、さらに殴り抜いて弾き飛ばす。

 

 漫画のようなその現象に聖園ミカは戦慄した。

 

 戦慄はしたが、それはそれとしてミカは愛銃を以てリイザを撃ち続ける。

 

 次なる交錯は当然ヒナ。

 

 圧倒的な弾幕をリイザに特化して打ち続けるが、リイザの接近は止まらない。

 

 ヒナは愛銃を上に放り投げると、そのまま目の前に迫るリイザに豪脚を振り抜いた。手元に戻った愛銃で、追撃。

 

「なかなかやるが……浅いな」

「っ!」

 

 トリガーの硬さが変わる。弾切れ。それを理解し、ついに肉弾戦をしなければならないかをヒナが判断しかけた瞬間。

 

 超スピードのタックルがヒナを弾き飛ばした。

 

「……!」

 

 受け身、膝をついた状態から立ち上がろうとして……

 

「…………」

「……!!!」

 

 そこに、凄まじい威圧感を放ったリイザが拳を構え立っていた。

 

「オルァ!!!」

「っっっぁぁぁぁあああぁあ゛っ!!!? ぎぃっ……かはっ」

『委員長!!?』

「歴史を、感じたかい? これが私と師匠のパンクラチオンさ。さぁ……喰らいな、空崎ヒナ」

「ぁ……ぅ……」

「これが私の!! 奥義!! 【アポロウーサ】だァァァ!!!」

 

 壁に背面が張り付いた、というべき状態のヒナに、さらにその顔面をブチ抜く一撃を。アポロウーサはタックルから派生する最強の一撃のコンボである。最強の一撃を、最速の一撃から派生すれば負けることは無いとする理屈であるのか、それとも異なるのか。事実的には前者であるのは間違いない。

 

 叩き込まれたヒナの身体が壁からずりずりとずれ落ち、その足を、尻を地に着けた。

 

「こんなもんかね……はは、久々に本気を出したな」

「待ってくれないか、そこの君」

「挑戦者かい?」

「……いいや。許せないだけさ」

「ほう……名前を聞いておこう。得てしてなぜかリベンジャーとアヴェンジャーは強いんだ」

「いいや、君には怒っていない……ちょっと怒ってるかも」

 

 リイザは知らないが、それは連邦生徒会の制服。白いコートに身を包み、胸元に光る章……連邦捜査部シャーレの紋様をあしらっているその『男性用の』コートを着ることが出来るのは、このキヴォトスでただひとりの者が持つ特権にほかならない。

 

 ボサボサの髪をかきあげ、眼鏡をかけ直す彼は、そう。

 

「私は、シャーレの【先生】。間に合わなかったせいで、生徒を

 、子供たちをこんなにも傷つけてしまった。自分が不甲斐なくて仕方ないし、許せないよ」

「ほう……先生、先生ときたか! 確かに大人がいないと思っていたんだ! 『外』にはロボットしか居ないしと思っていたが……なるほど、お前が例外なんだな?」

「答える前に、ひとつ。これは、君がやったの?」

 

 リイザは頷いた。

 

「意図したわけじゃねぇんだが……闘いたくてなぁ。いい腕したやつがドンドン来るから調子乗っちまった」

「ひひひひひひ……先生、私たちの後ろに。彼女は危険だぞ」

「ありがとう。ツルギ。でも……これだけは言いたいかな」

「なんだ、先生とやら」

「今はひとまず、生徒をここまで傷つけた君を許さない。君は生徒でも、許されないことをしてしまった。でも、私は君が事を穏便に進めたいと思うなら今からでも君の味方になるよ」

 

 リイザはそれを聞いてぽかんとして、笑い出した。

 

「なるほどなぁ……コイツは心酔されるカリスマってやつかァ? さぞ女関係には苦労してんだろ、先生とやら」

「茶化している場合では無いよ、リイザ」

「ふ……ま、私のケリは私でつけるさ。最も……ケリをつけなくてはならないほどに追い込まれなきゃ別にやらんが、な?」

「……分かった。とりあえず……まだやるつもりなら、相手になる。私の大切な生徒を、これ以上傷つけさせるものかよ」

 

 言葉と同時、先生の手元のタブレットからドローンが飛翔し、それぞれの頭上につく。さらに大型のドローンが飛び出し、空中から緑色のレーザーを生徒たちに浴びせかける。

 

「回復ありがと〜☆」

「くっ……ぐぅ……」

「ヒナ委員長、無理はしないように」

「だい、じょうぶ……!!」

 

 リイザはその光景を見て、笑いを漏らした。

 

「なるほどなァ……まだやらせてくれんのか」

 

 先生の到着したトリニティに、さらなる嵐が吹き荒れる。

 




筆が乗りすぎてとんでもない挙動をキャラがしている。

感想評価待ってま……9.0!!!?マジで!!?怖っ!!!
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