少女は木刀で失った青春を取り戻す   作:いかるおにおこ

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辻斬り事件篇
エピソード1 出会いはゲームセンターで(前)


 週末、休日。どこまでも青空が広がる快晴と、穏やかで過ごしやすい気候だからか、キヴォトスのどこにでも大勢の人々が行き交っている。

 それはミレニアムの自治区も例外ではなかったし、そこには才羽モモイの姿もあった。上機嫌に短い金髪と服についているしっぽのアクセサリーを揺らして、彼女は日陰を選びながら小走りで駆けていく。

 

 彼女の行く先は自治区のはずれの方にあるゲームセンターだった。目当ては新作の対戦アクションゲーム。ゲーム開発部の部員としても、ひとりのゲーマーとしても新作のゲームは遊んでおきたかった。

 まだ稼働台数は少なく、遊べる店が少ない状態だ。だからネットで準備もしたし、イメージトレーニングだってした。強いとされる戦い方も予習済みだ。モモイは心の中で気合いをいれて、ゲームセンターの出入り口の前に立った。

 

 

 

 順番待ちは思っていたよりも長く、そこそこの列がならんでいた。

 よく清掃が行き届いている明るい店内でモモイは順番待ちの列に並び、あたりを見回していた。

 こんな時にゲーム開発部の友人たちがいたらいいのに。あのゲームも面白そうだねとか、そんな話ができるのに。

 モモイは誘っていないわけではなかった。しかし、ゲーム開発部のメンバーは全員、この日は用事があるからと都合がつかなかったのだ。

 それでも寂しいよりは楽しさや期待の方が上回っている。ここに来られなかった3人のぶんもめいっぱい楽しんじゃうんだから!

 

 遊べるまであと少しのところで、モモイは店内の隅の方が気になって目を向けた。そこに座っている少女が妙に目を引いた。

 袴や着物のような紺色の服装をしていた少女は、レトロな縦スクロールのシューティングゲーム「まだらはと」を遊んでいる。

 遊んでいるタイトルも珍しかったが、少女が銃を持っていなかったことに驚いた。

 水色の三日月が向かいあって輪状に見えるヘイロー、青く短い黒髪、集中してじっと画面を見る横顔は幼い印象を持ちながらも整っている。やはりどこにも銃がない。

 キヴォトスの住人であればなにかしらの武器を持っているのが普通だ。現にモモイだってピンクや紫で彩ったアサルトライフルを吊って携帯している。前の客も、後ろの客も、もれなく武器を身につけていた。

 

(もしかして、あれが武器なのかな)

 

 少女の腰のあたりに細い棒のようなものが見えた。

 距離が離れていてはっきりとはわからない。警棒なのかな、なんて思っていると、モモイの順番まであともう少しだった。

 

 

 

 

 

 

「てめー! なめたプレイングしやがってよォ!!」

 

 集中していたところに、どん、と筐体が揺れてしまって操作が乱れた。だから被弾して、最後の1機を失ってしまった。

 念願の「AC版まだらはとのワンコインクリア」を達成できたと思ったのに、誰が邪魔してくれたんだ。

 最終ボスとの決着が不本意な形で終わってしまって、水色の三日月のヘイローをいただく少女、山紫メイは思わず声をあげてしまった。

 

「ちょっと! あと少しでゲームクリア――」

 

 できたのに。そう言いかけてメイは開いた口を閉じられなかった。

 まだらはとの筐体にぶつかった金髪の小さな女の子を、4人のスケバンたちが取り囲んでいる。

 ピンク色をあしらった猫耳のヘッドホンにつけしっぽ、といった出で立ちの金髪の子は、スケバンたちにどつかれたらしい。

 まわりの客が野次馬のようにスマホを掲げたり、店員に通報しに行ったりしているのも見える。まわりはもう大騒ぎだった。

 

「なんで怒ってるの! 対策を立てられなかったあなたたちが悪いでしょ!」

「こっちの手が届かねーところから爆弾投げるだけで卑怯なんだよ!」

 

 なるほど。そっちにある対戦型アクションゲームのことでケンカになってしまったのだろう。しかし、ゲームの話で、こんな小さな女の子を囲んで怒らなくたっていいのに。

 

「お前生意気なんだよ! ちょっとツラ貸しな」

 

 ポニーテールのスケバンが金髪の女の子の頭をつかむ。手には拳銃。あれで痛めつけるつもりなのかもしれない。

 だから。考えるよりも前にメイは居合を終えていた。

 抜刀術のための木刀。肌身離さず持ち歩いているメイの武器。

 メイが木刀を鞘に納めたと同時に、金髪の女の子に手を出していたスケバンが大きくのけぞって、そのまま気絶して倒れてしまった。

 

「おい!?」

「なにが起きたんだ!?」

「もしかして、こいつが?」

 

 残ったスケバンたちは、そこで初めてメイの存在を認めたらしかった。金髪の女の子も不思議なものを見るようにメイを見つめている。

 

「なにしやがったてめえ!」

「居合で、こつんと」

「んだてめえ!? いっぺん痛い目見るか!!」

 

 3人のスケバンたちはそろって拳銃を抜く。どれも大きくて、弾が当たれば痛そうだ。メイは自らの木刀から手を放さず、真剣な面持ちでスケバンたちに目を据える。

 

「そんなもんで勝てると思うなよ!」

 

 左のスケバンにメイの木刀が閃いた。スケバンの持っていた銃は宙を舞っている。

 弱そうな、どこにでもいそうなザコが拳銃を弾き飛ばした?

 そんな衝撃で動けないでいるのだろう、スケバンたちが晒した隙を咎めるようにメイは木刀を振って攻撃する。

 一瞬のうちにスケバンたちは吹き飛ばされ、すぐに起き上がることはなかった。一度に急所を薙いだからだった。

 

「ここを離れよう」

 

 いまの光景に呆然とした金髪の少女の手を取り、メイはゲームセンターを出ていく。ここに留まっていたら面倒なことになるのは明白だった。

 

 

 

 

 

 

 助けてくれてありがとう。私は才羽モモイ。あなたの名前は?

 初対面であんなことがあったのに、メイの隣を歩く少女はとても親しげだった。少しとまどいながら、メイはゆっくりと口を開く。

 

「メイ。山紫メイっていうの。どうしてスケバンに絡まれていたの?」

「ゲームで負けたあいつらがね、リアルファイトを仕掛けてきたの! それでメイの遊んでいたところにぶつかって……ごめんね」

「やっぱりそうだったんだ。それに気にしないで。わざとじゃないのは分かったし」

 

 ありがとう! モモイと名乗った背の小さな少女は嬉しそうに笑顔を浮かべていた。

 ここまでゲームセンターから離れれば面倒なことに巻き込まれなくてすむだろう。近くの公園でベンチと自動販売機を見つけたメイはそこを指さした。

 

「休憩しない? さっきので疲れちゃった。モモイはどう?」

「私も休む! そういえばメイはゲームが好きなの? まだらはとを遊んでいる人、初めてみたよ!」

 

 2つの属性を切り替えて敵を撃破するのが特徴の、縦スクロールのシューティングゲーム。それがメイの遊んでいた「まだらはと」というゲームだ。あまりに独特なルールのせいで遊ぶ人は少ないが、名作だ。

 モモイがそんなゲームのタイトルを知っていることに驚きながら、メイは自動販売機でオレンジジュースを買い、先に飲み物を手に座っていたモモイの隣に腰掛ける。

 

「ゲームは好きなほうだね。いろんなのを遊んでる。モモイは?」

「私もゲームが大好き! それにね、ゲーム開発もしているんだ」

「ゲーム開発? つくってるってこと?」

「そう! ミレニアムの部活でゲームを作ってて、私はシナリオライター担当なんだ」

 

 ということはモモイはミレニアムサイエンススクールの生徒なのか。メイは心の中で納得した。

 

「そういえばメイはどこの学校の生徒なの?」

「私は小さな学校の、私立ぽんぽこ学園っていう」

「え?」

「ホントにあるの、そういう学校が……無名の学校だし、特徴はたぬきのおじさんが校長をしているとかしかなくて」

 

 おもしろそう、なんてモモイが返すのを聞きながらひとくち飲み、メイはふと気になったことをたずねてみることにした。

 

「そういえばゲーム開発部って言ったよね」

「うん」

「さっきのゲームセンターに他の部員と一緒にいかなかったの?」

「ちょうど用事がかぶっててみんな来られなかったの! スケッチに行くとか、着ぐるみのバイトがあるとか、だから私だけで行ってたんだ」

 

 少し不満そうにモモイが言う。そのままメイの方を見て彼女の腰を見つめていた。

 

「その木刀、本物そっくりだね!」

「え? 結構良い木を使ってるからかな」

「とてもかっこいいじゃん! でもさ、メイは銃を持ってないの? 木刀よりも銃の方が使いやすくない?」

「銃、使えないんだ、私。撃とうとすると壊しちゃうの」

 

 そんな不思議なことがあるの? 驚いたモモイの顔を見て、その向こう側に見えた光景に、メイは表情が固まったのを自覚した。

 

「どうしたの?」

「さっきの奴らが来た。仲間を連れてたくさん!」

 




プロットは書いたけど、執筆の時間があまりとれていないので、更新頻度はあまり高くないです。最低でも隔週1話でやれればいいなと考えています。

ブルアカのパヴァーヌ見直したりしてキャラクターをしっかりつかもうとしていますが、うまくいかないことがあるかもしれません。なんかここ違うんじゃない?などあれば教えていただけると幸いです。
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