【悲報】ワイら、呪術界に異世界転移する。   作:なんか変な色の翼

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振り返るな





【懐玉-拾肆-】名前も無い君に

 

 

衛宮士郎という男がいる。

 

 

冬木市在住の魔術使い。転生してからは天内家在住の呪術師。

 

趣味はガラクタいじりと家庭料理。イメージカラーは赤銅。

 

好きな物も家庭料理で、実は昆布茶が苦手。

 

正義の味方を目指す、一人の少年がいる。

 

 

 

 

 

 

 

衛宮士郎という男がいた。

 

 

東京都在住の一般学生。転生してからは天内家在住の呪術師。

 

趣味はアニメ鑑賞と家事全般。イメージカラーなんて考えた事もない。

 

好きな物はサブカル全般、実はゴキブリが苦手。

 

ハッピーエンドを目指した、一人の少年がいた。

 

 

"衛宮士郎"としか呼びようのなかった、名前もない少年がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....ダメだ。振り返るな」

 

 

ピシャリ、と自分の頬を叩いて喝を入れる士郎。

釈魂刀の傷も癒えた六月一日。漸く、彼は天内家に戻る事を許された。

 

 

高専の方では、夜蛾先生が上手く取り図って始末を付けてくれていたようだった。上層部が士郎の死を隠蔽し、彼の遺産を独占しようとしたのも有ったのも効果的だった模様。海外任務を一つでっちあげ、そこから帰還したと辻褄合わせをするだけで良かったそうな。

 

上層部の方は言わずもがなだろう。私物を無理矢理に押収したかと思えば、その爆破権を持った人間が黄泉路から帰ってきたのだ。一部の遺産は高専の忌庫に保管されており、それを遠隔で爆破されてしまえば洒落にならない。言いたい事は山のように有れど、彼の生存の辻褄を合わせに協力せざるを得なかった。

 

 

 

「......問題は、アイツらだな。問題が有るのは俺の方なんだけど」

 

 

しかし、そんな損得勘定で何とかなる問題はどうでもいい。

半年も離れていた天内家、その玄関を開ける覚悟が有れば、そんな話は屁でもない。

 

錆びついたように重いドアノブに手を掛け、深呼吸をする。

 

 

 

俺は、あの時の衛宮士郎で在り続けられるだろうか。

 

アイツと一緒になっていた時と、同じ自分で在り続けられるだろうか。

 

この扉を開ける資格が、今の俺に有るんだろうか。

 

 

 

────迷うな。約束を果たせ。

 

 

 

俺が切嗣に憧れたように、アイツも俺に憧れたんだ。それも未熟者の俺に。

その憧れを背負ったなら、最後まで遂行する義務が有る。

 

 

いいさ、やってやるよ。全員救えってんなら全員救ってやる。

もっと強くなって、全員幸せにして、俺自身を救う。それが弔い、そしてケジメだ。

 

 

ごめん、お前を助ける事は出来なかった。

だから、俺がお前の目指していたモノは全部成し遂げてやるから。

 

 

もう葛藤は無い。もう躊躇は無い。覚悟は出来ている。

 

 

「─────ただいm」

 

 

次の瞬間。俺の身体は宙を舞い、視界には星が浮かんだ。

 

.....危うし命。助けてもう一人の俺、ただいまライブで大ピンチ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから先はスローモーションで実況をしよう。

 

 

士郎が天内家に帰還し、扉を開けてコンマ一秒で真っ先に夏油傑と家入硝子が反応。

 

夏油傑の肉体は一瞬にして秒速30mに急加速し、190cmにも届きかねない筋肉ムキムキマッチョマンの肉体で士郎と衝突。その時のダメージはダンプカーに跳ね飛ばされたかの如くだったと後に士郎は語る。

 

家入硝子が一歩出遅れて衛宮へと駆け出したタイミングで、一般人である天内理子の運動反応が漸く追いつく。黒井美里は駆け出さなかったのが唯一の救いだと言えよう。

 

家入のアメフト選手の如く鋭い抱擁の銃凸を受けて大きく仰け反る士郎に、更なる天内(質量)が襲い掛かる。ここまで解説して、筋力Dに対抗できる手段が残っていると考える者がいるだろうか。いや、いない(反語)

 

 

士郎の肉体は質量×速度のコンボに負けて玄関の外側へと追いやられ、そのまま後頭部を強打した。

怪我をして離脱していた人間に対して、コレはあまりにもあんまりな出迎えだと言えよう。

 

 

 

しかし、全員の顔を見た瞬間。そんな考えは士郎の頭から消えて無くなった。

 

 

 

夏油は、再会の喜びに打ち震えて表情を崩していた。

真面目な彼の事だ。今日この日まで、自分が死んだ事に責任を感じていたのかもしれない。

 

 

家入は、その瞼に大粒の涙を隠しながら笑みを浮かべていた。

もう二度と会えないと思っていた人が帰って来たのだ。この感情をどう表現すれば良いだろう。

 

 

天内は、涙と鼻水を士郎の学生服で拭きながら....汚いからやめなさい。

何はともあれ、自分の護衛任務中に家族同然だと思っていた人間が死んだと伝えられたのだ。

中学生で一般的な感性を持つ彼女には、その言葉がどれだけ重たい物だったかなど計り知れない。

 

 

「心配かけてごめんな。ただいま、皆」

 

 

そして五条は─────

 

 

「────五条?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衛宮士郎が、帰って来た。

 

俺のせいで死んだと思っていた人間が、帰って来た。

 

 

こういう時、俺はなんて言えばいいんだろう?

 

 

謝る?あの時、俺のせいでお前が───って、頭を下げて許しを請う?

普通に出迎える?おかえりって何気なく言って、今まで通りの関係に戻って行く?

 

 

 

 

(あ、ダメだ。手遅れだ)

 

 

 

 

アイツが玄関を開けた瞬間、俺はそう確信した。

この六眼(才能)の存在を、今日という日ほど恨む事は無いだろう。

 

俺の六眼は呪力の流れや術式を見通す。その精度は凄まじく、本人以上に生得術式の詳細を把握できる。

衛宮の術式は"投影術式"。自分の記憶....正確には心象風景を設計図とし、呪力で呪具を構築するというモノ。だからこそ、その術式は衛宮自身のメンタルや魂そのものに非常に密接した関係を持っている。

 

 

その術式が、嫌に澄んでいた。これ以上と無く透き通っていた。

 

 

全ての可能性を模索する。死の際での成長?術式の進化?怪我の影響?

そして、その全てを六眼に否定され、卓越した勘の良さで悟ってしまう。

 

 

彼は、"何か"を代償にして生きてしまった。生き残ってしまったのだ。

 

 

そこまで術式が変わってしまうナニカが無くなってまで、自分たちの事を優先したのだ。

そんな彼に、その原因を作ってしまった自分が謝る?労わる?

 

....そんなもの、自分が気持ち良くなりたいだけじゃないか。

謝って罪悪感から解放され、労わって理解したフリをしたいだけじゃないのか。

 

 

ならば、自分はどう声をかければ良い?無言は論外、早急に最適解を弾き出せ。

考えろ、考えろ、思い出せ、思い出せ。

今までの彼との記憶を、日々を。彼が一番欲しいと思っている言葉を探し出せ。

 

誰よりも優しく、誰よりも真っ直ぐに自分を見てくれていた彼への言葉を─────!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「な、あ。士郎って、呼んでもいいか?」

「..........え?」

 

 

 

名前を、

 

 

 

「お前がいない間に気づいたんだわ。傑も硝子も名前で呼んでたのに、お前だけ苗字だからさ」

 

 

 

彼に、名前を。

 

 

 

「だから、今日からは士郎って呼びたいんだよ....良いか?」

 

 

 

居なくなってしまった、ナニカ(ダレカ)に。独りぼっちになった、彼に。

せめて、名前を送ろうと。五条悟は、そう決断した。

 

 

 

「勿論、お前が嫌だったらいいんだけど.....ダメか?」

「..........勿論、良いぞ」

 

 

 

六月。出会いと別れの季節も終わり、全てを洗い流す梅雨の時期。

それが終われば、もう二度とは無い夏がやって来る。

 

 

無限には続く事の無い、最後の夏がやって来る。

 

 





この日の為に、ずっと「衛宮」呼びを徹底させてました。くぅ疲。

あっ、今回で一旦更新止めます。理由は下の活動報告より。


・9/24追記

活動報告は『大嘘憑き』されました。
メンタルの上げ下げが激しくてすまんのじゃ。

少しスピンオフで心を癒してくるので、しばし更新は待たれよ!

羂索襲撃の難易度

  • EASY(パパっと撃退)
  • NORMAL(まあ普通)
  • HARD(頑張らないとキツい)
  • NIGHTMARE(ガチでヤバい)
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