【悲報】ワイら、呪術界に異世界転移する。 作:なんか変な色の翼
春が来たので暖めます。
今回はクッション(本編と日常の狭間)なので短め。
「─────衛宮、もう一つだけ話がある」
夜蛾に再度呼び止められ、渋々と足を止める衛宮。
しかし、夜蛾の真剣な表情を見て瞬時に気を引き締めた。
「こんな事は言いたくないが、お前は上層部に目を付けられている」
「.....上層部?つまり、総監部に?」
「ああ。お前の呪具を製作するという術式は、彼らから見れば魅力的な物だからな」
保守派が大半を占める上層部は古典的な呪術を好む。
例えば釘崎のような"呪術らしい呪術"は好まれ、秤のような"らしくない"モノは軽視される。
その点、過去の呪具を再現し具現化する衛宮士郎の術式は最右翼と言ってもいい。
更に実用性にまで優れているとくれば文句無し。彼の首輪を巡って戦争が起きてもおかしくはない。
「それで、今回の任務だが....総監部からの妨害が入るかもしれない」
「え?」
「星漿体護衛の任務がお前に回されること自体に疑問は無い。しかし、日本全国を巻き込む任務だろうと足を引っ張り合うのが彼らのやり口だ。任務の妨害をされ、落とし前として縛りを結ばされんとも限らんからな」
その点、夜蛾は正しく中道。保守派でも無ければ改革派でもない。
ぶっちゃけ、呪術界全体の未来に興味などない。
教育者として正しく在り続ける事、そして生徒が無事に卒業できる事こそが全てなのだ。
「何か有れば直ぐに大人を頼れ。お前は呪術師だが、まだ学生だ」
「──────信じられんッ!!!」
そして、春。出会いと別れの季節が来た。
職員室の中で、夜蛾は一通の手紙を見て驚愕していた。
当然、衛宮士郎の死亡診断書ではない。その驚愕は4ヶ月前に終わっている。
「衛宮士郎が.....生きているだとッ!!??」
4ヶ月前と違い、顔に笑みを浮かべながら叫ぶ夜蛾正道。
手に取っていたのは、衛宮士郎から生存報告の手紙であった。
治癒を阻害する呪具を使った致命傷を受け、止む無く撤退した事。自身が死んだと錯覚させるため、非生物の魂を組み換えダミーの死体を作る特級呪具"穢土法輪"を土壇場で使った事。夜蛾の言った通り高専側に妨害者の存在する可能性が高いため、自分の死亡処理が完全に成し遂げられ、完治する時期まで連絡を控えていた事。そして、一ヶ月も経てば復帰できるとの事。
その全てが、見間違えるはずもない衛宮士郎の筆跡で書かれていた。
そして、僅かに残された衛宮の呪力の残穢。
過程はともあれ、これが彼が生存している事を決定づけさせた。
「....この知らせを聞けば、アイツらは喜ぶだろうな」
だが、それはまだだ。誰が何処で聞き耳を立てているか分からない現状、衛宮士郎が完全に復帰するまで心の中に潜めておかねばなるまい。それが生徒の安全を保証する、先生としての責任なのだ。
許せ、五条。許せ、夏油。許せ、家入。夏が来れば必ず─────
「で、先生。だーれが喜ぶんです?」
「誰が何処で聞き耳を立ててるか分かったものではありませんからね」
「.....一応聞いておく。いつから居た?」
「「"衛宮士郎が生きている"のところから」」
.....許せ、衛宮。私は不甲斐ない先生だ。
私の名前は七海建人。どこにでもいる一般的な呪術師の卵です。
.....失礼。呪術師は"どこにでも"はいませんね。訂正します。
少なくとも、私の両親は呪術師ではありませんでしたから。
過程や詳細は個人情報なので省きますが、私は今年から呪術高専に入学する事となりました。呪術師としてのイロハを学び、様々な意味で"力の使い方"を知るところだと夜蛾先生が仰っていましたね。
そして、呪術界隈は恐ろしいほど蛇蝎魔蝎が蔓延っているとも仰っていました。なんでも、呪術師の世界でも上に立つ者は腐っているとかなんとか。こう言っては何ですが、ファンタジーやSFのような非日常的な世界でも、そういった手合いの者はいるんですね。逆に安心感すら覚えました。
少しだけ悩みもしましたが、呪力だの術式だのといった皆目見当も付かない事を独学で学ぶつもりは有りません。そのような人がいると覚悟した上で臨むまで。別に、他人にそこまで期待するような人間ではありませんので、私。
"少し効率主義過ぎやしないか"などと言われた経験は有りますよ。それも、一度や二度ではありません。
ええ、自覚はしています。そして長所だと思っていますよ。
殺し殺されるのが当たり前の世界では、この価値観が役に立つとすら考えています。
一般人の世界では良く思われていなかったこの性格も、呪術師の中では多少受け入れられるはず───
「「ご入学、おめでとーう!!!!」」
「イェーイ!!!」
「..........」
そう思っていた時期が、私にも有りました。
入学早々に先輩方に呼び出されて何事かと思えば、教室一室を借りての歓迎会に巻き込まれました。
こういう"飲み会は絶対参加"みたいなムード、嫌いですけど嫌いです。
とはいえ、これが先輩方とのファーストコンタクト。機嫌を損ねて目を付けられたくないのも事実。
7割程度くらいで乗っかって時間を潰すとしましょう。
「いやぁ、サプライズパーティーなんて嬉しいです!ありがとうございます、先輩方!」
彼は灰原雄、どうやら私の唯一の同級生の模様。
一目で分かるほどの根明、完全に陽の側の人間ですね。
私とは原点挟んで対称の世界にいる者なので、少し先行きが不安です。
「でしょでしょ!?こーいうの得意なのよ、俺!!」
あのグラサンを掛けた銀髪の先輩は....確か、五条悟でしたか。
呪術界の勢力図には詳しくありませんが、御三家の一つである五条家の次期当主だとか。
こういう御三家とかいう勢力って保守的な人間のイメージが強いので意外ですね。
陽の者を超えて頭がイカれてそうなので関わりを持つのは御免ですが。
「ははっ、土産に駄菓子しか持って来てない奴が何言ってんだ。ウケる」
そして紅一点の先輩、家入硝子さんですね。
ツッコミの役回りをしていますが騙されませんよ。その台詞を言った口には煙草が咥えられていますし。
未成年喫煙じゃないか、と正論を言いたいのですが灰原もツッコまないので言い出せない状況です。
いや逆に、この状況で煙草に関して指摘をしようと考えている私の方が少数派......?
「大丈夫です先輩!僕、駄菓子も大好きなので!」
「おー、めっちゃ良い子じゃん。一番好きなのは?」
「ポン菓子ですね!お米が一番大好きです!」
「いーじゃんいーじゃん。硝子、日本酒持って来てない?」
「何飲ませようとしてんだお前」
ダメだ、一般的な思考回路では話に付いていけない。
呪術師は多少イカれていないとダメだと言われましたが、まさかそういう意味なのですか?
"元々頭のおかしい人が多いからコミュニケーション出来なくて困る"、的な意味なのですか!?
「ホラ、折角なんだしアンタも楽しみなよ。ほら、ジュース」
「あ、どうもありがとうござい───」
「あー、固くなんなくていいから。別に、話すのが苦手なら飲み食いしてるだけでも大丈夫。楽しむのが一番だし」
コップを手渡し、なみなみとリアル〇ールドを注いでくれる家入先輩。
.....社会のルールからは外れていますが、案外悪い人では無かったりするのかもしれません。
頂きます、と一言添えてコップを手に取り──────
「グェッッッッホ!!!ゲッッホ!!!!」
「オイオイオイ、死んだわアイツ」
「あっ.....やっべ。これバーレーワインだったわ」
キッッッツ!!!!!!!!!!
一回も飲んだ事ないけど分かります、これキツイ酒です!!!
中級者なら兎も角、間違っても酒飲んだ事ない人がグビグビ飲んじゃいけないヤツ!!!!
ソフトドリンク感覚でイッキしちゃったじゃないですか!!!!!
「落ち着け一年、ワインと度数は同じだ。取り敢えず水飲め水」
「お、おーい七海くん!?大丈夫!?保健室行く!?」
「ちょ、これガチでヤバくね?顔真っ赤じゃん」
決めました。私、大人になったら酒は趣味程度に控えます。
そして先輩方との交流も仕事仲間程度に控えます。
「私から.....先輩方への呪いです......」
「ちょ、七海くんなんか言ってます!なんか遺言みたいなの言ってますよ先輩!」
「おい灰原、夜蛾セン呼んで来い!夜蛾セン!」
「おーい七海ー!寝たら死ぬぞー!」
ああ、どうか神様。もうこの先輩方にかかわらないで済みますよう───
・五条悟
衛宮生存を聞いてウッキウキ。ストレスが喜びに変換された。
復帰まで待ち切れないので、4月5月のカレンダーを先回りして破ってやった。黒井さんから怒られた。後悔はしていない。
・夏油傑
衛宮生存を聞いてウッキウキ。猿かな?
復帰まで待ち切れないので、実用的な筋肉だけでなく魅せ筋も一緒に鍛え始めた。五条からムサいから戻せと言われた。どうやって戻せばいいんだろう。
・家入硝子
衛宮生存を聞いてウッキウキ。今日もタバコが美味い。
復帰まで待ち切れないので、黒井さんが楽しみに取っていた梅酒を飲んでみた。美味しかった。めっちゃ怒られた。
・天内理子
衛宮生存を聞いてウッキウキ。
復帰まで待ち切れないので、黒井の使っている化粧を使ってみようと色々やってみた。口紅の先っちょ折った。めっちゃ怒られた。
・黒井美里
一 番 可 哀 想 な 人
懐玉編、いかがでしたか?
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原作二巻を五十話とか長すぎるわ!
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丁度良いボリュームだったぜ!
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もっと日常回欲しかった!