鏡の中の真実~13RIDERS Battle Story~ 作:キューマル式
「どっちの?」
「人外の方」
「どっちもじゃねぇか!!」
という会話が成り立っていたあの頃……。
「じゃ、これからの一週間大人しくしてろよ。
あと……くれぐれも余計な面倒を起こさないようにな。
特に男女間の問題で、だ」
そういい残して、柳川刑事はマンションを出ていった。
私たちは当座必要な服を買い与えられ、この1DKのウィークリーマンションに連れて来られた。
ちなみに恭介の部屋はこの隣、流石に男女で同室とはいかないだろう。
私たちを案内すると一息つく間もなく、柳川刑事は捜査に戻っていったのだ。
本当に刑事さんも大変だ。犯人なんていないけど無駄な事件捜査頑張って……などと全然応援になってない応援を心の中でしてみる。
「さて、と……」
柳川刑事がいなくなったとたん、浮かれ始める恭介。
マンションの鍵を指でクルクルとまわして、鼻歌を歌っている。
「どこ行くでござるか?」
「シャワー浴びて着替えてからコンビニ。
俺、腹ペコペコなんだよ」
「それにどうせなんだから、ファミレスにでも一緒にいこうよ。
お金はあるんでしょ?」
「よし……そうするか」
「じゃ、30分で準備するから準備できたら恭介の部屋に行くね」
「わかった。 俺も用意するよ。
んじゃ」
そう言って恭介はこの部屋から出て行った。
「さて、と……」
まずはシャワーを浴びよう。一刻も早くこの血で汚れた身体を洗いたい。
私はすぐにお風呂場でシャワーを浴びた。
温かいお湯が、汚れと一緒に疲れまで洗い流してくれるようで気持ちがいい……。
しばらくシャワーを浴びて、私は柳川刑事の買ってきた服を見る。
「……ろくなのが無いでござるよ」
多分急いでそろえたからだろうが、センスのカケラも感じられない。
下着はコンビニのやつだ。多分、同僚の女性に買ってきてもらったのだろう。
「こういう安いのは、かぶれやすくて嫌なんだけど……仕方ないか」
どうせ少しの辛抱だ。
着替えを終えて、時計を見てみる。
「嘘! もう30分たってるでござる!?」
どうやら思ったより長く、シャワーを浴びてたみたい。
私は急いで恭介の部屋に向かった。
私が恭介の部屋に来ると、鍵は開いており既に恭介は着替えを終えTVを見ていた。
「遅いぞ」
「ごめんでござる。
謝るから許して欲しいでござるよ」
「ま、いいか……それで、どこ行く?」
「近くのデニーズでいいよ」
「OK、それじゃ行くか」
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近くのデニーズは、夕食時を過ぎているにも関わらず、結構な賑わいを見せていた。
「ご注文はお決まりですか?」
「俺、ヒレステーキ定食Aセット、それにコーンサラダ。
飲み物はコーラを」
「私はスパゲティ・カルボナーラを一つ。それとオレンジジュース」
注文を聞いて、ウェイターが下がっていく。
「うわぁ……恭介よく食べれるね」
「ん? なんで?」
「ほら、昼間のことがあって私としてはお肉はしばらく見たくないんだけど……」
「あれは肉じゃねぇ、『赤い何か』だ。
そう割り切った」
そう言って意味もなく恭介は胸を張る。
「俺から言わせりゃ、お前の方が小食な気がするが大丈夫なのか?
もしかしてダイエットか?」
「ぶぶっー!
女の子へのデリカシーが足りません。 減点1!」
「……何の減点だよ、それ?」
「ヲトコポイント」
「……なんじゃそりゃ」
恭介が肩をすくめて笑う。私もつられて笑った。
こんな楽しい食事は……本当に久しぶりだ。
同じ体験をしたから、かな?
今までも一緒に同じ時間を共有して、お互いに信頼関係を築いてきたけど、今日またひとつの修羅場を一緒にくぐり抜けたっていう連帯感が、私と恭介のつながりを強くしているのかもしれない。
「ごちそうさま」
「……と、デザートは食べないのか?」
「いいよ、別に」
「……やっぱダイエットか?」
「減点2!」
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食事も終わり、私たちは帰路を歩いていた。
そろそろ……切り出してもいいかな?
「ねぇ、恭介……」
「……わかってる、事件のことだろ?」
恭介も分かっていたようだ。だったら話は早い。
「確か恭介は警察が来る直前、何か言おうとしてたよね?
あれは何を言おうとしていたの?」
「……そうだな、ここなら誰も聞いてないだろうし、少し話そうか」
「うん」
恭介にうながされ、私は公園のベンチに座った。
「あのモンスターだが……いくつか奇妙な点があったんだ」
「奇妙な点?」
「沙羅、モンスターは何で人を襲う?」
「そりゃ生きるためでしょ?
モンスターだって食べなきゃ生きていけないもの」
「だな。モンスターは食べるために人間を襲う。
でも昼間のあのモンスター……誰か一人でも喰ってたか?」
「あっ…」
言われて気付いた。何故今までまったく気付かなかったのだろう?
『モンスターの被害者の死体が残っている』、といういつもならありえないことに。
「あのモンスターの目的は『捕食』じゃない。もっと別のことだと思う。
俺の勘が正しければ……あのモンスターの目的は……」
「その目的ってなんなの?」
恭介はしばらくいいあぐねいてから、口を開いた。
「あのモンスターの目的は……『抹殺』じゃないかと俺は思ってる」
「ま、抹殺!」
突然飛び出した爆弾発言に、私の声が裏返る。
「そ、それって誰の!?」
「沙羅、あのモンスターは周りの仕留めた獲物にわき目も振らず、誰に襲い掛かってきた?」
「そ、それって……私たち!?」
「そう、あいつの狙いは俺たち……もっと言えばライダーじゃないかと俺は思う」
恭介が淡々と宣言した。
あまりのことに唖然としてしまう。だが確かにそう考えれば、辻褄は合う。
なら……クラスメイトたちは私たちの巻き添えになったことになる。
「で、でもさ。
あれがそういう命令を受けてたって事は『契約モンスター』だった、ってことだよね?
それっておかしくない?」
「そう、問題はそこなんだよな……」
そう言って恭介は頭をかく。
ミラーワールドのモンスターはどれも獰猛で、人の命令など聞くことは無い。
その唯一の例外が私たちライダーの『契約モンスター』だ。
特殊な契約を結んだ彼らは、契約を結んだ人物の言うことなら素直にしたがってくれる。
そのため、あのモンスターが恭介の言うように私たちの『抹殺』を狙っていたとしたら、命令に素直にしたがってくれる『契約モンスター』なはずなのだ。
だが、『契約モンスター』はライダーの力の源でもあるのだ。
契約を結んだモンスターが死ねばライダーの力も激減、ほぼ無力な『ブランク体』というものになってしまう……らしい。
これはあの謎の男がデッキを渡してきたとき言っていた注意事項の一つだ。真偽の程は分からないが信憑性は高いと思う。
言ってみれば『契約モンスター』たちはライダーのアキレス腱だ。
あのモンスターを倒したとき、私たち以外は誰もいなかったはず。
大事な契約モンスターを危険にさらし、倒されかかっても姿すら見せない……そんなことをするライダーがいるだろうか?
……いるわけが無い。
だからこそ、恭介も自分の考えが正しいのか悩んでいるのだろう。
『何故、大事なはずの契約モンスターを捨て駒のように使えるか?』ということを……。
「恭介の考えすぎだよ、きっと」
「だといいんだがな……」
私は勤めて明るく言ったが、恭介の顔はさえない。
その時だった。
リィィィィィィン……
「「!!?」」
確かに聞こえた。ミラーモンスターの接近音だ!
それとほぼ同時だった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
夜の公園に女の子の悲鳴が響き渡る。
「行くぞ! 沙羅!」
「うん!!」
私と恭介は悲鳴のした方向へと走り出した!
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公園に隣接したビルのガラス。
そこに女の子が一人、カニのようなモンスターによってミラーワールドに引きずり込まれようとしていた。
「あの子……!?」
その子は見覚えがある。というか……うちの学校の子だ!
「だ、誰か!」
必死で叫ぶ女の子。
でもその叫びもむなしく、私たちの目の前で女の子は鏡の中に引きずり込まれた。
「追うぞ! 沙羅!」
「うん!!」
私たちもすぐに鏡の中に突入する。
本日3回目のミラーワールド。私はミラーワールドへと潜って行く不思議な感覚に身をゆだねた。
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目の前には倒れた女の子。
そしてその女の子の前には……予想外の人物がいた。
「柳川刑事、何でこんなところに!」
「……」
私の声には答えず、柳川刑事はぞっとするような笑顔を浮かべていた。
そして柳川刑事は苦しんでいる様子は無い。
……嫌な予感がした。
「……まさか君たちもライダーだったとはね」
「君たちも?」
それはつまり……。
「あんたもライダーってわけか……。
でもあんた、その子を助けに来た、って雰囲気じゃないな」
「助ける? この娘をか?」
そう言って柳川刑事は倒れた女の子のお腹にケリを入れた。
「うぅ……」
苦悶の表情を浮かべる女の子に、私は思わず叫ぶ。
「な、なんてことしてるんですか!
そんなことしたら……」
「死ぬ、と言いたいんだろ?」
「……それだけわかってってやってるってことは、あんた始めっからその子を殺すつもりだな?」
恭介の言葉にギョッとして、私は柳川刑事の方を見た。
その顔は……酷く恐ろしい笑顔だった。
「当たり前だ、この日をどんなに待ったことか……。
俺と母を追放し、のうのうと暮らしていたこいつら柏木家の人間にやっと復讐が出来る……。
この力…この力でだ!」
「「……」」
ヤバい。マズい。この人……手に入れた強力な力に酔ってる。
「そういうわけで君たちは邪魔しないでくれ」
「……あんたの事情なんか知らねぇ。
けどここまで来てこのまま帰ったら寝覚めが悪くて仕方ないんだ。
俺の安眠のためにも、その子助けちゃくれませんかね?」
完全にイっちゃってる柳川刑事に恭介がおどけた様子で話し掛ける。
……私は柳川刑事の顔が邪悪に歪むのを見た。
「邪魔をするのか……そうだな、どうせいつかは殺すことになる相手だ、ここで殺しておくに越したことは無い……」
「おいおい、あんたそれは刑事の発言じゃねぇぞ」
「ミラーワールドに警察は要らない……必要なルールは『強い奴が生き残る』、これだけでいい……」
ゆっくりと柳川刑事がポケットからデッキを取り出す。
「……沙羅、とっとと逃げろ。
ここからは俺が売ったケンカだ。お前は関係ない」
恭介もポケットからデッキを取り出しながら、私に言う。
私は……。
「私も……戦う!」
「おい、バカ言ってねぇでとっとと行け!」
「あのね、恭介……逃がしてくれると思う?」
そう言って私は柳川刑事を指差す。もう完全にこっちを殺す気満々だ。
それに家が知られている以上、このままにして奇襲でもされたらどうしようもない。
なら……。
「なら生き残る確率の高そうなようにやった方がいいでしょ?」
「……わかった。 でも、間違っても無茶すんなよ。
プッツン野郎相手にゲームオーバーなんて笑い話にもならねぇ……」
「同感」
私もデッキを取り出した。
そして私たち3人がほぼ同時に叫ぶ。
「「「変身!!」」」
「仮面ライダーナイト!」
「仮面ライダーガイだ。
名乗りな、おっさん!」
「仮面ライダー……シザース!!」
私たち3人はライダーの姿となって対峙していた。
……震えがくる。モンスターとは明らかに違う強大な力。それを肌で感じる。
「……沙羅はライダーと戦うのは初めてだったな」
「恭介はあるの? 戦ったこと?」
「沙羅と会う前にちょっとな……それより油断するなよ。
マジでやらないと……ホントに死ぬぞ」
「……うん」
「さぁ……始めようか。殺し合いを……」
「こっちの目的はそこの女の子を助けることだ。
殺し合いなんてあんた一人で勝手にやってろ。
沙羅、行くぞ!」
私にとっての初めてのライダー戦はこうして始まった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
メタルホーンを装備した恭介……ガイが一気にシザースに接近する。
それに対してシザースもストライクベントを召喚、蟹のハサミのような形状の武器を腕に装着するとそれでメタルホーンと打ち合った。
「何故邪魔をする!」
「あんたの事情なんざ、知ったことじゃねぇよ。
ただ……あんたをこのまま放置してあの子が死んだら俺が寝覚めが悪いんだよ。
だからあんたの邪魔させてもらうぜ!」
「そんな子供の理屈で邪魔をするなぁ!」
「こちとら子供だ。 子供が子供の理屈こねて何が悪い!
あんたこそ、大人だったらまともなことしやがれ!!」
そう言ってお互いの武器でつばぜり合いのような形になる。
だが、シザースはその間に身体を捻ると、強烈なキックをガイに叩きこんでいた。
「ぐぁっ!?」
ドウっと倒れ込むガイに、シザースの追撃が迫る。
「恭介!」
私はその間に入ると剣―――ダークバイザーでその攻撃を止めていた。
「女だろうが容赦はしない……」
「これが……ライダー同士の戦い……!?」
その殺気をもろに受けて萎縮しそうになったところにガイの声が飛んだ。
「沙羅、相手の気合に飲まれるな!
相手の気合に飲まれたら……死ぬぞ!!」
『死』……そのあまりに明確な言葉に、私は雑念を振り払うとダークバイザーを振るう。
「ふん!」
「!?」
だが次の瞬間、ダークバイザーは蟹のハサミ掴まれ、動けなくなっていた。
そこを横合いから、あの蟹のようなシザースの契約モンスターに襲われ吹き飛ばされる。
「沙羅! てめぇ!!」
ガイがメタルホーンを振り上げ再び振るったが、今度はシザースは蟹の甲羅を模したガードベントを召喚した。
「なっ!?」
その盾にメタルホーンをはね上げられ、ガラ空きになった胸に蟹のハサミが叩きこまれ、恭介はもんどりうって倒れる。
「恭介!」
「トドメだ!!」
そんなガイに好機と見たのか、シザースはそのカードをセットした。
『FINALVENT』
バイザーから響くその声、それは間違いなくシザースの最大の必殺技のための準備だ。
目の前で天高くジャンプするシザース。
どんな技かは知らないが、ガイが危ない!
「恭介ぇぇ!!」
私の叫び。
だが、私は仮面の下で恭介が笑ったように見えた。
ガイが流れるような動きでそのカードをバイザーに装填する。そして、その認識音が響いた。
『CONFINEVENT』
「なっ!?」
その発動した効果に、シザースが思わず叫んだ。
それはガイの、ともすれば必殺技である『ファイナルベント』よりも強力な切り札だ。
『コンファインベント』の効果、それは……『他のカードの効果を打ち消す』というものだ。
これにかかれば『ファイナルベント』だろうが何だろうが強制停止させられる、ガイの最大の切り札である。
それによって『ファイナルベント』を途中で打ち消されたシザースは、空中で無防備な姿を晒していた。
「ゲラス!!」
その言葉と共にガイが『ファイナルベント』を発動させる。
「喰らえ!!」
「う、うぉぉぉぉ!!?」
着地際を狙ったガイのヘビープレッシャーに、シザースは避ける術が無い。
直撃はさせないようにしたが、ヘビープレッシャーに巻き込まれたシザースは、ダンプにでもはねられたかのようにきりもみにしながら吹き飛ばされたのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「ば、バカな……」
ガイにはねられたシザースは、そのまま倒れ込む。
それと同時に、私も大きく息をついた。
「はぁはぁ……」
何度も何度も大きく息をしているのに、呼吸が整わない。
初めてのライダーとの戦い。それは私の予想以上に過酷なものだった。
「大丈夫か、沙羅?」
ガイが私の手を引いて立たせてくれた。
どうやら私ほど疲労はしていないようだ。やっぱり男なんだなぁ、などとボーッとした頭でどうでもいいことを考える。
「うん、大丈夫。それよりあの子は……?」
「ああ、あの子なら大丈夫だ」
そう言って、恭介は女の子の方を指差した。
それなりに時間がたっているけど、気絶してるだけで無事のようだ。
「すごいね、この子……」
「ああ、ライダーなみの精神力じゃねぇのか?」
ミラーワールドは人間が長時間生きれる世界ではない。ミラーワールドは人間の精神力を蝕み、精神力の尽きた人間は文字通り消え去ってしまう。
ミラーワールドでの生存時間はその人の精神力に左右されるのだ。
私たちライダーは精神力が高く、比較的長い時間ミラーワールド内で活動できる。
この子はそれと同じくらいの精神力を持ってるみたいだ。
「どっちにしろ、ここにいれば確実にこの子は死ぬぞ。
早く実世界に運んでやろう」
「そうだね」
どっちにしろ長居できる状況じゃないのは確かだ。
ガイが女の子を担ぎ、ミラーワールドからの脱出の準備をする。
その時……。
「に、逃がさん……」
私たちの背後で幽鬼のように、柳川刑事が立ち上がった。
「やっと手に入れた復讐の機会を……逃してたまるか!」
吼えて、デッキのカードに手を伸ばすシザース。
凄い執念……。
私がその気迫に圧倒され、後ずさる。
「……」
ガイも私も、シザースの動きに合わせるように、デッキのカードに手を伸ばした。
暴発寸前の緊張……だが、それは意外なところから突然、破られた。
ブォォォォォォン!!
「?」
ミラーワールド内に突如響き渡る、バイクの駆動音。
そして。
ガシャァァァァン!!
「ぐわっぁぁ!!!!!?」
「「!!?」」
突如として現れたバイクにシザースが撥ねられた。
そして……。
「あっ……」
私は見てしまった……壁に叩きつけられたシザースのカードデッキが砕け散るのを。
「う、うぅ……」
ライダーから人の姿に変わり倒れこむ柳川刑事。
その柳川刑事に暴走バイクは容赦なく襲い掛かった……。
「見るな、沙羅!?」
ガイが私の目を押さえる。が、見てしまった……。
柳川刑事の頭が潰れる、その瞬間を……。
「う、うぅ……」
「こいつは一体……?」
混乱する私たちの前で、その暴走バイクが形を変え始める。
そしてそれは……。
『……』
「!?
こいつは……昼間の!?」
そう、そのバイクは昼間教室に現れたあのモンスターになったのだ。
「そんな、倒したはずなのに……」
「ちぃ、沙羅逃げるぞ!
こんな状況でこいつの相手なんざやってられるか!!」
その声で私は我に帰る。
そうだ、今の状態じゃこのモンスターと戦えっこない。ここは逃げるのが一番だ。
「走れ、沙羅!」
そのの声と同時に私は走り出した。ガイもあの女の子を背負い、私の後ろを走っている。
だが……。
ブォォォォォォン!!
前方からのバイクの爆音……まさか!?
「嘘だろおい……」
私たちの目の前でバイクはあのモンスターへと変形を果たした。
しかも三体だ、三体のあのモンスターが私たちの行く手を阻んでいる。
「恭介……」
「ああ……。
やるしか……ねぇな…」
後ろからは柳川刑事を殺したモンスター、前には行く手を阻む同じ種類の3体のモンスター。
まさに前門の虎、後門の狼だ。
私たちは覚悟を決め、構えを取る。
その時だった……。
リィィィィィィン……
「マジかよ!」
「モンスター接近音!?
まだ来るの!?」
それと同時に目の眩むような閃光。
そして視力が回復したとき、目の前には……。
「……」
一人の女の子が立っていた……。
その女の子はまるで私たちを守るように両手を広げ、3体のモンスターの前に立ちはだかっている。
「危ねぇぞ!
なにやってるんだ、どけ!!」
恭介が女の子に慌てて駆け寄ろうとした。しかし……。
「うそ……」
「どういうことだ?
モンスターが……」
女の子に反応するように、今まで私たちに近付いてきていたモンスターたちが動きを止める。
「はい、もう大丈夫だよ……」
女の子は私たちの方を振り向くと、笑顔でそう言った。
「早く行って、ココの力じゃあんまり長くここにいれないから……」
「あなたは……一体……?」
目の前の光景が信じられず、ただそれだけ呟く。
その言葉に、その女の子は答えた。
「ココ。
八神ココ」
「八神ココ……それがあなたの名前なの?」
「うん!」
そう言って女の子……八神ココは微笑む。
「ホントは知り合った記念に、ココのこめっちょ聞かせてあげたいんだけど、時間がないからまた今度ね」
「お前は一体……?」
「ほらほら、時間が無いんだから早く行く。
そうじゃないとその子、死んじゃうよ」
言われて背負った女の子のことを見た。
「はぁはぁ……」
息が荒い。多分、精神力の限界が近いんだろう。
早くミラーワールドを出ないと、この子が危険だ。
「仕方ない……行くか」
「そうそう、お話するのは次の機会。
だから今は……」
「また、会えるの?」
「うん、必ず会えるよ……」
そう言って、ココと名乗った女の子は微笑んだ……。
~~~~~~~~~~~~~~~
私たちはミラーワールドから出るとほぼ同時に地面にへたり込んだ。
「はぁはぁ……」
疲れと今しがた起こった不思議な現象にしばらく頭が働かない。
隣を見てみると、恭介も同じように呆けた顔で息をしていた。
「とりあえず……無事か……?」
「うん……そっちは?」
「こっちも無事だ、この子も含めてな」
そう言って恭介は担いでいた女の子をそっと地面に下ろす。
少し憔悴しているが、命に別状はなさそうだ。
「よかった……」
「にしても……今日はマジでハードだったぜ」
「ホントね」
モンスターが現実世界で暴れまわっているところに出くわすわ、ライダー同士の戦いをする羽目になるわ……一日のうちに起こるイベントの数を明らかに超えてる。
「早く帰って寝てぇ……」
「その前にまずこの子送り届けないと……」
ここに放置するわけにもいかない。
幸い、この子はちょっとした有名人なので、家の場所は知っている。今年入った一年生で丘の上の豪邸、『柏木家』の子で『柏木初音』という子だったはずだ。
「とりあえず……行こっか?」
「ああ……」
私たちは初音ちゃんを担ぎ、柏木家へ向かう。
家の前まで行くと、彼女のお姉さんたちに会った。どうやら帰りが遅くて心配していたようだ。
私たちは『公園で倒れていたので連れてきた』と伝え、初音ちゃんを彼女達にわたした。
一番上のお姉さんが『御礼をしたいので上がっていってくれ』と言ってくれたが、これは丁重に断った。
そんなことをする暇があるなら、今は一秒でも早く帰って眠りたい……。
一番上のお姉さんは御礼をしたいと最後まで言っていたが、また後日ということで手を打ってくれたようだ。
聞かれるままに名前を教え、私たちはマンションへと急ぐ……。
「そんじゃ、おやすみ」
「うん、お休み……」
ウィークリーマンションに帰ると、私も恭介もくたくただった。
時計を見ると、もう日付けが変わっている。悪夢のような一日は、気がつかないうちに終わっていたらしい。
詳しい話は明日ということにして、私たちはとりあえず眠ることにした。
もうすでに、やる気も気力もない。
「はぁ……」
私はドアの前で恭介と別れると、そのままベットに倒れこんだ。
ホントはお風呂に入りたいけど、今はそんな気力もない。
途端に睡魔が襲ってきた。
「ふぅ……」
悪夢のようなこと、奇妙なこと、不思議なこと……いろんなことが高速で起こった、ジェットコースターみたいな一日だった。
そのなかで一つの顔が浮かび上がる。
『八神ココ』……あの子は一体なんなのだろう……?
「……」
ダメだ……もうまともに頭が働かないや……。
色々なことがあった一日。
大変なことがあった。
恐ろしいことがあった。
そして……ちょっとだけ嬉しいことがあった。それは……。
「……恭介」
恭介との間にまたひとつ、強いつながりが出来た……。そんな気がする……。
明日も……この心地よい関係が変わりませんように………。
そう祈って……。私は泥のような眠りに落ちていった……。
『残りのライダーは…………あと12人』