下卑た笑みを浮かべながら最低な誘いをしてくる男に不快になりながらもどう調理してやろうかと思う。正直こいつを無力化する方法なんて数百個ある。なんなら四桁いくかも。油断してるのか隙が見え見えだし佇まいにもブレが目立つ。なるべく屈辱的な方法でこらしめてやろうと考えていると弟子がスッとボクと男の間に入った。
「これは俺の使用人だ。お前が手を出していいやつじゃねぇ」
ボクを庇おうとしているのか弟子がそう言うが男も食い下がらない。
「おいおい、そんな偉そうな態度とってちゃあお使えする気も失せるんじゃあねぇのか?」
そんなことを言う男に思わず特大ブーメランが刺さっていく光景を幻視した。弟子が上手いこと使用人とその主人といった設定を利用していたのを見習ってボクもいい感じに言ってみようかな。
「私が心から敬愛するご主人様はアレン様のみです。未熟で偉そうで、もう17歳だと言うのにガキのような言動の目立つ方ですが、成長が著しくてこれからが楽しみなお方です。決して貴方のような下衆に蔑ろにされていいお人ではないのですよ」
褒めてるような褒めてないような、そんなことを男に告げる。弟子から褒めてねぇじゃねぇかと言わんばかりの視線が届くが、まぁ男にとって重要なのは目の前の女にバカにされたことだというのは想像に難くない。
しかし、ここまでの流れで自分の劣勢自体は悟っているようだ。足が半歩ほど下がってることや、その怒りと悔しさでくしゃくしゃになっている表情からもそれは読み取れる。だがそれでも男は女相手に回れ右して敗退するなんてことは許せないのかボクに襲いかかってきた。
「このクソアマァ!」
弟子のことを目にも留めずにボクに殴りかかってくる下衆男。当然ボクの前にいた弟子がそれを見逃すはずもなく、弟子の拳が男の鳩尾を打ち抜いた。
「ぬぉあぁああぁ!」
ウィークポイントを的確に突かれたことによる強烈な痛みに野太い断末魔を上げながらその場で崩れ落ちる下衆男。その無様な様子にいくらか溜飲が下がる感じがした。しかし、ギルド内で騒ぎを起こすとどうしても目立ってしまうようで、あちこちから視線を感じるようになったのが辛いところだ。
一度出直して人の少ない時間にまた来ようかと思っているとギルドの奥から1人の男が現れる。短く刈り込んだその髪は大部分が白髪となっており、まぁまぁ年がいっていることが見て取れる。ただその重心にブレはなく、隙もないので実力者であるのは確かだ。
「そこのお二人さんや、迷惑をかけちまったなぁ。今日は不運が重なって警備のやつがいなかったんだ。俺は冒険者ギルドイレキクゴス支部ギルドマスターのグランド。まぁこっちにも面子というかそういうものがあるからよ、俺の管轄下でトラブルが起こってしまったことの詫びをしてぇからちょっと奥まで来てくんねぇか?」
「冒険者登録もついでにできるならいいぜ」
「もちろんそうさせてもらう」
「ん、なら特に文句はねぇよ」
弟子の魅了耐性を鍛えるために隠蔽効果のついてない仮面をつけてたから襲われたのかなぁなんてことを考えつつ、ギルドの奥へと入っていくグランドと弟子の後に続いた。
*・゜゚・*:.。.。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「へぇあんた魔境の国の王子なのか」
グランドから謝罪を受けた後、冒険者登録も済ませて今は雑談タイムに突入していた。
「んでそこのメイド服の嬢ちゃんがあんたの師匠と……確かに隙がねぇな。てか嬢ちゃんはなんで受付嬢としてのバイトをするんだ? そこの王子様の師匠としてついていくもんじゃねぇのか?」
「ここ一ヶ月ほど散々面倒をみてきたからね。ここらで一人で活動させてさらなる成長を促そうと思ってるんだ」
会話の通りボクは受付嬢、弟子は冒険者として活動することになった。事の発端としてはグランドが冗談で、嬢ちゃんは綺麗だから受付嬢でもやってくれたら人気も出て良さそうだと言ったことだ。そこにボクがちょうどいいと乗っかった形である。もちろんボクがアドバイスをやるのも弟子の成長には有効なんだけども、やっぱり自分で考えて行動するってのも一つの経験値になるからどちらにせよ別行動を考えていたんだよね。あと受付嬢をやったことないからやってみたかったのもある。事務仕事もなんのそのだと言ったら即採用だったよ。栄えてる都市のギルドは大変だね。
「そうだ、話は変わるけどいい宿を紹介してくれないかい? 宿を見つけるのをすっかり忘れていたんだ」
昼は別行動をとるけど宿は一緒にして一日の出来事とかを共有しようと思う。じゃないと一緒にここにきた意味ないしね。
「それならいいところがあるな。ここから出て右に3番目の路地の先にある宿だ。地味なところだが価格以上に満足できると思うぜ」
「いいね、そこにするよ。じゃあそろそろボク達は出ようかな」
「あー嬢ちゃんいきなりでわりぃんだけどそこの王子と2人で話してぇことがあるから先に出てくんねぇかな」
「ふーん? まぁいいよ。じゃあ宿先にとっておくからね」
あったばかりの弟子にギルドマスターであるグランドが話したいこと……なんも思いつかないなぁ。まぁいいや、さっさと宿行こーっと。
*・゜゚・*:.。.。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゚・*
エレンが出て行った後の部屋、グランドはおもむろにアレンへと話しかけた。
「あんた嬢ちゃんのこと好きなのか?」
今日初めてあったおっさんからのまさかの質問である。また恋バナというのが答えにくいところだ。そう、このグランドはなかなかに歳がいっているが恋バナが大好物なのである。本人が独身であることが自分が出来なかった恋愛への憧れを表しているようでなんとも哀れだ。
アレンはいきなりの質問に不意を突かれる形となった。
「ん、あぁもちろん好きだぞ」
しかし普通の者とは一味違うのがアレンという男である。恋がどのようなものかをかけらも理解していないこの男に恋バナという概念はなかった。この答えは十中八九師匠として、人間として好きだという意味だろう。弟子から師匠への恋の気配を感じとっていた恋バナ好きの
「へぇじゃあいつもお師匠様で
「……」
アレンは黙った。まさかの猥談でありそしてまさかの図星であった。恋愛のレの字もないアレンであるが、第三王子として一応そういうことに関する教育は受けていたので、もちろんそう言う時の発散の仕方についても教わっていた。王宮にいた頃はそういう気持ちになることすらなかったアレンだが、エレンと出会ってからは定期的に爆発しそうになるので発散しないといけなかった。まぁエレンのような女といつも一緒にいるならばそれは当然のことであろう。そのような時
無言を貫いて実質的に肯定してしまっているアレンに、恋バナ好きの
はい、やっぱエレン師匠と一緒にいて我慢できてたはずがないんですよね。仕方ないね。男の子だもんね。
高評価、感想、お気に入り登録が僕の燃料になります!モチベをくださーい!!