【悲報】ワイら、呪術界に異世界転移する。 作:なんか変な色の翼
ワイ「はえ~、13000pt....これ勲章モノだなぁ?」
読んでくれる皆様に心からの感謝を込めて戦闘回です。
「衛宮ってさ」
「ん?」
「いつも、その筆箱持ってるよね。お気に入り?」
五条と夏油が泊まり込みで任務に出ていたある日の話。いつもは煙草を吸いながら窓の外を見ているような家入が、暇つぶしか気まぐれか話しかけて来た。
「別にそんなんじゃないぞ。強いて言えばトレーニングかな」
「筆箱握ることが?」
「おう、一定の強さの呪力を流して筆箱の硬度を上げてるんだ。硬すぎると手が痛くなるし、柔らかすぎると革製だから凹んで跡になる」
「マメだねぇ、そんなのテキトーでいいのに」
「出来る事はやっとかないと気が済まないんだよ」
衛宮は特級の名を冠しているが、呪力の質も呪力操作の技術も、あまつさえ呪力量さえも家入より劣る。その術式の特異性で国家転覆はできても、その実力は一級呪術師にも満たないかもしれない。
「でも、そんな頑張っても五条には勝てないよ?」
「なんで五条が出て来るんだよ」
「良い指標だから。アイツこないだ言ってたじゃん、『俺って何でも出来るから何でもはやらないようにしてる』って。どんなに性格がオワコンでも、才能さえ有ったら努力型の人間なんて蹴散らせるんだよ?悲しくならない?」
「全く。別に、五条に勝つ為にやってるわけじゃないし」
「じゃあ何をゴールにしてんの?」
「あー、照れ臭いけど
「何それ、ウケる」
歌姫先輩が気に入るわけだ、と納得しつつ2本目の煙草に火を付けた家入。案外、コイツも五条や夏油とは別ベクトルで馬鹿なんだろうと結論づけたようだ。
「まあ、そういうヤツの方が見てて面白いけどね」
「凄い上から目線だな.....」
「ラノベのチートよりダメダメな主人公の方が、まだ見ていて目の保養になるって事。まあ応援はしてあげるよ」
「言い得て妙だな、本当」
「あー?何ゴチャゴチャ言ってんの?」
「コッチの話だ、気にすんな」
運動靴に履き替えてグラウンドに出た俺たちは、凡そ15mの距離を間に対峙していた。こういう光景がフラッシュバックするのって、かなり縁起でもないよな。もしかして走馬灯の予告編?
「ルールはどうする、戦闘不能までか?」
「当たりめーよ。場外はグラウンドの砂地から外に出たら負け、校舎の側面部は使用可能でどう?」
「それで良いぞ、秒針が回り切ったら始めよう」
校舎に取り付けられた時計に俺と五条以外の全員の目線が移る。俺たちは開始からコンマ1秒で動けるよう、身体に呪力を流して万全のコンディションを作り上げる。
本来なら投影出来る武具をイメージしていたりするのだが、今回ばかりは呪詛師や呪霊を相手するのとは訳が違う。あまりにも壁がデカすぎるのだ。
五条を倒すには、3つの事を考慮しなければならない
1つ目は無下限呪術。
収束する無限を展開するチートのバリアだ。これが有る限り、俺の通常攻撃は全く当たらなくなると言っても構わない。突破できる術式を刻み込んだ武具を作り出すか、無下限術式と同等以上の精度を持った術式をぶつけてこじ開けないと俺に勝ち目はない。
2つ目は術式順転『蒼』。
さっきの無下限が最強の盾なら、こっちは最強の矛だ。マイナス1の虚構という矛盾を作り出し、強烈な吸い込み反応を引き起こす。こんな自動掃除機が通った後にはペンペン草も残らないだろう。
3つ目は六眼。
呪力を詳細に視認できる特異体質。初見の術式であっても内容を理解できる双眼。恐らく呪具にも適応され、俺の投影品がどんな効果を持つかも把握されると思う。唯一の弱点は連続使用すると眼精疲労を起こす事か。
文字通りのクソゲー、勝ち目ほぼ無し。
究極の一を幾つも持ったワイルドカードの詰め合わせ。
真正面から相手するなんてどうかしていると自分でも思う。
「術式順転、『蒼』ッ!!!!」
秒針が12を指した瞬間に打ち込んで来た。
砂埃を巻き上げながら、底無しの虚無の塊が渦を巻いて押し寄せる。目測で半径1mくらいか。
これならまだ大丈夫だ、何とかなる。
「
緩やかなカーブを描いていたのを見るに、恐らくアレはブラフだ。上手く回避させて自分の得意な射程に誘導させようってんだろ。なら『蒼』を使えなくなる懐に、死んでも潜り込む!
「
歪な形をした短剣を投影する。明らかに戦闘向きでは無い、稲妻のような形をした刀身。こんなモノでは力ずくで刺した所で決定打にはならないだろう。しかし恐るべきは刻まれた術式。その効果は天逆鉾と同様、刺した対象の"術式効果の無効化"なのだ。
「オォ───ラァッ!!」
「オイオイオイ、マジかよ」
虚構を刺し貫き、向かって来た吸い込みを解除する。そして次の一撃を打たれる前に呪力強化した跳躍で前進し、五条の目と鼻の先まで辿り着く。いける、この距離なら"蒼"は打たれない。矛は奪った!
「これならいけ────」
「いいや、全然足りてない」
身体が"上に"投げ出される。
何とか体勢をコントロールして吸い込まれる方向を見上げると、先程とは比べ物にならない規模の『蒼』が展開されているのに気づいた。
威力も段違いで、地面にクレーターが出来るとかいうレベルじゃない。グラウンドの土は纏めて剥がれ、反重力のCGのように上空へと落ちていく。
「術式順転、最大出力───『蒼』!!」
衛宮士郎という男は、私にとってどんな人間だろうか。
私より上の階級の人間。同じ一般人上がりの同胞。やけに料理上手で家事が出来る。実は身長の高い私と悟を羨んでいたりする。どういうわけだか呪力が異様に少なく、一級上位の案件に出向いたと聞いた時には正直気が気でなかった思い出がある。
今回の喧嘩くずれも、いつもの私なら飄々と止めていた事だろう。しかし、対戦カードは前代未聞の呪術師の悟。そして挑戦者には、まだ一度も戦っている姿を見たことの無い特級呪術師。
二人の友人として恥ずべき事だとは思うが、血が騒いでしまった。この目で見たいと思ってしまった。恐らく、悟も同じような気持ちだったんだろう。
悟の蒼に真っ向から挑み、散らせた所まではよかった。
アレは恐らく、無下限呪術にすら対抗し得る衛宮の切り札だったんだろう。しかし、一人前のナイフを持った所で地力が違いすぎたというわけか。
勝負は決した、早く彼を医務室に───は?
「悟、何をやってるんだ!勝負はもうついただろう!」
「うるせぇ!黙ってろ傑!!」
グラウンドの砂を吸い込み圧縮して、砂礫の球体を作り出して衛宮を封じ込めた悟。しかし、そこに新たな"蒼"をぶつけようとしている。これはやり過ぎだ、衛宮が死んでしまう!
「早く"蒼"を解くんだ、今だって窒息しかねないんだぞ!」
「馬ッ鹿、分からないかなぁ!解いたら俺がやられ──」
次の瞬間。
砂礫を突き破って、悟へと赤い閃光が突き刺さった。
「───バケモノが」
さっきの紅槍に対処できたのは、正直運が良かったからだ。アレに付与された術式は因果の逆転。無下限で勢いが止まった瞬間に六眼で視認できたから破壊が間に合った。もし一瞬でも遅れていたら、確実に身体の何処かしらを貫かれていただろう。
「そりゃ俺のセリフだ。やる事が一々派手なんだよ」
「お前だってやろうと思えば出来る癖に、よく言うぜ」
「出来た上でやらないんだよ」
内側から固まった砂地を割いて出て来やがった。見たところ外傷は無し、呼吸も整ってる。よかった、硝子や傑にやりすぎだと怒られる心配は無いな。
「次は仕留める」
「コッチがな」
無下限呪術の長所は攻防一体にして最強の威力を誇る点に有る。しかし、その代償として攻撃に転ずると一気に精密動作性が落ちる。事実、蒼の吸い込みに指向性を与えると六眼を使っても疲労が溜まる。
衛宮は絶対にその隙を見逃さない。あの短刀は恐らく術式破り、刺した対象に付与された術式を無効化する虎の子だ。
近距離戦は向こうの術中。しかし中距離戦でミスると、さっきの槍が飛んで来るんだろう。集中力が切れた状態でもう一度やられたら、今度は破壊するのが間に合うかどうか怪しい。
稀代の天才五条悟、まさかの絶対絶命。
一般人上がりの特級呪術師に追い詰められる。
なーんて、そうなっちまうのも過去の話。変化しないのが最強ってわけじゃない。俺も
「術式順転、最大出力・分割、『蒼』!!」
最大出力を直列ではなく並列に繋ぎ、2つの吸い込みに独自の指向性を与える"出力分割"。ぶっつけ本番だったが完成した。
1つは牽制に使い、もう1つは衛星のように俺の周りを周回させて防御に使う。恐らく衛宮は最短距離で突っ込んで来る。牽制用の蒼にさっきの短刀を使うはずだ。
いくら術式を解除できても、遠隔で攻撃されると必ず防御に回らざるを得なくなる。その攻めの姿勢を崩した瞬間が俺に取っては好機だ。
どれだけ強固な盾を持っていようが、俺が攻撃に回れば出力全開の蒼で押し勝てる。手数では負けているが、単純な力比べなら
「
「ハッ!いいね、ソッチも出し惜しみは無しってか!」
次々と武装を投影し、滞空させる衛宮。
槍に斧、短剣に矢、棒に鉄扇。様々な武具が総計15個。その全てに異質な呪力と術式が封じ込められている。さて、どれが無下限を突破して来るか───
「いや、全部吹き飛ばす!『蒼』ッ!!」
「吹き飛ばされんのは──テメェの方だ!!」
牽制用の蒼が、僅か3つ武具を弾き飛ばして消滅した。マジかよ。
飛来した内の半分を防御に回した蒼で対処し、もう半分は大きく後ろに飛んで回避。その勢いで校舎の側面部に張り付いた。気分はこの前に見たスパイダーマンだ。
「ハハッ、やるな衛m──」
「『伸びろ』」
直感に従って横っ飛びに壁を跳ねると、ノータイムで巨大な柱が先ほどまで立っていた地点を押し潰した。成程、声に合わせて伸縮自在の如意金箍棒か。確かに注文していた覚えがあるが、ここまで再現されてるとは予想以上だ。
.....しかし、それだけで焦るか?
いつもの俺なら避けるまでもなく無下限で対抗しただろう。何故、直撃を避けようとした?
「術式反転、
「ハッ─────────」
轟音、そして六眼がキャパオーバーするレベルの呪力の大爆発。
校舎が半壊し瓦礫が宙を舞うのと同じように、俺も空に投げ出された。
ああ、コイツは今まで会ってきた誰とも違う。
意地汚く俺に媚びてくるような
俺を蹴落とそうと日陰で目論む
馬鹿みたいに笑い合って肩を預ける仲間だが、そうでもない。
コイツは腹に力入れて全力で殴り合える、正真正銘の
コイツだけには並ばれたくない。コイツを倒して、俺が最強だと証明したい。
「────最ッ高!!!!!」
今なら出来る。高揚感と万能感と優越感のミックスした心がそう言っている。
今までの蒼とは訳の違う、次のステージの無下限呪術。無限の吸引の真逆、無限の発散。
当たり前だが、こんな物はお遊びで撃っていいものじゃない。
「
「そうだなぁ、そうだよなぁ、そうでなくちゃなぁ!!!」
だが、コイツには全力を出せる。
自分でさえ知らなかった自分を、心の底から解放できる。
今はただ、この出会いに感謝を。
「術式反転、【赫】」
「
第734号
2005年8月24日
1学年
衛宮 士郎
五条 悟
東京都立呪術高専 学年主任
夜蛾 正道 印
上記の者二名は、許可無く術式を用いて私闘を行い、西校舎を全壊させ、グラウンドを修復困難の状態に破壊し、その他設備を多数破壊したものとして、1ヵ月の停学処分とする。
また、五条悟には反省の意志無しとして、停学後二か月の奉仕活動を命ずる。
しかし特例措置として、交流会の二日間のみ停学を免じ、出席を認める。
・衛宮士郎
五条に全開の蒼を使われて命の危険を感じ、ギリギリで覚醒。地爆天星の中からゲイボルグをぶん投げた。反転術式ではなく術式反転のみ使用可能となる。要は美味しいヤミー感謝感謝な夏油に肩を並べた状態である。
・五条悟
蒼に真っ向から対抗され、今までの自分では負けるかもしれないレベル、つまり全力で遊べる相手を見つけて最高にハイになった。術式反転のコントロールが可能になり、虚式・茈を開放する一歩手前まで成長した。
・呪術高専
西校舎(教室のない方)全壊、体育館が余波で半壊、グラウンドは蒼と特級呪具を打ち込みまくったせいでボロボロ。復旧の代金は全額五条家が負担したそうな。
・他の皆様方
衛宮もそっち側の人間だったんだな.....
誰が勝つ?
-
五条悟
-
衛宮士郎
-
勝てばよかろうな歌姫
-
何も知らない大泉メロンパン