歴史の立会人に   作:キューマル式

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各人の水着は皆さんの脳内で御想像ください。


第13話 平和な浜辺で

 照りつける太陽と輝く海、それは戦争中だろうと何であろうと変わらない。

 

「あははは! マリー、こっちこっち!」

 

「待って、メイ」

 

 水辺で戯れるのはメイ嬢とマリオン。明るいワンピースの水着は、彼女たちがまだ15にも満たない年相応の少女だということを思い出させる。

 そのすぐそばではニキ、エリス、レイチェルの3人がビーチバレーに興じていた。

 

「あはは、それ!」

 

「ちょっとレイチェル! もうっ!」

 

「あ、こっちに!」

 

 彼女たちもスポーツタイプの水着に身を包み、その健康そうな身体を晒している。メイ嬢やマリオンよりも女性としての丸みを帯び、成長というものを窺える姿だ。

 周りでは、同じように開発スタッフや整備士たちが思い思いの遊びに興じている。

 ここはキャリフォルニアベースすぐ近くの海岸である。ハワイ攻略作戦が終了し、その功績も認められた我々リザド隊は休暇をもらうことになったのである。そしてこうしてのんびりと海岸で水遊びとなっているということだ。

 そういう私はというと、トランクスとパーカーというこれまた海用の出で立ちでパラソルの下で端末とにらめっこをしている。

 

「おにーさん、泳ごうよ!」

 

「兄さんも、さぁ」

 

 水遊びをしていたメイ嬢とマリオンがこちらにやってくる。

 

「すまないがやることがあるのでな。

 2人で楽しんでいるといい」

 

「えー、休暇なのにお仕事なの?」

 

「休みも大切です、兄さん」

 

「そうは言うがな、部下が休んでいるうちに仕事を進めるのも、上に立つ者の役割だということだよ」

 

 そう言って2人の方を向くと……。

 

「へぁっ!?」

 

 ……おかしな声を洩らしてしまった。

 何故なら……2人は私の嫌いな、あの赤い物体を美味しそうにシャクシャクやっていたからだ。

 

「あ、お兄さんも食べる?」

 

「おいしいよ」

 

「……いや遠慮しよう」

 

 私は2人の食べかけのスイカバーを極力見ないようにして丁重に断る。アイスクリームなどならまだ分かるが、あの2人は何故スイカバーなど食べているのか?

 私が断り続けていると、しばしの間2人は不満そうにしていたが諦めたのかそのまま海に戻っていった。

 しばらくすると、今度はニキ・レイチェル・エリスの3人がやってくる。

 

「少佐、おつかれさまです!」

 

「今は休暇中だ、敬礼はいらんよ」

 

 代表するように真面目に敬礼をしてくるニキに、私は苦笑する。

 

「少佐は何を?」

 

「なに、少し君たちの成長を確認していたところだ」

 

 そう言って見せる端末には、ニキ・レイチェル・エリスの戦績が表示されている。

 

「3人とも目覚ましい戦果だ。

 これではもう新兵(ルーキー)とは言えんな」

 

「そんな、少佐とクスコ中尉のおかげですって」

 

「謙遜することは無いぞ。

 レイチェル、君はここぞというところで敵に肉薄し、相手の防御に穴を開けている。

 その君を守るように的確にニキが動き援護する。

 この一連のコンビネーションにはどのような敵でも手を焼くだろう。

 これは戦果にも表れている」

 

 この2人は共同戦果が多い。その辺りのコンビネーションは見事だ。

 

「少佐にそう言ってもらえるとは、自分もレイチェルも恐縮です」

 

「うむ。 そしてエリス」

 

「は、はい!」

 

 私が名前を呼ぶと、エリスは弾かれたように返事をする。

 

「そう構えることはない。

 君の戦績も見事だ。 確かにまだ射撃・格闘と心もとない部分はある。

 しかし君の努力の跡はしっかりとこうして戦績に残っている。

 この間のハワイでのデプロックの撃墜を見させてもらったが、見事な予測射撃だった」

 

「そんな、あれはマグレで……」

 

「ならばマグレを必然に変えるように努力するといい。

 今後とも、期待している」

 

「は、はい!」

 

 その後、3人と2・3取り留めもないことを話すと、3人は再び連れだって海へと向かっていく。

 それを見て私は再び端末を見るが、その時周りの男たちからどよめきが起こった。

 何事かと思い視線を巡らそうとすると……。

 

「少佐、ここ宜しいですか?」

 

 そこにはクスコの姿があった。抜群のスタイルをまるで見せつけるように、際どい赤のビキニで身を包んでおり、男たちがその姿にどよめく。

 

「海岸は私の所有ではない。

 好きなところでくつろぐといい」

 

「そうですか、では」

 

 そう言って栗色の髪を掻き上げると、サングラスを掛けてビーチチェアへと座った。

 そのしぐさ一つ一つに周りで見ている男たちがどよめく。彼女自身も自分の姿に自信があるのだろう。そのどよめきに、まるで誇らしいかのように薄く笑う様はどうに入っている。

 

「少佐は泳がないのですか?」

 

「私はインドア派でね。

 こうして端末をいじるほうが合っている」

 

「それは残念です。

 一度、少佐がそのヘアバンドを取っている姿を見てみたかったものですから。

 絶対に外さないので、実は身体の一部なんじゃないかと兵たちの間では有名ですよ」

 

「ヘアバンドの適度に頭を締め付ける感じが好きでな。

 なに、私とてなにも四六時中付けている訳ではない。

 シャワーとベッドに入るときにはさすがに外すよ。

 そんなに興味があるのなら、見せようか?」

 

「あら? それはシャワーとベッドにまで付いて来い、という夜のお誘いですか?」

 

「魅力的な話だがやめておこう。

 私程度ではクスコ中尉のような美女には釣り合いが取れんよ」

 

 私がそう言って肩を竦めると、クスコは意外そうな顔をした。

 

「……正直意外です。

 少佐はこう言った冗談は苦手かと思っていましたから」

 

「私とて堅物というわけではないよ。

 冗談くらいはわきまえているし、士官学校時代はそれなりに遊びもした」

 

「きっとその甘いマスクで女の子をたくさんお泣かせになったんでしょうね」

 

「そういじめんでくれ、クスコ中尉」

 

 面白そうにコロコロと笑うクスコに、私も苦笑する。年齢は同じくらいのはずだが、完全に遊ばれていた。

 

「ですが安心しました、少佐に恋慕を抱いている娘はそれなりにいますので。

 少佐はそういったことに興味がないという噂でしたが、その子たちも頑張れば少佐と添い遂げられるという情報は朗報ですわ」

 

「ほう、そんな噂まであるのか?」

 

「女は噂が大好きな生き物ですから。

 特に少佐は有名人ですからね、色んな噂が付きまとってますよ。

 例えば……『ロリコンである』とか」

 

「ああ、それは私も知っている。

 はなはだ遺憾な話ではあるがな」

 

 出所はまたあの技術者だろうか?

 腕は良いのだが、少し考えねばならないかもしれん。私は少しだけ痛む頭を抱える。

 そんな私を面白そうに見つめると、クスコは追撃を仕掛けてきた。

 

「聞きましたよ。 あのメイちゃんから『お守り』を貰おうとしたそうで……。

 それにマリオンにも『兄さん』と呼ばせていますし」

 

「大人の悪戯に、何も知らないメイ嬢が踊らされそうになっただけのことだ。

 マリオンの方は行く当てのないところを保護したことで、私を慕ってくれただけのこと。

 私が強要したことは一度もないよ。

 しかし……」

 

 私はそう言って、水辺で遊び合うメイ嬢とマリオンを見つめた。

 

「愛おしいという感情は、確かにある」

 

「……驚きました。 まさかご自分からロリコンを肯定なさるとは……」

 

「そういう意味ではない。

 私はあの2人も愛おしいが、同じ感情をニキ・レイチェル・エリスにも抱いている。

 そして……君にもだ、クスコ」

 

「……え?」

 

「私は君を愛おしく感じているよ、クスコ」

 

 そう言うと、クスコは少しだけ顔を赤くしたようにして、聞き返してくる。

 

「それは……どういう意味で取ればいいのでしょうか?」

 

「これは以前にも話した私の持論だが、私は時代を動かすものは『女』だと思っている。

 そして、私はここにいる全員に時代が欲する才能を見出しているのだ。

 だからこそ、そんな君らを愛おしく感じる」

 

 その言葉に、クスコは呆れたようなため息をついた。

 

「……そうですね、少佐はそういう人ですね。

 少しだけでもときめいた私がバカでした。

 結局は人間としてでなくその才能を愛しています、ということですか?」

 

「……確かにその才能に期待する部分もあるが、それだけではなく一個人としても大事に思っている。

 そうだな……そう言う意味では君たちのことを『愛している』と言っても過言ではあるまい」

 

「……ここまで信用できない『愛している』は、初めて聞きましたよ」

 

「私は常に真摯に語っているつもりなのだがな。

 とにかく、君を含め私は隊のものを全員、大切に想っているつもりだ。

 少なくとも……このような戦争で散るべきではない。

 次代を創り、精一杯生きてほしいというのは私の偽らざる本音だ」

 

「……」

 

 その言葉に、クスコは押し黙る。

 今は連邦との戦争中だ、もしかしたらお互いに明日には死んでいるかもしれない。それでも生きて欲しいという私の言葉に、クスコが何を思ったのかは私は分からない。

 やがてポツリとクスコは言った。

 

「……少佐はこの戦争、どう見ますか?」

 

「……そうだな。

 周りは離れているし、砂浜には盗聴器もあるまい。

 それに休暇中の戯言だ、お互い好きに話すとしよう」

 

 そう言って周囲を確認し、私は少しだけ声を控えながら言った

 

「……正直、難しいと私は思っている」

 

「『ジオンは負ける』、と?」

 

「そこまでは言わんよ。

 今は優勢の上、ザクを大きく凌駕する性能のドムの量産にも漕ぎ着けた。その改修型のドワッジも順次生産され、現在あるドムの改修も進んで行くだろう。他にもハイゴッグや私の考えている新兵器のプラン、そして本国や様々なところで研究されている新兵器たちは連邦にとってはすべて脅威になることは間違いない。

 だが、それでも連邦の国力は脅威的の一言に尽きる。物量による飽和波状攻撃を繰り返されてはたまらないが、それができるだけの国力が間違いなく連邦にはある……」

 

「それでもモビルスーツがあれば……」

 

「連邦も研究していないと思うか?

 間違いなく、連邦もそう遠くないうちにモビルスーツを戦場に投入してくる。

 それまでの間に、何とかして技術的なり戦果的なり連邦に大きなアドバンテージを確保できるかどうか……この戦争の行方を握るのはそれだろうな」

 

「……」

 

 私の言葉に、クスコは押し黙る。その胸にあるのは不安なのか、はたまた別か……それは分からない。

 私はフッと笑うとクスコの肩を叩いた。

 

「心配するな、とは言わんが私も負けるつもりは無い。

 私は連邦には少々恨みを持っていてな……」

 

「……少佐も、ですか?」

 

「……実の親を、連邦が関わったテロで亡くした。

 連邦にもまともな人間はいるだろうが、少なくとも連邦上層部の既得権益にしがみつく腐敗しきったダニどもは滅ぼすべきだと、私は考えている。

 だからこそ、私は最善を尽くすことを誓おう。

 勝利のために、な」

 

 しばらく無言だったクスコは、やがて私をしっかりと見つめながら言葉を返した。

 

「……信じますよ、少佐のその言葉」

 

 その言葉に偽りは無かった。

 

「信頼には、応える。

 さて……飲み物でも持ってこよう。

 何がいいかね?」

 

「個人的には、少佐が酔う姿というのも見てみたいので何かアルコールを……」

 

「いいだろう、私もあまりアルコールには強くは無いが付き合おう。

 カクテルでいいかな?」

 

「お任せします、少佐」

 

「私のセンスには期待してくれるなよ」

 

 私は苦笑しながら、飲み物を調達しに向かう。

 

 

 その後も地球の新鮮な食品を使ったバーベキューでスタッフたちの労をねぎらい、英気を養う。

 それはこの戦争の中の、それでも確かにある平和の一幕だった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 南米……そこは連邦の本拠地である。

 その密林の中から、巨大な船が大地を踏みしめて進んで行く。

 陸上戦艦ビッグトレー、その長大な砲撃力で動く要塞とも言える連邦の兵器である。それが2隻、大量の61式戦車と航空機を連れて進んでいく。

 そしてその中に……数多くの青い巨人の姿があった。巨人のその単眼が、赤く輝く。

 向かう先は北米大陸。

 北米に、これまでにない激戦が迫っていた……。

 

 




次回からは、この物語序盤の激戦を数度にわたって投稿します。
シロッコとガルマは、北米を守りきれるのか?

ご期待下さい。
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