鏡の中の真実~13RIDERS Battle Story~ 作:キューマル式
あれ、もっと活躍して欲しかったなぁ……。
何故に闇を恐れる?
生きていること自体が既に“お先真っ暗”だと言うのに。
~~~霧間誠一~~~
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数十分前まで、そこは退屈ながら平穏な、日常の空間だった。
だが、今は……。
「なに……これ……?」
沙羅が放心したように呟く。
さっきまで退屈の象徴のようだった空間は今、赤かった。
まるでペンキでもぶちまけたように赤い空間。所々に、元がクラスメートであっただろう物体。
そこはまさに、非現実を形にしたような空間だった。
そしてその中心には……。
『…………』
「!!?」
「ミラーモンスター、だと!?」
そこにいたのはホッケーマスクでも付けたかのような顔のモンスターだ。
その背には車輪のようなものも見える。
見たことはないやつだが間違いない。 こんな生物、現実世界には存在するわけがないのだ。
でも、何故こんなところに?
だが……そんなことは今は後廻しだ。
『……』
「ちょ、ちょっと!?」
「やべぇ……あいつ俺らに狙いを定めたぞ!!」
この肌に刺さるような感覚……間違いない、これは純粋な敵意だ。
「くっ!?」
彼女が懐からカードデッキを取り出そうとするのを慌てて止める。
「何するのよ!」
「バカ、こんなとこでデッキ使って戦ってみろ!
そこらへんで唸ってる重傷者はみんな死ぬぞ!!」
そう、ここでデッキを使って戦えばそこかしこで倒れている重傷者まで巻き込むことになる。
そうなった時、そこらへんで唸ってるやつらの命の保証はない。
「じゃあ、どうしろって言うのよ!!」
辺りを見渡してみる。どうやら動ける奴らはとっくに逃げ出したようだ。残っているのは虫の息で意識の朦朧とした重傷者だけである。
その時、悲鳴が遠くから聞こえてきた。それがどんどん学校内へと広がっていく。
助かった連中からパニックが伝染したのだろう。
……正直、助かった。
ここで俺たちを助けに来て貰っても困る。 犠牲者が増えるだけで、面倒な事この上ない。
だが、状況の好転もない。以前、モンスターの視線は俺たちを捕らえている。
どうする? 一体どうすれば……?
一瞬だけ……ほんの一瞬、俺は目をつぶる。
これから起こる戦いのために覚悟を決めるためなのか、はたまた目の前の光景から目を反らしたいからなのか……?
おそらく両方だったと思う。
俺は覚悟を決めてゆっくりと目を開ける。
「……っ」
今まで以上に凄惨な戦場が目の前には広がっていた。
辺りをもう一度見渡してみる。
濃厚な血の臭いの漂う教室。そしてところどころに転がるクラスメートたちだったもの。
冷静に考えてみれば、よく逃げ出したり卒倒したりしないものだ。同じことは隣にいる沙羅にも言えることだが……。
どうやら俺たちも、もはやまともではないらしい。こんな状況だと言うのに思わず苦笑してしまう。
「で、どうするの?」
さすがに、沙羅もこの光景を前に楽しむなんて余裕はないらしい。
心なしかその声は上ずっていた。
まぁ、余裕がないのは俺も同じなのだが。
「そんなもん一つだ……」
そう言って俺は窓を指差す。
「何とか窓に追い込んで、ミラーワールドに誘い込む。
その後は俺たちも中に入って変身、いつも通りあいつをぶっ飛ばす」
「わかった。 その作戦で行こうよ」
「分かっていると思うが、くれぐれも注意しろよ。
モンスターと生身でやりあえるわけないんだからな」
「わかってるわよ!」
モンスターの恐ろしさ・強さは俺たちが良く知っている。沙羅も良く分かっているだろう。
「じゃあ、いくぞ!」
「うん!」
俺と沙羅は再び、モンスターと向かい合う。
変わることのない、びりびりとした敵意。どうやらこいつはかなりの上級モンスターらしい。
正直、今すぐ逃げ出したいところだが逃がしちゃくれないだろう。
こいつの敵意はまっすぐに俺たちに向かっているのだから。
生き残るには戦うしかない!
その瞬間、そのモンスターは俺たちに向かって突進してきた。
「沙羅!!」
「!?」
俺たちは左右に飛んだ。その間を、モンスターが通り抜けた。
机といすを砕きながら突き進んでくるモンスターは大型トラックのそれである。その光景に思わずゾッとした。
モンスターは分かれた俺たちに視線を向けると、沙羅の方に向き直る。
「沙羅!!」
沙羅に狙いを定めたモンスター。その背後から気をそらすために、千切れて鉄パイプのようになった机の足を拾うと、そのモンスターを背後から殴りつける。
「恭介、危ない!!」
「!?」
振り向きざまにモンスターがその剛腕を振るった。
咄嗟に鉄パイプを盾にしたが、鉄パイプがぐにゃりと曲がり、俺の身体が吹き飛ぶ。
「かはっ!?」
叩きつけられた衝撃に目がちかちかして、重い息を吐いた。
鉄パイプを盾にしていなかったら、沙羅の声で咄嗟に後ろに飛んでなかったら死んでたところだ。
そんな手負いの俺を片づけようというのか、モンスターの視線は完全にこちらを向いた。
俺は壁を這うようにじりじりと動くが、モンスターの視線は俺を追ったままだ。
そして、モンスターの突進が始まった。
迫り来る死のラッセル車。
しかし……。
「このぉ!!」
沙羅の投げつけた鉄パイプがモンスターを背後から直撃する。
それは当然モンスターを止めるに至らないが、その注意を一瞬でも引いてくれた。
「よし!」
俺は転がるように飛び退く。そしてそこには……窓がある。
『……!』
こちらの意図に気付いたのか止まろうとするモンスター。だが、車は急には止まれない。
「おらぁ!!」
『……!!』
飛び退いた俺はモンスターの背後に回り込むと、そのまま身体ごとモンスターにぶつかっていった。
そして、そのまま窓からミラーワールドに突入したのである。
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「いつつ……」
「恭介、無事!?」
ミラーワールドに投げ出され痛む身体を起こすと、追ってきた沙羅がこっちにやってきた。
「ああ、無事だよ。
あとは……」
視線を向ければ同じように投げ出されたモンスターがゆっくりと立ち上がってきている。
それを見て、俺たちはカードデッキを手に取った。
「ここなら思いっきり本気が出せる!」
「クラスのみんなの仇、討たせてもらうでござるよ!」
沙羅の怒気のはらんだ声。
俺もこいつを許すつもりはない。
そして……俺たちはカードデッキを同時に掲げた。
「「変身!!」」
さぁ、第二ラウンドの始まりだ……!
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メタルホーンを構えモンスターに突進する。
「おらぁ!」
振るわれるメタルホーンの衝撃に思わずたじろぐが、そのモンスターにはそのまま反撃に転じてきた。肩口からこちらにぶつかってくるのを、こちらも体当たり。
「うぉ!?」
『……』
結果は同等、互いに弾かれる様に距離を開ける。
「このぉ!!」
その時、沙羅……ナイトが剣を構えて突っ込んできた。
『TRICKVENT』
その認識音と共に、ナイトが4人に分身する。偽物で相手を幻惑する『トリックベント』だ。
その4人のナイトが次々に斬りかかるが、大したダメージにはなっていないようだ。
そんな俺たちにモンスターが視線を向けると、今度はそのホッケーマスクのような顔から、光弾を放ってきた。
「ぐっ!」
「きゃぁ!」
メタルホーンを盾にしてナイトの前に出るが、その光弾の爆発力に思わずたじろぐ。
「結構強いモンスターだ」
「どうする、恭介?」
沙羅の言葉に、俺は笑いながら答えていた。
「そんなもん当然……倒す!」
俺はその言葉と共にカードをバイザーに通していた。
『ADVENT』
その認識音と共に、土煙を上げながら疾走してくるのはメタルゲラスだ。
メタルゲラスはその自慢の鋼鉄の身体で、そのモンスターへとぶつかっていく。
『……!?』
その衝撃にモンスターは吹き飛んだ。
「決めるぞ、沙羅!!」
「うん!」
そこに勝機を見た俺たちは、ほぼ同時に同じカードをデッキから取り出し、バイザーに装填する。
『FINALVENT』
バイザーからの低い声が響いた。
「いっけぇぇ!!」
空中に飛び上がったナイトを包むようにコウモリの羽根が広がり、ドリルのような円錐形へと姿を変えた。
そのままナイトは突っ込んで行く。
これが仮面ライダーナイトのファイナルベント、『飛翔斬』だ。
そのドリルはモンスターの身体を抉っていくが直撃ではない。まだ、浅い。
「決めて、恭介!!」
「当然! これでトドメ!!」
飛び上がった俺を、メタルゲラスが押しだす。
必殺のヘビープレッシャーは今度こそモンスターを直撃し爆発、モンスターは粉々に砕け散った。
「……終わったね」
「ああ……」
これでやっと一段落だ。だが、表の方ではこれからが大変だろう。
でもとりあえず今は……
「早く休みてぇ……」
「同感……」
それが俺たちの偽らざる本音だった。
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戻ってきた教室はひどいものだ。
教室は無茶苦茶に荒らされていた。
数体の無惨な死体と、そのぶちまけた血と内臓。そして廊下には十数人の怪我人…モンスターの犠牲となった連中が転がっている。
濃厚な血の臭いが立ちこめていた。
どうやら瀕死の重傷を負っている生徒ばかりのようだ。
ふと、自分の身体を見てみる。
身体がじっとりと赤く濡れていた。血の霧の中にいるような気分だ。
俺たちの姿はB級ホラー映画もかくや、という凄い事になっている。この血の霧の中にいるだけで俺も沙羅も制服は血みどろだ。
俺たちの間に数十秒間、死んだような沈黙が降りた。
「……ねぇ、とりあえず……落ちついて状況を整理してみない?
私、こう見えて無茶苦茶パニクってるんだけど……」
それは言えている。俺だって実は混乱しっぱなしで、何が起こったのかよく理解していない。
しかし……。
「俺たち一緒に行動してたんだから、同じことしかわかる訳ないだろ?」
「それもそうか」
「まぁ、状況から推理すると……。
あのモンスターが現れたのは教室の中心辺りじゃないか?」
「なんでそう思うの?」
「ほれ、そこの……」
俺と沙羅は同時に死体の方に目をやる。そして2人仲よくの顔が真っ青に変色した。
「はぅっ……」
……み、見るんじゃなかった……。
これはヤバい。 もう冗談抜きで……どうしようもないほど『壊れてる』。
ふと、子供の頃見た戦争映画を思い出す。戦争でミンチになっていく人間をリアルに描いたやつで、幼い俺にトラウマに近い多大なダメージを与えた映画だ。
だがもう映画なんかで見る死体なんて、怖くも何ともないだろう。
鮮血の滴るみずみずしいその死体は、グロさ十倍。気持ち悪さ百倍。不快指数は千倍だ。
さっきは色々起こってて気にならなかったが、今こうやって見るとこいつは本当にヤバい……。
本気でトラウマになりそうだ。
「……あ、あ~…えっと、その……」
「……は、話……戻すぞ。
あのモンスターが何で教室の中央辺りから現れたんじゃないかって思った理由だったな?」
沙羅が蒼白になってこくこくと頷く。
「この死体のやつら……ほとんど教室の中央辺りに座ってた奴だよ。
となれば発生地点は中央、そんでもって多分手鏡かなんかから出てきたんじゃないかと思う」
「あ、なるほど」
俺の言葉に納得したのか、沙羅は相槌を打つ。
「んで、分からないのはだ……」
そこまで行った時だった。
遠くからサイレンが響いてくる。警察だ。
誰かが呼んだんだろう。
この騒がしさから見るに、パトカーは7~8台といった所だろうか。
「……どうするよ?」
「とりあえず、
『私たちが騒ぎを聞きつけて来たときには犯人はすでにいなくてこの有様だった。』
『私たちは怪我をしたクラスメートを助けに来た。』
って事にしない?
あながち嘘じゃないし」
「……賛成。
でもこのナリで信じてくれるかねぇ?」
「さぁ?」
血塗れの自分の姿を見てため息をつくと、近くの椅子にドカッと腰掛ける。
それにならい、沙羅も近くの椅子に腰掛けた。
「……何か……もう疲れて何にも考えたくねぇ……」
「同感。
いろいろ考えるのは後にしようよ」
数人の大人達の、どかどかという足音が俺の耳に飛び込んできた。警察の皆様のご到着らしい。
「……来たみたいね」
「もう勝手にしてくれ……」
俺は投げやりに言って、目を閉じた……。