魂の子   作:aly

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 この作品は登場人物たちの主観で描いておりますので、彼らに見えないことは描写していません。
 ですが第三の目である皆様には疑問が残る点があったことは頂いた感想から想像に難くありません。
 拙い書き物の内部を公開するのは恥ずかしいのですが、熱心に読み込んでくださった方のために一部残しておきます。
 興味ないよーって方はスルーしてもらって構いません。


おまけ
設定資料


☆1.ヒスイの名前の由来(物語のはじまり)

 彼がアイの子供であることを物語初期から提示するためにキラキラネームをつけました。ラベンダーヒスイという宝石は薄い紫色をしていますが、アイの瞳の色であるバイオレットの明度をいじると似たような色になります。

 アイが死ぬ際に瞳の色が濃くなったことから、ヒスイが窮地に至ればアイの色になるようになってます。

 また、翡翠という宝石は産地が限られていることから古代では様々な儀式に用いられました。例えば薬の材料、楽器の部品、生贄の心臓をくりぬくナイフの刃、埋葬などです。魂という霊的なものを扱う本作にぴったりな石です。数ある似たような色の宝石からこれを選んだ理由です。

 薫という字はラベンダーの和名が薫衣草だからで、カミキヒカルを連想させてしまったのは偶然でした。

 

 

 

☆2.魂のない子供たち(主人公の誕生)

 当初は森本ベイビーが一歳前後=吾郎先生の死亡のタイミングで魂は合流する予定でした。

 しかしそこまで生きてこれたなら別に他の魂は不要ではと思い、魂の時間遡行というヤバい設定が生まれました。

 双子の魂はそれぞれの形で黄泉に向かう途中(天と地へ)で因幡の兎に掻っ攫われます。そして吾郎先生の遺体があった祠で国産み伝説のようにぐるぐる混ぜられます。それでもほころびが出るので吾郎先生が死んだタイミングで身体に残ってた魂の欠片を使って保護されます。

 その後胎内にいる森本ベイビーに因幡の兎によって魂が運ばれ、一年かけてじっくりと一つになったのが主人公です。

 料理をする方ならイメージしやすいと思いますが、パン生地のように小麦粉と水分のバランスが調和して初めて生命になれるのです。キリスト教ではパンは身体です。

 意識が吾郎先生に拠っているのは唯一大人だったからです。

 森本家の人たちの名前は一章を書き終える直前に決まりました。アイイズムあふれる名前を付けるためには理由が必要だと思ったからです。この段階で2章の内容が全て決定します。したがって、神話への関心がこのとき高まり、託宣という形で名づけが行われることになりました。

 

 

 

☆3.作中に関係する神社(オカルトの導入)

 本作では原作に登場する荒立神社以外にもいくつかの神社が登場します。

 まず大甕神社ですが、祭神に破れた天津甕星が封じられています。この神は自然信仰由来の星の神です。金星すなわち一番星の神とも言われており、『一番星を宿してる』ヒスイを救う神でもあります。

 また、東天紅鶏の存在が天の岩戸伝説に繋がるため、他の星宮神社ではなくここが登場しました。

 次に諏訪神社ですが、こちらは大部分が作中で説明されています。大甕神社と同じく大和朝廷に破れた土地であることが重要でした。最初は春日神社などいくつか候補はありました。

 メムちょがあかねの手のひらで踊らされた烏森神社ですが、ここもいくつか候補がありました。というのもヒスイの通う大学と音楽スタジオや会社のモデルの立地が影響していたからです。近辺の美容や縁結び関係の神社が候補にあがりましたが、新橋にメムちょが行くという展開に勝るものはありませんでした。

 高千穂神社は天の岩戸を連想させるほか、ストーリー上出さないほうが違和感がありました。

 最後に作中に出ないものの設定上重要だったのは高千穂にあるひのみこ社です。ここは一度失われた神社を再建したところなのですが、現在は神社ではありません。しかし波乗り兎の欄干があり、前身の出雲大社系の名残があります。なにより日御子という名前こそが疫病神と呼ばれた少女を巫という存在にする出発点になりました。そのインスピレーションはやがてヒスイにも到達します。これらの国津神に救われたヒスイは巫に相応しいのでは、と。

 

 

 

☆4.日本神話(巫と三人の子供たち)

 本作とは切り離せない存在となりましたが、当初はそうでもありませんでした。宮崎編あたりで強く意識し始めました。

 天岩戸が蘇りであるという説を目にしてアイの蘇りをゴールにすることが決まります。ここでダブルゴローの共闘プランが消えました。しかし蘇りの舞台だけがずっと決まりませんでした。映画編をなくして全員で儀式でもさせようかとすら思いました。このときのカミキはアイの死と再生による神格化を企む人物でした。さしずめカミキプロデュースの復活劇です。無茶苦茶です。実際に試写の場に決まったのは映画撮影のシーンを書き始めたときでした。行き当たりばったりここに尽きる。

 天津甕星はかなり早い段階でヒスイの魂を移動させた神として構想にありました。星の神であり金星を意味するからです。一番星はアイドルの歌詞にも頻出します。照らし合わせてみると面白いかもしれません。

 金星に関連する余談ですが三人の子供は死んだ順番にルビー=水星、ヒスイ=金星、アクア=地球となってます。占星術由来の解釈ですが……太陽から生まれた地球型惑星な三人でした。ちなみに翡翠は水星も担っているので、ルビーと結びつくのは自然の摂理でしょう。

 天鈿女命は原作にも登場しますが、同じ神社の祭神猿田彦命は触れられていませんでした。そこにオリジナリティを出せる余地を感じて猿田彦命のことを調べます。すると猿田彦命の目について面白い記述がありました。八咫鏡のように照り輝く眼をもつというものです。これが星の瞳=タグという表現につながります。また、迦楼羅天やガルダという存在が影響していたことから烏天狗が連想されます。神の遣いの誕生です。これが先の日御子に至って巫に定まります。

 

 

☆5.黄泉(物語のゴール)

 ヒスイと片寄ゆら、アイの三人は共通して死んだときに魂が天地に分離します。これは黄泉の国の在り処に由来します。

 根の国に代表されるような地下説もあれは、黄泉平坂に由来する山の上説もあります。これは弔いの方式の違いから生まれたそうなのですが、島国の日本では風葬と海葬がポピュラーだったと思われます。

 伊弉諾から生まれた三貴神は古事記によるとそれぞれ左目と右目と鼻から生まれます。左目から生まれた天照大神は高天原を治めます。空です。右目から生まれた月読命は幾つかの説があり、そのうち一つに海を治めるよう命じられたというものがありました。月と海は深い関係にあるのは明白です。

 伊弉諾もまた黄泉の国から帰ってきた蘇りの象徴です。ヒスイの2種類の瞳は二つの黄泉へ通じる道でもある、というのが彼の瞳が両目で異なる理由です。白い星は天、黒い星は海を示していたわけです。

 ……というのは後付けで、最初は普通にアイとカミキのカラーリングでした。

 

 

 

☆6.原作で未処理の伏線(原作への畏怖)

 15年の嘘の意味、アイが語った真実、カミキヒカルという人物の意図、謎の少女、そもそもの真犯人など原作では明かされていない伏線が数多く存在します。

 すべてを解決することはできないにしても、いくつかは私なりに考察し、本作に合う形で処理しています。

 たとえば15年の嘘は15年越しに暴かれる嘘という意味と捉え、アイが語った真実はアクアとルビーの本当の中身を知っていたということです。ビデオを見たのにアクアがルビー=さりなと気が付いていないのは、前世があることを知っていたと言及しただけということにしています。後付けです。

 カミキヒカルの意図は大前提として神々は芸能に秀でた存在を求めているという舞台設定があります。カミキは過去に巫に接触された経験があり、星の瞳の真実を伝えられています。この部分はカミキの妄想ではなかったのです。その後のアイこそが唯一無二の存在と考えて殺人を繰り返したのは妄想ですが。

 カミキヒカルは禁断の林檎を食してしまったので、怒った天鈿女命から芸能の才能を奪われます。その後のカミキヒカルの目的はアイを神に愛された最後の存在として残すことで、贖罪であり神への抗議でもありました。

 あとヒスイ=看護師さん説が序盤に多かったのが面白くて、最後に妹を巫として登場させてみました。もしかしたら看護師さんもかつては巫だったのかもしれませんね。

 

 

 

☆7.ヒスルビ(ハッピーエンド至上主義)

 本作の大テーマだったにも関わらず、ヒスイの正体を知ることで絶望的な関係になります。あ、これもう無理かもしれないとさえ思いました。しかしさりなちゃんが吾郎先生を好きになったのは、闘病中に唯一信じられる存在だったからで男女の愛ではないと思います。

 さて、ヒスイとの誤解の日々では、ヒスイ自身は吾郎先生から大きく変質していますから、その部分を受け容れていくうちに拒絶した後で違和感として深く残るのではと思いました。アクアも変質していますが、ほとんどが復讐のために向かったのに対して、ヒスイはのびのびと成長しています。ここでようやく吾郎ではないヒスイへの感情を定めるわけです。

 とはいえ二人が自ら歩み寄るのは難しそうだったので、大正義アイに無理やりくっつけてもらいました。もう少し掘り下げれば1話くらい作れたかもしれません。

 ちなみに二人の子がどうなったかはご想像にお任せします。

 

 

 

☆8.余談(ミステリ要素)

 ヒスイの中身を伏せたのは物語のエンタメ性のためでした。しかし解答編までにすべてのヒントを配置しなければいけなくなったのは自業自得での苦労でした。

 もう一つのミステリ要素は名探偵あかねと助手ヒスイの関係です。この段階になるとヒスイ主観が多くなると正体を隠しきれない危惧があったので、読者の代わりの目線になってもらうためにこの関係が生まれました。『エミリー教授のミステリー講座』という海外ドラマを観ていたのも濃く影響しています。会話に名言を引用するのはこのドラマの影響でした。




 執筆ツールに残された資料をまとめてみました。
 まとまった資料の他、各話の末尾などに点在していて、体系だてて書くのは少し苦労しました。自分の中の設定がぐんぐん変化していく様を改めて確認できたのは面白かったです。
 残る設定はその場のノリで生まれているものなので思い出せません。話に齟齬が生じているかもしれません。
 こういう変な設定で小説が出来たわけですが、毎日ひいこら言いながらでもなんとか完結できました。ぜひ皆さんも奇抜なアイデアで気軽に小説を生んでください。読みにいきますので!
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