【完結】あの人が出ていって早十数年経ちましたが子供は今日も「地上最強になるのは俺だ!」と元気に戦っています。   作:SUN'S

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ようやく巡り会えた地上最強の父親に「俺がお前を倒す!!」と息子は吼えた。そして、範馬勇次郎もまた笑みを浮かべて………

あの人がようやく帰ってきてくれた。

 

約十六年ぶりに帰ってきた範馬勇次郎とテーブルを挟んで見つめ合う。あの頃より分厚くなった胸板に飛び込みたい気持ちを押さえ込み、清舟の帰りを待っていると玄関の戸を開ける音が聞こえた。

 

「アンタが俺の父親か?」

 

清舟はいつものように「ただいま」と言わずに学生服を脱ぎ捨ててシャツ一枚になって座布団に座っている範馬勇次郎に問い掛けた。ああ、やっぱり分かるのね。なんとなく親子の再会に感動しそうになったその時だった。

 

私の息子は真後ろに吹き飛んだ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「グッッッガアァァッ!!!?」

 

「フン、その程度の張り手で終わりか」

 

「なッッ…嘗めんじゃねえッッッ!!」

 

道場と母屋を繋げる中庭に吹き飛ばされた清舟は胸部を押さえるように暴れ狂いながらも立ち上がり、ギリギリと歯を食い縛っていつの間にか移動していた範馬勇次郎を睨み付けている。

 

どうしよう、私だけおいてけぼりだ。

 

そんなことを考えながら縁側に座り直し、二人のはじめての『じゃれあい』を見つめる。たぶん、清舟は戦っていると勘違いしているんでしょうけど。あの人と本気で戦える人なんて世界を探し回っても一人か二人だけだろう。

 

「すうぅーーーっ!!」

 

この前の組み手の時のように「こ」の文字を描くように左手を上向き、右手を下向きにして半身に構える清舟。あの人は相も変わらず構えらしい構えを取らず、だらりと両手を下げている。

 

「やはり天地無真流かッ!お前の母もまた同じように俺に喰らい付いてきたッッッ!!!」

 

範馬勇次郎は狂暴な笑みを浮かべて歩き出す。

 

「クルルアァァァァッ!!」

 

そこにいるだけで他者を威圧する巨体を揺さぶることなく、ゆっくりと楽しむように清舟の眼前へと向かっていき、二人の制空圏がぶつかり合った次の瞬間、清舟は振り下ろしの平拳と横向き手刀打ちによる拳撃「十字頸木」を範馬勇次郎の首目掛けて放つ。

 

ゴギャアァッ!!

 

骨肉の潰れる鈍い音が響き渡る。

 

しかし、潰されたのは清舟の両手だ。範馬勇次郎の巨木のごとき首をへし折ることはできず、むしろ清舟は拳を砕かれてしまった。……ふう、まずは落ち着きましょう。こうなるのは分かっていたはずよ。

 

「チッ、その程度か」

 

グググッ……と親指に押さえ込まれた中指を弾くように清舟の額に叩きつける。いわゆるデコピンで清舟は失神してしまった。あとで病院に行くとして稽古はどうしようかしら。

 

そんなことを考えていた時だった。

 

あの人の背後でゆらりと立ち上がった清舟は天地無真流の構えではない他流派の構えを取ってあの人に飛び掛かったのだ。もっとも、それで範馬勇次郎を倒せるわけもなく回し蹴りを受けて今度こそ完全に失神してしまっている。

 

「勇次郎さん、どうでしたか?」

 

「フン、所詮は餓鬼だな。すべての動きに無駄が多く街のチンピラ程度になら善戦するだろう。しかし、武術を修めたものには通用しない。………だが、俺の血を最も濃く受け継いでいるのは清舟だ」

 

「えぇ、そうでしょうとも!」

 

フンスと胸を張って宣言する。

 

私と貴方の息子なのだから弱かろうと強かろうと最強の称号を欲するところは何一つ変わらない。むしろ最近の清舟は不良と喧嘩するだけで満足しているように思えて不安だったくらいだ。

 

 

 




〈範馬勇次郎〉

地上最強の生物。

十六原清舟の父親。地球上で唯一の腕力家であり世界各地に息子あるいは娘など存在している。十六原清舟の母親とじゃれあいと称して組み手(本気ではない。ただの御遊戯のようなもの)をすることもあったため空想拳についても詳しい。

〈天地無真流〉

架空の古武術。

『史上最強の弟子ケンイチ』に登場する流派。つかみ、毟る、引き裂く、その全てを兼ね備えた攻撃を主体とする。十六原清舟のベースとしているスタイルもコレであるが範馬勇次郎には通用しなかった。

『十字頸木』

天地無真流の技。

振り下ろしの平拳と横向き手刀打ちによる首のへし折りと頭部への打撃を併せ持つ攻撃。しかし、範馬勇次郎の巨木のごとき首をへし折ることも傷付けることもできなかった。

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