作戦決行日当日、私は以前訪れた農場と牧場に辺りに立てられた風車地帯の1番大きな風車の頂上から王宮と街を見渡していた。
乾燥した涼しい風が全ての風車を扇ぐように流れているのを感じていた。
良い世界だと思う。この景色だけで言っても本当に良い世界なんだ。風はそういった“世界”の感触を伝えてくれる。そうでない世界をも巡って、扉を開いてきたからよりそういう気持ちになった。
この後の予定では、蜂起に対して鎮圧が行われる。ここで1番に避けなければならないのは、王様が完全に粛清を成功させる事。実はレジスタンスのみんなには申し訳ないのだが、私は粛清を成功させない協力を約束したが彼らの蜂起の蜂起を成功させる協力をするつもりが無い。結果的に両者痛み分ける形で、私の目的を成し遂げるつもりでいる。その為の情報提供はしたのだ。だから、リーダーの彼女にはとても悪い事をしてしまった。『彼は間違いなく戦場には現れないし、謁見の間にも自室に当たるだろう場所にも居ないはずなのだ』。私はそこに向かう。目的を果たす為に。
自罰をしている間に、決行の時間になった。予定時刻を過ぎた秒針と王宮の正門の様子を両方確認しながら私は機会を待っていた。一瞬風の流れと、聞こえない筈の街の喧騒の音が止んだ。その様に感じた。そして、風に乗って来るように地鳴りの様な音が聴こえてきた。耳をすませば、その地鳴りがはっきりと人の怒号である事が分かる。
「じゃあ、行きましょう」
私は落ち着いて足場を選びながら風車を降りて、真っ直ぐ王宮に、作戦の予定地に向かって駆け出す。
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全速力で予定地の目の前に辿り着くと、全力で垂直に跳び上がり、状況と目標の位置を確認する。
「あれだッ……!」
王の親衛隊の一角を担う一将を捉えた。この場に居る筈の3将の内2将を再起不能にして道を作る。殺傷を目的としていないレジスタンスのみんながその道に進み王宮内で王を探している間に、私は見かけた余計な事をする連中を(物理的に)落ち着かせつつ、目的地に向かう。これだけ!
「なんだ!? アレは!?」
気づいたか。流石。重力だけでは足りなそうな鎧を貫く為に、空中で捻り、空間を蹴って加速し、再び捻りを加えて将の武器と上肢目掛けてキックを放つ。
「うらああああァッ!!!」
掛け声と共に将に命中する。まず1つ……!
「貴様ァッ!?」
城壁で戦っていたもう一将がこちらに気づいて大声を上げる。
「何事だ!?」
その声を聴いた残りの一将はレジスタンスを中に入れまいと屋内で防戦をしていた事が分かった。私は次の目標を定めた。近い防戦している将に仕留めた将を任せるつもりで、城壁に居る将に向けて視線を伸ばした。目が合ったがその程度では怯まなかった。むしろ怒りが増した様に顔が真っ赤に染まっていた。
降りて来られては拙いので、跳躍し弧を描いて城壁上に降り立つ。将以外の兵隊は驚いた様に着地場所から離れてくれた。
「どけッ! 貴様ら! アイツは私が相手をする! 下の救援に回れ! 急げッ!!!」
指示に従い、あっという間に城壁の上は彼と私だけの舞台になった。
「貴様ぁぁぁ……! 名を名乗れ!!」
「ごめんなさい! そんな暇は無いんです!」
その一言がスイッチになって、怒りに満ちた将が突撃してくる。彼が持つ剣先に集中し、私は間合いをとって避けた。しかし完璧に避ける事が出来ず髪や服の一部を斬られた。怒りで溺れている様にしか見えないが本当に命の危険を感じる程に冷徹な太刀筋で迫ってきた。このままでは見張り台を背にしてしまって身動きが取れない事を右眼で確認した私は、上か『下』かの選択肢を選ばされた。
「ッ!?」
1メートルあるかも知れない体格差なのに、怒りの将の突きは完全に私を捉えていた。私は下を選び、将の突きを私の頭角で弾きながら将の股下へと滑り込み、即座に立ち上がって勢いよく一撃を与えた。
「グォッ!? 〜〜〜!」
彼は突きの勢いそのままにうつ伏せになって倒れた。
「フゥ……」
私は一旦気持ちを緩め、大きく一呼吸吐いた。この将の強さに驚きつつ、彼の体勢を直した。その瞬間に彼の顔をハッキリと確認する事が出来た。先程の怒りの表情とは打って変わって穏やかな顔見せていた。フサフサの白い髭と白い眉も見えた。そこには厳しくも優しそうな老兵が静かに息をしながら眠っていた。