歴史の立会人に   作:キューマル式

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年末年始が忙しく、これが今年最初の投稿となりました。
今年もよろしくお願いします。

今回ははにゃーん様たち留守番サイドの攻防戦となります。
そして連邦にはネームドキャラが登場。
彼らのことが即座に分かったら、結構なガノタです。



第35話 敵奇襲部隊迎撃戦(その2)

「吶喊します!!」

 

「ナオ軍曹、待ってください!」

 

 100mmマシンガンを乱射しながら突撃するナオ=ジェシカ=パーカー軍曹のザクに追随し、セバスチャン=クリエ軍曹のザクがロケットランチャーを発射しながら駆ける。

 

「ジオンはここから出ていけ!」

 

 ナオは才色兼備な女性パイロットだが、ことジオンとの戦闘においてはこれ以上ないほどに勇猛果敢な戦いぶりを見せる。その100mmマシンガンで的確に、次々と物資を破壊していく。

 

「悪いけど、こっちも任務なんだ」

 

 クリエは、元はパイロットではなく整備兵である。ジオンの侵攻とその戦略にあって、パイロットの不足からせっかく整備したモビルスーツが稼働できず、そのためにまともな防衛戦もできずにメカニック仲間たちが次々と殺されていくという現状を見かねて自らパイロットに志願した整備兵兼パイロットである。

 ある意味ではシロッコの提案した『ソフトキル戦略』の成功を示すような人物であるクリエは自分たちの襲撃によって逃げまどうジオンの整備兵たちにどこか同情めいた想いを抱くが、すぐに任務だと余分な思考を振り払いナオのザクを援護する。

 そんなクリエのザクが放ったロケットランチャーは逃げようと離陸のために回転を始めたファットアンクルのローターに直撃、炎をあげながらローターが停止する。

 

「とどめ!!」

 

 そのファットアンクルにとどめを刺そうと、接近したナオ軍曹のザクが100mmマシンガンを構えた。

 その時。

 

 

 ガゴォォォン!!

 

 

 ファットアンクルの格納庫が内側から吹き飛び、そこからグフが飛び出してきた。勢いの乗ったグフの拳が、ナオのザクに叩きつけられる。

 

「ナオ軍曹!?」

 

「くぅ……このくらいなんだというの!!」

 

 その衝撃にたたらを踏んだザクだが、ナオはすぐに体勢を持ち直すとグフに向かって100mmマシンガンを構えようとした。だがそれより先にグフは一歩踏み出すと、ナオのザクに組み付く。

 

「これじゃ撃てない!?」

 

 ナオ機を援護しようとロケットランチャーを構えたクリエ機だが、ロケットランチャーはその爆風によってもダメージを生み出すもの、組み合っているような超接近戦では同士討ちの危険から撃てない。それどころかグフはナオ機をクリエ機との間にくるように、ナオ機を盾にしながら巧みに動いていた。

 

「このぉ!!」

 

 ナオも何とかグフを振りほどこうとするものの、単純なパワーではグフの方が上だ。とてもではないが振りほどけない。

 

「ナオ軍曹、今行きます!」

 

 クリエのザクはロケットランチャーを腰にマウントすると、かわりにヒートホークを構えた。接近戦なら組み合っていても援護できるという考えのもとでの、正しい判断だろう。

 しかし……。

 

『好き勝手やってんじゃないよ!!』

 

「うわぁ!!?」

 

 無数の弾丸が通り過ぎ、そのうちのいくつかがザクの装甲を叩く。クリエは慌ててザクを物陰に滑り込ませると、その弾丸の飛んできた方向を見た。

 そこにいたのは1機のザクだ。両肩がスパイクアーマーになっているほか、各所にも改造の跡が見受けられるのがメカニックでもあるクリエには一目で分かる。間違いなくただのザクではない。そのザクは右手にはMMP80マシンガンを、そして左手には巨大なガドリング砲のついたシールドを装備していた。

 

『ここまでやってくれたのですから……覚悟はできてんだろうな、クソども!』

 

 そのザクはマシンガンとガドリングを乱射しながら、戦場へと突っ込んできた……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 『ユーピテル』の格納庫に残っていた『ビームザク』の1機に搭乗したフローレンス=キリシマ大尉は装備したMMP80マシンガンと、左手の複合攻盾兵装、いわゆる『ガトリングシールド』を乱射しながら戦場へと駆けつけた。

 

「そこのグフ、乗ってんのは誰だい!」

 

 短距離通信で怒鳴るように問いかけると、その声にか細い声が答える。

 

『ご、ごめんなさい。

 私、ハマーンです』

 

「あの嬢ちゃん!?

 一体どういうことですの……ってぇ聞いてる場合じゃねぇわな。

 今行くからそれまでそっちを抑えつけときな!」

 

 言ってフローレンスはMMP80マシンガンとガトリングシールドを乱射する。その弾幕に牽制され、クリエのザクは物陰から出て来れない。

 そのままハマーンの援護に駆けつけようとしたその時だ。

 

 

 ピピピッ!!

 

 

「ッッ!!?」

 

 フローレンスの鍛え抜かれた実戦での勘で、警告音とともにフローレンスは機体を大きく後ろにステップを踏ませる。

 そこに巻き起こる爆炎、それは180mmキャノン砲の弾丸だ。もしそのまま進んでいれば直撃を受けただろう。

 

「小賢しい真似を!!」

 

 即座にフローレンスはその発射点である森に向けてMMP80マシンガンとガトリングシールドを乱射する。弾丸が木々をなぎ倒し、チロチロと燃える木片が宙を舞う。

 だが、同時に空に木片とはまったく違うものが飛び上がっていた。

 それはザクだ。その頭部には隊長機を示すブレードアンテナが立っている。さらにバックパックも一回り大型になり、コックピット前の胸部装甲も追加が加えられていた。

 

「角付き!? 隊長機かい!?」

 

 フローレンスは知る由もないが、これは連邦版ザクバリエーションの1機、隊長機使用の改造機である『ザク強化型』、通称『強化ザク』である。通信機能の強化と前面装甲の追加、バックパックの高出力化による機動力の増加といった総合的な強化のされた機体だ。

 その強化ザクが、フローレンス機からのMMP80マシンガンとガトリングシールドを大きく跳び上がって避ける。その手には肩に担いだミサイルランチャーが両手に計2基、構えられている。

 

『喰らえや!!』

 

 強化ザクに搭乗するのは連邦軍バルザリー小隊の隊長であるバリー=バルザリー少尉である。その咆哮とともに、ミサイルランチャーから全弾、計12発のミサイルが発射された。

 

「ちぃ、さかしいよ!!?」

 

 即座にフローレンスがMMP80マシンガンとガトリングシールドで弾幕を張り、ミサイルを迎撃しようとする。

 

『おうおう、派手だねぇ』

 

 その光景に軽口を叩きながらも、バリーは弾切れのミサイルランチャーを投げ捨てると、右手で腰の後ろにマウントされた100mmマシンガンを引き抜き、左手にヒートホークを握らせる。

 一方のフローレンスはミサイルを迎撃しきれず、1発が咄嗟に構えたシールドで防いでいた。

 

「ちぃ!!」

 

 巻き起こる爆風の中をバリーの強化ザクが100mmマシンガンを連射しながら突っ切り、ヒートホークを振り下ろす。赤熱したヒートホークの刃がシールドに食い込んだ。

 

「くっ!?」

 

『おらぁ!!』

 

 なおも体重をかけながらフローレンス機を押し切ろうとする強化ザク。

 

「舐めてんじゃ……ないよ!!」

 

 しかしフローレンス機はヒートホークを押し返すと、お返しとばかりにMMP80マシンガンを撃った。

 

『おっと!』

 

 しかしバリーの強化ザクはそれを、どこか余裕すら見せながら避けた。そして地面に降り立った強化ザクの100mmマシンガンの射撃に、フローレンスは咄嗟に機体を物陰に滑り込ませる。

 物陰に隠れながら、フローレンスはつぅ、っと冷たい汗が流れるのを感じた。

 

(こいつ……侮れないね!)

 

 フローレンスは強化ザクに乗ったバリーの技量に舌を巻く。それにフローレンスの乗る『ビームザク』はビーム兵器を使えるように改造を施しているというだけで、元はただのザクS型だ。純粋な性能面だけを言えば、強化ザクには劣る。そのため、さすがのフローレンスも攻めあぐねいていた。

 

『クリエ、ナオの援護を』

 

『りょ、了解!』

 

 そうしている間に、フローレンスによって動けなくなっていたクリエ機が自由になってしまった。バリーの指示によってクリエ機が再びヒートホークを持って組み合うハマーンのグフの元へと向かおうとする。

 

「マズい!?

 ハマーン、そこからさっさと離れな!」

 

『くぅ!?』

 

 ハマーンも状況が悪いことも分かっているらしい。グフはスラスターに火が入ると、ザクを引きずりながらその場を離れようとする。組み合うザクは盾代わりだ。今、その盾が無くなれば射撃武器のいい的である。組み合ったまま離脱を計るという判断は悪くない。

 だが、それをヒートホークを抜いたクリエのザクが追いすがる。このままではそうかからずハマーンは追い付かれて斬りつけられるだろう。

 その時だ。

 

『とりゃぁぁぁぁ!!』

 

『ッ!?』

 

 ファットアンクル輸送機から飛び出したドワッジが肩口からクリエのザクへとぶつかった。その衝撃にザクがたたらを踏む。

 

「今度は誰だ!!?」

 

『わ、私レイラです』

 

「今度はデコ娘の方かい!」

 

 新たに現れたドワッジはレイラだった。彼女は怪我をしたメイを預けると、残っていたドワッジに乗ってハマーンの援護に現れたのである。

 

「もう何にもいいませんわ。

 いいから手ぇ貸しな!!」

 

『は、はい!』

 

 言われてレイラが搭乗するドワッジは、両手に装備したMMP80マシンガンの乱射を始める。MMP80マシンガンの90mm鉄鋼弾がクリエのザクを襲う。

 

『う、うわぁぁぁ!?』

 

『クリエ!? 今行く!!』

 

 威力の低いマシンガンのためすぐに致命傷にはならないが、その弾幕にさらされ後ずさるクリエ機。そんなクリエ機を援護するためバリーの搭乗する強化ザクは目標をドワッジへと変更すると100mmマシンガンを放った。

 レイラはいったん攻撃をやめ、その100mmマシンガンの弾丸を避ける。ドワッジからの弾幕にさらされたクリエのザクは退避を始めた。しかしバリーの注意がレイラに向かったということは、バリーの抑えていたフローレンスが自由になったということだ。その瞬間をフローレンスは逃さない。

 

「今だ!!」

 

 チャンスと見たフローレンスは、物陰から空中にスラスタージャンプで飛び上がった。そして空中でMMP80マシンガンとガトリングシールドをクリエのザクへと向けて照準する。

 

「よくもやってくれたねぇ……。

 倍返しだよ! 受け取りな!!」

 

 そして放たれたものは弾の嵐だ。

 濃密な弾幕がまさしく雨のように降り注ぎ、ザクの装甲を撃ち抜いていく。

 

『う、うわぁぁぁぁぁぁ!?』

 

 その弾雨が腰にマウントしたロケットランチャーの残弾に引火し爆発、次いで本体のバックパックから引火しザクは上半身を大爆発させた。

 

「まず1機!!」

 

『クリエぇぇぇぇ!!?』

 

 上半身を失い、膝から倒れ込むザクの下半身。部下を失ったことにバリーは絶叫するが、バリーにも動揺している余裕はない。クリエ機を撃墜したフローレンスはそのままバリーの強化ザクに狙いを定めていたからだ。

 たまらず物陰に隠れるバリーの強化ザク、その様子を尻目にフローレンスは通信機に呼び掛ける。

 

「ここは任せて、あのハマーンの嬢ちゃんの方に行きな、デコ娘!」

 

『デコ娘って!?

 わかりました、行きます!』

 

 ちょっと額が広いことを気にしているレイラとしては『デコ娘』呼ばわりには思うところもあったがこの状況である、即座にハマーンの方へと援護に向かう。それを確認すると、フローレンスは強化ザクへと意識を再び向けた。

 物陰から飛び出した強化ザクの100mmマシンガン、それをフローレンスは機体を物陰に走らせながらMMP80マシンガンで応戦する。

 

「ちぃ! 敵ながら目がいいじゃないかい!!」

 

 フローレンスは時折フェイントとしてジグザグと動いているのにも関わらず、100mmマシンガンの弾丸は数発が構えたシールドに当たり、弾けていく。その腕に、フローレンスは素直に感心した。しかし、だからこそやりようはある。

 バリーは物陰に隠れたフローレンスのザクに、警戒しながらも接近する。部下であるクリエがやられたこともあり、バリーはそのザクだけは墜とすと意気込んでいた。

 その瞬間、物陰から再び空中に踊り出す影があった。またクリエを殺った空中からの攻撃かとバリーは反射的に反応し、機体を空中へと向かせる。だがそれは、フローレンスのザクではなかった。

 

『何ッ!?』

 

 空中にあったそれは、ガトリングガンの銃身と弾倉である。それを理解したとき、バリーは自分が敵の策にまんまと引っ掛かったことを悟った。

 

「目の良さが命取りだよ!!」

 

 パージしたガトリングガンを囮にし注意が行ったその瞬間、フローレンスはここが勝機とスラスターを全開にして物陰から飛び出した。MMP80マシンガンを連射しながら一直線に強化ザクへと駆ける。駆けながら、フローレンスの搭乗するザクのガトリングをパージして空いた左手にはビームサーベルの筒が握られていた。

 

「終わりだぁぁぁ!!!」

 

『う、うおぉぉぉぉぉ!!?』

 

 一気に接近戦に持ち込んだフローレンスの搭乗するザクが、ビームサーベルを振るう。その光の刃は強化ザクの胴体に直撃し、何の抵抗も無く横一文字に強化ザクを切り裂いていた。爆発の閃光に、強化ザクが砕け散る。

 

「やったかい……」

 

 強敵の撃破に、フローレンスは一つ息をつく。だがまだ終わりではない。

 今度はハマーンたちの方をと、フローレンスは休む間もなく機体を向けた……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 組み付いたまま、ハマーンの搭乗するグフは戦場から離れるように移動していた。

 

『このぉ!!』

 

 しかし、組み付いたままのザクも大人しくしているわけもない。グフの拘束から左手を引き剥がすとその左拳をグフへと叩きつける。

 

「きゃあ!?」

 

 その衝撃にグフがたまらずたたらを踏んだ。その隙に、ナオは右手の100mmマシンガンを構える。

 この至近距離である、低威力の100mmマシンガンも十分な脅威だ。普通ならばその脅威を前に少しでも距離を取りたくなってしまうものだがしかし、ハマーンは違った。

 

「!!?」

 

 この極限でハマーンが選んだのは前進だった。勇気のいる判断、だがその判断は正しい。なんといってもハマーンのグフは丸腰なのである。距離を放したところでいつまでも100mmマシンガンを避けきれるものではなく、反撃もできないとなれば極至近距離を維持し続けることこそ最善なのだ。

 

「たぁぁぁぁ!!」

 

『何ッ!?』

 

 100mmマシンガンの射撃より早く、再び踏み込んだグフが左足で蹴り上げる。それによってナオの搭乗するザクの手から100mmマシンガンが空中へ飛んだ。しかし射撃武装を失ったナオだが、その闘争心は微塵も揺らがない。

 

『この!? ジオンめ!!』

 

「!?」

 

 ナオの搭乗するザクはスラスターを全開にすると、グフへとぶつかっていった。

 

『このまま叩きつけてやる!!』

 

 グフを押し出しながら壁に叩きつけようとするナオ。

 

「まずい!?」

 

 それを感じ取ったハマーン、そこからの動きは条件反射に近かった。

 グフはぶつかるザクの腕を掴む。そして左足裏をザクの胴体に押し付けると、そのまま蹴り上げた。

 

「たぁぁぁぁぁ!!」

 

『ッ!!?』

 

 ナオには、何が起きたのか分からなかった。水平を保っていた機体がクルリと反転すると、次の瞬間には轟音と衝撃を伴って、背中から地面に叩きつけられていたのだ。

 これを外側から見ていて格闘技を知るものなら、ハマーンが何をやったのかわかるだろう。ハマーンはナオのザクの勢いを殺すこと無く、蹴り上げるように投げ技……柔道の『巴投げ』をグフで行ったのである。

 

「ふぅ……」

 

 『巴投げ』で地面に叩きつけられたザクはピクリとも動かない。グフを立ち上がらせハマーンはそれを確認すると、大きく息をついた。

 

『ハマーン!! 無事!!?』

 

 こちらに向かってくるドワッジから通信が入る。それがレイラのものだと気付いたハマーンは安心したかのように肩の力を抜いて返答しようとした。

 

「ええ、こっちは大丈……」

 

 

 キュピィィィン!

 

 

「!!?」

 

『ハマーン!!』

 

 電光のように駆け抜ける感覚、危機感とも呼べるそれをハマーンとレイラは同時に感じ取る。そして、その原因を2人は正しく感じ取っていた。

 

『ジオンは……ここから出ていけぇぇぇぇ!!』

 

 立ち上がったザクがスラスターを全開にして、左手でヒートホークを振り上げながらハマーンの搭乗するグフに背後から襲いかかったのだ。

 

「『ッ!!?』」

 

 そして、そこからのハマーンとレイラの動きはまさしく神業だった。

 レイラのドワッジが左手に持っていたMMP80マシンガンを空中に放り投げる。

 ハマーンはまるで背後に目があるのではないかというレベルの正確な機動でサイドにステップを踏む。紙一重でヒートホークをかわしたハマーンは、レイラの投げたMMP80マシンガンを空中で掴むと、そのまま反転した。そしてハマーンのグフと、ホバー機動でその横に並んだレイラのドワッジが腰だめにMMP80マシンガンを構える。

 

「『わぁぁぁぁぁぁ!!?』」

 

 2丁のMMP80マシンガンが咆哮した。

 至近距離から放たれた無数の90mm鉄鋼弾が、ヒートホークを振り下ろし隙だらけのナオの搭乗するザクを穿つ。

 その凶暴な弾丸の嵐の前に、ザクはまるで踊るように弄ばれる。そしてMMP80マシンガンのマガジンを撃ち尽くし空になったとき、ザクは糸の切れた人形のように膝をついた。

 

「お、終わった……?」

 

 極度の緊張から解放されハマーンは息を吐く。

 その時、ザクのコックピットハッチが開いた。

 一年戦争期のモビルスーツには、基本的に特別な脱出機構のようなものを備えた機体は少ない。そのため、機体が危険な状態になれば搭乗員は乗りこんだときと同じようにハッチを開き脱出するしかないのだ。

 そして、ハマーンとレイラはそこで今まで戦っていた相手の姿を見る。

 ザクから出てきたのは、女性だった。連邦の軍服を着たその女性は、ハマーンとレイラの2人から見ても素直に綺麗だと思える。そんな女性が脱出のためにコックピットから出てきたのだ。

 だがその時、ザクの受けた機体ダメージは限界に達していた。ザクのバックパックが爆発し、それに連動するようにコックピット内部が爆発する。

 そして……ハマーンとレイラの2人ははっきり見てしまった。コックピット内部からの爆発に吹き飛ばされ、その女性が空中へと投げ出されるその瞬間を……。

 ザクは膝をついた状態でも10m近い高さがある。その高さから、勢いよく吹き飛ばされたのだ。

 

 5回、である。

 吹き飛ばされた連邦の女性兵……ナオ=ジェシカ=パーカー軍曹が地面で『バウンドした回数』だ。

 絶対に、間違いなく生きていない落ち方と回数だった……。

 

「う、うぅ……」

 

『あ、ああ……』

 

 そのすべてを目の当たりにしたハマーンとレイラの2人は同時に、いいようもないほどの不快感を感じた。2人は喉を掻きむしるように胸元を開け、何度も何度も深呼吸を繰り返すが、まったく楽にならない。それどころか不快感は増し、遂にハマーンとレイラの2人は耐えきれずにコックピット内で嘔吐をしてしまう。

 それでも、全身を襲う不快感と震えは収まることは無かった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 やがて迎撃に出ていたアポリー・ロベルト両名も敵を撃退し、『ユーピテル』やファットアンクル、そして多くの貴重な人員は守られた。

 しかし、この襲撃は今まで連戦連勝であったリザド隊に、多くの傷跡を残す結果となったのである……。

 

 

 




そんなわけで奇襲部隊との攻防戦でした。
何とか勝利しましたが、ハマーンとレイラはキツイことに……。
バルザリー小隊も本来の陸戦ガンダムなら違ったかもしれませんが、機体がザクじゃなぁ……。


ナオ「ジオンはここから出ていけ!」

「はいはい、修羅双連撃修羅双連撃」

ナオ「(´・ω・`)ショボーン」


タックル連射のせいでカウンターの決めやすく攻略が簡単なナオさん、この作品でも酷い目に……。
次回は事後処理のお話。
帰って来たシロッコは何を思うか……次回もよろしくお願いします。




追伸:今週のビルドファイターズトライ。

   ガンダム定番の強化人間枠的なヒロイン、シアの登場でテンパるフミナ先輩が可愛い。

   しかしメイジンは登場するだけで笑えてくるというおいしいキャラだなぁ。
   新型機も出てくるようだし、これから楽しみすぎる。

   ただ……レッドウォーリアの出番がこれっきりってことは……ないよなぁ?

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