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第一話 エレン(メイド服の姿)
魔境の沿岸部、人族の住むアースレイド大陸行きの船が出る都市にて、一人の男とその使用人が閑散としたカフェで向かい合っていた。
男は無難なデザインの服ながらも要所要所に装飾が施されている一目見て平民ではないと分かる格好をしている。よくあるファッションだろう。
一方で使用人の方は特殊な格好だ。服装はいわゆるクラシカルなタイプのメイド服だが顔の上半分を仮面が覆っていて、もしこれで歩こうものなら街並みに馴染むことはないだろうといった格好である。しかし仮面があってもその整った目鼻立ちだとかセクシーな唇を隠しきれていない。なんなら身体の方もメイド服の上からその輪郭がハッキリするほどメリハリがついていて男の情欲を煽るけしからん身体をしているのが分かる。
この2人が閑散としたこのカフェを選んだ理由を推測するとするならば原因はこの女の使用人のせいであろう。
そこに女の容貌にギョッとしつつも店員がテーブルにコーヒーを二つ運んできた。一周回って不気味とも言える光景に店員がそそくさと去ると、男は粗雑にコーヒーをゴクリと一気に飲み干した。雰囲気もクソもない野郎である。一方で女はなんとも優雅な所作でコーヒー(砂糖たっぷり)を嗜んでいた。おいしいと言う気持ちが溢れ出たかのようにふわりと微笑みを溢す女に男はもう我慢できないと言った様子で言った。
「師匠、本当にその格好のまま旅する気かよ」
「だってその方が面白いんだもん」
そう、この2人は我らがTS超絶美人豊満肢体最強ホムンクルス師匠ことエレンと魔人族国家アルファの第三王子ことアレン=イブ=アルファである。
旅に出ることに決めた2人は最初の行き先として一端魔境をでて別の大陸に行くことにしたのだ。そこで候補に上がったのが数ある大陸の中では比較的距離の近い人族の大陸であった。
まぁしかしそのようなことよりも気になるものがあるだろう。なぜエレンはメイド服なんて物を着ているのか。それは本人が言っている通りただの気まぐれである。……気まぐれとはいえ抵抗なく女の服を着れるあたりいかにエレンが女の身体に馴染んでいるかが窺えるものであろう。まぁエレンは女の身体になってからの時間の方が遥かに長いので馴染むのも無理はないのではないだろうか。
いかにも貴族といった感じのアレンに使用人の格好をしたエレン。アレンはエレンの気まぐれで謎のロールプレイングに巻き込まれることとなってしまった。アレンとしてはようやくエレンに目が慣れてきたと思ったところにこのコスチュームチェンジである。おしとやかなメイド服と服の下から強く主張する肉体との絶妙な調和がまたアレンを狂わせようとしていた。
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快晴の空の下、船の上から日光をキラキラと反射する海を見てぼんやりとキレイだなぁなんて思う。隣にいる弟子に視線を向けると輝きを放つ海に夢中になっているのか、食い入るように海を見つめていた。
こういうところが純粋でかわいいなんて思うボクは親バカならぬ師匠バカなのであろうか。17歳のそこそこガタイのいい男をかわいいと思うとは……思考の女子化が深刻な気がするなぁ。女の身体に成り立ての時と比べると甘い物が好きになったり、下着を付けるのに慣れたり、なんなら下着を錬成する時にデザインにこだわるようになったりと男の時と比べるとなかなかに変化してる。どこかの論文で見た心と身体の繋がりってのもなかなかバカにできないね。
そんなことを考えていると不意に近くにいたカップルがイチャイチャしだした。
「君はあの太陽よりも眩しく僕を照らしているね♡」
「まぁお上手なこと♡これからもずーっと照らし続けてあげますわ♡」
「いやいや、困ったなぁ♡君の熱で火傷してしまいそうだ♡」
「火傷どころか、溶かす勢いで愛してあげますわよ♡」
「おやおや、積極的だねぇ……今夜は2人で溶け合おうか♡」
「えぇ、ダーリン♡」
……うん、やっぱり甘いもの嫌いかもしれない。人前で何してるんだろうね。この人達は。……これは弟子の教育に良くないかもなぁ。
「おい、師匠なんで目を隠すんだよ。海見えねぇじゃねぇか」
「君の教育上良くないものがあってね。万が一にでも目に入ったらよくないからね。師匠として弟子の精神を守るために仕方なくこうしているんだ」
どの口が言ってんだよとアレンは心の中で毒づいた。あと当たってんだよとも。
「あ、それよりももうすぐ着くみたいだよ。ほら」
船が向かう先、その奥に都市の影が見えてきた。そしてその姿はみるみると露わになっていく。一面が白の建造物や青の装飾で埋まっておりその光景は正に圧巻というものだ。貿易港兼観光地として有名な人族国家オメガの沿岸都市、イレキクゴス。潮風の運ぶ独特の匂いを感じながらボク達は最初の目的地に足を下ろした。
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観光もそこそこにボクは弟子に自分で働いて金を稼ぐことを教えようと彼を冒険者ギルドに連れてきた。依頼を受けるためには冒険者登録が必須なので窓口に伸びる列に並んでいると、一人の男が話しかけてくる。
「おいそこのメイドのねぇちゃん」
酒焼けした汚らしい声に思わず振り向くと、山賊然とした格好の中年の男がいた。服がパツパツではち切れんばかりといった筋肉が男らしさを主張しているが本人の纏う下品な空気が全てを台無しにしている。
「そこの坊ちゃんより俺にご奉仕する方がやりごたえがあっていいと思うぜ?」
目の前の男から感じる全身を舐め回すような視線……普通に不快だから死なない程度に痛めつけてやろっかな?
テンプレイベントだー!
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