鏡の中の真実~13RIDERS Battle Story~   作:キューマル式

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自分で読んでいて物凄く懐かしい代物を発掘したので、投稿。
高校の仲間たちにはそれなりにウケたなぁ……とか、昔を懐かしんでいます。



第01話

 

 

いったん崩れ始めた状況は、一から作り直す以外に決して元に戻す方法はない。

 

 

                          ~~~霧間誠一~~~

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「このxを云々…」

 

 抑揚のない、どこかやる気が無いんじゃないかと思う教師の声が虚しく教室に木霊する。

 時折、窓からの心地よい春風が俺の頬をくすぐった。4月の風は暖かく、柔らかい。その風は俺の眼前に広がる、くだらない風景に微かな動きを与えている。

 西日の差す教室で見えるものはチョークの粉を全身に被り、だるそうに授業を進める教師。

 その手の動きをうつろな瞳で追いながら、無表情にノートに文字の羅列を書き付ける俺たち生徒達。

 これが高校に入ってから何百回とも繰り返されてきた退屈な光景だ。

 ……どうしようもないほどに、『退屈な日常』。そんな陳腐な言葉で表現できてしまうほど、陳腐な時間。

 

「……ふぁ」

 

 あくびが出た。

 何もかもがどうでもいい。そんな感情が俺――風間恭介(かざまきょうすけ)―――の心に沸き上がる。

 ちらり、と俺は隣に座っている女子生徒であり非日常のパートナー、松永沙羅の方を見た。

 

「……」

 

 彼女は俺の視線に気付くと肩をすくめて見せた。どうやら俺と同じ気分らしい……。

 彼女は特待生、いつでもテストでは学年首位で落ちこぼれの俺なんぞよりずっと真面目なのだが、この退屈さは彼女の限界を超えてるようだ。

 俺は彼女から視線を外し、机に突っ伏す。退屈なときには眠るに限る……。

 結局代わり映えしない、いつも通りの結論にたどり着いた。我ながら単純なやつだと笑いが漏れる。

 俺はゆっくり目を閉じて寝に入ろうとした。

 だが、その時……。

 

 

 リィィィィィィン……

 

 

「「……!!」」

 

 聞こえた……あの音だ。俺を非日常へと誘うあの音だ。

 辺りを見回してみる。

 沙羅以外の人間は、何事もなかったように日常の光景を続けていた。だがそれも当然だ、あの音は俺と沙羅にしか聞こえなかったはずなのだから……。

 

『どうするの?』

 

 沙羅が手もとのノートにそう書いてこちらに見せてきた。

 当然、俺の答えは決まっている。

 

「……先生、腹が痛いんで保健室行ってきます」

 

「お、おい!」

 

 教師の声を無視して、俺は教室を出た。

 

「……さて、行くか!」

 

 退屈な授業から開放され俺は廊下を走り出す。もちろん、行き先は保健室などではない。

 行き先は……戦場だ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 数十秒後、俺は屋上の直前にある階段の鏡の前に立っていた。学校から戦場に行くには、ここが一番いい。

 その時……。

 

「ちょっと、置いてくなんてひどいじゃない!」

 

 口を尖らせながら、沙羅が走ってきた。

 

「恭介の後だったから私が出てくるとき、先生もクラスのみんなもすんごい目で見てたんだよ」

 

「じゃあ、『先生、松永と一緒に少し出てきます、気にしないで下さい』とか本当のこと言えばよかったのかよ?」

 

「それも……困るけど……」

 

 そう言って沙羅は口ごもる。

 そりゃそうだ、そんなことしたら俺も困る。

 

「それより、とっとと行くぞ」

 

 そう言って俺は目の前の鏡に手を伸ばす。その手が、ゆっくりと鏡の中に入り込んでいった。

 

「お先!」

 

「あ、待ってよ!」

 

 俺と沙羅は、そのまま鏡の中へとずぶずぶと入り込んでいった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 その場所に向かって、俺たちは一歩、また一歩、足を踏み出していく。

 一歩歩くごとに、まるで水から浮き上がるように意識がクリアになっていく。

 隣には同じように歩く沙羅の姿。

 恐れる必要はない。 ここがどういう場所か、俺たちはよく理解している。

 

 そうしている間に、俺はポケットの中からカードデッキを取り出した。

 サイの紋章の入ったそれは、俺の命綱であり遊び道具である。

 隣の沙羅も同様に歩きながら黙々と、コウモリの紋章の入ったカードデッキを取りだしていた。

 この先、そこから気配がする。

 さぁ、今日の“戦場(遊び場)”に到着だ。

 

「やぁ、兄さんに沙羅さん」

 

 聞き慣れた声が俺の耳を震わせる。

 見ればそこにいたのは1人の男子生徒だ。この学園の1年を示す徽章を付けている。

 見なれた相手――こいつの名前は風間瞬介。一つ年下の俺の弟だ。

 

「瞬介くん、おひさしぶりでござるな♪」

 

「あっ、沙羅さん。

 どうも……」

 

 沙羅が楽しそうに声を掛けると、瞬介はかしこまったように頭を下げる。

 

「お前、なんでここに……」

 

 そんな俺の疑問に、瞬介は肩を竦めながら答えた。

 

「アレだけ『あの音』が聞こえたらこないわけにもいかないじゃないか。

 だから、授業抜け出してトイレの鏡からここに来たんだよ」

 

「ご苦労なこった。

 まぁ、見つからないようにしろよ」

 

 俺が知っている中で、この学校で『あの音』が聞こえるのはこの3人。

 しかも、弟は俺なんかと違い正義感溢れる男である。

 遊び半分でここにいる俺なんかよりここにいるのは当然と言えば当然だ。

 

「しっかし…入学して早々、授業フケてばっかいると担任に睨まれるぞ。

 少しは真面目にやっとけ」

 

「その言葉、恭介だけには言われたくないと思うでござるよ」

 

「……」

 

 ごくごく家族として当たり前な心配をした訳なのだが、沙羅の切り返しにぐうの音もでない。

 

「あはは……」

 

 そんな様子を瞬介は苦笑いしかできないようだ。

 俺はそんな瞬介から視線を外すと、辺りを見渡す。

 

「んなことより……いるな」

 

「うん……そろそろしびれを切らせて出てくるんじゃない?」

 

 その時だった。

 

 

リィィィィィィン……

 

 

 あの音だ。かなり近い。

 どうやらお客さんが来たようだ。

 

 

『ヴェヴェヴェ……』

 

 

 現れるのは醜い、白い虫に手足を付けたような異形の怪物『シアゴースト』だ。その数は3体。

 びりびりと、肌を通して感じる怪物たちの意思。

 それは最も原始的な感情……敵意と食欲だ。

 

「おう、化けもんの方々はずいぶんとご機嫌斜めらしいぞ」

 

「ほーんと。

 短気はソンキでござるよ、にんにん♪」

 

 楽しそうに俺と沙羅は言葉をもらす。

 瞬介だけが、どこか緊張した面持ちでいる。

 まぁ、瞬介の反応が正しいのだろう。俺と沙羅の反応の方が一般的に言えば、明らかにおかしい。

 

「兄さん、沙羅さん……」

 

「わかってる、わかってる」

 

 俺は何か言いたそうな瞬介にヒラヒラと手を振ると手にしたカードデッキを掲げた。

 隣では、沙羅と瞬介も同じようにカードデッキを掲げる。

 そして……高らかに一言、そのキーワードを吐き出した。

 

 

「「「変身!!」」」

 

 

 次の瞬間、俺たちは今までとは違う姿で怪物たちの前にいた。

 怪物たちの動揺が伝わってくる。

 

「あ!

 驚いてる、驚いてる!」

 

 沙羅の楽しそうな声。

 

「そんなこと言っている場合じゃないよ。

 あいつらを逃がしたら、人を襲うんだからここで倒さないと……」

 

 瞬介の緊張した声。

 そして……。

 

「それじゃいつも通り……楽しい化け物退治と行こうか!」

 

 俺の心底楽しそうな声。

 それを号令にしたように、俺たちは名乗りを上げた。

 

「仮面ライダーガイ!」

 

「仮面ライダーナイト!」

 

「仮面ライダー龍騎!」

 

 

「「「いくぞ(よ)!!」」」

 

 

 そして、静かに今日の戦闘(遊び)が始まった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『STRIKEVENT』

 

 

「おらぁぁぁ!!」

 

 肩のバイザーにカードを認識させると同時に、俺の腕に装着されるのはサイの頭をかたどった打撃武器、メタルホーンだ。

 メタルホーンをシアゴーストに叩きつける。その衝撃の前に、もんどりうって倒れるシアゴースト。

 すぐに立ち上がってこちらに突進してくる。

 

「だりゃぁぁぁぁ!!」

 

 それをこちらも肩から突進、互いにぶつかり合うが弾かれたのはシアゴーストの方だ。

 

「こう見えてもパワーにゃちょっと自信があるんでね!!」

 

 そう言って体勢を崩したシアゴーストに再びメタルホーンを叩きこんだ。

 再び倒れ込むシアゴースト。今度はダメージのためか中々起き上がってこない。

 

「おう、沙羅たちの方もやってるなぁ」

 

 シアゴーストはあまり強くない。そのため少し余裕が出来たうちに沙羅たちの方を見やると、そちらも順調な様子だ。

 

「たぁぁぁぁ!!」

 

 沙羅の変身した姿、仮面ライダーナイトはスピードに優れている。そのスピードで、手にした剣でシアゴーストを八つ裂きにしていた。

 日頃、にんにん言ってる沙羅だが、ああもスピードで翻弄する様を見せられるとまるで忍者のように見えてくる。

 

 

『NASTYVENT』

 

 

「いけ、ダークウィング!!」

 

 そして沙羅の契約モンスターであるダークウィングからの超音波を受けたシアゴーストは爆発して砕けていた。

 

 

 一方、瞬介の方も終わりそうだ。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

 右手に握るソードベントで呼び出したドラグセイバーでの連続斬撃の前に、シアゴーストは為すすべがない。

 そして倒れ込んだシアゴーストに勝負を決めるべく、瞬介はバイザーにカードを認識させた。

 

 

『STRIKEVENT』

 

 

 現れるのは龍の頭の形をしたナックルガード。同時に瞬介の背後に龍……瞬介の契約モンスターであるドラグレッダーが現れた。

 

「やぁぁぁぁ!!」

 

 そして瞬介はその龍の形をした拳を突き出す。すると、その先に向かってドラグレッダーが火球を吐いた。

 その火球の直撃を受け、シアゴーストは爆発の中に消える。

 

「あーあ、俺が最後か……。

 まぁいい、さっさと決めるか」

 

 そう呟いてから、俺はそのカードを肩のバイザーに通した。

 

 

『FINALVENT』

 

 

 その認識音とともに現れるのは巨大な鋼鉄のサイ、俺の契約モンスターであるメタルゲラスである。

 

「たぁぁぁぁ!!」

 

 その声と共にメタルホーンを構えて飛び上がる俺を、メタルゲラスが加速しながら押しだして行く。

 これが俺、仮面ライダーガイの必殺技……。

 

「ヘビープレッシャー!!」

 

 ロングホーントレインとも言える超加速からの一撃、その直撃を受けたシアゴーストは耐えきれずに爆発するのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ふぅ……今ので最後か?」

 

「何だ、大した事ないでござるよ♪」

 

 コキコキと肩を廻しながら辺りを見渡すと、沙羅がのんきに声を掛けて来た。

 それを瞬介が諌める。

 

「でも油断は禁物だよ。

 3体だったんだし、一人だったらたこ殴りにされてたね」

 

「まぁ、ゲームとしちゃその位の難易度の方が面白いんだが……」

 

「兄さん! 不謹慎だよ!!」

 

 思わず声を荒げる瞬介に、沙羅が間に入った。

 

「まぁ、いいじゃない。別にライダーやってる理由なんて人それぞれで。

 私や恭介みたいに楽しみでやってるのもいたっていいし、瞬介くんみたいに正義のためでも……ね?」

 

「うーん、でも……」

 

「柔軟に考えてみろ。 そう言うのが重要になってくるのは敵対したときだけだ。

 俺も沙羅もお前に敵対することはないんだし、良しとしろって」

 

「そうでござるよ、にんにん♪

 て、ああ~~!!

 ……いけない!もう30分以上も経っちゃってるわ!」

 

 ミラーワールドの反転した時計を見れば、確かにすでに30分もたっている。

 保健室にいないことが確認されるには十分すぎる時間だ。これはさすがにマズイ。

 

「2人仲よく放課後呼び出し確定だな、こりゃ」

 

「あぅ~、私の特待生の経歴に傷が~」

 

「今に始まったことじゃねぇだろうが……。

 こっちはその特待生を堕落させたって言われそうだ」

 

 沙羅の嘆きを軽くあしらうと、そんな姿に瞬介は苦笑した。

 

「あはは……。

 それじゃ僕は先に……」

 

「おう、お疲れさん」

 

「お疲れ様でござる♪」

 

「……くれぐれもこのまま学校サボらないようにね、兄さん。

 沙羅さんもよく見張って下さいよ。

 それじゃ!」

 

 そう言って瞬介は去っていった。

 

「ちっ、ばれてやがる」

 

「あはは♪

 今の恭介からは、『ダリぃ』っていうオーラをひしひしと感じるでござる。

 私でもわかるでござるよ♪」

 

「うっせぇ……。

 ん……?」

 

「……どうしたの?」

 

 ふと何かを感じて辺りを見渡す。

 なんだろう、この感覚は? 誰かに……見られている?

 

「誰か……いるのか?」

 

「気のせいでしょ?

 私はなんにも感じないよ」

 

 そう言って沙羅は首を傾げる。

 ……まぁ、多分俺の勘違いだったんだろう。

 多分……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 周囲に人がいないことを確認して、俺たちは鏡から出てくる。

 戦いの余韻……だろうか、頭がボーッとしている。まるで頭が鉛の塊になっているような気分だ。

 

「ん、なにボケっとしてるの?」

 

 ボケっとした俺はずいぶんバカ面だったらしい。沙羅が怪訝な顔でこっちを見ている。

 

「いや、なんでもない」

 

「変な恭介」

 

 そう言って彼女はクスクス笑う。そんな沙羅をともなって、俺は教室への道を歩き始めた。

 だが……。

 

 

 ガシャァァァァァン!!

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「「!!?」」

 

 破砕音、そして数秒遅れで聞こえてくる女子生徒の甲高い悲鳴。

 

「恭介、今のって……!」

 

「俺たちのクラスの方だ!」

 

 言って、俺は走り出した。

 

「あ、待ってよ!」

 

 沙羅も俺のすぐ後を走って追ってくる。

 あとから思えば……ここが最後の境界線(ボーダーライン)だったのだろう。

 戦いという非日常を日々遊びとして謳歌しながら、それでも帰る平穏で退屈な日常があった最後の境界線。

 そして……俺と沙羅はその境界線を越え、向こう側へと走っていく。

 完全な非日常という世界へ………。

 

 

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