歴史の立会人に   作:キューマル式

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物凄く短め……戦闘シーンって本当に難しい……。


第05話 グラナダ侵攻作戦

 宇宙世紀0079、1月3日7時20分。

 ジオン公国は地球連邦政府に対して宣戦を布告、ここに『一年戦争』と呼ばれた戦いの火蓋が切られた。

 とはいえ、これは私の知る知識での戦争だ。ここに私という異分子が存在している以上、『一年戦争』となるのかどうかは分からない。だが、緒戦の流れは私の知る『一年戦争』と同じであった。

 

 宣戦布告の直後、ジオン軍は電撃的にサイド1・2・4に対して奇襲を敢行、NBC兵器を使用して壊滅的な被害を各サイドに与える。

 同時にジオン軍は月面都市グラナダの占拠のために進行を開始。私は、そのグラナダ侵攻部隊の中にいた。

 

「少尉殿、機体の状態は?」

 

「何処にも問題はない。

 いつでも出撃が可能だ」

 

 整備兵の言葉に、私はチェックしていたコンソールから顔を上げる。私が今乗っているのは頭部とスパイクアーマーのみを紫色に染め上げた『MS-06C ザクⅡ』である。

 

「出撃5分前です。 少尉殿、ご武運を」

 

 整備兵のその言葉に敬礼で返事をし、私はノーマルスーツのバイザーを降ろす。私の知る原作のパプティマス・シロッコはノーマルスーツは着なかったが、私の場合は元が平凡な一学生だ。心配の種を減らすためにノーマルスーツは着用することにした。それにこれからの実戦で私がどこまで戦えるものなのか試すという意味合いもある。

 私はハッチを閉めるとザクⅡを動かして武装を装着していく。

 右の腰にザクマシンガン、腰の後ろにパンツァーファウストを2本とマシンガン用のマガジンを2つ、左の腰にヒートホーク。そして最後に無骨なライフルを両手で抱える。

 この、ライフルはヅダの135mm対艦ライフルである。今回の戦いに際し、私がガルマに頼んで使用の許可を貰ったものだ。ツィマッド社としても、『その有用性を是非実戦で証明してほしい』と喜んで提供してくれた逸品である。

 それを装備し出撃準備を終えた私は、時が来るのを静かに待つ。

 そしてその時は来た。

 

『モビルスーツ隊は全機発進。

 敵戦力を撃破して下さい』

 

 その言葉と共に一斉に各艦からモビルスーツが出撃していく。

 そしてついに私の番だ。

 

『ご武運を、少尉』

 

「了解した。

 パプティマス・シロッコ、ザク、出るぞ!」

 

 その言葉と共にペダルを踏みだし、私のザクは宇宙へと飛び出した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 連邦軍のグラナダ駐留部隊は今、未曾有の大混乱の中にいた。

 

 ジオン公国からの宣戦布告、そしてほぼ同時にサイド1・2・4へのジオン軍の奇襲によって連邦本部との連絡系統は混乱に陥った、

 しかし、ここグラナダはジオン本国であるサイド3に近いこともあり、昨今の情勢から近いうちに戦争が始まることを予感していたため、ジオンの宣戦布告からの混乱からはすぐに立ち直り、攻めてくるだろうジオン軍に対して多数の巡洋艦、戦艦、そして宇宙戦闘機によって防御陣を組み、万全の態勢を敷いていた。

 その守りは厚く、例えジオンが攻めてこようと他方からの増援が来るまで持ちこたえられるだけの自信が連邦軍のグラナダ駐留部隊にはあった。しかし、その自信は即座に撃ち砕かれる。

 そもそも、この当時の連邦軍はミノフスキー粒子下での戦闘を軽視していた。マゼランやサラミスに代表される連邦軍の宇宙艦艇は、高度な長距離レーダーと誘導兵器による遠距離先制攻撃を念頭に置いた設計がされていた。しかしミノフスキー粒子の散布によってその頼みのレーダーと誘導兵器がすべて無用の長物になってしまったのだ。

 同じく、宇宙戦闘機もこの影響を大きく受けることになる。ミノフスキー粒子下で誘導ミサイルが使い物にならなくなった宇宙戦闘機は機銃による接近戦を挑まざる得ない状況になったが、AMBACによる姿勢制御を可能としたモビルスーツに対し、悠々背中を見せて弧を描きながら旋回する宇宙戦闘機は的以外の何物でもなかったのである。

 

「くっ、状況知らせよ!」

 

「『セレター』『ブイン』轟沈!!」

 

「『アリューシャン』より発光信号!

 我、戦闘能力ヲ喪失セリ! 後退許可ヲ請ウ!」

 

「トリアーエズ隊、損耗率80%を超えます!?」

 

 どれもこれもが絶望的な報告である。その内容に艦長は怒りと共に艦長席の肘かけに拳を撃ち下ろした。

 

「クソッタレ!

 ジオンのモビルスーツはタダのおもちゃじゃなかったのか!?

 ミノフスキー粒子下でもレーダーと誘導兵器で遠距離砲撃で難なく撃ち落とせるとか分析したバカはどこのどいつだ!!」

 

 連邦軍のグラナダ駐留部隊の旗艦、マゼラン級戦艦『ワシントン』の艦橋で艦長が余りに見積もりの甘かった上層部と、戦術分析結果を出した科学顧問団に怒りを露わにする。

 その時、オペレーターの悲鳴のような声が響く。

 

「艦長! 敵のザク(一つ目)が一機、対空防衛網を突破! 本艦に接近中です!!」

 

「弾幕を張れ! トリアーエズ隊も呼び戻せ!

 何が何でも、あのザク(一つ目)を叩き落とせ!!」

 

 その言葉と共に、周辺の艦とともに濃密な機銃の弾幕が張られるが、接近するザクはまるでそこに攻撃が来ることが分かっていたかのようにゆらりゆらりと踊るように機銃の弾幕を避けて行く。

 

「なんであれが避けれるんだよ!?」

 

 宇宙艦艇数隻による濃密な対空機銃網が、そのたった一機の敵を撃ち落とせない……その信じられない事実に、オペレーターは絶句した。

 そのザクの頭と肩は紫に塗られ、踊るように揺れる紫色は死に誘う不気味な鬼火のように見える。

 

「ウィルオウィスプ……」

 

 思わずそう艦長が呟くのと、ザクから放たれた135mm対艦ライフルの砲弾が艦橋を直撃するのはほぼ同時だった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「墜とさせてもらう!!」

 

 135mm対艦ライフルが直撃し、マゼラン級の艦橋が吹き飛ぶ。

 リロードが完了した135mm対艦ライフルを再び発射、それはメガ粒子砲の砲塔部分から突き刺さるとその内部で爆発、マゼラン級は船体を真っ二つにしながら爆発した。

 

「やはり対艦ライフルは有効だな」

 

 思わず笑みが漏れる。装甲の厚いマゼラン級相手では、ザクバズーカではこうはいかなかっただろう。対艦ライフルは貫通力に優れ、相手の装甲を貫通したのち内部で爆発することで艦艇相手に致命的なダメージを与える。こと艦艇相手にするならばザクバズーカより優秀であると言える。

 私は行きがけの駄賃とばかりに、サラミス級にも対空砲火を掻い潜り対艦ライフルを発射、爆沈させる。

 

「2つ! もう1つ!!」

 

 私は弾の切れた対艦ライフルを放って、両手に一本ずつパンツァーファウストを持つと同時に撃ちだした。その弾丸がサラミス級のエンジンブロックに直撃、後部のエンジンから跳ね上がるようにして爆沈する。

 

「こんなものか……」

 

 そう呟いた直後、レーダーに機影が映る。宇宙戦闘機のトリアーエズの部隊だ。

 その数は3機。

 

「そのような機体で私に勝てると思っているのか?

墜ちろ、蚊トンボ!!」

 

 トリアーエズからの機銃を避けるのと同時に抜き放ったザクマシンガンで先頭の1機を撃墜。残った2機はこちらに旋回しようとしてくるが素早く振り返り、そのガラ空きの後ろからザクマシンガンを撃ち放って1機を墜とした。

 旋回を終えた残った1機が再び私に接近してくるが、私はその機銃を避けると腰のヒートホークを抜き放ち、すれ違いざまに断ち切る。

 

「こんなものか……よし、後退する!」

 

 連邦艦隊はすでに潰乱を始めている。勝負はすでに付いていた。

 弾薬の補給のために後退した私の耳に、グラナダ制圧の報が届くのはそれからすぐのことだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「さすがだなシロッコ、素晴らしい戦果じゃないか!

 ジオン十字勲章ものの働きだよ!」

 

「何、MSの性能と連邦軍の怠惰な慢心のせいだよ」

 

 艦艇3隻を撃沈する戦果を上げた私が戻ると、ガルマが私を出迎えて労いの言葉を掛ける。

 

「我が軍はどの戦場でも大勝だ。

 連邦ごとき、我らジオンの敵ではないよ」

 

「ガルマ、それは気が早いというものだろう。

 この戦争は始まったばかり、将である君が緒戦での勝利で浮足立っては兵に示しがつかんぞ」

 

「あ、ああ。 それもそうだな。

 済まない、少し浮かれ過ぎていた。

 忠告、感謝する」

 

 私がたしなめるとガルマは素直に襟を正し、深く頷く。

 そう、戦争は始まったばかりである。

 

 

 開戦からの一週間に渡る、いわゆる『一週間戦争』はジオンの破竹の快進撃となった。

 ジオンはサイド2のコロニー『アイランド・イフィッシュ』に核パルスエンジンを装着、コロニーを巨大な質量兵器として落下させるコロニー落としを敢行した。

 落下するコロニーはしかし、連邦の抵抗のために南米ジャブローには直撃せず、連邦を屈服させるには至らない。

 

 ジオンは第二のコロニー落としのためにルウムに進出。

それを阻止するために連邦のレビル将軍率いる艦隊が出撃。

 

 ここにルウム戦役の火蓋が切られようとしていた……。

 

 

 


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